2014 聖路加国際大学 小論文 模範解答

 オープンチャット「大学入試 小論文 対策相談室」

 課題文において言われるように、医療者と患者との差異はたしかにある。したがって、医療者が医療者として患者と向き合うときに、立場の違いを乗り越えるは難しいと指摘するのは妥当だと考える。しかし、医療者が一人の人間として患者に向き合うのならばどうだろうか。すると医療者にとっても、出会う患者は異質でありかつ未知の人間ということになる。目の前に、病に苦しむ患者がいる。この場面では常に、医療者は未知でありかつ異質な他者としての患者への向き合い方が問われる。それでは、患者と医療者のコミュニケーションはどうあるべきだろうか。
  たとえどれほど立場が異なり、差異が明確であっても相手の存在を受け入れ、私が相手とともにいて、相手に応答できるという応答可能性は否定できない。たとえば、言葉が通じず相手のあり方や考え方を理解せずとも、私たちは未知の外国人に対して笑いかけたり、あるいは敵意がないことなどを意志表示したりできる、すなわち応答をすることができる。したがって、この応答可能性に他者を迎え入れる医療者と患者とのコミュニケーションの根幹があると考える。
 以上より、医療者と患者とのコミュニケーションにおいて重要なことは、医療者は患者に対して応答できる存在であることを示すことだと考える。なぜなら応答可能性を示すことによって、未知でありかつ異質な他者としての患者を迎え入れることができるからだ。それゆえ、まず医療者と患者とのコミュニケーションにおいては、医療者は患者のあり方、言葉や振る舞いなどをすべて受け入れることが重要だと考える。立場の違いや差異を受け止めることそのこと自体が患者への応答として示されるからだ。このように患者を受け入れ、迎え入れることができたときに、患者も医療者を信頼することができるようになる。そこから医療者も人として患者とよりよいコミュニケーションが図れると考える。

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