はこしろちゃんの旅

夢をひろう、夢を編む。駆け出しイラストレーター・はこしろちゃんの冒険

「私、ずーっと普通のOLになるつもりだったんですよ」と、はこしろちゃんは言った。

はこしろちゃん、もとい、はこしろ先生はフリーのイラストレーターだ。某人気アナログゲームの絵師になったり、企業の宣伝4コママンガを描いたり、とアクティブに活動している。

大好きな絵を仕事にして、毎日充実した生活を送っているように見えるはこしろ先生だけど、現在の境地に至るにはなかなか一筋縄ではいかない葛藤があったようで……。

好きなことで生きていく、って口で言うのは簡単。でも、みんながそれでハッピーに生きていけるなんて都合の良いストーリーはない。

今日紹介したいのは、ぐるんぐるんと回り道をしながら、それでもちょっとずつ前に進む……かつてのあなたかもしれず、未来の私かもしれなかった、そんな1人の新社会人のお話。


episode.1 OLになろう!

画像1

――はこしろ先生は西洋美術史専攻と伺っているんですが、高校のときに美大に行こうとは思わなかったんでしょうか?

「もともと絵は好きだったんですけど、それを仕事にするつもりはまったくなかったんです。普通にOLになるのかな、と思ってました。私、中高一貫校だったんです。エスカレーター式で高校受験をしなくても高校に上がれる感じで。だから、正直中だるみもあったし、将来のことって何も考えてなかったんですよね……。ただ、将来就職して働かないといけないとは思っていたので、まあOLかなと。普通の常識ある親って、子供が絵の道に進もうとしたら止めませんか」

――それは止めるだろうと思います(笑)

「私も常識的な親に育てられた子供だったので、いやいやそれだけはありえないだろうと。親の言うことに自分でも納得してしまったところがあって。将来的、芸術の道に行くのはダメだと思ったんです。だから、芸術のことはとても好きだけど、大学で終わりにしようと。大学で好きな勉強を思い切りして、その後は普通に就職しようって。そう思って芸術系の学校に行ったんですよ」

――そこで、美大に行く選択肢もあってと思うんですけど、あえて文学部にされたんですね。それは、意地の悪い言い方になってしまうのですけど、妥協ということになるのでしょうか。

「絶対的な妥協です(笑)。美大に行くためには実技試験があるじゃないですか。それで、試験対策のために専門の予備校に通わないといけない。でも、そんなお金はないし、体力もないし、熱意もないし、ないないないの3点尽くしで。こんな感じで受かるわけないな、と思ったので。じゃあ、総合大学の文学部芸術学科で、美術の勉強をすればいいのかなって。ただ、これはこれで結構運命的な出会いでして、実際行った大学もとても楽しかったんです」

***

現実とうまく折り合いをつけ、堅実に進学先を決めたはこしろ先生。

「行って悔いなし!」と本人が語るように、美術館巡りをしたり、サークルや勉強に打ち込んだりと、理想的な学生生活を満喫したよう。

「大学で一生分、大好きな芸術の勉強に打ち込んで、そこで悔いが残らないまで頑張って。あとは普通に就職して働こうと思っていました」

と、はこしろ先生は言った。

「でも本当は。みんなと同じようにオフィスカジュアルの服を着て、OLさんとして働いている自分がまったく想像できなくて。想像できないものって、怖いじゃないですか。だから、自分の将来のことも怖くて、……ずっと考えたくなかったんです」


episode.2 はこしろちゃん、燃え尽きる

「サークルは美術部に入って、絵を描いたり、展覧会もやったりしていました。バイトは、某美術館のミュージアムショップで。もちろん勉強もすごく頑張って」

――まさに美術史を学ぶ学生の鏡。私のような不真面目な元学生から見ると、とても充実した生活を送っているように思えるのですが……。

「毎日とても充実していました。それなのに、どうして転落したのか、という話なのですが……簡単に言うと、充実しすぎて、逆にダメになってしまったんです」

――充実しすぎてダメになる?

