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ニンジャスレイヤーTRPGリプレイ◆『いざ、参らんや剣が峰』

この記事はDiscordのプライベートサーバーにて2022/10/8に開催された「ニンジャスレイヤーTRPG」のセッションリプレイです。

内容は実際のセッションログに基づいていますが、リプレイ化にあたって読みやすく会話の順番や誤字・語調を調整したり、NMの描写やPCの行動を元に描写を加筆したりと大幅にノベライズ的な調整を加えています。あらかじめご了承ください。

◇シナリオ本文中に登場する略称
NM:ニンジャマスター、PL:プレイヤー、PC:プレイヤーキャラクター

◇参加者(PC/PL表記、敬称略イニシアチブ順)

NM:ぽにぽに
ヤナギ・ササキ:黒鷺あぐも

◆ヤナギ・ササキ(種別:モータル) 
カラテ    2  体力   3 
ニューロン  3  精神力  3 
ワザマエ   4  脚力   3 
攻撃/射撃/機先/回避  2/3/3/2 

◇装備や特記事項 
『シナイ』『サイバーサングラス』『テック・ガントレット』『テックレガース』『ショットガン』
『知識:伝統的アート』『知識:テックガジェット』『交渉:威圧』

◆忍◆ ニンスレTRPGモータル名鑑#XXX 【ヤナギ・ササキ】 ◆殺◆
ドージョーの弟子であり、弟子たちの中でも特に実力が抜きんでているといわれる同期3人のうちの一人。ぼんやりしたところがあるものの面倒見がよく、センセイであるモリノベからも目を掛けられている。将来の夢は特に持っていないが、当面はツバメのツバクローを切るのが目標。

◆武装
『シナイ』:近接武器・攻撃力0

◇本セッションの前提
1:PCはモータルである。
2:1対1のセッションである、ヤナギ以外のキャラはすべてNMが担当する。





今は昔、

山口県の山中にドージョーがありけり
その名をモリノベ・ドージョーといった




【いざ、参らんや剣が峰】





モリノベ・ドージョー
山口県山中に開かれている剣術の道場であり、十数名の弟子が寝泊まりしている。
孤児院も兼ねており、その全員が例外なくカタナの修行に励むことになる。
山の麓(徒歩10分の距離)には村があり、弟子たちはそこでサケを飲んだり働いて小遣いを得たりしている。

ある日、モリノベ・ドージョーの中

ヤナギに相対するモミジの剣先は一寸の震えもなく、
真っすぐに相手を見据えていた

モミジ・サンゲツ:「…………」

◆モミジ・サンゲツ(種別:モータル)
カラテ    4  体力    4
ワザマエ   8  精神力  4
ニューロン  4  脚力   4

攻撃/射撃/機先/回避  4/8/4/8
※モータルであるため『回避難易度』は難易度+1

◇装備や特記事項
『シナイ』『◉タツジン:イアイドー』『●連続攻撃2』

◆忍◆ ニンスレTRPGモータル名鑑#XXX 【モミジ・サンゲツ】 ◆殺◆
ヤナギとキシの同期であり、孤児。ドージョーの中で特に抜きんでた実力を持つ天才、具体的に言えばモータルなのにワザマエが壁超えしている。
誰に対しても分け隔てなく接する人格者でもあるが、天才であるがゆえに特にこれといった目標を持っておらず、それについて触れられると気まずい顔をする。

その細まった瞳は冷静なれど、この試合への興奮を爛々と孕んでいた

ヤナギ・ササキ:(いつ見ても美しい構えだ)

ヤナギ・ササキ:
そう思う。相対していることさえ忘れ見惚れそうになる
だがそのシナイにこうも誘われてはそうも言っていられない。

モミジ・サンゲツ:(打ってこい、キミから打ってくるんだヤナギ=サン)

ヤナギ・ササキ:シナイを強く握り裂帛のシュウトを叫び踏み込む。

NinjaSlayer : ヤナギ・ササキ:🎲4B6>=4 → ~2,~1,~3,~3 → 成功数0

黒鷺あぐも(PL):!?
黒鷺あぐも(PL):
開幕サンメンタイ
NM:なるほど
NM:牽制――というわけだね?やるじゃないか
黒鷺あぐも(PL)そうです(震え声)

ヤナギ・ササキ:「イヤーッ!」

ヤナギ・ササキ:
(より強く、より速く振り下ろせ。)
(そしてーーーこの一撃はかならず避けられる)
(もとよりモミジに当たるとは思っていない。)
(だが、その時必ず動きは決まったものになる。狙うはカウンター!)

モミジ・サンゲツ:「フッ!」

モミジ・サンゲツ:(なるほど、距離を詰めてきたか!)
目が細まる
同期と比べて慎重にこちらとの間合いを計りつつも距離を詰めてくる
お前らしいぞと知らずのうちに笑みが零れた

モミジ・サンゲツ:「ならば!」

モミジ・サンゲツ:『●戦闘スタイル:強化精密攻撃』

NinjaSlayer : モミジ・サンゲツ:
🎲4B6>=4 → ~1,6,~2,6 → 成功数2 → サツバツ!! #1
🎲4B6>=4 → ~2,~3,~3,~1 → 成功数0 #2

黒鷺あぐも(PL):極端!!
NM:まさかのサンメンタイ対決

ヤナギ・ササキ:◉アドレナリンブースト

NM:モータルなので回避難易度は+1されるぞ!
黒鷺あぐも(PL):回避難易度をNにして全部ぶっこむ!

NinjaSlayer : ヤナギ・ササキ:🎲4B6>=4 → 6,~3,~3,~3 → 成功数1

NM:お見事!
黒鷺あぐも(PL):だめか!
NM:しかし回避は成功だ!
黒鷺あぐも(PL):ちょっとサンメンタイ多すぎんよ~
NM:女神様見てます?!
黒鷺あぐも(PL):Megami is Watching You

モミジ・サンゲツ:(牽制を含み、こちらへのカウンターを見越しているというのなら……その全てを封殺するまで!)

モミジ・サンゲツ:「イヤーッ!イヤーッ!」

モミジが虚実を交えた2連撃をヤナギに見舞う!

ヤナギ・ササキ:「ク……ッ!イヤーッ!」

ヤナギは刈り取るような初撃をなんとか防ぐも、
直後に牽制の二撃目にカウンターを潰される!

モミジ・サンゲツ:「! これは当たると思ったのにな……」

モミジは一歩下がった
驚きと、確かな手ごたえに笑みが零れる

ヤナギ・ササキ:「こちらも後の先を取ったつもりだったんだが。お見通しか」
モミジ・サンゲツ:「そのカウンターを透かして当てようとしたけど……弾かれるなんてね……じゃあ、今度は君の番だ」

再度攻防が入れ替わる!

ヤナギ・ササキ:「そうさせてもらう!イヤーッ!」

ヤナギ・ササキ:◉特殊近接ステップ→強斬撃

NinjaSlayer : ヤナギ・ササキ:🎲4B6>=4 → 4,~1,~1,~2 → 成功数1

ヤナギ・ササキ:
モミジの美しい剣筋はワザマエで遠く劣る自分には真似など出来ぬ。
ならばこそ、己の剣を愚直に振るべし!
大上段の構えから繰り出す剛剣!

モミジ・サンゲツ:(小手先でない本気の一太刀!)受けに構える!
モミジ・サンゲツ:(来たな、ヤナギ=サン!受けてやる!)

NinjaSlayer : モミジ・サンゲツ:🎲5B6>=5 → ~2,~3,~3,~1,~2 → 成功数0

黒鷺あぐも(PL):まじかよ
NM:やられたー!

ヤナギ・ササキ:「……イヤーッ!!」

全身全霊を込めた一撃を振り下ろす。
その瞬間、ヤナギは何も考えていなかった

モミジ・サンゲツ:(愚直な一撃、交わすのは容易――だが、受ける!受けてやる!)

