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村田活彦(PSJ代表)×ikoma(胎動LABEL)対談:「ポエトリースラムジャパンのこれまで、これから」

去る1月10日(木)「ポエトリースラムジャパン 2019 新春ミーティング」が開催されました。会場は東京・門前仲町のカフェChaabee 。第1部はオープンマイク、第2部はトークショー、第3部はワークショップという盛りだくさんなイベントでしたが、盛況のうちに終えることができました。あらためてありがとうございます!

この日のテーマは「ポエトリースラムの未来を考えよう」。ということで、あらためてこのイベントをご報告いたします。

まずは第2部のポエトリースラムジャパン代表・村田活彦と胎動LABEL・ikoma氏による対談です!

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詩人、ラッパー、役者、ゆるキャラまで!! ポエトリースラムジャパンの広がり

村田:本日トークをいたします、ポエトリースラムジャパン代表の村田です

生駒:(ワイングラス片手に)胎動LABELのikomaです。よろしくおねがいいたします。

村田:そのグラスなに? お酒? 

生駒:髭男爵みたいですね(笑)。ルネサーンス!

村田:古い(笑)。今日はこういう新年会気分で全然オッケーです(笑)。新春ミーティング第2部は、ポエトリースラムジャパン(PSJ)のこれまでとこれからについて語っていこうと思います。

ポエトリースラムジャパンは、詩の朗読の日本選手権大会です。2015年にスタートしてだいたい年に1回、これまでに5回開催しています。第1回大会は東京で1度きりの開催でしたが、2016年からは地区予選を行い、勝ち上がったファイナリストが全国大会に集まるかたちになりました。

少しずつですが規模も大きくなっています。2018年大会の場合は東京で2回、大阪と名古屋と前橋で1回の地区大会を行い、最後に全国大会を東京で行いました。

優勝者は日本代表としてポエトリースラムの国際大会に出場します。たとえば毎年パリで開催されるポエトリースラムW杯という大会があり、これまでのPSJ優勝者も参加しているわけです。

そして生駒くんは地区大会の主催として、協力してくれています。

生駒:そうですね。ふだんは僕、「胎動」っていう、いろんなジャンルを混ぜるようなイベントを主催しています。ヒップホップでも、ビジュアル系でも、アイドルでもなんでも。PSJは、2017年の1月に開催した東京大会を主催したのが最初ですね。このときは東京で2大会開催されたんですが、そのうちのひとつをやらせてもらって。去年で3回目ですね。

村田:どうですか。3回やって、生駒くんの主催する大会は変わって来ています?

生駒:やるごとにどんどん、いろんなジャンルの人が参加してくれるようになっていますね。自分の周りの人たち、例えばラッパーの人たちがポエトリーリーディング始めたりとか。今までならそんなことやらなそうな人たちがなぜか出場してくれたり、詩のオープンマイクに参加する人も出てきたり。正直そこまで深くは求めていなかったんだけど、みんな頑張ってくれて。

村田:すごいことじゃないですか!

生駒:それってポエトリーリーディングの良さや魅力が、ほかのジャンルの人たちに衝撃的だったというか。未知との出会いに「食らった」んじゃないですかね。だから参加してくれたのかなと。

村田:確かに、元々いろんなジャンルで活躍している人たちが、ポエトリーリーディングのステージに立ってくれる面白さはありますね。第1回大会優勝の岡野さんは役者さんですし。もちろんラッパーやミュージシャンも参加してくれていて。

生駒:ちなみに、これまでに僕がやった大会のエントリーリストを見たら、これが面白くて(笑)。最初の大会は、まずラッパーがたくさん出てくれた! ほかにもダンサーやカメラマン…もちろん半分くらいは詩人ですけど。そこに「カブ左衛門」という、ゆるキャラまで参加しまして。千葉県・柏をPRするゆるキャラなんですけど、カブのかぶり物をしているという。ただしポエトリースラムジャパンのルールでは「衣装禁止」なんですよね。それで、この場合の衣装という概念とは?っていう話になって(笑)。

村田:衣装じゃない(笑)。言ってみれば全裸ですよ!

