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近未来 * ショートショート


「‘未来’という言葉が、とても古臭く陳腐に感じられるようになった。そうは思わないか?」

先生は突然そう言いだした。

「昔は良かった。自由に想像できた。タイムマシーン、空飛ぶ車、壁掛けテレビ、レーザー光線、戦闘ロボット、子供たちはそれだけでワクワクしたもんだ」

先生は、寂しそうな表情を浮かべながらさらに続けた。

「こんな映画があった。ひょんな事から政府の機密を知ってしまった男が衛星により監視、追尾されどこに逃げても場所を特定されてしまう。世界中のどこにも逃げ場はないという話だ。私はとても恐ろしい話だと思った。しかもその話はフィクションや想像ではなく実際に可能だというのだ。そして、それらの技術が映画の題材として世に出てくるのは10年前の技術であるからだと。つまり、最新技術はもっとすごいことになっていて、古くなり他国に知られても良い段階の技術が映画の題材として提供されているのだ。私は、恐ろしくなったよ。我々作家の想像など等に追いつかないスピードで世界がが進化している。人間が想像できることは必ず実現できると言うのが嘘だと言うこともわかってきた。結局、ジーパンを履いているしスーツにネクタイだ。一周回って未来は原始時代みたいになっているなんてのは陳腐の代名詞だしな。作家ができることはもうないのかもしれないな。」

   

先生は、宙に浮き空気中の窒素だけを集めながらそうおっしゃった。
目には涙を浮かべていたように見えた。

私はと言うと、半分興味がなかったので右脳と肝臓を入れ替えながら聞いていた。

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