剣が交わった瞬間、目を見開いたのはモミジであった

モミジ・サンゲツ:(重い……ッ?!)
ヤナギ・ササキ:「イヤーッ!」

ヤナギがシナイを振り上げ、振り下ろす!
愚直にただひたすらに一振りに全てを籠める!
交わったのは一瞬、モミジのシナイが大きく弾かれる、
そしてーー

モミジ・サンゲツ:「グワーッ!!!」

ヤナギ・ササキ:「ハァ……ハァ……ハァ」
モリノベ・ヤスジ:そこまでいッ!!
ヤナギ・ササキ:アリガトゴザイマシタッ!
モミジ・サンゲツ:「はぁ……はぁ、アリガトゴザイマシタ…ッ

アイサツである。
ケンドージョーにおいてアイサツとは絶対の掟である

モミジもそれに答えた、悔しさと同時に晴れ晴れとした表情で
乱取りを終えたドージョー内にパラパラとした拍手が浮かんだ、
試合が最も長く続いたので他の弟子たちもその様子を見ていたのだ

弟子:ヤナギ=サンがイポン取ったぞ!」「キンボシ・オオキイだ!

ヤナギ・ササキ:「取ったぞ。イッポンだ」
モミジ・サンゲツ:「そのようだね……悔しいけど、ボクの負けだ」
ヤナギ・ササキ:「やっとこれでモミジの金でサケが飲めるな。いつも俺らが負けてたからな」

ヤナギは悔しさを滲ませるモミジにそう言って微笑む
内心叫びたいほどの喜びであった

モミジ・サンゲツ:「ちぇ、次はもっと高いサケで奢ってもらうからな」
ヤナギ・ササキ:「ああ。それは楽しみだ」

負けは負けだ、けれど負け続けるわけではない
だが次は勝つ、負けはしないとの眼光が確かにヤナギを射抜いていた

NM:その時、君たちとは別の場所で試合していた弟子の一人が吹き飛んだ弟子:グワーーーッ!!
ヤナギ・ササキ:「む」

黒鷺あぐも(PL):で、弟子―ッ!

ドージョーの主、モリノベの視線の先には上段に構えた男が一人
非常に不服そうな顔をして弟子の一人を見下していた

キシ・フナジマ:「ちょろちょろと逃げよって、ワシに勝てると思ったか、エエッ?!

弟子の胸ぐらをつかんで恫喝を開始する弟子、これがキシである

◆キシ・フナジマ(種別:モータル)
カラテ    5  体力    7
ワザマエ   4  精神力  3
ニューロン  3  脚力   3

攻撃/射撃/機先/回避  5/4/3/5
※モータルであるため『回避難易度』は難易度+1

◇装備や特記事項
『シナイ』『◉頑強なる肉体』

◆忍◆ ニンスレTRPGモータル名鑑#XXX 【キシ・フナジマ】 ◆殺◆
ドージョーの弟子でありヤナギの同期、孤児。弟子の中でも抜きんでた実力を持つ3名の1人であるが、頑固でやんちゃ、悪く言えば問題児。自分が認めた実力の者に対してしか敬意を払わないという悪癖がある。
最強になることを目標として挙げており、ドージョー一番の実力をもつモミジを倒すことを常々宣言している(そいて毎回モミジに叩きのめされている)。
ヤナギに対しては「モミジを倒すなら自分かお前か」と高く買っている。

モリノベ・ヤスジ:「………キシ=サン!」

◆忍◆ ニンスレTRPGモータル名鑑#XXX 【モリノベ・ヤスジ】 ◆殺◆
ドージョーの師範であり父、ケンドーのタツジンでありそのワザマエは推し量れない。厳格だが弟子想いであり、特に孤児たちには目を掛ける(手加減はしない)
趣味はボンサイと料理、酒を飲むとちゃらんぽらんになるため控えている。
少なくともヤナギ達が覚えている限り十年経っても外見が変わっていない。

ヤナギ・ササキ:「アイツ。またか」
モリノベ・ヤスジ:「キシ=サン! またお前は……」
キシ・フナジマ:「親父! しかしこいつは……」

ちら、とキシの視線がヤナギに向かった。
自分を庇って欲しいときにいつもする瞳だ。

キシ・フナジマ:「ちょろちょろ逃げて時間稼ぎよって、イラつくがよ!」
ヤナギ・ササキ:「キシ!ちょうど俺たちも終わった。元気が余ってるなら相手になるぞ。モミジが
モミジ・サンゲツ:エッ」それボクに言う?との視線であった
ヤナギ・ササキ:「俺は疲れた」モミジの方を向いて真剣に言った

モリノベ・ヤスジ:「ドージョーの外でやりなさい、まったく……」
ヤナギ・ササキ:「スミマセン。センセイ」
モリノベ・ヤスジ:溜息を吐いてモミジとキシを見やった、「血気盛んが過ぎるぞ」

モリノベ・ヤスジ:「それと、ようやったヤナギ=サン。そろそろモミジ=サンに土を誰かがつけなければと思っておったのだ」

モリノベがニッ、と笑いつつヤナギの頭を上から撫でた

モリノベ・ヤスジ:「ようやったぞ、ようやった」
ヤナギ・ササキ:「センセイ、やめてください。俺はもう子供じゃないんですから」すこし照れながら、しかしどこか誇りを感じてはにかむ。

キシ・フナジマ:「いよっし!勝負や、早う表にでようぜよ!」
ヤナギ・ササキ:「わかった、わかった。相手するのはモミジだが」
モミジ・サンゲツ:「はいはい……」
モリノベ・ヤスジ:「ヤナギ=サン、見てやりなさい。きっとキシ=サンは負けるから」
モリノベ・ヤスジ:「私は他の弟子を見てやらねばならん」
ヤナギ・ササキ:「わかりました」

もとより誰も追随できぬモミジと、
そのモミジに何度負けてもぶつかっていくキシ
それをそばで見守るのはずっと前からヤナギの仕事だった

キシ・フナジマ:「なんじゃと親父!ワシは今日こそモミジ=サンに勝つんじゃ!ヤナギ=サンにも負けておれんぞ!」
ヤナギ・ササキ:「相変わらず気合十分だな。だが、やるなら俺だって負けん」
キシ・フナジマ:「やる気十分じゃの、見とれよ。モミジ=サンを倒したら次はおんしじゃ!よーく見とれ!」

NM:モミジとキシの2人がヤナギを見て笑う
ヤナギ・ササキ:笑みを返す

モミジ・サンゲツ:「ヤナギ=サンが来てくれないと困るよ、負けて荒れてるこいつをなだめられるのはキミだけだ」
キシ・フナジマ:「なんじゃと!」
ヤナギ・ササキ:「はいはい。やるなら剣で。だろ?」
キシ・フナジマ:「おうとも!」

モミジ・サンゲツ:「そうだヤナギ=サン、ボクこそ次は絶対勝つからね」
ヤナギ・ササキ:「その様子じゃ同じ手はもう通じないだろうな。次はもっと速くしないと駄目か」
モミジ・サンゲツ:「筋力をつけないとな、ボクも……見誤って打ち負けるなんて屈辱すぎる」
モミジ・サンゲツ:「ま、ヤナギ=サンがそれだけ鍛錬したってことなんだけどさ」
ヤナギ・ササキ:「まぁな。俺も勝ちたいからな」

ヤナギは当然のことのように言う。
それが三人にとって自然な関係だからだ

キシ・フナジマ:「モミジ=サンに勝つなんてのぅ……ワシも負けておられんき! 2勝じゃ、2勝してワシが上に立つ!
ヤナギ・ササキ:「なら俺は3勝する
キシ・フナジマ:4勝じゃ!
モミジ・サンゲツ:「はいはい、まずは1勝からね」



3人はそのまま外に出て、試合をした
1分後に地面に延びているのはキシの方であった


その夜、麓の村の酒場にて

キシ・フナジマ:だああああああ~~~~っ!ぐやじい!!!