生駒:その姿がデフォルトですからね。デーモン小暮と同じ(笑)。もう一度出て欲しいですよね。1回目は特にいろんな人が出てくれたのが面白かった。ゆるキャラが出るポエトリースラムって、海外でもないでしょうからね(笑)。


手探りだった2015年、前橋が新風を吹き込んだ2018年

村田:ほかに印象に残ったステージはありますか?

生駒:個人名になっちゃいますけど、春ねむりさんがエントリーしてくれたのも、すごく面白かったですね。いますごく活躍しているアーティストですけど、そのころ活動を始めたばかりで。一回戦で惜しくも負けてしまったんだけど、いきなり椅子の上に上がって叫んだりして、インパクト残しました。

村田:そうですね。惜しくも一回戦で負けたけど、その1回のステージがかけがえのない存在感だったという人がいっぱいいますよね。

生駒:もちろん勝ち上がる人は強いんだけど、1回戦には素晴らしいアクトをする方がいっぱい出ているわけです…。このまま僕、東京大会の話をしてもいいですか?(笑)

村田:いいよ。言いたいこと言って(笑)。

生駒:僕のやる大会にはラッパーがたくさん参加してくれるんだけど、かといってラッパーがすんなり勝っても面白くないなーという気持ちもあって。ちょっとドキドキしながら開催してたんです。だけど、なんかラッパーが勝ちつつも、最後に詩人が制して優勝する、みたいな流れがあって。

それが前回、空廻というラッパーが「目綿灯(めめんともり)」という名前で出場してくれたんですよね。彼はそれまでの大会でも勝ち上がっていたけど、なかなか入賞できなかった。それが3回目にして詩の朗読に近い形でパフォーマンスして、優勝をかっさらった。ちょっと革命的だなーと思って。

村田:あれは主催者冥利につきますね。もともとラッパーとしてかっこいいわけです、空廻くんは。だけどPSJではなかなか勝てなかった。それで試行錯誤して、ポエトリースラムジャパンに向けたスタイルを作って挑んでくれた。それは本当に嬉しかったです。確かにあれは画期的だった。

生駒:本人のエネルギーもすごかったですしね。全体的に見ると、詩とは違うジャンル出身の人もどんどん活躍するようになってきたのは面白いなと。

村田:僕にとっては第一回目大会がやはり印象的ですね。2015年に、渋谷のラストワルツというライブハウスでやりました。初めてなのでわからないことだらけ(笑)。でも手探りの面白さがあったし、スタッフも1年目の妙な意気込みがあって。

優勝した岡野康弘さんが世界大会に出場するときも、詩の翻訳をするのにスタッフ5~6人で知恵を絞り合いました。いまはジョーダン・スミスさん、プロの翻訳家の力をお借りしていますけれど。

ただ人が集まり過ぎて、会場が酸欠状態でした。ポエトリースラムでは会場環境がとても重要だな、というのがあのときの反省です。それで第2回目の全国大会はアサヒ・アートスクエアという、とても広い場所にしました。そのときはゲストにGOMESSくんが来てくれて、大会自体もとても盛り上がりました。

前回大会も印象的でしたね。初めて前橋大会を実施して、地区大会の良さを再確認したようなところがあります。

生駒:前橋は文学が強いですよね。

村田:そうですね。ご存知の方も多いでしょうけど、前橋には萩原朔太郎記念前橋文学館を中心に、草の根の文化活動をされている方がたくさんいます。そういった方々に、手作りで前橋大会をやっていただいた感じです。地域密着型というか、地元愛を感じながら競い合っている感じがすごくいいなと。

生駒:今までの東京、大阪、名古屋だけとは違う盛り上がりが、前橋によって加わった感じがしましたね。

村田:全国大会のときも、前橋のスタッフや出場者の方が客席にいて、前橋大会を勝ち上がった人をみんなで応援するぞ、というようなニュアンスが感じられて。ああいったムードが広がるといいなと。

