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働き方改革より、加計呂麻島へ行こう!〜寅さん最後の楽園で味わう「何もしない贅沢」〜

そっとしておきたい。誰にも教えたくない。

でも、素晴らしすぎて、語らずにはいられない。

あんなにも美しい楽園が、日本にもまだあるのだから。


あの島へ自分探しの旅に出たのは、ちょうど2年前の春だった。

映画「男はつらいよ」シリーズで有名な、寅さんこと故・渥美清さんの遺作となった第48作「男はつらいよ 寅次郎紅の花」のロケ地だったあの島だ。

「忙しいって、心を亡くすことなんだね」と、昔、先輩が言っていた。

働き方改革といえば最初にあがる残業削減。あの頃、残業をしないように言われていたが、反比例して波のように押し寄せる仕事をこなしていた。その矛盾に苦しんだ。私何のために働いているんだっけ?と、疑問を持ちながらも、振り返る心の余裕もなく、無機質な毎日だった。

「いや頭の方じゃわかっているけどね。気持ちの方がそうついてきちゃくれないんだよ、ねぇ?」(第6作 「男はつらいよ 純情編」より)

そんな気持ちを代弁してくれている寅さん。とにかく、疲れていた。

誰にも邪魔されない場所で、海でも見ながら、ただ、ぼーっとしたい。

そんな時、ゆっくりとした時間を過ごせる、とっておきの場所がある。

「そうだ、加計呂麻島へ行こう!」

思い立ったが、吉日。

情報検索しているうちに見つけた、ありえないくらいきれいな海の写真。ここだ!と思った。

繁忙期を外せば、バニラエアで、成田空港から片道7,000円弱だった。奄美空港まで約2時間である。東京から実家の宮城に新幹線で帰るよりも安く、同じくらいの時間で行けるのには、さすがに驚いた。

加計呂麻(かけろま)島は、鹿児島と沖縄の間にある奄美大島の最南端の古仁屋港から、フェリーで20分ほど。沖縄本島や石垣島ほどまだ観光地化は進んでいないため、ぶっちゃけ不便だ。

でも、それにもまさる、ありのままの自然と、ゆったりした時間が最大の魅力だ。

とにかく、加計呂麻島の海の美しさは、どこに行っても極上なのだ。

一番感動したのは、北部にある実久のビーチ。

紺碧、青、アオ、あお。エメラルドグリーン、水色、村上龍の小説風に言えば、「透明に限りなく近いブルー」まで。

天然の青の色見本がたくさんできてしまうくらい、自然が織りなす美しい青のグラデーションだった。

とても言葉では、言い尽くせない。あの感動は、現地に行った人の特権だ。

もう1つ、人生に一度は行った方がいい理由は、タイミングが合えば、プライベートビーチ並みに、きれいな青い海を独り占めできることだ。

実久で一番最初に出会ったのは、猫だった。すれ違った観光客も2、3組。さんごの石垣が並ぶ集落も、あまり人が歩いていなかった。


砂浜で日向ぼっこは最高の癒しだ。

ただ純粋に、五感でこの美しい自然を感じる。

呼吸をし、海を眺め、頬にあたる風を感じて、太陽の光を浴びる。

鳥の声と、波の音しか聞こえない、誰にも邪魔されない楽園。

何もしない贅沢だ。


「生きてる?そら結構だ」(第48作 「男はつらいよ 寅次郎紅の花」より)

本当にそう思える時間だった。海がきれいなだけで幸せだった。自動販売機で買ったC.Cレモンさえも、最高においしく感じた。


時間感覚もなくなり、ただ自然と一体になるような不思議な感覚。

私が海?海が私?