サケの入ったグラスを机に置いてキシが突っ伏した

モミジ・サンゲツ:「呆気なかったねぇ」

ゆっくりと一口づつちびちびやりながらモミジが遠くを見ている

ヤナギ・ササキ:「お前は突っ込み過ぎなんだよ」

ヤナギもそういってサケを飲む。
今日は水で割っていない正真正銘のドブロクだ。
モミジに勝てたちょっとした祝い酒であった

キシ・フナジマ:「しっかし、モミジ=サンに勝つなんてのぅ……今日は祝いの日じゃ、カンパイ!」

本日5度目のカンパイをヤナギに求めるキシは完全に酔っていた

ヤナギ・ササキ:「またするのか」

ヤナギ・ササキ:
そう言いながらも悪い気はしない。
同期のモミジに勝つのはキシだけでなく、ドージョー門下生全員の目標……あるいは夢であったのだから
稽古が始まる前にも終わった後もひたすらにシナイを振り続けることが出来たのもモミジという目標が近くにいたからだろう

モミジ・サンゲツ:「やめてよ、ほんと。キミたちがカンパイしているのを見ると悔しくてさぁ!」若干顔が赤くなったモミジが文句を言う
ヤナギ・ササキ:「ははは。悔しがれ。いつもの俺たちの悔しさをおもいしれー」
キシ・フナジマ:「うっへっへ、何をいっちょるか。今のドージョーで一番強いのはヤナギ=サンじゃ」
ヤナギ・ササキ:「門下生筆頭か。悪くない。だが、これだけやって次にはもう通じないのが分かってるのは溜まったものじゃないな」

キシ・フナジマ:「よ、日本一!」拍手してから少し黙ってから机に突っ伏して拳を叩いた
キシ・フナジマ:オレも勝ちたいんじゃけど!!
ヤナギ・ササキ:「おう」

ヤナギ・ササキ:
肯定する。その想いは簡単に共感できるものではない。
しかし、この三人が全員が持っているものだ。
故にただ肯定する

モミジ・サンゲツ:「うん、絶対次は同じ手は食わないから……絶対……!」
モミジ・サンゲツ:「明日だよ、明日……あ、休日か明日は。じゃあ明後日だ!」
ヤナギ・ササキ:「俺はあの一発で疲れた。今日はもう箸も持てん」そう言いつつグラスを口に運ぶ
ヤナギ・ササキ:「お前らほんとは似た者同士だよな……。知ってたけど」
キシ・フナジマ:「なに言いゆーがぜよ」顔を上げる「オレ達やろ、それを言うなら」
モミジ・サンゲツ:「そうだよ、奢りの癖にそんないいサケを頼むなんてさ」
ヤナギ・ササキ:「違いない」笑って酒を飲む
ヤナギ・ササキ:「昔の偉人は言った。サケを美味しく飲む方法は人におごってもらうことだ、と」
キシ・フナジマ:「ワシも奢られたいもんじゃのぅ……」

店員:「ツギナニニシマスカー」
モミジ・サンゲツ:「もう一杯、ヤナギ=サンは呑む?」
ヤナギ・ササキ:「ああ、いただくよ」

ヤナギ・ササキ:サケが好きだ。三人で管を巻くのは楽しい


夜はそうして更けていく、キシは遂に潰れてしまった
後に残ったのはモミジとヤナギである


モミジ・サンゲツ:「……あらら、潰れちゃったよ。まあ良いか……センセイに怒られないと良いけど」
ヤナギ・ササキ:「まったく。キシは強くないのに考えなしで飲むから」
ヤナギ・ササキ:「はは。明日は雷だな」
モミジ・サンゲツ:「明日……ああ、何か用事ある? ボクは今日で財布がすっからかんだから仕事をしないと」
ヤナギ・ササキ:「いや、俺も用事はない。ついでに金もない」
モミジ・サンゲツ:「一緒だ」ケラケラと笑ってから周りを見る

モミジ・サンゲツ:「ボクはこの村が好きだ、ドージョーも含めて」
ヤナギ・ササキ:「一緒だ」頷いて小さく笑う

モミジ・サンゲツ:「ここ以外知らないというのもあるけれど、ここで居心地が良いならそれでいいと思う」
モミジ・サンゲツ:「ボクらを拾ってくれたセンセイがいて、こうしてつるむキミたちがいる。逆に言えば……それがなければどこかに行っていたかもしれないな」
ヤナギ・ササキ:「そうだな」

ヤナギ・ササキ:
外の世界で生きる自分を想像しようとしてうまくいかなかった。
ただ棒を振り続ける生をしていなければ自分は何をしていただろうか?
それは自分なのだろうか?

ヤナギ・ササキ:「モミジはきっと外でもうまくやれてたさ」
ヤナギ・ササキ:「だけど、ここにいてくれてよかった。じゃないとキシが目標を失って手が付けられなかっただろう。……俺もな」
モミジ・サンゲツ:「そう……かな? まあこいつは外じゃうまくやれてなかっただろうけど」キシをつつく
モミジ・サンゲツ:「ヤナギ=サンはきっと平気……いやいや、居てくれないと困るな。やっぱなしだ」
モミジ・サンゲツ:「ボクもこいつも、キミのことが必要だったさ」
ヤナギ・ササキ:「そうか?」照れ隠しにすこしぶっきらぼうに応じる
モミジ・サンゲツ:「そうさ、こいつだってそうだ。キミに甘えてるんだよ」
モミジ・サンゲツ:「ボクにとっては弟みたいな存在だけど、こいつにとっちゃ兄みたいな存在なのさ」
ヤナギ・ササキ:「仲裁する俺からすれば二人とも弟みたいなものだけどな」
ヤナギ・ササキ:「キシが弟なのは意見の一致だな」
モミジ・サンゲツ:「ハ、次は絶対負かす」悪くないような表情をした

モミジ・サンゲツ:「だから、ま……ボクには言えないようなことをヤナギ=サンに言うこともあると思うけど……そちらが良いなら聞いておくれよ、楽しいだろ?なんやかんや」
ヤナギ・ササキ:「宥めるのも結構大変なんだぞ」
ヤナギ・ササキ:「だが悪くない」
モミジ・サンゲツ:「ボクも同じだ、悪くない」

モミジ・サンゲツ:「君たちがいてくれるおかげで、ボクの剣はきっともっと鋭く、繊細になれる」

ヤナギ・ササキ:
モミジの剣筋を思い出す。
身震いするほどの美しさ。
それはさらに研ぎ澄まされる。
見たい。とそう思った
そして、それと相対するのは自分でありたい

モミジ・サンゲツ:「……ボクはほら、才能があるからさ」
ヤナギ・ササキ:「ああ」

ヤナギ・ササキ:
自然に肯定する。疑いようがない事実だからだ
何度妬ましく、そして悔しく思ったことか

モミジ・サンゲツ:「こう、だからこそ剣を振ってきたのもあるけど……それと同時にさ」
モミジ・サンゲツ:「羨ましい、そう思う。キシ=サンも、キミも」
モミジ・サンゲツ:「何かに向けて、直向きに頑張れる。一刀一刀に思いを込められる」
ヤナギ・ササキ:「モミジはそうじゃないのか?」

ヤナギ・ササキ:剣を振る時に考えることなどそれだけと思っていた

モミジ・サンゲツ:「ボクは……正直、ね。モッタイナイってやつかな」
モミジ・サンゲツ:「才能があるのにそれを生かさないで腐らせるのは勿体ない、そう思ってしまう」
モミジ・サンゲツ:「今は……違うけどね、ヤナギ=サンに勝たないと」
ヤナギ・ササキ:「酔っているのか。珍しいな、モミジがそんなこと言うなんて」
モミジ・サンゲツ:「酔ってるに決まってんじゃん!」
モミジ・サンゲツ:「負けたのは初めてだ!」
ヤナギ・ササキ:「そうだな。なら、勝った甲斐があったというものだ」
モミジ・サンゲツ:「ちくしょう……よし、今日は帰って早く寝よう、このままだと悪酔いしちゃう」立ち上がる
モミジ・サンゲツ:「勘定はつけておくから好きに飲んでよ、ついでにキシ=サンを持って帰ってね」
ヤナギ・ササキ:「そうだな。明日も仕事だし」残ったサケを飲み干すとキシを背負う

NM:その時である

キシ・フナジマ:「(くくく……待て待て、ヤナギ=サン。モミジ=サンが居なくなったら話すことがあるんじゃ……)」
ヤナギ・ササキ:「むむ?」

NM:ぼそぼそとキシがヤナギに耳打ちする!ネタフリだ!
ヤナギ・ササキ:訝しむが、キシがそういうのであれば付き合うか

ヤナギ・ササキ:「あー……いや、やっぱり言葉に甘えることにする」
ヤナギ・ササキ:「もう少し一人で祝い酒するとするよ」
モミジ・サンゲツ:「そうかい? ま、勝ちに浸ると良いさ……今日ぐらいはね」
ヤナギ・ササキ:「次も勝つさ」

