アヴォイドノートを避けずに活かして仲良くなろう【ポピュラー音楽理論】
アヴォイドノート(Avoid note)、ポピュラー音楽理論に触れたことがあれば知っている方も多いと思います。避けるべき音、いわゆる禁則の一種です。今回はそんなアヴォイドノートを避けずに活かす方法を考えていきます。
アヴォイドノートとは
簡単に言うと、アヴォイドノートはポピュラー音楽理論で「長く鳴らすのを避けるべき」と言われている音です。教科書的には・・・
コードを鳴らした時にいずれかのコードトーンの半音上になる音(Cなら「ファ」、Emなら「ド」など)
メジャーキーのIIm(Cメジャーキーの場合はDm)での「シ」の音
がそれにあたります。
なぜ避けるべきと言われているのか
1. コードトーンと短9度の関係=強い不協和音
いずれかのコードトーンの半音上になる音は、1オクターブ上がると半音の関係が短9度の関係になります。
この短9度の音程は強い不協和音になりやすいです(ドミナントセブンスでの使用など例外もあります)。
ためしにピアノを使って左手で「ミ」、右手で1オクターブ上の「ファ」を押さえると、何ともねじれたような音になると思います。こういった音は強い不快感を与えたり、曲にブレーキが掛かったような重苦しい印象を与えたりします。
大事なのはこれを意図しない場面でうっかり使わないという事です。やるならそのつもりでという事ですね。
じゃあコードとメロが同じオクターブ内にあればいいのか?短9度にならなければいいのか?実はアヴォイドノートが避けられるのには他の理由もあります。
2. アヴォイドノートが強調されると意図せずコードが変わる
たとえばEmで「ド」の音が長く強調されたらそのコードはEmではなくCmaj7/Cのように聴こえます(文脈にもよりますが)。
譜面にEmと書いてあるということは、基本的にEmの響きが欲しいと思って良いでしょう。
逆に自分が曲を書いていて明確に「ド」のカラーが欲しいならCmaj7/EやEm(b6)と表記することをおすすめします。
3. IImでのアヴォイドはちょっと込み入ってる
『IImの6度音、Cメジャーキーで考えるとDmの時の「シ」の音がアヴォイドになります。これはコードトーンの「ファ」の音とトライトーンになって不協和になるからです。』という説明は多くの理論書に書かれています。
これはもう少し説明が必要です。なぜトライトーンになると都合が悪いのか、G7なんて元からトライトーンが入っていますが問題になっていません。
もちろんDmのコードなのにサウンドがG9/DやBm7(b5)/Dに聞こえ、意図せずコードが変わるという事もありますが、DmがG7系に近くなると都合が悪い理由にはもう少し特殊な事情があります。
現在のポピュラー音楽理論の元となったバークリーメソッドは、1950~60年代のいわゆるモダンジャズに強く対応するように作られています。
モダンジャズがそれまでのジャズと違ったのはとにかくツーファイブ(IIm7 → V7=CメジャーキーでのDm7 → G7や、それに似たコード進行)と呼ばれる進行を多用したことです。
詳しい説明は省きますが、ツーファイブによる緊張と解放のタイミングが、モダンジャズらしい「重さや減速感を感じにくい」軽快なドライブ感を作り出す上で大きな役目を果たしています。
しかし、せっかくのIIm7部分がV7っぽい響きになるとそれが崩れてしまいます。そうすると「モダンジャズとして」のノリが悪い音楽になってしまいます。
IImのアヴォイドには、そういった捉え方もあります。ツーファイブが前提でない音楽や、上記のようなノリが必要ない音楽で「V7に近い響きになる」ことを分かった上で使うのはアリだと思います。
特にIIm7にうまく6度音を入れるとV7に近いけど少し違う独特な印象になるので面白いです。
アヴォイドノートはどうするべき?
本題です。
自分の曲の中にアヴォイドノートを見つけたときにできること!
1. アヴォイドノートを変える
そのアヴォイドノートを変えても音楽的に問題がないのであれば変えましょう。
2. アヴォイドに合わせてコードを微調整
アヴォイドノートを残すひとつ目の方法は、コードトーンをアヴォイドノートに合うように微調整するという方法です。
このやり方は、大きくサウンド感を変えずに不協和音を解消できます。
下の例では、G7とメロの「ド」がぶつかっています。この場合はぶつかっているコードトーン「シ」を半音上げてメロに合わせます。コードはG7sus4になります。
次の例ではAmの時のメロで「ファ」の音が長く強調させています。この場合はぶつかっているコードトーン「ミ」を半音上げてメロに合わせます。コードはF/Aになります。あくまでAmの中で動いてるんだというメッセージを譜面上で伝えたい時はAm(b6)でもOKです。
3. アヴォイドノートを含んだ全く別のコードに変える
コードトーンの一部を変えるのもよいですが、思い切って全く違うコードにするのもアリです。
次の例では、2小節目のAmでメロの「ファ」が強調され、コードトーン「ミ」とぶつかっています。この部分をG#dimに変更します。
このように、アヴォイドノートを含んでいるコードをまるごと変えることで、不協和音を回避できます。
上の例のようにコードを全て変えることもあれば、ベースだけ元の音を保持する場合もあります。
このようにベースを保持した使い方は特に伝統的なミュージカルや映画音楽、ショービズ系の音楽で多く見られます。
4. 変えない方がかっこいい場合もある
「私はちゃんと聴き比べた上で変えないという選択をしました」ならそれでOKです。アヴォイドの許容範囲はテンポやスタイル、シチュエーションによって様々ですし、逆にそこがカッコイイという場合も十分あり得ます。
たとえばEDMなどでは、同じコードが続いているところにアヴォイドのリードが長く続いていても、強いビートとベースのドローンのおかげで不協和音が緊張感に昇華され、むしろ良い結果になることも多いです。
アヴォイドだから全部ダメとか個性だから全部いいとかじゃなく、様々なパターンを聴き比べて一番よいと感じるものを選ぶと良いです。
まとめ
アヴォイドノートは2音間の組み合わせで起こるので、ちょっとの油断で発生して曲のイメージを意図しない方向に持って行ってしまいます。
ですのでそのデメリットや傾向を知っておくことで対処できるようになる、そして何かを変えるにしろ変えないにしろ、それによって得られるメリットをうまく使いこなせるようになると良いですね。
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