2015 聖路加国際大学 小論文 模範解答

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「自分のことは自分が一番よく知っている」と言える事柄がある。それは自分がほかの誰かではなく自分であるということだ。あるいは、自分の性格や好み、趣味なども自分がよく知る事柄であると言えるだろう。しかし、自分のことであるにもかかわらず、自分自身だけでは知ることができないことがある。たとえば自分の長所や短所は、他者を通して初めて分かることがある。
 以上のように、自分のことであるにもかかわらず、自分以外の何かを媒介にしなければ知ることができない事柄がある。したがって、「自分のことは自分が一番よく知っている」ということについて、常にそうだとは言えない。さらに、「自分のことは自分が一番よく知っている」という考え方は、自身の生命を脅かすことになる危険性もあると考える。
 こうした考え方にもとづけば、自分の身体の状態や健康状態についても自分が一番よく知っているということになる。しかし、検査をすることでわかる病気の発見や身体の状態がある。ガンは、早期発見、早期治療によってもはや致死の病ではない。しかし、自覚症状がなくともガンは進行し、症状が出た時には治療困難な状態に陥っていることもある。「自分のことは自分が一番よく知っている」と過信し、検査を受けなければガンは発見されない。本当は治療可能であったかもしれないのにもかかわらず、「自分のことは自分が一番よく知っている」という考え方によって検査を受けなければ、ガンは致死のものとなる。それゆえ、この考え方は私たちの健康の維持にとっては危険であると考える。
 自分がほかの誰かではなく自分であるという疑いようのない確信から「自分のことは自分が一番よく知っている」と私たちは思いがちだ。しかし、この考え方は健康を維持するうえでは危険だ。したがって、自分の知らない自分を検査や客観的指標によって測ることが重要だと考える。

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