「ボクは勝つからな!」と宣言をしてからモミジは店の外に出た
モミジが店の外から出て行って一分、キシは周りを伺いつつ起き上がる

ヤナギ・ササキ:「モミジも大概負けず嫌いだよな……。人のことは俺も言えんか」
キシ・フナジマ:「行ったか?」
ヤナギ・ササキ:「行ったな」
キシ・フナジマ:「よし、なら最初に……カンパイじゃ!」
キシ・フナジマ:「うっはっは、ヤナギ=サンが勝ってワシも嬉しい!」
ヤナギ・ササキ:「カンパイ。もう6回目だぞ」
キシ・フナジマ:「何度しても良いもんじゃきのぅ」

ヤナギ・ササキ:「そこまで喜ばれるとは思わなかったな」
ヤナギ・ササキ:「だが、祝われるのは素直に嬉しいよ」
キシ・フナジマ:「ワシとお前、どっちかが先と思っておった」
ヤナギ・ササキ:「ああ。俺もだ」

キシはその後、少しばかり真面目な顔をした

キシ・フナジマ:「ワシは強くならねばならん、最強を目指すためにのぅ」
ヤナギ・ササキ:「ああ」

キシ・フナジマ:
キシはケンドーを始めて十数年、”最強”、そればかりを追っていた

ヤナギ・ササキ:
キシの理想を笑いはしない。
ケンドーの道を修めた者であれば誰しもが夢見る理想だ。
そしていつか忘れてしまう……
それを公言して憚らないキシを好ましく思っていた

キシ・フナジマ:「やけんどこのまま鍛錬だけを重ねてもいかん思うた」
キシ・フナジマ:「ワシに足りないのは……経験じゃ!」
ヤナギ・ササキ:「むむ?野良試合でもするつもりか?センセイは禁じていたのでは」
キシ・フナジマ:「そうじゃ、センセイは禁じておる……じゃがのぅ、ワシは実力が足らん」
キシ・フナジマ:「このままではモミジ=サンはおろか、ヤナギ=サンの後を追うことになる……他の者とは違う何かを得る必要がある!」
ヤナギ・ササキ:「ふむ」

ヤナギ・ササキ:
キシの言うことは一理ある。自分がモミジに勝つためにモミジとは異なる剛剣の道を目指したのと理屈は同じだろう

キシ・フナジマ:「くっくっく、ヤナギ=サン。ワシは野試合をするわけじゃない」
ヤナギ・ササキ:「じゃあ、何をするつもりなんだ?」
キシ・フナジマ:「ワシは見たんじゃ」にししと笑った
ヤナギ・ササキ:「見た?なにを」
キシ・フナジマ:「親父が裏山に入っていくのを見たことはあるき?」
ヤナギ・ササキ:「何度か見かけたことはあるな」

ヤナギ・ササキ:
別に確かめようとしたわけではないが、偶然見かけたことはある。
門下生に煩うことなく一人で修業するためか、薬草でも採りに行くと思い納得していたが……

キシ・フナジマ:「ワシもじゃ、それを追うたことはあるがいつも巻かれちょった」
ヤナギ・ササキ:「追ったのか」
キシ・フナジマ:「不思議と思うじゃろ、見せられん何かがあるとワシは思うた」
キシ・フナジマ:「そう、アレじゃ……秘密の鍛錬場じゃ!」
ヤナギ・ササキ:秘密の鍛錬場
キシ・フナジマ:「親父の強さの秘密じゃ!」
ヤナギ・ササキ:「確かにセンセイは馬鹿みたいに強いが……。素直に聞いてみればいいだろ?」
キシ・フナジマ:「はん、ワシが聞いたことがない思うたか?」
ヤナギ・ササキ:「……。そうだな、スマン」
キシ・フナジマ:「何度も聞いたけんどそのたびにはぐらかされちゅー……」
ヤナギ・ササキ:「むむ。それは確かに怪しいな」

ヤナギ・ササキ:
センセイに隠し事をされた覚えはない。
あっても理由があってのことだろう。
だが、裏山に入る程度でわざわざ何を隠すというのか

キシ・フナジマ:「そして見つけたんじゃ、この前にこっそりと裏山を探し回って……隠された入り口をのぅ」
ヤナギ・ササキ:「お前、本当に即断即決だな」
ヤナギ・ササキ:「それでなにがあった」少し身を乗り出す。師の秘密に興味が出てきたのだ
キシ・フナジマ:「いや、中はまだ見ちょらん」
ヤナギ・ササキ:「なんだ」
キシ・フナジマ:「親父がそこまで隠すがは危険があるかもしれんし……」
ヤナギ・ササキ:「それはそうだな」
キシ・フナジマ:「ワシは一人だけ秘密の特訓で強うなりたいわけじゃない」

黒鷺あぐも(PL):意外!あんがい冷静
NM:そうだね
黒鷺あぐも(PL):センセイへの信頼があるだろうしね
NM:一人だけ強くなりたいわけではないのだ
黒鷺あぐも(PL):優しさ……

キシ・フナジマ:「ヤナギ=サン、頼みがある」
ヤナギ・ササキ:「おう」
キシ・フナジマ:「明日、ワシと一緒に洞窟へ行って中に何があるかを確認しよう」
キシ・フナジマ:「ワシは一人で強うなりたいわけじゃない……ヤナギさんがおってこそじゃ、共に強くなるんじゃ」
ヤナギ・ササキ:「明日か?明日はモミジと仕事があってな。行くとしたらその後になるぞ」
キシ・フナジマ:「仕事はどうせ昼上がりやろう、その後や」
キシ・フナジマ:「どうぜよ、ヤナギ=サン」

キシはヤナギを正面から見た、至極まじめな顔だった

ヤナギ・ササキ:「おう」

ヤナギ・ササキ:
強くなりたい。その想いはみな同じだ。
今日は勝てた。だが、次はそうはいかないことは分かっている。
今日だけではだめだ。ずっと並び立っていたい

キシ・フナジマ:「ほうか!ほうか!」そのまま何度も頷く、笑みが零れた
ヤナギ・ササキ:「仕方ないな。だが、センセイにバレたら怒られるのも一緒だぞ」
キシ・フナジマ:「うっ!!」
ヤナギ・ササキ:「一緒に強くなるんだろ。一人で逃げるなよ?」

キシは迷ったが、首を横に振った

キシ・フナジマ:「いやワシじゃ、ワシが一人でやったと言う」
キシ・フナジマ:「ヤナギ=サンは付き合わせた身分じゃ、怒られたとしたらワシが悪いんじゃ」
キシ・フナジマ:「ワシはヤナギ=サンを連帯責任を負わせるために誘ったんじゃないき」
ヤナギ・ササキ:「む」

ヤナギ・ササキ:
キシはこう見えて義理堅いところがある。ヤナギに責任を負わされたつもりはないが、そう言ってもおそらく引かないだろう

ヤナギ・ササキ:「わかったよ。じゃあ、それでいこう」

ヤナギ・ササキ:キシがやったということにして、叱られた時はそれとなくフォローすることにしよう
キシ・フナジマ:キシは頭がよくはなかった、だがしかし、ユウジョウというものは人一倍に分かっているつもりであった

キシ・フナジマ:「ユウジョウ!」
ヤナギ・ササキ:「ユウジョウ」

そして7度目のグラスのかち合う音が店内に響く
静かに響いた音は、店内にわずかに広がってはやがて消えていった



次の日の午後

黒鷺あぐも(PL):ケイブ……
NM:AIってすごいよね
黒鷺あぐも(PL):え!?これAI
NM:はい。
黒鷺あぐも(PL):すげぇ!普通に写真だと思った!

