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ブルーカラー労働って本当のところどうなの?

ブルーカラー神話をご存じだろうか?ブルーカラー神話とはブルーカラー労働を一切経験したことがないホワイトカラー労働者や、ホワイトカラーを目指す若者たちがツイッターで定期的に繰り広げる過度なブルーカラー労働賛歌である。

どんなブルーカラー労働が賞賛されるのかには流行りがあり、最近人気なのが『エアコン清掃』だ。酷暑が続く日本、一部の高齢者以外の世帯ではエアコンがフル回転している。そんなエアコンにつきものなのが内部に巣くう黒カビ問題だ。黒カビが繁殖したエアコンからは酸っぱい異臭がしてたまらない。そんな時に人々が救いを求める存在が今回の主役であるエアコン清掃業者である。

ツイッターでは『エアコン清掃の個人事業主はめちゃくちゃ稼いでる!年収1000万もゴロゴロしている!』というツイートが今年の夏何度も流れてきた。確かにこの酷暑、エアコンを使っていない世帯はほぼいない。エアコン清掃をネットで某有名家電量販店や某大手清掃業者に頼むと1万5千円近くかかる。作業時間は1時間程度。自前で初期投資して清掃道具を揃え技術さえ身につけやすく仕事を受けまくれば年収1000万も稼ぎ出せる!まだホワイトカラー労働で消耗してるの?時代はエアコン清掃業者!

書いていて眩暈がする内容であるが、残念ながらブルーカラー労働者の少ないツイッターではこういった言説でも支持されてしまったりする。しかし筆者はそんなツイッター民たちに声を大にして言いたい。

エアコン清掃業者が年収1000万なんて稼げるわけないだろ。

エアコン清掃の個人事業主なんて”年商”1000万ですら難しいレベルの仕事だ。実際に建築業界でエアコン設置や清掃などの下請けをやっている労働者の賃金や、ココナラなどのアプリでエアコン清掃の価格を調べればすぐにわかる。真夏の繁忙期はうだるような暑さの中で作業をし多少は稼げるかもしれないが閑散期には一気に仕事の依頼はなくなってしまう。その間はエアコンの設置などの仕事を引き受けている事業主が多いが、アプリなどによる個人事業主間の価格競争、ガソリン代などインフレによる経費の増加など、エアコン清掃・設置業者は到底儲かる割のいい仕事とはいえないのである。

このようなブルーカラー労働の経験が一切ないホワイトカラーたちのイマジナリーブルーカラー労働論に感化され、間違ったイメージを持ってブルーカラー界隈に足を踏み入れて後悔してしまう若者を少しでも減らしたい、幸福の国を夢見て海を渡り行方不明になった過去の人々のような目に合って欲しくない。そんな気持ちで今回はブルーカラー労働に20年以上携わってきた筆者が"ブルーカラー労働の本当のところ"を書いていこうと思う。

その前に、なぜツイッターでは根強いブルーカラー神話が存在しているのかについても触れておこう。一番大きな理由が”ツイッターにはブルーカラー労働者が少なく実態をみんな知らない”ということだ。

ツイッターの有名なネットミームに『フォークリフトに乗れ』というものがある。ニートやフリーターはフォークリフトに乗るような現場仕事に就いて人生を前に進めていけ、という意味で良く使用されているが、実際にこの言葉をツイートしているアカウントの多くはフォークリフトを運転したことがない人が多い。リーチとカウンターの違いなども知らないし、トラックの荷台に乗せたパレットをツメで押して位置を微調整をしたこともない。

文字のSNSであるツイッターでは高学歴なアカウントが目立つことが多い。彼らは仕事はほとんどがITなどのフォークリフトとは縁がないホワイトカラー仕事であり、末端のブルーカラー労働者とかかわる機会がない。あったとしてもエアコン清掃される側、車を修理される側など、客としてかかわるだけで彼らの待遇や給与までは知る機会がない。

ITにより管理によって日々忙しさと難易度が増し続けるホワイトカラー職から見て、エアコンを掃除しているブルーカラー労働はさほど難しくもない作業でお金を稼げるコスパの良い仕事に感じられるのだ。その結果生まれるのが"誰でも頑張れば大金を稼げるブルーカラー神話"というわけだ。

またホワイトカラー労働者の中でも税理士などの士業の資格を持つ人たちがかかわるブルーカラー労働者は、成功した中小企業の社長さんや個人事業主が相手である。ブルーカラー界隈の勝ち組である彼らはリスクを取って勝負に出てそれに勝利した者たちだ。彼らはその恩賞としてかなり凄い額の稼ぎをたたき出していることが多い。町工場の社長さんが自由にできるお金の額はそこらへんのエリートたちを圧倒しているのだ。

そんなブルーカラー界隈の王とかかわっている士業資格を持ったホワイトカラーの先生たちが『ブルーカラー界隈には夢がある!稼げる!』と感じるのは正しいことではある。稼げる王になれるのは数万のブルーカラー労働者の中でも数名しかいないことを除けばであるが……

このようにして生まれたブルーカラー神話であるが、ブルーカラー労働の実態とは当然かけ離れている。ではブルーカラー労働の本来の強みと弱みとはなんだろうか?建築や物流などブラック企業率の高い業界は省いて、今回は製造業界に絞って説明していこう。

ブルーカラー業界に就職予定の若者や、非正規雇用やブラック企業からの脱出先としてブルーカラーを考えている人は是非参考にして欲しい。

ブルーカラー製造業界のメリットとデメリットをそれぞれ5つにまとめるとこうだ。

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