高瀬文人

フリーランスジャーナリスト・編集者。雑誌『東京人』などへの執筆と雑誌『外交』や書籍編集…

高瀬文人

フリーランスジャーナリスト・編集者。雑誌『東京人』などへの執筆と雑誌『外交』や書籍編集。著書『鉄道技術者 白井昭』(平凡社)、『ひと目でわかる六法入門 第2版』(三省堂)など。法政大学大学院非常勤講師。

最近の記事

歴史が変わる? 深川の子どもが焼跡で遊んだスケートボード/2020東京オリンピック閉会式に寄せて

「江東区出身の選手がスケートボードで優勝したでしょ。私、嬉しくて」 そう電話口で声を弾ませたのは、『東京人』9月号廃線特集「お茶の水橋で出土した『都電の記憶』」にご登場いただき、昭和20年代の末、都電28系統で通学した記憶を語ってくださった前川峯子さんです。一家5人で江東区白河の同潤会アパートに暮らしておられました。 ——男子ストリート部門優勝の堀米雄斗選手ですね。私も江東区民なので、インタビューで「江東区で育って」とアピールしてくれたのはとても嬉しかったですね。  わたくし

    • (6/2現在)【図書館はほとんどオープンに 全調査・東京の全公共図書館 緊急事態宣言対応】

       緊急事態宣言は6月20日〔日〕まで延長されました。5月28日発表の「新型コロナウイルス感染拡大防止のための東京都における緊急事態措置について」では、図書館(特措法施行令第11号該当施設第10号「博物館等」)は「入場整理の実施の協力を依頼」と変化はないのですが、感染のファクタなどを見て措置を緩和し、開館に踏み切る自治体が増えています。東京の全ての区市町村の図書館の状況をまとめました。国会図書館・大宅文庫の情報も加えてあります。 ■国立国会図書館〔変更あり〕 抽選予約制による

      • 【5/6情報更新】全調査・東京の全公共図書館 緊急事態宣言対応

         東京62市区町村の図書館の対応について、ホームページとツイッターアカウントから調べた情報をお伝えします。自治体によって対応にかなり違いがありますので、ご利用の図書館の情報をお調べになることをお薦めします。 〔対応の根拠となる「東京都緊急事態措置」PDF〕 https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/04/23/documents/41_00.pdf ■国立国会図書館 2020年6月から抽選予約制によ

        • 【東京の全公共図書館・緊急事態宣言対応は】

          (雑誌『東京人』FBページに掲載したもの)  きょう25日(日)から5月11日(火)までの予定で、東京・大阪・京都・兵庫の4府県に緊急事態宣言が適用されました。東京都の公立図書館については、「東京都緊急事態措置」の中に盛り込まれている「入場整理の実施」に従って(図書館は名指しされていないのですが)自治体ごとに判断することになり、休館や最小限のサービスに絞って行うなど対応が分かれています。 〔東京都緊急事態措置・PDFファイル〕 https://www.metro.tokyo

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        • 【東京の全公共図書館・緊急事態宣言対応は】

          法政大学田中優子総長とわたし

          法政大学社会学部藤代ゼミからは3人が卒業しました。卒業おめでとうございます。ゼミの先輩として後輩の3年生、2年生を導き、そして代講の私を助けてくれたことに深く感謝します。 たいへん薄いつながりではありますが、今年度総長を退任される田中優子先生は、私の「恩師」のひとりです。実は私は、35年前に法政大学法学部に入学した年、田中助教授の「文学」を受講していました。その頃の田中先生は細身のジーンズをはきこなし、カッコよく小さな教室に現れました。先生は最初の本『江戸の想像力』の執筆の

          法政大学田中優子総長とわたし

          杉田水脈議員の「生産性」という言葉は「労働力」という意味である。

          杉田議員の「生産性」という言葉は、LGBTへの侮蔑なのか? これは一議員の「失言」にすぎないのだろうか? 私は、いずれもそうではないと考えている。 法学部に入りたての頃、私は「水子供養の研究」をしていた。もともと中学生の頃から石仏研究家であった私は、大学に入って鎌倉の長谷寺で見た、30センチほどの石の粉を最中みたいな型で固めた小さな地蔵が林立する水子寺に違和感を覚え、調査を開始したのである。 口べらしで堕胎した子の魂を慰める水子供養は江戸時代から広く行われていたが、そこで立て

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          いまはなくなったらしい、「青春基地」の女子高生記者さんへの手紙。

           きょう、なにを勘違いしたのか、サラリーマン人生から落伍した私にビジネスマナーを教えよという話(笑)がありすったもんだしていたのだが、ふと思いついて「ビジネスマナーの真髄って、やっぱ謝罪ですかね〜」と口にしたら、それをやれということになってしまった。  そこで、急に態度をえらそうにして、この件について語る。 女子高生記者さんへ  このたびはお気の毒でした。しかし、最後に運営がいやいや公開したと思われる、あなたの謝罪文は素晴らしかったと思います。あなたが、最後まで自分で状況

          いまはなくなったらしい、「青春基地」の女子高生記者さんへの手紙。

          「人を踊らせる」編集者の心構えについて

           先の記事をfacebookに掲載したところ、 「小保方さん、以前の研究発表にしても今回の出版にしても、周りから躍らされてる感じがしてなりません。」  というコメントをいただいた。  私は、かつて、専門出版に近い出版社の雑誌・書籍編集者として、誰でも知っている事件の当事者が語る、スクープ記事・書籍を何回か作ってきた。だから、私自身も、人を「踊らせてきた」わけだ。専門性の高い分野にいるというスキャンダリズムからやや引いた立ち位置を逆に利用し、社会に波紋を起こした事件にかかわ

