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お笑いやバラエティ番組に向けられる偏見と差別

 僕はテレビが結構好きな人間です。
 ドラマやバラエティ番組も見ますし、池上彰さんの番組などのような情報バラエティなども勉強になるので、結構見ます。ドキュメント番組なども見る事があります。

 テレビ離れが言われている昨今ですが、それは割合の問題であり、相変わらずテレビを見ている人は多いです。それはSNSなどを見ていれば窺えます。昔の時代は娯楽や、それを伝える媒体などが限られていたため、テレビは視聴者を独占する事ができました。録画機器が誕生し、インターネットが誕生し、ネット配信が誕生したのですから、平均視聴率が下がるのは当然です。
 また、視聴率計算はモニターの方々のリアルタイム視聴の数を集計しているデータにすぎないので、生活様態や世代の違いが反映されやすい傾向があり、視聴者の反応を窺うデータとしては、これ単独では流用しづらくなってきています。

 一方、テレビ離れが全く起きていないかというと、そうではなく、テレビを見ないという人たちが生まれているのも事実です。前述のように、今と違い昔は娯楽が限られていましたが、現在では多種多様な娯楽の選択肢があります。
 テレビに興味がなくなった理由としては、もちろん制作される番組傾向に(悪い方に)影響が出始めた事が視聴反応に影響を及ぼしている事が考えられ、なぜ制作番組に変化が生じたかというと、クレームが頻出するようになったからではないかという事も考えられます。
 番組はスポンサーを集め、資金を捻出して製作されます。クレームが来るような内容だとスポンサーは苦い顔をするため、番組はクレームの来ない内容を考えざるを得なくなります。

 テレビをよく見ている人は気づいている人が多いと思いますが、気づけばバラエティ番組は「グルメ」「食」がかなり多い割合を占めるようになりました。食に興味津々な視聴者にとっては天国ですが、そうでない人にとってはテレビ番組全体の確率として「興味の無さ」が高くなります。ある意味、テレビ全体としては不健康なバランスと言えます。
 何故こんな状態に陥ったのか?
 食がテーマだと、クレームの来る確率はほとんど無くなる。つまり、題材として「安全地帯」だったからとも言われています。

 コンプライアンスなども整えられ、マナーやルールなどは確立してきました。
 一方で、現在のテレビを巡る状況は萎縮の一途を辿っている側面があります。それに危機感を覚えているのは、もちろん現場の人間やテレビ、メディアの関係者、そして今もまだテレビが好きな視聴者でしょう。
 クレームは昔からあっただろうと考えられます。どんな事についても、「好きじゃない」「それは正しくない」と考える人は割合の差はあれど必ず出てくるからであり、自然の摂理です。
 なぜ、現在はそれが頻出するようになったかというと、インターネット、SNSの誕生が起因していると考えられます。誰もが容易に声を届けやすくなった。意見を広く社会に言えるようになった。一部の利用者だけのものではなく、テレビに劣らず、生活に密接的な、広範囲伝達の情報ツールとなった事が、そしてそれを一般の人間が使えるようになった事が影響しています。

 インターネット、SNSは社会にある問題点を叫び、ムーブメントを呼び起こして世界に認知させる事に大きく貢献しています。
 同時に、わだかまっていた潜在的な負の感情に火をつけ、焚き付け、怒りと憎悪を拡散させるツールとなっている点も残念ながらあります。誰でも容易に使える事が仇となり、安易な感情のはけ口とされてきている側面があります。
 言うなれば、前者では正義を、後者では悪を、世界に、不特定の人々に対して、言葉という武器で戦っているとも言えます。
 その一方で、こういう声を目にした事はないでしょうか? 例えるなら「疑問派」の声と言えばいいでしょうか。
 正義や悪といった勧善懲悪ではなく、「それって悪い事なの?」「それはそっちの方がダメなんじゃないの?」「それの何が問題なのか理解できない」といった、一歩引いた目線で冷めた疑問を投げかけている声です。そういった人たちは他人事だからこそ、物事を客観的に捉えています。

 僕も最近のテレビ番組に対する批判が沸き起こった事について疑問を感じた事があったので、紹介したいと思います。前置きが長くなりましたが、ようやく本題です。
 前述のように僕はバラエティ番組が結構好きで、割と見ている方です。毎年恒例の大晦日特番「絶対に笑ってはいけない~」シリーズもいつも見ています。見ている人が多い事が、視聴率、SNSにも表れている人気番組です。
 しかし、2017年大晦日放送の「絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス」については、主に2つの点について批判の声があがっています。(シリーズの基本ルール自体にも批判的な声は前からありましたが…。)

