見出し画像

『奢る技術』『奢られる技術』

レストランに食事に行った時などに、必ずと言っていいほど討論の対象になると思われるのが『奢る』『奢られる』問題

ツイッター上でも討論の的となり、あまりに偏った論理を展開する人も多く見受けられる始末…その度に炎上を起こしては新たな論争を呼ぶ事態となっていました。

勿論これはオンライン上だけでの問題ではありません。デートに訪れるカップルが『支払い』で揉める、もしくはちょっと微妙な空気になってしまう事は往々にして起こり得る現象です。


僕はフレンチレストランでのサービスマンという職業柄、いわゆる色々な方の『お会計』の機会をたくさん見てきました。

その中で色々な『奢り方』『奢られ方』を行うお客様を見て、自分の中である仮説が浮上したんです。

『奢り方』『奢られ方』にも技術があるのではないか

明らかに「心地よく奢っている」「綺麗に奢られている」という人たちには共通点がありました。それはとにかく食事を全力で楽しんでいること。そして、相手を全力で楽しませているということ。

全額奢っているのに相手に満足感を与えられていない人もいれば、逆にちゃんと割り勘にしていながらいつもにこやかに食事しているカップルも。この二組のお客様を見ていれば、単純に『”満足度=奢る”ではない』という事が容易に想像できます。


この『奢る』『奢られる』論争が終わらない最大の原因は、老若男女問わず会計に対する価値観が千差万別なせいだという言葉に収束します。

お会計に対する価値観の違いによって
◆男性は女性に奢るべき
◆誘った側が奢る方がいい
◆割り勘でよくない?
などの相対する意見が共存してしまう自体が起こっているんです。

ならそれを『技術』でカバーしてしまおう!というのがこのnoteにおける最大の目的です。

男女のデート、お会計の行為ひとつであーだこーだ言われてストレスを抱えてしまうくらいなら、打算的に『技術』を養いましょう。自分の価値観を押し付けるのではなく、自分の価値観に相手を近づけるよう上手に促しましょう。

◆君にはなんか奢りたくなる
◆アナタになら奢られても後ろめたい気持ちにならない

そういう存在になってみましょう。

※このnoteでは便宜上『男性が奢り、女性が奢られる』という立場を前提に話を進めますが、決して「男女の関係値はそうあるべき」の意思表示ではない事をご理解ください。


ちなみに”しっかりデート”の代表でもある「そもそもフレンチレストランに行く事自体がハードル高い」という方はこちらのnoteをご覧ください。


価値観が合わなかった悲しい事例

本題に入る前に、以前Twittterにて

『お会計』についてアナタの
嫌だった思い出を教えてください

というそこそこゲスなアンケートを募集したところ、予想以上に多くの意見が寄せられました。(ご協力頂いた皆様、ありがとうございます…!)

中には本当に吐き捨てるように書いてくれた罵詈雑言…もとい貴重なご意見がありましたが、その中でも『みんなこんな感じで悩んでる』というパターンが存在しましたのでここにまとめていきます。

男性、女性。共に冷静になってご覧くださいませ。

◆【女性側の主張】

・相手が安いものを注文してると頼み辛い

「今日は俺が奢るよ」って言ってくれたことは嬉しかったのですが、彼の頼むものが全部値段の安いものばかり。向こうは気にしないかもしれないですけど、奢られる側が高いものをポンっと頼むわけにもいかないので注文には気を使いました。
・中途半端に奢るなら割り勘でいい

こっちは別に奢ってもらうつもりも無かったし、お会計も7000円で高いわけじゃなかったから普通に割り勘でよかったのに「俺が4000円出すよ」って言われて…値段の中途半端さも呆れたけど、ちょっと多く出したくらいで威張るなって感じでした。
・狙いがバレバレ

「奢るよ」と言って食事に何度も誘ってくる男友達。常に誘われるのが夜のお酒の席だったこともあり、なんとなく嫌な予感はしてたけど案の定ホテルに誘われる始末。普通に断ったのですが、そこからは奢る奢らない以前に食事にすら誘ってくれませんでした。男ってめんどくさい。
・妖怪『1円単位の割り勘男』

デートですよ?雰囲気大事なんですよ?例えば、端数をチャチャっと払ってくれるだけでも十分だったんですよ?
『24円』を請求された時は流石に脈アリナシ以前に「大丈夫かコイツ」って思っちゃいました。女同士の食事でもしないわ。

◆【男性側の主張】

・『奢られるの当然』は脈なし

ぶっちゃけて言うと、2人でご飯食べるんだからそりゃ多少気はある。食事は価値観が合うかどうかの確認作業。そんな時に奢ってあげて『誘ってもらったんだから当然支払いは男性持ち』という態度だと、俺って見る目ないな…って思う。
・女性の『私はデート準備に金かけてるから』は納得いかん