「とても楽しく学生生活を送っていたんです。ただ、1つ問題があって。私、完璧主義だったんですね。充実した日々を送っていないとダメだ、もっともっと充実させないと、と思うようになってしまって。勉強も人より何倍もやらないと気が済まない。美術館の展覧会に行くにしても、人よりもたくさん回らないと気が済まない。もっともっと、と求めすぎるようになってしまって。結果的に、体を壊して――うつになってしまったんです」

  ***
  
いわゆるバーンアウトというものだったのかもしれない。

誰がどう見ても順調な学生生活を送っていた彼女だったが、3年生の秋に突然体調を崩してしまう。

進級はできたものの、到底通学できるような状態ではなく、1年間の休学を余儀なくされた。

3年生の秋、というとちょうど就職活動が本格化する時期である。

「そのプレッシャーもあったのかもしれない」と、はこしろ先生は穏やかな口調で言った。

  ***

画像2

「秋くらいからですかね……秋くらいから、自分でもなんかおかしいな、ってなってきて、冬くらいに沈んで学校に行けなくなって。なんかこうプシュー、ってなってしまったような感じで。そこから、しばらくどん底が続いていくんですけど。結局まったく学校に行けないので、いったん休学して療養に専念することにしたんです」

――それでは、4年生のときに1回休学されて、1年後の春に復学されて。

「復学するまでの1年間はずっと療養の日々というか。これまで自分の中で凝り固まっていた完璧主義とか、そういうものと戦うみたいな。自分をリブートする時間が、大体1年ちょっと必要だったんです」

――あれですよね、これは正確な表現なのかわからないのですが、青春のこじれた感じを癒やすというか(笑)

「そうそう(爆笑)。こじれた青春を癒やす(笑)。『いったん、こじれたら、ここまでこじれるんだな』と思って、自分でもびっくりしたんですけど」

――心の中に溜まっていった、思春期のモヤッとしたものを1年間で癒やすみたいな。

「そうなんですよねえ。結局、何が諸悪の根源だったかというと、『常識的にみんなこうだよ』というレールに乗っからなくちゃいけない、というストレスが私の中でものすごくあったんです。大学を卒業したら、社会の歯車としてまっとうに働かなくちゃいけないとか。だって、大人はみんな言うじゃないですか。自分の好きなことをしたり、遊んだりしたりできるのは、大学生までだって。だから、悔いを残さないように大学時代を充実させなきゃいけないと思ったし、卒業後の将来に対する不安も強かったんです」

――確かに。中には自由人として生きている大人もいると思うんですよね。でも、身の回りに常識的に生きている大人しかいない環境で育った子供には、自由な生き方を見せてくれるロールモデル的存在が周囲にいない。

「周りの大人はみんなこんなものだと思ったら、それ以外の道って見えてこないので。『この生き方しかない』って無意識のうちに決めつけてしまうところがあって。私にとっては、それが一番いけなかったし、自分には合わなかったんだと思います」


episode.3 はこしろちゃん、発掘する

――復学後の学生生活はどうだったんですか?

「復学はしたんですけど、まだ体調が安定しない時期でしたし、体力も落ちてしまっていたので、学校には実はほとんど行けていないんですよ。ただ、幸い3年生の時点でゼミ以外の必要な単位をすべて取り切っていたので、どうにかなりました。こればかりは、完璧主義で良かったなあと」

――学生の鏡すぎて、まぶしい!

「それで、夏くらいになって、体調が落ち着いた頃に。ふと、自分が就活をしていない、ということに気づきまして。卒業したらどうしよう、と」

――だからといって、現状だと普通に就活を再開するのも厳しいですし……。

「だから、在宅でできる仕事で働こうかな、と思いついたんです。というのも、私、休学時にバイト感覚でライターをしていて、1年くらいキャリアもあったんです。それで、ライターならできるかもしれない、と」

――まさかの同業(笑)! でも、なろうとは思ったものの……。

「一度はなろうと思ったんですけど……。途中で、生涯のライフワークにするまでの情熱はないことに気づいてしまって」

――それで、方向転換をされた?