生駒:ほかの地域でも、そういう盛り上がりが出てくるかもしれませんよね。


ポエトリースラムジャパンの理念とこれから

村田:それでね、今日は、過去の大会もさることながら、これからをどうするかという話をしたいんですよ。ちょっと真面目なことを言いますよ、ここから(笑)。

これを見てください。ポエトリースラムジャパンの公式サイトに出しているキャッチフレーズなんですが。

【ミッション】
ポエトリーリーディング を通じて、世の中の言葉や表現がより自由で活発に発せられることを目指す

すごく大きく出ました(笑)。でも一応、こういうことを考えながら開催しているんです。

「ミッション」というのはビジネス用語ですよね。仕事を進める上で「ミッション」と「ビジョン」と「バリュー」というのがあるんです。「ミッション」というのは、その会社がどういう使命を持って仕事をするか。ポエトリースラムジャパンのいちばん大きなテーマがこれだ、と考えているわけです。

プレゼンを進めますね(笑)。次に「ビジョン」はこれ。

【ビジョン】
リーディングの楽しさを広め、大会を通じた国際交流を図る

「ビジョン」というのは将来像。どうなりたいか、ということですね。ポエトリーリーディングを楽しんでもらうと同時に、地域交流から国際交流までやっていきたいと、いうことなんです。

生駒:すごい。いまになって大会の素晴らしさが、さらに(笑)

村田:さらに「バリュー」、これは「価値基準」。目標に到達するために大事にしていることですね。

【バリュー】
“The Point is not Points, The Point is Poetry”
“出場者、来場者、スタッフみんなでつくる声と言葉のフェスティバル”

これも公式サイトに掲載していて、私もしょっちゅうアピールしています。この価値観を大切にして大会を実施しているわけです。以上、プレゼンでした!(笑)

生駒:なるほど!

村田:ポエトリースラムジャパンは会社ではないけど、これくらいのことを考えています。これを踏まえた上で、今後のポエトリースラムジャパンをどうしていきたいか、という話になるわけです。

このあと、皆さんにはワークショップをしていただきます。「私がポエトリースラムをやるならこんなのがいい」というのを考えていただくんですが…。

生駒:今日のイベントは皆さんドリンク代を取られながら、イベントのアイデアまで搾り取られるんですね!?(笑)

村田:なんてことを言うんだ!(笑)

生駒:いやいや、みんなで考えていきましょう(笑)。

村田:生駒くんはなにかありますか?

生駒:僕としては…もちろん、観客を増やしたいというのはありますよね。うーん、ざっくりとした希望でいうと、福岡とか福島とか札幌あたりで開催できたらいいな、という気持ちはあります。

(客席から「札幌いいねえ」「カニ!カニ!」という声)

生駒:打ち上げが楽しい‼︎(笑)。最高。福島も詩がなじむ気がするし、福岡にはすでに詩の書き手の集まりがあって、土壌ができていると思うし。

村田:生駒くんも「胎動」のイベントで各地を飛び回って交流を深めているから、僕よりはるかに人脈が広いよね。

生駒:普段はハードコアのバンドとかをやっているのに、各地に行くと詩人の方に「会ってください」って言われるんですよ(笑)。で、会って話すと「私の土地でもPSJやりたいんです」とか「こっちでもポエトリーのイベントあるといいですね」とか…。

村田:本当に!?

生駒:だからいろんな地域の人たちに需要はあるし、もっと燃えるんじゃないかなというイメージがあります。

(「UMBみたいにすればいいんじゃない?」という声)

生駒:そう。UMBという、全都道府県を回るMCバトルのイベントがあるんです。あんな風に47都道府県でできればいいけど…。でもまず詩のシーンが47都道府県にあるのかどうか…。
(やれるよー!という声)

村田:課題は「地域で開催してお客さんをどれだけ集められる」だよね。

生駒:PSJはお客さんの中から審査員を5人選ぶという方法ですからね。しかも審査員は1回戦、準決勝、決勝と代わるから、客席にそこそこ人数がいないと成り立たない。

村田:あくまで私個人の意見ですが、お客さんを集めるためには、今のポエトリースラムジャパンのイベント時間は、長すぎると思ってるんです。

生駒:たしかに…。

村田:なんとか短くできないか。そのためにはエントリー枠を減らしてもいいのでは、とか。あるいは審査方法自体も考え直した方がいいのでは、とか。

生駒:「客席から審査員を5人選ぶ」という方法は、海外のポエトリースラムやパリW杯のやり方に倣ってるだけで、ほかにもいろんな方法があるんですよね。

村田:そうそう。たとえば、アメリカのポエトリースラム国内大会では固定の審査員がジャッジする場合もありますし、それ以外のジャッジ方法もあります。全員投票でもいいんです。

