2023年5月第2週の振返り②(決算振り返り)
以下、今週の決算振り返りの続きです。なお、昨日前半戦を記事にしていますのでまだお読みでない方は下記をご参考にして頂ければと思います。
〇ENEOS(本決算)
まず、23年3月期を簡単に振返ります。以下、23年3月期の決算ハイライトです。
在庫影響除き営業利益は前期比▲1691億円。
石油や石油化学品を販売するエネルギー事業において前期の大幅なプラスタイムラグの反転 、石化市況の悪化などにより減益。また、金属事業はチリのカセロネス権益売却決定に伴う評価損失の計上や銅価下落などにより減益。
一方、石油・天然ガス開発事業は資源価格上昇や円安を追い風に増益。
続いて来期24年3月期見通しを見てみます。
在庫影響除き営業利益は主にエネルギー事業の良化により前期比+935億円の増益見通し。
石油や石油化学品を販売するエネルギー事業は、輸出市況は悪化が見込まれるものの、製油所の稼働回復に伴い輸出数量が増加すると想定。また、金属事業は前期(23.3期)に計上したカセロネス評価損失剥落により増益見通し。
一方、前期増益を達成した石油・天然ガス開発事業は資源価格下落などを織り込み減益の見通し。
続いて、新中期経営計画(23年度~25年度)も併せて発表されましたので、以下簡単に見ておきます。
同社はセクターの特性上、業績にブレがありますが、過去の配当実績から安定配当に努めようとする強い意識がひしひしと伝わってきます。今回の新中計でもその思いは継続と見てよいでしょう。
また、1株あたり22円の配当を下限とするというのも非常に心強いですね。現在200株の保有に留まっていますが、もう少し買い増ししたいと考えています。
なお、決算発表と同時に、主要子会社で銅事業などを手掛けるJX金属の新規株式公開(IPO)に向けた準備を始めると発表。金属事業は市況価格に左右されるため収益変動が大きい点が課題。上述のチリのカセロネス銅鉱山開発では投資額が6000億円以上に及んだものの、生産トラブルなどで度々大規模な減損損失を計上するなど苦しんできました。
今後は金属事業分離で得た資金で再エネや水素などの構造改革を進め、安定した収益基盤の確立を優先させたいとのこと。複合企業の価値が過小評価される「コングロマリット・ディスカウント」の解消にもつながるかもしれませんね。
〇キリンHD(1Q決算)
1Qの最終利益は前年同期比で67.9%と大きく減益となりました。以下、なぜこれほど最終利益が落ち込むのかについて見てみます。
まず、売上高にあたる売上収益は前年同期比+8.1%増と好調です。また、事業利益についても、原材料高騰の影響を受けながらも+29.5%増と好調です。つまり、本業は好調なのです。
ここで同社の損益計算書を見ると、営業利益以下のその他の費用として258億円が計上されており(前年同期比のその他の費用は91億円)、そのうち約190億円がミャンマー事業の連結除外に伴う為替換算調整勘定の実現として計上(為替差損)、これが大きく利益を押し下げています。
更に、法人税費用の負担率が前年同期比で大きく増加しており、これも利益を押し下げる要因となっています。
以上から、最終利益が前年同期比67.9%減と大きく落ち込んでいるのです。
本業ではしっかりと数字が出ているので、過度に悲観する必要はないと思います。
〇KDDI(本決算)
派手さはありませんが、安定感抜群の通信株KDDI。今期も増配を発表し、中々の規模の自社株買い実施も発表しました。これで同社の連続増配記録は22期連続となります。
23年3月期は、従来の会社計画(2%増の6880億円)は下回ったものの、過去最高を更新。携帯電話料金の値下げ(▲853億円)や楽天モバイルなどからのローミング(相互乗り入れ)収入の減少(▲278億円)が重荷となった一方、昨春の通信規格「3G」停波などによる費用削減が増益に寄与(+803億円)しています。
来期24年3月期の微増の6800億円を見込んでいますが、市場予想の平均であるQUICKコンセンサスの7134億円は下回っています。
個人的には、増益率のペースが鈍ってきていることが気になります。当面は心配いらないとは思っていますが、将来的に連続増配記録が途絶えてしまうかもしれないということを頭の片隅に入れておきます。
〇武田薬品(本決算)
個人的には、今回の決算シーズンにおける最大のサプライズとなりました。あの武田薬品が増配。実に15年ぶりです。しかも配当方針につき、累進的な配当方針を採用と明記。これまでも実質的に累進配当と評価できましたが、明文化された形ですね。
ただ、この増配発表、個人的には若干不安もあります。以下、簡単にふれます。
まず、増配後の24.3期の配当金支払総額予定はおよそ2900億円。増配前の1株配当180円時代の配当支払総額はおよそ2800億円でした。
23.3期の営業CFは約9700億円、投資CF約6000億円、フリーCFはざっくり3700億円。そこから利息の支払いや借入金返済を約4000億円ほど行っています。そしてここから更に配当金の支払いを2800億円ほど行っているわけです。結果、22.3期から23.3期にかけて現金の期末残高は3000億円ほど減少(8496億円→5335億円)しています。
上述の通り、来期は約50%の減益見通しです。以前の180円でも綱渡り感があったと思いますが、そこから更に増配となると不安になるのは私だけでしょうか。株主還元意識の高さは大歓迎なのですが、ちょっぴり複雑です。財務が好転するまでは180円死守でも良かったのになぁというのが本音です。
さて、来期24年3月期の純利益は前期比55%減の1420億円になる見通し。市場予想の平均であるQUICKコンセンサスの2944億円を大幅に下回っています。