「はい。ライターがダメなら、自分にできることはなんだろうと。そう思ったとき、昔自分がイラストを描いていたことを思い出したんです。自分が人よりも平均以上にできるスキルってなんだろう、と思ったときに、イラストしか思いつかなかったんです。クラスの中で、イラストが上手な子を3人くらい挙げたときに、その3番目に引っかかるくらいのものはあったので。それって、つまり平均以上ということじゃないですか。だから、それに賭けるしかないと思ったんです。つまり、消去法なんですけど」

――いいのではないでしょうか。結果的に原点回帰をしたわけで、実は消去法じゃないのかもしれない。今の話を伺って思ったのですが、高校のときに1回美大に行きたいという気持ちがあって、それを封印されて。西洋美術史の分野でいろいろと学ばれて。

「結局戻ってきたという感じですね。実は、自分の中でも印象に残っていたエピソードがあって。高校のときに、志望校を決めるにあたって、自分の適性を見極めるためのテストをクラス全員やらされたんです。その結果が、言語力、数学力とかいろいろあったんですけど、その中で芸術系の力が突き抜けていて、『あとは全部なし!』となっていまして

――えっ…(絶句)。すいません。思わず失礼なリアクションを……。

「芸術とかデザインとかそういうクリエイター系の仕事の適性がずば抜けていて、あとはもう何もないゼロに等しいくらいの。それぐらい特化型だったんです。『自分でもこれはひどいなぁ』と思ったんですけど、ただやっぱりその頃は常識にとらわれていて。芸術系はダメだ、クリエイターはお金にならないと思いこんでいたんです。だから、自分の適性のある分野を除外して、将来のことを考えることになってしまって。結局、自分に適している仕事は何もないという結果になってしまったんです。でも、実際に自分がクリエイターの道を選ぶとなったときに、『そういえば、自分には適性がある』って言われたな、って。そのことが心の支えになりました。これまでは見ないふりをしていたんですけど……」

――なるほど。今まで目を背けていた自分の可能性に……いや、自分に向き合うということでしょうか。

「そうですね、今まで向き合ってこなかった自分に向き合って。そして、自分を否定しないで、ありのまま受け入れることも大事だったなって」

――大切なことですよね。ちょっと大袈裟な言い方になっちゃいますけど、自分を許すというか。

「本当に、そのとおりだったんです。これまで、常識と自分を天秤にかけて、常識を重きをおいていたんですけど、初めて『自分』に重きをおいたな、という感じがありました。これは、私の中では革命的な出来事だったんです。だから、2年間くらい回り道をしてしまったけれど、その時間は無駄ではなかったと思っています」


episode.4 はこしろちゃん、卒業プレゼントをもらう

「それまでの私って、学校を卒業したら、あとは余生だと思ってたんですよね。在りし日の栄光を胸に、余生のような社会人生活を送るんだと……」

と、はこしろ先生。

「青春映画の世界ですよね」と、私は余計な口を挟んだ。

「高校生が部活で完全燃焼して、ハッピーエンドで物語が終わって。よっしゃ、あとは受験だ!みたいな。燃え尽きて、

「そう。完全燃焼したい! あとは余生! 私の余生長すぎっ!」

ところが、もちろん、そんなことはまったくなかったのである。

***

――でも、実際は始まりだった、と。大学卒業後は人生の墓場、いわば余生みたいなものだと思っていたら……。

「全然余生じゃなかった(笑)。むしろ本番じゃん、みたいな。余生のつもりだったのに、何かスタートしちゃったなあ、と」

――それで、学校を卒業したあと、本格的にフリーランス活動を始められたわけですが。卒業してから、現在に至るまでの話を伺ってもいいですか?

「実は卒業式があったんですけど、その時点で仕事がゼロで。卒業式で、卒業証書をもらって、『よし、これから仕事だ』と思っていたのに、まったく仕事がない状態からのスタートだったんです」

――いきなり前途多難なスタートになってしまったんですね。

「というのも、私には人脈が足りなかったんですよね。フリーランスになる人って、会社員を経てから、という人が圧倒的に多いんです。それで、最初のうちは、前の会社や取引先から仕事をもらっていたというケースが多くて。でも、私には、仕事をもらうのに必要な『これまでの人脈』がまったくなかったんです」