「洋服、美容室にネイル、メイクまで色々万全な準備。だから奢るのは当然よね♡」は流石に意味がわからない。こっちだって色々下準備したし、金だってかけてる!!
・お会計は『金銭感覚の共有』のため

奢るのは構わないし奢られるのも厭わないけど、あまりにも金銭感覚が違うと「今後一緒にいた時苦労しそうだな」と思ってしまう。


色々な意見が並んでおりますが、残念ながら邪な気持ちで『奢る』『奢られる』を利用している人たちも非常に多いです。「男性は奢るべき」「女性は奢られるべき」という価値観がどんな状況でも全く変わらない人たちも。

それらの考えは実に真っ当です。なのでその方達はぜひ、価値観の合う人たちとだけお楽しみください。

ここからは「純粋に奢る、奢られる技術を知りたい」と言う方々に向けてご紹介いたします。


価値観の違いにおける対処法

『奢る』『奢られる』は、ただの「金銭のやりとり」ではありません。お互いの価値観が一致した時に初めて効力を持ちます。

ですが価値観の違う人と食事をすることなんてよくあること。ならばどうするか。キーワードは「価値観の歩み寄り」です。


◆『一緒に食事』は軽い気持ちで行くものではない

いきなり暴論をぶちまけます。「とりあえずご飯行かない?」という発言は、あなたが思っている以上に緊張感を持った方がいいと思います。

僕は友人知人を食事に誘う時に、それなりの緊張感を持って挑んでいます。その最大の理由として「食事中はシンプルに気が抜けがち」だからです。

より相手のことを知るために『会食』が行われるのは実は合理的で、食事中はその人のより深い部分に触れる機会となります。

「取りつくろいなさい」という訳ではありませんが、意外と食事中の行動は相手に色々とバレるので要注意ですよ。


◆『お会計』は食事の中の「一工程」に過ぎない

男性女性に関わらず「奢ってあげたから相手は喜んでくれたはず」は、かなりエゴスティックな考え方です。

席に座る、注文をする、料理が届く、食べる、飲む、会計をする…

食事中には色々な工程があるのにも関わらず、注目されがちなのは『会計をする』という行為だけ。

まずは相手を楽しませたりもてなしなりすることで、「この食事に来てよかった」という食事全体の満足度を高めてあげましょう。

気が合う人と食事をした方が楽しいし、また行きたいって思ってもらえるのは当然ですよね。


◆「食事の目的は何か」の感覚を一致させる

根本的な価値観のズレに対処しきれないことも多いですが、大抵の場合は「この食事の目的は何か」の感覚を一致させることで解決する問題も多いです。

今回のテーマで言うと『奢った方がいいか』『奢られた方がいいか』『割り勘がいいのか』を決める指針にもなります。

・相手によく思ってほしいのか
・悩みを相談したいのか
・普通に食事を楽しみたいのか
・ストレートに奢ってほしいのか

相手によく思って欲しい時は気持ちよく奢るし、普通に食事を楽しむときは割り勘にしたほうがいいでしょう。

普通に食事を楽しむだけのつもりが「奢るよ」って言ってもらえると、嬉しい半面ちょっとだけ申し訳なさを感じる人もいるかもしれません。

誘われた側が「じゃあ割り勘ね」と言われると不信感を覚える人もいることでしょう。

お互いの負担になりすぎない程度でうまくお会計を済ませましょう。


◆会計を気にする値段なら先に伝えてあげよう

基本的にお金のことは言わない方がいいと思っていますが、事前にお会計をどうするか話しておく必要がある場合もあります。

それは、高級店に行く時。

例えばあなたが2万円のコース料理を食べに行こうと相手を誘ったとします。2万円。かなり、いいお値段しますよね。

あなたにとっても痛手でしょうが、相手にとっても大きな出費です。それを「自分から」誘うのですから、それなりの覚悟を持って臨む必要があります。

別に『高いレストランに誘ったんだから奢ってやりなさい』というわけではありません。お会計はどうするかしっかりと事前に伝えてあげることが大事です。

奢るなら奢る、割り勘にするならそう申し出る。事前に伝えてあげることで、仮にお金が原因では無かったとしても女性に対して「お金が理由で断る」という逃げ口上を作ってあげることも出来ます。


割り勘で幻滅する女性はいません。『奢ってくれると思っていたのに割り勘だった』という感情の落差で幻滅するのです。それなのに「あの女は割り勘にしようって言ったら不機嫌になりやがった。」っていうのは男性も流石に配慮不足かな?と感じます。


◆『奢る』も『奢られる』も互いの関係値が大前提

まとめますと

◆大事なのは「価値観の歩み寄り」
◆「お会計」で全ては決まらない
◆「食事の目的」によって精神負担のない支払いを
◆高い食事に誘うなら最低限の配慮を

このあたりを認識しつつ、お会計をどうするのかご自分で判断しましょう。

『常に奢る』『常に奢られる』よりも自分と相手の関係値をしっかりと認識したうえで付き合っていくことが大事です。


…そうです。『奢る』『奢られる』って実はものすごい難しいんですよ?


