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新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』


2021年のお正月はNHK-BS放送の新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』に心奪われてしまいました…!!

ちなみに私自身は「風の谷のナウシカ」をリアルタイムで映画館に見に行った世代。原作も全巻読んでいますが、ここ20年くらい読み返してなかったので、映画になった3巻以降の展開はほぼ記憶にない状態。
歌舞伎については奥さんが歌舞伎好きなので、歌舞伎座や都内の劇場などで何度か観劇してます(5演目くらい?)。以下ツイートまとめ&補足です。


あのエキゾチックな久石譲のテーマ曲と、和楽器の相性がまた最高…!!


歌舞伎の馬は演者さんが二人入ってますけど、トリウマはひとりのせいか、菊之助さんが落ちて骨折したんですよね…さすがに重いよね…

ここ笑いましたね。無駄に客席をグイグイ通るユパ様(尾上松也)。

虫おじさんが蟲に…!!

皆さん絶賛していますが、中村七之助のクシャナが本当に素晴らしい!タフでクールで凛とした軍師…!!

映画版のあたりまでなら概要説明できました。土鬼(ドルク)とか出てこないし。

ミトじいは元々が時代物の家老ですよね。

以前観た歌舞伎の演目では、「親の仇と杯を交わす」シーンで、怒りに震えて両手で持った三方をバキバキと破壊する演出があって度肝を抜かれました…

メーヴェに乗るナウシカが、急に子役になって遠近法を表現するというシーン。「遠見」というそうです

王蟲の培養層のシーン、水を使った殺陣。舞台上が全部びしょびしょになり、どう見ても滑りやすそうで本当に危ない。でもこれ、歌舞伎のお家芸らしいです。水がかかっても、かつらの髪型が乱れないところもすごい。

スターウォーズみも出てきます

ワイヤーで吊った「宙乗り」も、歌舞伎の得意技ですね…!

原作、去年たまたま買いなおしていたので良かったです。がっつり予習して二日目の後半に臨みます!!

2日目入ります

順不同で、後で出てきます

ヒドラ。人造人間ですね。後半、ある意味「神に近い概念」の存在になってゆきます。原作のこのへん、あんまり覚えてなかったですね…

巨神兵の登場、原作以上に後ろに引っ張りました

振り返ってみると、歌舞伎版はこのシーンがいちばん最高で最高でした!!!

漫画版では歌そのものは表現されないので印象に残りにくかったですが、蟲が飛び交う地獄絵図の塹壕で、瀕死のクワトロを膝に抱えて子守唄を唄うクシャナの心の静けさ…飛び交う蟲、軽自動車くらいのデカさで迫力!!

ここも漫画だとさらっと描かれますけど、「仇との対峙」は歌舞伎ではお約束なので、こってり見せます

時代物っぽい古風なせりふ回しが歌舞伎に合う~~!

道化も期待通り、いや期待以上でしたねー

リテラシー、予備知識があるかどうかで面白さが全然変わるということで…

念話(集団テレパシー)の演出はシンプルに「演説」でした

ここは、「弁慶の最期」みたいになるかと思ったら、直接「串刺し」にはならなかったのでちょっと意外だな、と。

こういう直接的な表現は原作にはなかったと思います。

ここねぇ、女形から男に演じ分けるんですよ…母親の姿を借りて、ヒトの心の弱みに付け込むという「清潔でグロテスク」な存在……歌舞伎フォーマットにドンズバかつ、演者のすごさがガツンと伝わる鳥肌もののパフォーマンスでした……

ずっと共に旅をしてきたテトとの別れは原作でも丁寧に描かれましたが、「命が尽きてゆきながらも、ナウシカへの想いを残しつつ召されてゆく…」という演出を、古典的な火の玉でやるんです。最高ですね

荒唐無稽、なんでもありですからね…!

ピアノに魅入られてゆくボンクラ皇子の兄弟は省略。見たかったけど、「まともな文化が失われた世界で、音楽のすばらしさに魅入られてゆく」…という流れなので、歌舞伎世界では難しかったかも。「歌や踊りが失われた世界」って前提は、歌舞伎の中では表現しにくいよね。

ここはけっこう飛ばしましたね。最後に一矢報いるミトじいのがんばりも省略。ガンシップとか出てきちゃうし。

まさに時代物の舞台。ここも見事でしたねぇ

下卑た道化に乗り移る神(ヒドラ)。一人二役。ここもまた見事でしたねぇぇ。役者冥利に尽きる。

原作でもヴ王はナウシカをかばうのですが、小コマでちょっとわかりにくいんですよね。

王蟲もですけど、オーマ(巨神兵)、墓の精(ヒドラ≒人造の、神のような存在)、それぞれ擬人化というか「精」として出てくるのはいい解釈でした。人がやるから、ほかのキャラクターとの芝居も「人と人」になるので、芝居として盛り上がる。これが「人と大道具」になっちゃうと、ちょっと厳しい。しかしこの最後のクライマックスで、紅・白の連獅子で対決させるとは~~、アガる~~!!!

ここねぇ、細かいんですけど、「王位の継承に証人を立てる」というのが時代物の説得力、くすぐりが効いてるのよね…そしてそこを端折らずに見せる歌舞伎…わかっていらっしゃる…

ズバッと原作通りのこのセリフで終わるんですよ…お見事!!


いやー、お見事でした。尾上菊之助、「ナウシカを歌舞伎化したい」とジブリに相談に行ったら鈴木敏夫に「ナウシカ難しくないですか、もののけ姫では?」と言われたそうですが、やってみれば、ここもあそこも歌舞伎的フォーマットにビシバシはまる相性の良さ!!ここを掬い取った尾上菊之助の慧眼が光りますねーー。正月早々最高の体験でした。ありがとう歌舞伎!!!


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