――新卒フリーランスならではの悩みですね。

「それで、卒業する年の1月くらいから交流会に参加して、人脈を広げようと思ったんです。でも、まったく仕事には結びつかず、卒業式の日を迎えてしまって」

――なかなかうまくいかないぞ、と。

「それが、卒業式が終わって、ああ明日仕事がないと思っていたところに、交流会で知り合った人から連絡が来た(笑) 交流会の人脈で仕事につながったのは、これが最初でした。交流会に行き始めて大体3ヶ月くらいの話です」

――最高の卒業プレゼントじゃないですか。

***

何はともあれ、新卒フリーランスとして第一歩を踏み出したはこしろ先生。
彼女自身にとって、それは現時点でベストの選択だったのだと思う。

世の中いろいろな生き方があってもいいわけだし、普通に就職するだけが道じゃない。それこそ、多様な選択肢があってしかるべきである。

「今はまだはこしろ先生自身が新人、ということになると思うんですけど、この先1年もしたら新しいフリーランスが後輩として来ますよね。未来の後輩に対して、何か伝えたいメッセージなどがあれば……」

期待をこめて私は尋ねた。これでインタビューのオチはもらったぞ、と。

しかし、肝心のはこしろ先生は少しだけ考えてから、きっぱりとこう答えたのだった。

フリーランスは、おすすめしません!

ライター、絶句。

あ、言っちゃったよ……。そりゃ私だって前から思っていたけど、あえて、あえて言わないようにしていたのに……)

「私は結果的にフリーランスになりましたけど、誰かにすすめられたわけではなく、たまたま行き着く先がそうだったというだけなので」

そう、はこしろ先生は言い添えた。

「憧れとかカッコいいからって、フリーランスを目指す人もいると思うんですけど……まったく華やかな世界ではないし、むしろ自分から泥を被りに行くくらいの覚悟でいないと難しいのではないでしょうか」

そう、私も同じフリーランスだからわかる。脱社畜への道は、みんなが思っているほど甘くないのだ。

画像3

episode.5 はこしろちゃん、サグラダ・ファミリアを建てる

「もちろんフリーランスになる、と自分で決断して、助けを求めている人がいたとしたら。私は全力でサポートしたいし、ノウハウだとか経験とか、シェアできそうなものがあれば積極的にシェアしたいです。でも、それをあてにしてくる方が果たして成功できるか、というとまた難しいので……」

――人に助けてもらうことだけを考えているだけではダメ、ということですね。

「まったくの新人がフリーランスとして働き始めるなら、人脈や誰かの助けは重要だと思います。でも、いくら人脈があっても、自分で頑張っていない人のことは『助けてあげよう』とは思ってもらえないじゃないですか。だから、誰かに『助けてあげよう』と思わせるだけの行動を自分がしているかどうか、という点が大切なのかな、と思っていて」

――私、はこしろ先生を最初に知ったのはTwitterだったんですけど、ツイートを見る限りとにかくフットワークが軽い方、と思っていました。でも、そのフットワークの軽さの裏には……。

「打算が(笑)」

――いや、むしろ立派な戦略ですよ。

「新卒フリーランスだと、これまでの実績もスキルも、人脈も何もない状態で始まるので。そんなときに、誰かに私が差し出せるものというと、『え、やる気かな……?』みたいな(笑)。とにかく、全力でやる気をアピールして、やれることは全部実際に行動に移して、というスタンスでいないと。少なくとも口だけじゃない、ということを見せないことには、何も始まらないと思ったんです。だから、フリーランスの集まる交流会にも積極的に参加しましたし、イラストをどんどん見せて本気度をアピールしていました」

――なかなかストイックですね……。だからこそ、交流会で会ったいろんな人との出会いが有効に活用されて、今につながっているのかもしれない。そこで、はこしろ先生の場合、頼れるメンターとの出会いもあって。

「その方も何度か交流会でお会いした方だったんです。多分私のやる気を買ってくださったんだと思うんですけど、無償でコンサルとしてついてくださって。本当に恵まれていたと思います」

――特に、先輩や上司がいない我々にとっては、頼れるメンターとの出会いは重要ですよね。その方のコンサルを受けるようになったのは……。

「ちょうど3月末くらいでしょうか。私、実はそこから1ヶ月くらいはほとんど仕事をしていなかったんです。その方のアドバイスもあって、4月のうちは土台作りというか、直接は稼ぎにならないけれどやらなければいけないことに集中していました。だから、4月中はまったく表面的な数字には出ないことばかりやってました。名刺やサイトの用意やポートフォリオ作りもそうですし、実績作りのために無料でマンガを引き受けたり、自分でイベントを開くということもやって。もちろん、交流会にも行きまくってました。収入にならない活動ばかりしていたので、当然数字の面では結果が出なくて。自分としては不満が残っちゃったんですけど」

――焦りとかはなかったんですか?