まるで、海に抱かれているような……

寅さんの言う通り、ただ、今ここに、生きているだけで、「結構なこと」なのだ。

東京にいると、息つく間もなく忙しい日々の中で、たくさんのことを同時にこなしながら、自分の気持ちが後回しになっていた。足りない、ないことにフォーカスしてしまい、もっと頑張らなきゃと、すり減ってしまっていた。

ただ、今はこの時間を楽しむ。失敗したらまた、やり直せばいい。疲れたら、休めばいいのだ。ぼんやりしながら、そう素直に思えた。

2泊した内の最後の夜は、島中部の嘉入にあるゲストハウスKAMUDYに宿泊した。旅人には良心的な、素泊まり2, 500円。旅人同士の交流も魅力の1つ。

その日は、タイミングよくそばで開催されていたカツオ祭りのお土産の刺身がふるまわれ、新鮮な海の恵みも味わった。ミネラル豊富な天然塩で食べる刺身、塩を肴に飲む黒糖焼酎は、現地ならではの楽しみ方だ。

夜、真っ暗な砂浜に寝転ぶと、無数の星が空に広がっていた。

水面には、月の影がまっすぐにのびたムーンロード。

「なんというかなぁ、生まれてきてよかったなって思うことがなんべんかあるんじゃない。そのために生きてんじゃねぇか」(第39作 「男はつらいよ 寅次郎物語」より)

まさに、その1日がそうだった。自然の美しさ、海や大地の恵みにただ感動していた。ゲストハウスで出会った人たちも色々な生き方をしていて刺激を受けたし、改めて、自分は自分で、ああ、よかったんだなとおもった。この瞬間の幸せのために、がんばってきたんだなぁ、私。この島でエネルギーチャージして、帰ったら、また、自分らしく頑張っていこうと前向きに思えた。

次の朝は、快晴だった。

他にも、徳浜の工房で買えるさんご塩、花富の風鈴の木や絶景ブランコ、武名の大きなガジュマルの木など、魅力的な場所はたくさんある。人によって、それぞれ響くものは違うと思うので、ぜひ現地に行って、自分にしっくりくるピタッとスポットを探して欲しい。

最後に訪れたのは、映画で寅さんが、永遠のマドンナ、リリィーと一緒に過ごした家がある諸鈍デイゴ並木だった。

少しだけ赤い花がさきはじめていた。

久しぶりにこんなにゆっくり歩いた。視界がいつもと違って見えた。


本当の私はスピード重視よりも、もっとゆっくり歩きたかったのかもしれない。


そんなことを思いながら、フェリーで加計呂麻島をあとにした。

澄んだ海と美しい自然が成せる、カケロマ・マジックなのだろうか。

何も「ない」場所だったのに、自分の中に答えが既に「ある」ことに気がつくような時間だった。「足るを知る」という言葉のように、本当は、すでに十分に満ち足りているということを思い出した旅だった。

そして、加計呂麻島で、誰にも邪魔されず、自然に心のおもむくままに時間を過ごしたことで、自分らしさみたいなものを取り戻した気がする。自分はどう生きて、どう働いていきたいのかが明確になってきた。それが分からないままだと、残業が減っても幸せにはならない。

残業削減は何のためなのか、自分はどうしたいのか、それがないままの働き方改革は逆効果になるのかもしれない。片道7000円弱の投資でそれに気がつけるなら、結果的に人生におけるコストパフォーマンスはだいぶよくて、効率的で、生産性も上がる気がした。

「今、幸せかい?」(第13作 「男はつらいよ 寅次郎恋やつれ」より)

答えがNoなら、ぜひ加計呂麻島に行ってみて欲しい。

何もしない贅沢を味わうために。

青い海に抱かれて、自分と向き合う時間を過ごせば、自分にとっての本当の幸せが何か、自然と答えが出てくるはずだから。

※今回ライティングゼミの課題で書きました。書いてたら、色々思い出してきたし、文字数の制限もあり、伝えきなれない魅力がたくさん。これから加計呂麻島へ行く人の参考もう少し加計呂麻の旅日記も書いていきたいと思います!

しばらく書く気力がなかったのですが、また書きたい気持ちが戻ってきた。

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