NM:ヤナギ、そしてキシはモミジと共に仕事を終わらせてからドージョーを抜けて裏山へと向かった

キシ・フナジマ:「こっちじゃ」
ヤナギ・ササキ:「こんな場所があったなんてな」
キシ・フナジマ:「ワシも裏山に入ったことはあるが気づいたのは初めてじゃ」

NM:ではここで聞き耳……というわけではないが、ニューロンで中の様子を探ってみよう。判定は最低hだ
黒鷺あぐも(PL):わお

NinjaSlayer : ヤナギ・ササキ:🎲3B6>=5 → ~1,~2,~1 → 成功数0

黒鷺あぐも(PL):サンメイタイが多すぎる
NM:コインかな?
黒鷺あぐも(PL):コイントスは草
NM:ファンブラー過ぎない??
黒鷺あぐも(PL):NMもファンブラーだからセーフ!

ヤナギ・ササキ:「……いくか」

ヤナギは何か考えているようで何も考えていない男だった

キシ・フナジマ:「暗くてなんもわからんのぅ!」

キシも大体同じであった、
違うところは何も考えてないような顔をしているところだ

2人はそろそろと中へと足を踏み入れていく……

ヤナギ・ササキ:ロウソクでも持ってくるべきだったな」
キシ・フナジマ:「こういう時はカナリアを持っていくんじゃったか、いや……センセイは入っているはずじゃからのぅ……」
ヤナギ・ササキ:「鉱山じゃないしガスは大丈夫だろ。キシ=サンは鼻が効くし」
キシ・フナジマ:「そうか?」キシは照れた
ヤナギ・ササキ:「ちょっと犬っぽいところあるからな」
キシ・フナジマ:「照れるのぅ……」鼻の下をしきりに擦る

洞窟の中はひんやりとしているが酸素はあるようだ。
だが風の流れは感じない。
一直線に奥へとづついているが、人の気はほとんどなかった

ヤナギ・ササキ:「自然洞窟か?どこかに水が流れてるのかもしれないな。気をつけよう」
キシ・フナジマ:「う、おお……わかったヤナギ=サン……」

二人は進んでいくと……一段広がった場所に出た、モノは置いていない
何もない部屋だ、まったくもって

NM:ではヤナギはここでニューロン判定を行おう

黒鷺あぐも(PL):うおお!せめてダイスを目指せ!
NM:イケー!

NinjaSlayer : ヤナギ・ササキ:🎲3B6>=5 → ~2,~3,6 → 成功数1

NM:スゴイ!UH達成!
黒鷺あぐも(PL):ヨシ!(サンメイタイから目を逸らしながら)
NM:勝てば官軍よ
黒鷺あぐも(PL):いつものことだけど私のダイスって4の出目ないのかな?
NM:サンメンタイチャン可愛いね
NM:カワイクナイ
黒鷺あぐも(PL):
偽装ロクメンタイを許してはいけない

NM:ではヤナギは何もない部屋に違和感を覚えた
NM:あまりにも何もなさすぎるが故に……何かあるはずなのだ

ヤナギ・ササキ:「ここも何もない……。いや」
ヤナギ・ササキ:徐々に暗闇に慣れてきた視界に違和感を感じる

NM:ヤナギは壁に穴が開いていることに気が付いた!そして床のワイヤートラップにも!フキヤだ!

【フキヤ】
ニューロン判定に失敗した状態で部屋に踏み込んだ場合、ワザマエ判定UHを行う。
失敗した場合フキヤが命中し、それに応じたダメージを追う。ニューロン判定に成功した場合はワザマエ判定Nで解除を行える。

黒鷺あぐも(PL):あぶね~!

ヤナギ・ササキ:「!」
ヤナギ・ササキ:「止まれ、キシ=サン!」
キシ・フナジマ:「なんじゃ!」ワイヤーの真上で足を止める!
ヤナギ・ササキ:「罠だ。今外すから一歩も動くなよ」
キシ・フナジマ:「なにィ?!」

NM:今回はUH判定に成功したのでワザマエ判定Eで判定としよう。
黒鷺あぐも(PL):やったぜ(ワザマエ2)
NM:解除に失敗したとしても時間を使うだけで起動するわけではないからセーフとするぞ
黒鷺あぐも(PL):助かる~

NinjaSlayer : ヤナギ・ササキ:🎲2B6>=3 → 3,6 → 成功数2

NM:スゴイ!
黒鷺あぐも(PL):山暮らしだからこの手の罠は詳しいんだろうね
NM:器用なもんだ!

NM:ゴウランガ!ヤナギはあっさりとトラップを看破したばかりか、解除も容易く行う!
ヤナギ・ササキ:罠を起動しないように気をつけながら手早くワイヤーを解除する

ヤナギ・ササキ:「獣除けにしちゃ手が込んでるな」
キシ・フナジマ:「タツジン!」感嘆の唸りだ
キシ・フナジマ:「まっこと、ヤナギ=サンは器用じゃのぅ……」
ヤナギ・ササキ:「村の猟師のおっさんに教わったんだ」

ヤナギ・ササキ:
カタナ一筋であるが興味は様々な方向に及んでいた。
村の老人や流れの琵琶法師などから話を聞くのは好きだった

キシ・フナジマ:「猟師に、はぁ~……人脈も広いもんじゃのぅ」
キシ・フナジマ:キシは対象的に剣一筋過ぎて他のものに気を配る余裕はないのだった

ヤナギ・ササキ:「大したことじゃない。もう動いて大丈夫だぞ」
キシ・フナジマ:「ふぃ~、助かった……しかし、もし気づいてなかったら何が飛んできたか……」
ヤナギ・ササキ:「最悪は獣狩りの毒があったかもしれん。気をつけて進もう」
キシ・フナジマ:「おう!」

二人は再び細い通路を抜けていく

キシ・フナジマ:「そういえば、ヤナギ=サン……ツバメは切れたか?」
ヤナギ・ササキ:「ツバクローのことか?いや、まだだ」
キシ・フナジマ:「ほうか……」
ヤナギ・ササキ:「速度が足らんのか、踏み込みが足らんのか。まだ届かないんだ」
ヤナギ・ササキ:「おかげで軒先の巣は絶賛大きくなっている」

キシはヤナギがツバメを切ろうとしている姿を何度か見ていた
彼が一直線に空を見る姿が好きだったし、
剣に打ち込む以外で唯一飽きずにできることだったかもしれない

キシ・フナジマ:「なるほどのぅ……つまり」
キシ・フナジマ:「ツバメにとってヤナギ=サンは恐れるに値する存在ってことじゃのぅ!」
キシ・フナジマ:「大したもんじゃき!」

ヤナギ・ササキ:「そうか?そういうものか」
ヤナギ・ササキ:逃げるのは相手を恐れるから。その発想はなかった
キシ・フナジマ:「当たり前じゃ!ワシなら何も怖くない相手が下で剣を振っていても何も思わんからのぅ!」
ヤナギ・ササキ:「確かにそうだ。キシ=サンは物知りだな」
キシ・フナジマ:「うははは! 照れるき!」

ヤナギ・ササキ:
心から思った。
キシはヤナギが見落としている本質を教えてくれる

NM:キシが頭を掻きつつも歩くと、また広い空間に出た。奥にはさらに通路が続いているだろう

ヤナギ・ササキ:「また広いところに出たな」

ヤナギ・ササキ:
罠を警戒しつつ慎重に進む
今度は上からきたりするかもしれない

キシ・フナジマ:「おう……さっきのような罠に気をつけねば」

NM:罠に気を付ける場合は難易度……eだ
黒鷺あぐも(PL):コイントスだと駄目な難易度

NinjaSlayer : ヤナギ・ササキ:🎲2B6>=3 → 6,6 → 成功数2

NM:なんということだ
黒鷺あぐも(PL):出目が急~

NM:ゴウランガ!
ヤナギは気づいた……罠はない
クリティカルを出したヤナギは気づく……罠”は”ない

黒鷺あぐも(PL):なにがあるんだ(ゴクリ)

NM:
重要なのは地面だ……草を引いたなにか、喫食跡、何かを引きずる跡!
それらが指し示すものはつまり大型の獣!