最もスマートな『奢りかた』『奢られかた』

と、ここまでは「そもそも奢るべきか奢られるべきか」について語ってきましたが、ここからは実際に『奢る時』『奢られる時』の方法についてご紹介します。

僕が今まで出会ってきたお客様の中で一番「何その方法素敵すぎる!!」と思って、その方法を知って以降僕も実践しています。

実践している内容をドヤ顔で語るのも恥ずかしいのですが、本当にオススメできる方法ですので皆さんにも是非実践してほしいです。

コツとしては「ドヤ顔せず、なるべくスマートに」


◆奢りかた

一番の方法を紹介する前に『僕が最もスマートだと思ってい“た”方法』をご紹介。

多分聞いたことがある方も多いと思いますが、その方法は

女性がトイレに行っている間にお会計を済ませる

レストランに行って、食事もだいぶ進んできたころ。女性がトイレに行ってお化粧直しをするタイミングがくるかと思います。もちろん、男性もトイレに立つタイミングがあるでしょう。

その隙に店員さんにお願いして「ササッ」とお会計を済ませてしまう。あぁ、なんてスマートなんでしょう…!


と、ずっと思っていましたがこの方法、実はちょっとだけ欠点が。

それは時間制限があるということ。以前起こったことですが

彼女、トイレにたつ

彼氏さん、店員にお会計をお願いする

店員さん、会計準備してなかったので大慌て

彼氏さんも急いで決算

『暗証番号が違います』

別なカードで試そうと財布を漁る
(もたもたもたもた)

彼女帰還 「「あ」」

…これはこれでなんだか微笑ましいのですが、男性としてはいない間に終わらせたかったでしょうね。

それよりも一番オススメしたい方法はこちらです。

自分がトイレに行ったタイミングで支払いも一緒に済ませる

他人が動いて時間制限があるのなら、自分が動いてしまいましょう。自分が動けば、多少時間がかかっても違和感ありません。


この時のポイントとしては以下の2つです。

①食事が完全に終わる『ちょっと前』に済ませる
②現金ではなく、カード払いで

理想としては「ラストオーダーの注文後〜完全に食べ終わってちょっとゆっくりする時間」の間に自然と済ませたいですね。

万が一奢る側がすでに会計を終わっているときに、追加注文されたら「あ、えっと、その、お会計もう終わってて…」と、全然スマートじゃなくなります。

場合によっては「は?もうちょっと飲みたかったのに何してんの?」とまさかの怒られることすらあるかも。もう注文がないか確認してからGOです。


また、完全にゆっくりしている後に「トイレ行くね」とあなたが席をたったら。何が起きるでしょう。

そうです。向こうも『今のうちにお会計済ませてしまおう』と思ってしまうかもしれないです。

奢るなら先手を。もう少し早いタイミングで自然とレジに向かいましょう。

そして、財布をトイレに持って行く人はいませんのでポケットにあらかじめカードをポケットに忍ばせておくと実に自然です。


帰るときに『あれ、お会計は?』と言われたら、相手の顔を見ずに

「もう済ませといた」

と言うまでが僕のドヤポイントです。(相手によって言い方は変えてます)


◆奢られかた

そして難しい『奢られかた』ですが…これはコミュニケーションをしてあげることで解決できる問題です。

たとえば「楽しかったよ」「美味しかったです」と言ってもらえるだけで『食事に誘ってよかったな』と思ってもらえることでしょう。

お金だけじゃなくて、あなたと一緒に時間を過ごせて嬉しかったと全力で伝えてあげましょう。


最後に

『最後に』と書き出しましたが、少し本音を書かせてください

『奢る』『奢られる』がいまだに論争となっている理由。導入に『皆価値観が違うから』と書きましたが、もうひとつは「たかが会計ごときで相手の性格や相性を判断している」ことにもあると思っています。

上にも少し書きましたが、そもそも食事という行為は一定の関係値がある人間同士が楽しむ行為です。

仲のいい友達同士。
「ちょっといいな」と思っていた男女の友達。
職場の同僚や先輩、後輩。
初対面だけど仲良くなりたい人。

そんな人たちに「きっかけ」を与える場所がレストランなのです。相性を知りたいなら是非占いへ。百歩譲って「お会計だけで全てを判断」なんて勿体なさすぎます。

ホテルに誘うために奢る。人の金でメシを食う。奢られないのはアタシに気がないから恋愛対象から外す。大いに結構。ただ、思い通りにいかなかったからと子どもみたいに駄々をこねるのはご容赦願いたいです。


皆様が快適にレストランでの空間を楽しんで頂けることを
烏滸がましくも飲食業代表として願っております。







文章苦手ながら頑張りました!