「いいえ。そこは、もうメンターの方が『目の前のことに集中すれば大丈夫』という環境を作ってくださっていたので。長期的な目標があって、短期的な目標があって、と長期的な戦略を考えてくださっていたので、焦りはなかったですね。ただ、数字として目に見える結果がないので、不安ではありました」

――誰でもそうだと思います。

「でも、お金にはならないとはいえ、やらなければいけないことだったので。今思えば、その部分を省いたら土台がゆるゆるで。それこそ、その上にいくら実績を積み上げても、液状化現象でずむずむ沈んでいってしまうというか……

――家が建たない(笑)

「そうですね。幸い5月から少しずつその成果が出るようになって。でも、今でもまだ土台作りが全部完成したわけではなくて、引き続き――クリエイターとしてのマインド面も含めて、土台を作っていかなければならないと思っています。土台を作る点に関しては、作りすぎて困ることは絶対にないと思っているので。土台を固められるところはできるだけ固めていって、深掘りできそうなところは、深掘りしていって」

――立派な建物が建つように。たとえば、サグラダ・ファミリア(※)のような。

「あはは(笑)」


(※)スペインにある、天才建築家・ガウディ作の大聖堂。建築開始から100年以上経ってもまだ完成していない。


episode.5 白い崖の絵の話

1枚の絵を見せてもらった。それは、モノトーンで描かれた絵で、白と黒の世界の境界に――人が、白い壁にもたれかかるようにして立っている。

世界の果て、というか。現実と夢のはざまに、ふんわりと浮いたような気分になる絵だった。

「これは崖の絵なんです」と、はこしろ先生が言った。

イギリスのセブンシスターズという崖を描いたものだという。

「白い岸壁があって、奥に深い色の空がある。それで、ここにいる人は、実は絵の注文主様なんです。その方がセブンシスターズを訪れた際、とにかく白い岸壁が照り映えるのが美しく、心打たれたと仰っていて。だから、その印象を全面に出した絵にしようと思って」

はこしろ先生の仕事は今のところ、商用のイラストやマンガが中心だ。基本的にはクライアントから発注を受け、その要望に全面的に合わせる形で作品を仕上げる。


でも最近では、ちょこっと『アーティスト』として、自分の世界観を打ち出した絵も描いているのだそうだ。まったく宣伝はしていないそうだけど、それでも知り合いを中心に口コミが広まって毎月一定数の依頼があるという。

「もし、もっと仕事が増えたら、お仕事としてオープンにするかも」

と、はこしろ先生は笑った。

そうだ。大学を卒業してまだ2ヶ月なのだ。先のことはまったくわからない。

このままイラストレーターとして、活動の場を広げていくのかもしれない。アーティストとして、いつか個展を開くような作家になるかもしれない。

はこしろ先生が「余生」と呼んでいた地点は、実際は始発駅の改札前あたり。それこそ、目の前にはありとあらゆる可能性が拓けている。

型にはまらず、柔軟に。いつだって、自分らしく。

「ずっとお客様の気持ちに寄り添って、人を幸せにできるイラストレーターになりたい」

そう夢を語るはこしろちゃんの旅は、まだ始まったばかりだ。


【つづく。】


【謝辞】

今回のイラストは、すべてはこしろさんの手によるものです。この場を借りてお礼申し上げます。

また、本件インタビューは取材マッチングサービスLOOKME様のおかげで成立いたしました。後ほど、SPOTWRITEの方にも寄稿させていただければと思います。貴重な機会を与えていただき、ありがとうございます。







この記事が参加している募集

熟成下書き

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。 もしサポートをいただけました場合、関係者への謝礼や資料費に使わせていただければと思います。 これからも良記事を書けるように頑張りますので、引き続きよろしくお願いいたします。