黒鷺あぐも(PL):やべぇ

ヤナギ・ササキ:「キシ=サン。そのまま正面をみたまま聞いてくれ」
キシ・フナジマ:「なんじゃ?」
ヤナギ・ササキ:「どうやらここにはもう先住者がいたらしい。それもさっきの罠を避けられるくらい賢いか、気にする必要がないほどデカイ奴」
キシ・フナジマ:「…………?!」えっ、て顔でヤナギの方を向く

ヤナギ・ササキ:
まっすぐ暗闇に目を凝らしながら言う。
いつその先からソイツが現れるか分からないからだ

「前を見ろ。隙を見せるな。それでそのまま後ろにゆっくり下がろう」

暗闇の向こうで息をひそめる者が奥にいる。そんな想像が膨らむ

NM:
そのすぐ後に二人は気づくだろう、獣は確かにいたと
そしてもう一つ気づくだろう、手遅れであったと
物音がしたのは、キシが見る方向ではなくヤナギの見る方向……後ろだ

黒鷺あぐも(PL):なん……だと……

大型の獣:ずる、ずる、ずる……

NM:きわめて大柄な獣がヤナギの背後、即ち入り口の方向からやってくる音! クマだ!

◆カラテクマ(種別:アニマル) 
カラテ    7  体力   8 
ニューロン  5  精神力  3 
ワザマエ   3  脚力   3 

攻撃/射撃/機先/回避  7/5/4/- 

◇装備や特記事項 
『◉頑強なる肉体』『●時間差』『●連続攻撃2』
『猛攻(サツバツが出ない代わりに全ての攻撃に痛打1が付与される』『装甲1』

黒鷺あぐも(PL):クマつええ!

キシ・フナジマ:「やっ、やや、ヤナギ=サン……」
ヤナギ・ササキ:「しまった、入れ違いだったのか。隠れろ!」
キシ・フナジマ:「どこに逃げるんじゃ! もういけるところは奥しか……」

カラテクマ:(極めて獰猛な鳴き声を想像してください)
黒鷺あぐも(PL):ゴジラの咆哮を流しておきます

ヤナギ・ササキ:「なら奥だ!どこかに繋がってるかもしれない」
キシ・フナジマ:頷くと同時に走り出す!

NM:二人は部屋を抜けて奥の通路へ!続く、まだ続く!
ヤナギ・ササキ:「ハァ……ハァ!」がむしゃらに走る!走る!振り返る余裕もない。振り返れば巨大な肉食獣がすぐそこにいるかもしれないのだ

NM:そして……袋小路
ヤナギ・ササキ:バカな……行き止まりだと
キシ・フナジマ:「シマッタ!」

NM:ではここでニューロン判定だ、何かがあるかもしれない。
黒鷺あぐも(PL):うおおお

NinjaSlayer : ヤナギ・ササキ:🎲3B6>=4 → ~3,6,4 → 成功数2

NM:ゴウランガ!
黒鷺あぐも(PL):UHまではなんとか!

NM:ではヤナギは見つけるだろう、奥の奥に突き立つ双剣。薄暗い洞窟の中でも異様に存在感を放つ2振りのカタナ
ヤナギ・ササキ:「これは……カタナか?」何故ここに?疑問が頭に浮かぶ

NM:ヤナギは持っているだろうか、カタナに関する知識を
黒鷺あぐも(PL):あるぞ『知識:伝統的アート(カタナ)』が!

NM:ではもうニューロン判定は不要だ


なぜならばそのカタナは知識のあるものならば誰もが知る一品
かのミヤモトマサシの愛刀たる刀匠キタエタの作品

その銘はそれぞれこう伝えられている――

『ナンバン』『カロウシ』と!


▷近接武器『ナンバン』『カロウシ』
・ある程度の技量がある者にしかこのレリックの力は発揮させられない。
・壁超えしていない者であれば『カラテ判定+2』『カラテ判定難易度-1』『装甲貫通1』が付与される。

黒鷺あぐも(PL):超大業物きた
NM:ヤバい級のスゴイカタナです

ヤナギ・ササキ:浮かんだ疑問はすぐさま忘れ去られた。後ろから迫る危機について忘れるほどの衝撃
ヤナギ・ササキ:「バカな。なんでこんなところに」
キシ・フナジマ:「ど、どうするんじゃヤナギ=サン!なにを呆けちょる?!」

ヤナギ・ササキ:震える声で呟くと、崩れ落ちるようにカタナの前に膝をつく。間近で見れば間違いない。このカタナは
ヤナギ・ササキ:「ナンバン。カロウシ」
キシ・フナジマ:「なに?!」

NM:驚くキシもヤナギの下に駆け寄ってカタナを見た
キシ・フナジマ:「………ヤナギ=サン、ほんまか? これが……?!」
ヤナギ・ササキ:「親の顔を見間違えたって、このカタナを見まちがえるものか。これはまさしくナンバンとカロウシだ!

キシは喉を鳴らす、ヤナギが言うには間違いないだろう
なぜこんなところにという疑いはあるものの、ヤナギへの信頼が勝った

ヤナギ・ササキ:「ブッダは俺たちを見捨てなかった」
キシ・フナジマ:「………」無言で頷く、ヤナギが何を戦としているのかが理解できた
ヤナギ・ササキ:「やるしかない。キシ=サン」
キシ・フナジマ:深呼吸をしてヤナギを見る「どっちか一本じゃ、こんなカタナ、モミジ=サンでも二振り同時には使えるもんじゃない。ヤナギ=サンが一本、ワシが一本じゃ」
ヤナギ・ササキ:「ああ」

ヤナギ・ササキ:
カタナの内包するキアイに手が震えるようだ。
だが、これは自然なことのようにも思えた

ヤナギ・ササキ:俺とキシ=サンで二振りのカタナだ
キシ・フナジマ:「はっ……」カタナを手に取る、震えが収まった「不思議なもんじゃ、ヤナギ=サンと剣を振るうと思ってワクワクしちょる」
ヤナギ・ササキ:「そうか」
ヤナギ・ササキ:「実は俺もだ」

キシはヤナギを見て頷いた、もう迷いはない

ヤナギはカタナの柄を握る。
カタナのカラテが移ったかのように体にカラテがみなぎる

NM:ここで待っていてもいい、奇襲を掛けてもよい
黒鷺あぐも(PL):クマはもうそこまで来てるのかな?
NM:そうですね、音からして大部屋でうろうろしているようです
NM:誰かの匂いは感じたけどどこにいるかはまだ分かっていないといった様子ですね
黒鷺あぐも(PL):迫ってくるなら居合しようかと思ったけど戦うなら大広間がいいよね
NM:奇襲を掛ける場合先制を行い、1ターンは自由に切りかかれるでしょう
NM:カラテクマはとても強いが回避能力はない!
NM:しかし装甲が1付与されている……普通のモータルであれば勝てないだろう!
黒鷺あぐも(PL):なら仕掛けるか……奇襲

ヤナギ・ササキ:『攻めること火のごとし』ミヤモト・マサシも言っていた。

黒鷺あぐも(PL):あと泥棒がバレたら家を燃やせって

カタナを握ればマサシの力が流れ込んできているようだ!
キシはヤナギが打って出る気だと察した

ヤナギ・ササキ:「……」コクン
キシ・フナジマ:
「………!」コクン

視線に応じ、ヤナギがキシに無言で頷く
二人に言葉は不要であった、
駆け出す足音は今や完全に一致して一人分となっていた

まさに二振りの剣
剣士の極みに至れば剣と合一できるという。
まるでそれを実現したかのような万能感が二人の体に満ちる

キシは全てをヤナギに預け、そしてヤナギのすべてを預かる!
剣と自分、そしてもう一振りと混然一体となりて!

キシ・フナジマ:いくぞぉ!
ヤナギ・ササキ:おう!

◆戦闘開始◆

NM:ヤナギ・キシ・クマは同一イニチアチブだ!
黒鷺あぐも(PL):互角のバトルだ
NM:どっちから切りかかってもいい、クマは1ターン目は動かないぞ
黒鷺あぐも(PL):では上段から切りかかる自分から
黒鷺あぐも(PL):追撃をキシに頼んだ!
NM:イケーっ!

ヤナギ・ササキ:通常移動からの強斬撃

NinjaSlayer : ヤナギ・ササキ:🎲6B6>=4 → 5,4,~3,5,5,~2 → 成功数4

NM:よし!
黒鷺あぐも(PL):ダメージは2

ヤナギ・ササキ:イヤーッ!

暗闇を切り裂くような裂帛のシャウト!
そして残光を残しながら大業物の軌跡が輝く!

カラテクマ:GWOOOOOO?!

