しんさくンネ🐹

アニメをみます

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最近の記事

古い紙切れ

 特に万人受けするような話ではないし、ひっそりとあの部屋の隅っこにあるちいさなテーブルで、古い紙切れに書きつけて、その小さなテーブルの簡素な引き出しの一番奥のほうにしまっておくつもりでこれを書いておくよ。  これは要するに、僕と、フィクションと、その両者のあいだにあるものについてのおはなしなんだ。本当は誰のそばにでもあるおはなしで、それに気付いたり、気づかなかったり、見え方が違ったりするだけのおはなしなんだ。僕は長い間ずっとこのことについて考えてきたし、かといって大した答え

    • 客体化される日本サブカルチャー──『ブルーアーカイブ -Blue Archive-』からみる文化の交換可能性について

      Ⅰ はじめに 本稿は2021年にサービス開始された、スマートフォン向けゲームアプリ『ブルーアーカイブ -Blue Archive-」』(NEXON Games開発・Yostar運営)を足掛かりに、近年存在感を増すスマホゲーム市場に見られる興隆を国内の文化的な流れの中に位置付け、さらにその現状と本作の将来的可能性を検討するものである。  『ブルーアーカイブ -Blue Archive-』(以下、「ブルアカ」)は、「学園都市キヴォトス」に赴任した先生(=プレイヤー)が、そこで発生

      • 私の幽霊

         ある晴れた春の日の午後。青々とした銀杏の木を見上げながら、私は小さな公園のベンチにぼんやりと腰掛けていた。あたたかな陽気は魂を緩ませ、爽やかな草木の香りは風となって、それを遠い土地へと綿毛のように吹かせてしまった。飛び去った魂はどこか遠い土地から我儘な引力を発し、私の身体はここにありながらも、どうしようもなく旅を欲していた。  人が旅を求める。それは、退屈な日常から脱するためであり、息苦しい人間関係から解放されるためであり、新天地を目指す本能的好奇心に逆らえないためでもあ

        • 長野温泉紀行

           浅い眠りで軋む身体を引き摺りながら、ぼんやりと照らされたステップを降りていく。触れた外気はピンと張り詰め、部活動の遠征だろうか。揃いのユニフォームを着た高校生らの昂りが空気を這って肌を擦った。  私は、今年二度目の長野旅行に来ていた。  行程は前回とさして変わらず、湯に浸かり、宿に泊まるということだけを目的とした時間に追われぬ旅である。変化といえば、着込む上着の枚数が少し嵩んだことくらいであった。時計は午前六時をまわらない頃、吐く息はそのコントラストを見る間も無く、深い空へ

          自省の時代に考える物語との向き合い方──京都アニメーション作品「小林さんちのメイドラゴンS」を起点に

          はじめに 2021年7月7日、京都アニメーションTVアニメ復帰作となる「小林さんちのメイドラゴンS」の放送が開始された。本作はクール教信者による連載漫画「小林さんちのメイドラゴン」(双葉社)を原作とし、2017年に放送されたTVアニメ「小林さんちのメイドラゴン」の第2期にあたる。  主人公、小林さん(以下、小林)はシステムエンジニアとして働く26歳の独身女性。ある日、酔った勢いから異世界のドラゴンであるトールを助けてしまう。トールは小林に助けられた恩義と共に彼女に好意を抱き

          自省の時代に考える物語との向き合い方──京都アニメーション作品「小林さんちのメイドラゴンS」を起点に

          シンエヴァひとこと

          正直、今日の朝までは見たら何かしら厳しい文章を書いてやろうと思ってました。それが作品に対する誠意であり、僕のためにも重要なことだったから。 しかし、その必要は無くなりました。庵野監督は現実も虚構も軽やかに受け入れ飛び越え、丁寧に人の温もりを描き切りました。旧劇で描かれた悲しみから捉えられた人も真実です。ただし、僕らが生きるのに必要な真実はもう一つ。喜びから捉えられる人です。 人は、リアルとイマジン、喜びと悲しみ、成功と失敗、出会いと別れ、様々な、そして巨大な相補性の中に生

