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来賓席に座りてえ

今や50mを13秒台で駆け抜ける俺だが、幼き頃は運動好きだった。

保育園では昼休みになるや我先にと靴を履き、すべり台だの三輪車だので遊んでいた。

園の運動会でと競争があった時など、一位を取るほど運動神経はよくなかったが、それでもクソ暑い中全力で走って少しでもいい順位を取ろうと頑張った。


さて。
大ベストセラー『遺書』、その続編『松本』にて松本人志氏はこう語っている。

オレは人に指図されるのが、大嫌いな男である。……(中略)……野球も人の決めたルールに従うのがたまらなくイヤなのだ。どこの馬の骨ともわからんヤツが、三回空振りしたらアウトと決めたところで、オレには関係ブーである(オレは必ず四回目でホームランを打つヤツかもしれないのだ)。(p132)



流石天才らしい慧眼です👏

我々は明文か暗黙かを問わず、あらゆるルールに盲目的に従っています。それらに疑問符をつけ、常識をかく乱する。
そうして生まれた、コント、漫才、フリートーク。
抱腹絶倒。
彼の芸に我々は数えきれないほど笑わされてきました。


ですが笑いに変えられない俺たちがこの事実を見てしまうのはマイナスでしかない。

せっかく一番目指して頑張っていたというのに。3アウトにならぬよう必死にバットを振ったというのに。

それらは別に絶対不変の法則でも何でもなく。

そもそもその枠組み自体がおっさんがチンポ握った手で書いた適当な条文だというのですから。

幼き頃の俺があれほど頑張って走ったトラックは、小さい小さい保育園の庭におばはんが何となくで引いた溝でしかなかったのです。


しかし、絶望してもしょうがありません。


我々はこのチンポ条文を甘んじて受け入れるしかないのです。

どうしてかって。

そりゃ俺たちが持たざる側の人間だからですよ。

吉田茂の孫でも、プリウスに乗ってフレンチに行く分けでも、人のデザインパクってロゴとして発表できるわけでも、芸人に豚の格好させて開会式でパフォーマンスさせられるわけでも、淡路島に非正規を集めて中抜きできるわけでもない。

俺たちに出来るのは、顔も知らないやつらに用意されたコースの上で、突然隣に並んだ知らないやつと競争して、一生懸命勝とうと努力していくらかの報酬をめぐんでもらうだけ。

なぜ3回投げたら勝ちなのか、ストライクゾーンの根拠は何か、この仕事が何の役に立つんですか、なんてことは考えてはいけない。

重要なのは誰が建てたかもわからない球場の知らぬ間に決められた範囲にボールを飛ばすだけ。


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就活のエピソードも持ってきて、「いったい誰が設計したんだこのクソゲー」って展開させようかとも思ったけど。









こんなことばっか考えてたらしまいに、「ワクチンを接種したら頭5Gになって政府に思考を盗聴されるぞ!!!」って駅前で叫びかねない。

市民社会に参加したことがあるなら、この世にラスボスなんかいないことくらい百も承知のはずだ。

悪意持って世界を悪くしようとしている人間なんて実はいなくて、どいつもこいつもそろいもそろってバカだから世界はこの程度なだけ、それだけ。

誰が決めたルールなのかはわからないが、かなり精巧に出来ているのは事実。

それに人が一生懸命何かに打ち込んでいるのは素晴らしい。

よーし久しぶりに、この100メートルを全力疾走で……。


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遠いねえ……ゴール。

いやー、よく考えたら大学以降走ることなんてなかった。2階に行くのさえエレベーターを使う俺だ……。

えー……走んなきゃダメかぁ~……?


そもそも俺が走って喜んでたのって。

親。クラスのやつら。先生。校長……来賓の皆様。

……。

校長のクソ長い挨拶の中で、肩書の長いやつらを紹介する時間があった。

曰く、ナントカ委員会理事、ナントカ会会長。

そいつらは来賓の皆様とか言うカテゴリーで、校庭で唯一テントの下で過ごすことを許されたやつらだ。

生徒やその家族が地べた這いずり回ってウィンナーとおにぎり食っている中、あいつらは学校が用意された弁当。

あまつさえ送風機まで用意されている。

残暑厳しい9月の校庭にいるとは思えない涼しい顔で、人様の子どもが競争する様を見ている。


この世にラスボスはいないが、ダンジョンボスはいる。

それが来賓席のやつら。


来賓席に座りたい。

もしくは、オリンピックの女子シンクロで点数決める得体の知れないやつら。

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