油断をしていたクマは
奥の通路から斬りかかってきた人間への察知が遅れる!
硬い毛皮、肉質をトーフめいて切り裂くその鋭さ、
まさしくレジェンド級レリックのそれ!

ヤナギ・ササキ:「斬れる……このカタナなら!」
キシ・フナジマ:「続く!」

キシと切り替わるように
地を回転するコマめいて回りながらヤナギが下がる!

キシ・フナジマ:強攻撃宣言

NinjaSlayer : キシ・フナジマ:🎲5B6>=4 → ~2,~3,4,~1,~1 → 成功数1

キシ・フナジマ:「イヤーッ!!」ヤナギの後ろから力の限り振りぬく一閃!スイッチバック!
カラテクマ:WOOOOOOOOO!!」クマがもだえ苦しむ!
ヤナギ・ササキ:「やれる。俺達なら!」
キシ・フナジマ:「効いちょる!効いちょるぞ!ヤナギ=サン!いける!」
ヤナギ・ササキ:「ああ!だが油断するな、来るぞ!」

NM:2ターン目はクマの攻撃からだ!
黒鷺あぐも(PL):クマー!
NM:両方にカラテ攻撃!
NM:ヤナギ→キシ

NinjaSlayer : NM:🎲4B6>=4 → ~2,~1,6,~2 → 成功数1
NinjaSlayer : NM:🎲3B6>=4 → ~3,~1,5 → 成功数1

NM:両方成功!
黒鷺あぐも(PL):コワイ!

NinjaSlayer : キシ・フナジマ:🎲5B6>=5 → 6,~3,~3,~1,~3 → 成功数1

ヤナギ・ササキ:◉アドレナリンブースト(戦闘1回)

NinjaSlayer : ヤナギ・ササキ:🎲4B6>=4 → 5,~3,~1,~3 → 成功数1

NM:タツジン!
黒鷺あぐも(PL):アブネェな!
NM:ここまでぎりぎりとは……女神様わかってるな!
黒鷺あぐも(PL):ずっとチラチラしてくるサンメイタイ
NM:怖くない?

クマもやられるばかりではない!
野生動物とは思えぬ俊敏さで反攻を掛ける!

カラテクマ:「グォーッ!グォーッ!」
キシ・フナジマ:「!」キシはとっさにバックステップで回避!
ヤナギ・ササキ:「腕が長い!」カタナが届かぬ!くぐるようにして回避!

キシ・フナジマ:「ヤナギ=サン、ワシが先に!」前衛のヤナギが構える!
ヤナギ・ササキ:「任せた!」クマの気を引きつつ下がる

キシ・フナジマ:強攻撃

NinjaSlayer : キシ・フナジマ:🎲5B6>=4 → 4,6,~1,~2,6 → 成功数3 → サツバツ!!

黒鷺あぐも(PL):サツバツ!強打だ!
NM:モータルは痛打だ!命中!
黒鷺あぐも(PL):ギリギリのところをタップダンスする女神

キシ・フナジマ:イヤーーーッ!!」クマの顔面を縦に立つ!
カラテクマ:「?! GWAAAAAAAAAAA!!」血しぶきが目つぶしになった!

NM:クマは【崩れ】となる!(クマに対しての攻撃難易度-1)

ヤナギ・ササキ:舌を巻くような見事な一撃だった。これまで見てきたキシの太刀筋のどれとも異なる。だがそれに負けてはいられない。己の手の中にも並び立つカタナがあるのだ!

キシ・フナジマ:「ヤナギ=サン!」
ヤナギ・ササキ:「おう!」

ヤナギ・ササキ:集中強斬撃!

NinjaSlayer : ヤナギ・ササキ:🎲6B6>=3 → 4,~2,4,~2,~2,6 → 成功数3

NM:ゴウランガ!命中!フィニッシュブローだ!

ヤナギ・ササキ:「イィィ……」

ヤナギは自然を構えを下へ、鞘に納めるように動く
あの丸太めいた首をはねるためにはより大きな力がいる。
より大きな速度が!
そのためには踏み込みが必要だ

キシは息をのんだ、見られる!ヤナギの出せる最大の一撃が!

キシ・フナジマ:「いけ……ヤナギ=サン、行け!」
ヤナギ・ササキ:「……ヤァァーー!!

強く、力強く踏み込む!それ同時にカタナを振るう。イアイ!
下段から逆袈裟に振りぬかれたカタナはカラテクマを切り裂く。

ヤナギ・ササキ:「・・・」

振りぬいた姿勢のままヤナギの動きが止まる
目つぶしされたクマはその一撃を真正面から食らい、
ザンシンするヤナギの真正面で倒れた

ズシィン……巨体が倒れる重たい轟音
洞窟の天井からパラパラと小石が落ちるほどの振動の後は、静寂――

キシ・フナジマ:「………勝った……?!」
ヤナギ・ササキ:「フゥー……」

ヤナギはザンシンをしながら大きく息を吐く
カラテクマはそれから動くことはなかった――
ヤナギ、そしてキシはこの強大な獣に対して勝利を収めたのだ!

ヤナギ・ササキ:「勝った、な」キシを見る。その顔には隠しきれぬ喜びがあった
キシ・フナジマ:うぉーーーっ!!」ヤナギに飛びつく
キシ・フナジマ:「やったぞヤナギ=サン!やったぞ!」
ヤナギ・ササキ:「ああ。生き残ったぞ、キシ=サン。今度ばかりは死ぬかと思った」
キシ・フナジマ:「わ、ワシもじゃ……気が抜けたら腰が……」
ヤナギ・ササキ:「おいおい、さっきまでのキアイはどうしたんだ。最後の一撃はすごかった。見違えたぞ、キシ=サン」
ヤナギ・ササキ:「と言いつつ。俺もしばらくは動けなさそうだ。もうハシ一本持てん」

ヤナギ・ササキ:ずるずると壁を背にしながら座り込む。汗がしとどに流れ落ちる

「いや、動いてもらわねば困る」

ヤナギ・ササキ:「!」
キシ・フナジマ:「な……」
ヤナギ・ササキ:「あっ、貴方は……」

洞窟内に響く声……見れば入り口の方には、人影があった

腕組をしてピクピクしているモリノベ
同じポーズをしているモミジ

ヤナギ・ササキ:「センセイ……」
モリノベ・ヤスジ:チョットキミタチ、ワカルネ?
ヤナギ・ササキ:「アッハイ」

ヤナギはセンセイを見た。
それから自分とキシの持つカタナを見た
とりあえず笑っておいた

キシ・フナジマ:「ハイ、センセイ……」

キシも笑っていた
下手すればクマに対峙したときより怖いかもしれない……



数時間後 モリノベ・ドージョー内

モリノベ・ヤスジ:「まったく、貴様らときたら何を考えておるか、もう、ほんとうに」
モミジ・サンゲツ:「まったくだよ、よりにもよってボクを除いて危険なところに、なにかんがえてるの」
ヤナギ・ササキ:「ハイ。スミマセン」
キシ・フナジマ:「ゴメンナサイ」

もはや何度目かも分からぬ謝罪の言葉を繰り返す2人
あれから説教をずー--っと聞く羽目になっていたのだ、ステレオで

ヤナギ・ササキ:「怒るとこそこ?」
モミジ・サンゲツ:「反論しない!!」
ヤナギ・ササキ:「アッハイ」
モリノベ・ヤスジ:「モミジ=サンが2人を探してな、裏山に行ったのかと考えて私に話したときはもう、本当にどれぐらいの気持ちだったか教えてやりたい!」
モリノベ・ヤスジ:「危うく心臓が止まるところだった!」
ヤナギ・ササキ:「ゴメンナサイ……」
モリノベ・ヤスジ:「はぁ~~~~~~~~~………」

NM:モリノベは膝に手を当ててうなだれてから、ポンと撃った
モリノベ・ヤスジ:「よし、これにて説教は終わり」
ヤナギ・ササキ:「!」思わず顔を上げる。しまった、喜びが顔に出過ぎたか
モリノベ・ヤスジ:そしてキシとヤナギを力強く抱きしめた
モリノベ・ヤスジ:「生きていて良かった」
ヤナギ・ササキ:「ゴメンナサイ、オトウサン」ヤナギは心から謝罪した
キシ・フナジマ:「お、親父ィ……」キシは項垂れながらも何度も頷いている