 どんな内容だったのか文脈を正確に知る為には、PV稼ぎを目的としたネットニュースなどで文字情報で見るよりも、切り取られていない放送を直に見た方が良いでしょう。
 シリーズの番組はHuluで配信されています。最新作は2018年1月21日までの期間限定で配信しています。
Hulu ダウンタウンのガキの使いやあらへんで! 絶対に笑ってはいけない/罰ゲーム シリーズ

 今回の放送に対して起こっている批判の声に、僕は正直、怒りを覚えています。起きている批判が、中途半端な正義感から来る「差別」「偏見」である事が理由です。こんな事が社会のスタンダードな風潮になってはいけない。これを許せば、テンプレートに倣うだけの、考える事すらできない思考ゼロの社会へと世界は向かっていくでしょう。
 では何故、僕が批判に対しておかしいと考えているのか、以下はTwitterでの発言を用いて紹介していますが、完全にネタバレになっていますので、番組を見た方、ネタバレでもいいという方のみ御覧ください。(ネタバレはTwitter引用部分のみです。Twitter引用部分の後の文章にはネタバレは入っていません。)

↓ここからネタバレ

Twitterで述べた意見

↑ここまでネタバレ

スマホは予測変換などで字を打つため、誤字が起こりやすいですね;


 いきなりの問いになりますが、ISなどのテロリストは何故、自爆といった手法でテロを起こすのでしょうか?

 もちろん精神性を鍛えているからといった事も、死後に神のもとに行けると信じているなどの答えもあるでしょうが、突き詰めれば、「自分の命を以って正義を成せる」といった考えが根底にあるからです。
 もちろん、正義のために無関係の人々の命が奪われるような理不尽はあってはならない事ですが、やってる本人たちは「己の信じる正義」のために行動を起こしています。
 
 清い心を持ち、優しく、正義を愛する人でありたい、と思うのは、割と世界のスタンダードです。
 でも、その価値観は必ずしもみんなが同じとは限らない。「俺は人種差別はしないけど、イスラムは別」と言う人もいます。
 自分の一方的な視点で物事を見るのは危険な事だったりします。
 清い心を持ち、優しく、正義を愛する人でありたい、そう思いながら「正義」という名の暴力を振るう事があるという事を、その可能性を誰もが持っているという事を、個人個人が頭の隅に留めて置かなければならないでしょう。
 そして、世界に存在する様々な事柄、文化や環境において、必ずしも万物を「正義」と「悪」といった2つに分けられる訳ではない事は、皆が知っておくべき事でしょう。
 マジョリティ(多数派)のためにマイノリティ(少数派)が犠牲になるのはおかしい。
 マイノリティ(少数派)のためにマジョリティ(多数派)が犠牲になるのはおかしい。
 どちらも正論です。(ちなみに、これはドラマ「民衆の敵」で出てきた台詞の要約。)
 世界の全ての人々の願いを叶える事はできない。「折り合い」は必ず必要になります。
 個人の価値観を押し付ける世界であってはならない

 今回、批判している人々には、「差別をされた」と感じた人、ジャーナリスト、社会派コメンテーター、エッセイストなどの方などもいますが、主に、バラエティ番組・お笑いに馴染みのない人、知識人などが多いです。
 そして全員に共通するのが、正義感の持ち主です。
 もしかすると、番組を楽しんでいる多くの視聴者に対して、「思考力の弱い人間」と感じているのかもしれませんが、むしろ批判している人ほど「自分は正しく思考できていると驕っている浅墓な人間」のように僕には感じます
 思考が途中でストップしている。そうなる要因は、知識だけで物事を捉えていて、中身が無いためです。多面的に、本質的な思考をしなければなりません。誰かが言っていれば、それが正解というのは違います。

 誰にでも好き嫌いはあります。自分が嫌いな食べ物の魅力を人から聞かされても、理解はできないでしょう。何かを好き、何かを嫌いと感じる感覚は理屈的ではありません。理解できないから、それをダメと批判するのは、感情的でしかありません。

 勘違いしてはならないのは、番組を作っている人たち、番組を見て楽しんでいる人が「他人の苦しみなどどうでもいい、暴力性と狂気性の持ち主、サイコパス」ではないという事です。
 差別を嫌い、他人の気持ちを慮り、優しさを備えた人間でもこの番組を楽しめるし、視聴者にもそんな人間は大勢いるでしょう。番組を見ている人たちは、単純に番組の「見方」を知っているだけに過ぎません。言わば番組視聴のTPOを理解しているという事です。
 制作側とキャスト、視聴者の間の三角の相互信頼でバラエティ番組が成り立っているという事を、知らない人はこの機会に理解してほしいなと、切に願っています。

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