          シンエヴァひとこと

          「がっこうぐらし!」と生きること──現実と虚構の狭間

           本稿は、芳文社『まんがタイムきららフォワード』にて2012年7月号から2020年1月号にかけて掲載された「がっこうぐらし!」(完結済み、原作コミックス全12巻)に関する論考です。 ※全12巻のネタバレを含む。(おたより編は除く) はじめに 2020年1月、7年半の連載に幕を下ろした「がっこうぐらし!」。2015年にはアニメ化され、そのインパクトと共に記憶している人も多いのではないだろうか。  本作の特徴は言うまでもなく、日常の代名詞である「まんがタイムきらら」で「ゾン

          「がっこうぐらし!」と生きること──現実と虚構の狭間

          「ご注文はうさぎですか?」の魅力について──名もなき花の持つ世界

          はじめに今月十日、TVアニメ「ご注文はうさぎですか?BLOOM」の放送が始まりました。二期放送から五年、一時期は種田さんの活動休止により続編も危ぶまれましたが、今回無事に待望の三期が放送されることとなりました。いちファンとして本当に嬉しい限りです。 本作は芳文社の四コマ雑誌「まんがタイムきららMAX」に原作を持つ所謂「日常系」の作品です。本稿ではそんな日常系の在り方にも触れながら、改めて「ごちうさ」の魅力について考えます。 面白さはどこからやってくるのか「ご注文はうさぎで

          「ご注文はうさぎですか?」の魅力について──名もなき花の持つ世界

          劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅲ.spring song 感想 間桐桜という女

          第三章を見てきたので感想を いうまでもないですけど、黒セイバーvsライダー戦、凛vs桜戦。期待はしていたけれど、その期待を軽々と超えてくる圧巻の作画でした。言峰がイリヤを抱えて走るシーンはfateシリーズを通しても指折りのお気に入りだったので映像化が叶って感涙です。 と、前置きをして始めます。今回の劇場版三部作には大いに満足しているし、HFは自分も一番好きなルートです。その上でラストについて、間桐桜についての思いをここに述べておきます。 まず、「Heaven’s Fee

          劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅲ.spring song 感想 間桐桜という女

          『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』完 アニメーションの意義

          現在第3期放送中のTVアニメ『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』に関して。 本作は原作がライトノベルであるということもあり、言葉遊びが非常に特徴的な作品である。第3期10話では陽乃が『形だけ、言葉だけこねくり回して、目をそらして、……上手く言い訳して、理屈つけて、そうやって誤魔化して、騙してみたんだよね。』と多少意地悪く表現している。 こうした所謂屁理屈によって、主人公、比企谷八幡がのらりくらりと問題を解決していくのがシリーズを通しての魅力であり特徴であった。

          『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』完 アニメーションの意義

          姫石らきは終わらない夢を見る

          チャオ!しんさくンネ🐹です。 アイカツオンパレード、終わっちゃいましたね…寂しさもあるけど、新シリーズのノエル編が嬉しすぎて相変わらずニコニコしてます。 今回は改めてこの「アイカツオンパレード!」という作品の構造を、姫石らきを中心に考察していきます。 アイカツシステムと世界線 アイカツシステムとは、アイカツシリーズ内でアイドルがドレス姿に変身するために用いられるシステム。スターズではシステム自身がアイドルを選別しドレスまで作ってしまうというシリーズ上でも謎多き「箱」で

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          まんがタイムきらら作品における男性キャラの立ち位置と『まちカドまぞく』について

          まんがタイムきらら… それはゆるくてふわふわ、かわいい女の子たちの日常をスローペースで描くいわゆる日常系の作品です。 『まんがタイムきらら』は、芳文社発行のB5判、平綴じの4コマ誌(4コマ漫画専門雑誌)。原則として毎月9日に発売されている。キャッチコピーは「ドキドキ☆ビジュアル4コマ誌」で「D☆V」と略記される。「萌え4コマ」を初めて専門的に取り扱う雑誌として、2002年5月に創刊。ウィキペディア(Wikipedia)より ↑なんなんだよ ことの発端(?)はこちら

          まんがタイムきらら作品における男性キャラの立ち位置と『まちカドまぞく』について