新型コロナウイルスワクチンの売り上げが減ることや円高・ドル安想定も利益を下押しする要因です。また、国内の高血圧薬「アジルバ」や米国の神経疾患薬「ビバンセ」などで独占販売期間が終わることも収益の重荷となるようです。ビバンセは同社の売れっ子商品でした。医薬品セクターの宿命として、特許が切れるとすぐに後発薬が登場し、収益は激減します(パテントクリフ)。
クリストフ・ウェバー社長は日本経済新聞の取材に対し「後発品の参入に直面する2製品が成長を阻害することになるが、そのインパクトが消えればまた成長軌道に戻る」と述べています。「(買収で膨らんだ)負債を堅調に低下させることができている」ことも背景にあると説明しています。こうした自信もあって今回増配に踏み切ったのでしょうかね。
なお、同社の想定為替レートは1ドル=131円です。
〇森永製菓(本決算)
ダブル増配かつ自社株買い発表と株主還元策としては文句なしの内容でした。
23年3月期は売上は増収。損益については、価格改定効果(値上げ効果)はあったものの、原材料及びエネルギー価格の高騰や中長期の成長に向けた戦略的な広告投資などにより営業利益以下は減益となっています。
一方、24年3月期については増収増益見通しです。
森永製菓は、20年以上非減配・好財務・高いブランド力などを評価して購入した銘柄です。勿論、株主優待も買付の大きな動機となりました。ハイチュウは個人的に最強のお菓子だと思っています。そして、あのウォーレン・バフェット氏も菓子メーカーを高く評価しています。
配当と優待を享受しながら長期間保有を続けるつもりです。
〇NTT(本決算)
流石安定感抜群の通信の雄NTT。予想通りきっちりと増配もしてくれました。これで13期連続の増配予定となります。
今回自社株買いの発表はありませんでしたが、同社は資本効率向上のため、機動的に自社株買いを実施するとの方針を示していることから、今後の発表に期待しましょう。
24年3月期は、減収増益見通し。NTTドコモの法人事業などが伸びる見通しです。
さて、今回の発表で目を引くのは1対25の割合での株式分割。同社は分割の狙いとして、「2024年から新しい少額投資非課税制度(NISA)が導入されることも踏まえ、若い人にも投資してもらいたい」と説明しています。現在の株価水準だとおよそ1株当たり160円程度で投資できるようになりますが、1円あたりの変動率が大きくなる懸念はありますね。
続いて、今回27年度を最終年度とする新中期経営計画が発表されましたので、以下簡単に見ておきます。
中長期の成長戦略の中心はIOWNです。半導体内部まですべて光で情報処理することで、信号を電気に変換する際のエネルギー損失がなくなるため、通信に使う消費電力を100分の1に抑えられます。
6月に設立する新会社では、機器製造を手がける子会社と研究機能を統合し、すべて光で情報処理する「光の半導体」の実用化を目指しています。新会社は機器の企画から販売まで手がけ、30年3月期には2000億円規模の売上高を目指すそうです。IOWNをテコに世界の通信業界で復権を狙ってほしいものです。
最後に、以下に同社の株主還元推移のスライドを載せておきます。
圧巻ですね。今後もホールドを継続し、適宜買い増しを続けながら主力の中の主力に相応しい株数としていきたいと思います。
〇大和ハウス(本決算)
増配かつ自社株買いを発表してくれました。これで13期連続の増配予定となります。
23年3月期については、開発物件売却の前期反動減および資材価格高騰の影響を大きく受けた事業施設事業を除く全セグメントで増益を達成しました。
24年3月期についても、表面上は減益見通しとなっていますが、「退職給付に関する数理計算上の差異」の影響を除けば実質的に3%の増益見通しとなっています。詳しくは下記決算説明資料をご参照ください。
〇東ソー(本決算)
配当は維持となりましたが、業績を鑑みれば御の字です。個人的に、増配は勿論嬉しいのですが、東ソーのように減配しない銘柄も好きです。同社は2009年3月期以降、配当維持or増配を継続しており、15年にわたり非減配を貫いています。
23年3月期は、ナフサや石炭等の原燃料高の影響が販売価格上昇の影響を上回ったことでの交易条件の悪化により、営業利益以下大きく減益となりました。
セグメント別に見ると、主力のクロルアルカリ事業でナフサや石炭等の原燃料価格上昇に伴う交易条件の悪化をもろに受け、営業損失(赤字)となっています。
24年3月期については、上期は苦戦を予想していますが、前期苦戦したクロルアルカリ事業も回復を予想しており、通年では増収増益の見通しとなっています。
〇みずほリース(本決算)
大増配を発表しました。増配率が素晴らしい。これに加えて優待のクオカードもありますからね。まさに大盤振る舞いといった感じです(笑)
同日発表された新中期経営計画(23年度~25年度)では、「本中期経営計画期間においては配当性向を30%まで逓増させる」(現在の配当性向25%)としており、今後の業績推移次第では更なる増配も見込めそうですね。
23年3月期については、ベースの収益力が着実に伸長し、各段階利益とも前年度比大幅に増加。来期24年3月期も増益見通しとなっています。
〇AGC(1Q決算)
売上高については、建築用ガラスや自動車用ガラスなどの販売価格の上昇や為替の影響から前年比増収となっています。
営業利益については、電子セグメントにおいて原燃材料高および設備の稼働率低下により製造原価が悪化、収益性の高い化学品セグメントにおいて塩化ビニル樹脂等の販売価格が下落したこと等により減益となっています。
まだ1Q段階ですので、引き続き進捗を見守りたいと思います。
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