生駒:これまでの方法とかルールを変えてもいいんじゃないか、ということですよね。

村田:はい。そう考えています。

「最後の年」2019年大会に向けて

村田:ここから、爆弾発言的なことを言うんですが(笑)。ポエトリースラムジャパン の2019年大会について、いま考えていることが3つありまして。ひとつは、ポエトリースラムジャパンを次の大会で終了にしたい、ということですね。私がやるポエトリースラムとしてはひと区切りつけようと。

実は大会をスタートさせる時から考えていたことで、スタッフには話をしたこともあるんですが。2015年からひとまず5年やって、終わりにしようと。2019年の大会が5年目になるので、ここが一区切りということなんです。

(「おつかれー」の声)
まだ終わってないですが(笑)。もちろん、せっかく世界につながる大会なので、2020年以降もこういう大会をやりたいという人がいたら、ぜひやってもらえればと思っています。ポエトリースラムジャパンじゃなく新しい名前の、新しい考えの新しい大会を作ってもらえれば。必要なら私の経験やノウハウもお伝えするので、参考にしてもらえたらと思います。…どうです?(笑)

生駒:大変だろうなー、といろんなことが頭をよぎりましたが(笑)

村田:大変ですよね(笑)。なのでふたつ目として、今までPSJがやってきたことをなるべくシェアしたいと考えています。具体的には2019年の大会を、できるべくオープンなかたちで実施したい。ポエトリースラムジャパンはこんなやり方でやっていますよという、手の内をできるだけ見せるようにしたいと考えています。今日のこのイベントも、その第一歩なんです。

生駒:巻き込みますね〜(笑)

村田:巻き込みますよ(笑)。ポエトリースラムジャパンの後に大会をやる人がその通りにやってもいいし、やらなくてもいい。「このやり方は違うな」と思う人もいるかもしれないけど、それはそれでいいんです。とにかく2019年大会は、PSJの方法論をシェアする大会にしたいと考えています。

そして、3つ目は地区大会について。これまでの話とも関係しますが、地区大会はできるだけその地元の人たちによる大会にしたい。その地域の人たちが考えるスタイルでやってもらえれば。

生駒:もっと自由に、独自に。

村田:そうそう。いろんな意見あるでしょうけどね。エントリー人数を何人にするか、試合時間はどれくらいか、判定方法をどうするかというのも、そのエリアの人たちが納得するのであれば、地区大会ごとのローカルルールでいいと思うんです。

生駒:それぞれのやり方で、ファイナリストを選ぶわけですね。

村田:地元の人たちが作るというのが大事だと思うんです。まず地元のイベントとして地区大会があって、さらに全国の交流ができる場所として全国大会があるというイメージですね。

今年の地区大会はこれからなんですが…どんなエリアでも、もし「主催したい」という人がいたら、ぜひ私に相談してください! みんなでその大会をバックアップしていきたいと思います。

生駒くんとしては、こんなことやりたいというアイデアはありますか?

生駒:えーと、ざっくばらんにいうと「明日休みだし、PSJの地区大会あるし、自分は出場しないけど行こうかな」と思える大会ってどんな大会なのか、みんなに聞いてみたいんですよね。

個人の感想としては、そう考えると一瞬「うっ」て躊躇する感覚があるんです。なぜかというと、PSJっていうのはステージ上で居合抜きするみたいな、出場者の皆さんの真剣な空気があって、しかも時間が長いんですよね。だから「今日はちょっと疲れてるし、ちょっと辞めとくか」っていう気持ちも芽生えるんです(笑)。自分は主催する立場なんですけど(笑)。

そのあたりをみんなに聞いてみたいんですよね。もっと時間を短くした方がいいかも、とは思います。

村田:ああ、わかります(笑)。できるだけ気軽に観に来てもらえる大会にしたい。そこで受け取るものはずっしりしているかもしれないけど。

生駒:観にくる人たちはもう少し軽い気持ちでもいいですよね。

村田:それは大事なことですね。ありがとうございます。

ではこのあと休憩をはさんで、第3部はワークショップです。みなさんの考える「ポエトリースラム」を出してもらえればと思います。どうぞよろしくお願いいたします!



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