          「人を踊らせる」編集者の心構えについて

          構造書評・小保方晴子『あの日』(講談社、2016)

           『あの日』(小保方晴子著)を読んだ。以下、事件が誰の責任なのかとか、そのよしあしといった価値判断は抜きに、編集と執筆に携わっている出版業界人としての感想を書く。つまり、「告白本」「暴露本」と言われる本の作り方のみを書評し、内容については評価しない。 ・本人の元原稿または語りは間違いなくあり、それをもとに編集者を含む複数のスタッフにより仕上げられたと思われる。私の分類では、これは「ゴースト本」とは言わない。 ・たいへん良質な本作り。たとえばSTAP細胞発見(?)に至る経緯と

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          毛利甚八さんのこと

          「俺は(『家栽の人』を)400万部売ったんだ。お前はどうだ?」 これが、初対面の挨拶である。いくらなんでも傲岸不遜ではないか。 難しいものを難しく伝えるのは簡単だ。毛利甚八さんは、まったく違う世界からやってきて、裁判や司法の世界の本質を掴みだして見せた。文字に起こせば因縁に近いけれど、毛利さんがしてきたような努力を怠り、タコツボの中にいるくせにネームバリューに寄りかかろうと原稿を頼んでくるわれわれ不勉強な編集者に対する苛立ちだと感じた。ゲラに一字一句でも編集者が手を入れてい

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          「就活後ろ倒し」に大学淘汰の意図なんかないだろ

           就活評論家の常見陽平センセイが、日経ビジネスオンラインで「就活後ろ倒しの真の意図、それは大学の淘汰だ——元リクルートの常見陽平氏に聞いた、最新の採用事情」というインタビュー記事を掲載した。  私が、出入りしていた大学研究室の学生から頼まれたことがきっかけで、学生への就活のアドバイスをするようになってから6年以上の歳月が流れている。昨日も、本業であるインタビュー仕事の合間に、就活生をひとり仕上げた。(学生からは経費含め、金は一切取っていない。これは私の趣味兼マーケティング兼

          「就活後ろ倒し」に大学淘汰の意図なんかないだろ

          2015.3.5ロー未来の会セミナー「“弁護士就職難”の謎を解く」書き起こし

          〈10/27「司法試験3000人合格を実現する国民大集会」書き起こし〉でレポートした、司法改革を当初の予定通り貫くべきだという主張の弁護士を中心とする会「ロー未来の会」が2回目の会を開きました。 前回は弁護士会館のクレオという大ホールを使ってのイベントでしたが、今回は同会館の中規模会議室で40名ほどの参加者で行われました。講師の伊藤歩氏は経済ジャーナリストとして高名で、2000年代初頭の不動産証券化など資産流動化や仕組み金融などに鋭い考察を加えた記事をたくさん書かれている方

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          "あえて震災を語らない震災ドラマ・映画"『神戸在住』の強烈なメッセージ

          神戸の独立局サンテレビが、震災20年記念番組として17日20:00からドラマ『神戸在住』を放送する。東京MX2(18日19:00~)など京都、和歌山、岐阜や関東の独立局でも放映され、さらにミヤギテレビでは22日、岩手朝日テレビでは2月7日に放映予定など、東日本大震災の被災地でもネットされる。 同時に「完全版」的な性格を持つ劇場版が、テアトル梅田、シネ・リーブル神戸、ヒューマントラストシネマ渋谷、立誠シネマ(京都)などで公開される。白羽弥仁監督、原作は同名のマンガ(本村紺)で

          "あえて震災を語らない震災ドラマ・映画"『神戸在住』の強烈なメッセージ

          小説で歴史を修正できるか——百田尚樹『永遠の0』もうひとつの狙い

          百田尚樹の小説『永遠の0』が「パクリ疑惑」としてネット上で指弾されている。 私は調査報道に関わり、ノンフィクションも手がける、事実に立脚したものを書く人間である。そんな立場からは、「まあこういうものだろう」という、作者に対するやや同情的な思いと、「一線を踏み越えた作品だ」と危惧する思いとが相半ばする。本作は非常に巧妙な「小説」であり、だからこそ、大きな「危うさ」をはらんでいる。それが問題の本質だと私は考える。 まず、ネットで指摘されている「パクリ疑惑」について検討しよう。

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          10/27「司法試験3000人合格を実現する国民大集会」書き起こし

          1999年から進められた司法改革の過程で、司法試験の合格者は2010年を目処に年3000人と内閣で閣議決定され、2200人まで増えました。しかし、裁判などの事件が増えないのに弁護士が急増して過当競争になっているとの声が高まり、今年の合格者数は1800人に押さえられています。弁護士の自治団体であり、弁護士法で加入が義務づけられている日弁連は、当初は3000人を支持していましたが、現在では合格者を1500人に減らすことを要求しています。また、自民党などの政党も、1500人への減員

          10/27「司法試験3000人合格を実現する国民大集会」書き起こし

          地方の若者は教養を学ぶよりも、重機を動かし、都会人に観光案内する技術を学べ、と冨山和彦氏は言う。

           文科省の「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」。冨山和彦委員の「共通認識を持つための資料」の中の、特に「ローカル型大学で教えるべきこと」の例示が物議をかもしている。  私は、蒸気機関車の動態保存を行っている大井川鐵道の線路が延びる大井川流域を上流から下流まで訪ね歩いて、林業、茶業を中心とした農業に携わる人たちや地元の音楽指導者、自治会長、自治体職員、産業遺産への興味からイギリスの産業遺産保存・活用学専攻の大学院に留学した若者まで、地域の良さ

          地方の若者は教養を学ぶよりも、重機を動かし、都会人に観光案内する技術を学べ、と冨山和彦氏は言う。