NM:ニューロン判定を使わずとも、彼が少しばかり震えているのが分かるだろう
モリノベ・ヤスジ:「こうなっては隠してもおれんな」
モリノベ・ヤスジ:「あのクマをあの場所に置いたのは、私なのだ」
モリノベ・ヤスジ:「理由は分かるな?」
ヤナギ・ササキ:「カタナを守るため、ですか?」
モリノベ・ヤスジ:「そうだ」

ヤナギ・ササキ:「あれはまさしく『ナンバン』と『カロウシ』。なぜあれほどの名刀がここに?」
モリノベ・ヤスジ:「優れたレリックは力を持つ、それは良いだけではなく災いも呼びこむものだ」
モリノベ・ヤスジ:「それが私の手元に来た、手放せばそれはそれで別の災いを呼ぶだろう」
モリノベ・ヤスジ:「力を持つ者というのは、ああいった強大な力を保管し、守り抜く義務もあるのだ」

ヤナギ・ササキ:頷く。
カタナを手にしたときの高揚感を思い出す。
あれは確かに人を狂わせるものだろう

モリノベ・ヤスジ:「だが私は、アレの持つ災いがお前たち息子に向くことを恐れた……」
モリノベ・ヤスジ:「故に人目につかぬよう、噂もたたぬよう隠す他はなかったのだ」
キシ・フナジマ:「……親父………」
ヤナギ・ササキ:「センセイ……」
モリノベ・ヤスジ:「アレは私が預かる、もっと良い隠し場所を見つけねばな」
ヤナギ・ササキ:「わかりました」

ヤナギ・ササキ:
正直に言えば未練はあった。
もう金輪際触ることのないであろう大業物だ。剣士としてあれを傍に持っておきたい欲はある
だが、センセイの言うことはもっともだ。
力は魔を持つ。おそらく自分はまだ耐えられないだろう

NM:モミジの目が細まる、窘めるようでもあり、拗ねているようでもあった
モリノベ・ヤスジ:「そして……」モリノベは二人を強く撫でた「よくぞまぁ、あのクマを倒したものだ!」
モリノベ・ヤスジ:「相当な強さにしたつもりだったが、まさか倒されるとはな」
ヤナギ・ササキ:「無我夢中で……それにキシ=サンがいなければやられていました」
キシ・フナジマ:「そうじゃが、それに……ナンバンとカロウシがあって」
NM:二人の発言にモリノベが頷いた
モリノベ・ヤスジ:「うむ、だが……カタナを素人が持ってもナマクラにしかならん」
モリノベ・ヤスジ:「例え二人であっても、メイトウを持っていても。倒したのはお前たちの実力だ」
ヤナギ・ササキ:「はい……!」
師からの賞賛は嬉しかった。
生き残った安堵感もありヤナギは顔をほころばせた
モリノベ・ヤスジ:「素人がどれだけいても、あの2振りの力だけで倒せるような強さにはしておらん、自信を持て!」
ヤナギ・ササキ:「はい!」
モリノベ・ヤスジ:二人の肩を強く叩く「よぉし!」

モミジ・サンゲツ:「……ふーーーん、良いなぁ。ボクも戦いたかった」モミジはやっぱり拗ねていた
ヤナギ・ササキ:「悪かったよ。こんなことになるとは思ってなかったんだ」
モミジ・サンゲツ:「いや、それよりも。2人と一緒に冒険がしたかった!」
キシ・フナジマ:「す、すまんき……奢るから……」
ヤナギ・ササキ:「本当にスマン。ほんとはこっそり訓練するだけのつもりだったんだ」
キシ・フナジマ:「そ、そうじゃ。ワシがヤナギ=サンを誘った!」
キシ・フナジマ:「ワシが悪い、許してくれ!」
モミジ・サンゲツ:「……良いよ、その代わりさ。聞かせてよ、二人の冒険を」
モミジ・サンゲツ:「当然、二人のおごりでね!」モミジは笑った
ヤナギ・ササキ:「今日の仕事の給料、もうなくなりそうだな」そう言いつつ、ヤナギは頷いて笑った
モリノベ・ヤスジ:「私にも聞かせてくれい! 奢りでな!」
ヤナギ・ササキ:「えっ」
キシ・フナジマ:「ちょ、ちょいと、親父は酒癖が……」
ヤナギ・ササキ:「キシ=サン。責任は俺が持つといった言葉に二言はないよな。……ツケはキシ=サンが持ってくれよ」
キシ・フナジマ:「………ええい、わかった! ワシが全部もっちゃるぜよ!!」


日の暮れた夜のとばりの中、ドージョーから響く4人分の笑い声
そして、葉の擦れる音、
虫の鳴き声、
風の音
――誰かが山を駆け降りる音

月の光を受け、その襟元に輝くは

クロスカタナのエンブレム



黒鷺あぐも(PL):なんだよこの親がいて家族がいての楽しい暮らしはよぉ!ずっと来るであろう破滅を身構えてるこちらの身にもなってくれよぉ!
黒鷺あぐも(PL):ソウカイヤ、ナンバンカロウシ……あっ(察し)
NM:いやぁ、良い冒険でしたね
黒鷺あぐも(PL):殺人バッファロー牛車―!はやく斥候ニンジャをひき殺してくれー!
黒鷺あぐも(PL):いやー、楽しい~同期のユウジョウいいよね……
NM:わかる、私も楽しかった
黒鷺あぐも(PL):あと出目がやばい
NM:ヤナギ=サンがノリのいい男でね……
NM:なんでこんなに出目が暴走するんですか?
黒鷺あぐも(PL):やっぱり元からノリが良くてちゃらんぽらんな下地はあったようだ
黒鷺あぐも(PL):わからない……
黒鷺あぐも(PL):私とNMが揃ったからとしか……
NM:ソウカイヤより恐るべきはダイスの女神では?NMはいぶかしんだ
黒鷺あぐも(PL):いつも恐れてる
黒鷺あぐも(PL):でも失敗は今のところニューロンミスしかないの訳が分からない
NM:これから後半戦です!!!ガンバロウネ
黒鷺あぐも(PL):コワイ!



ヤナギ達が二振りのカタナを手に入れたその翌日
モリノベ・ドージョー

モリノベ・ヤスジ:「起立」

NM:ヤナギをはじめ、弟子たちが均整の取れた動きで立ち上がるのを見てモリノベが頷いた

モリノベ・ヤスジ:「うむ、これより本日の鍛錬を開始する」
ヤナギ・ササキ:「ヨロシクオネガイシマス!」

普段通りの一日が始まろうとしている
違うことと言えば、この時一人の来客が入り口に現れ、
そのまま入ってきたことだろうか

キシ・フナジマ:「おい、おはん……ここをどのドージョーだと心得ちょるか」
ヤナギ・ササキ:「む?」入口の方をみやる

モリノベが不快そうな瞳をしたのを一番に見届けたのはキシであった
入り口から無作法にも立ち入ってきた来客に食って掛かったのである

NinjaSlayer : ???:
🎲7B6>=4 → ~2,4,~2,~1,~1,~1,5 → 成功数2 #1
🎲7B6>=44,~3,~1,5,~1,4,~1 → 成功数3 #2
🎲7B6>=46,4,~2,~3,5,6,~2 → 成功数4 → サツバツ!! #3

そして、そのまま切られた

黒鷺あぐも(PL):アイエエエエ!

ヤナギ・ササキ:「ナッ……」
キシ・フナジマ:「…………?」
ヤナギ・ササキ:「キシ=サン!」

キシはそのまま目をぱちくりとしてヤナギを見た
斬られたことに気が付かないかの如く首を傾げ、瞬間傷口が開く
パッ、と血潮が舞った

キシ・フナジマ:「ヤナ………」

ヤナギ・ササキ:刹那、なにも分からなかった。あまりにも突然の出来事。
キシが斬られた。その事実に理解が及ぶよりも先に名を叫んでいた

弟子たちも何が起きたのかわからないように、目を見開いている
この中でキシの身に何が起きたのかを辛うじて察することができたのは
ヤナギ、そして師範たるモリノベのみであろう
あまりにも大雑把な、それでいて精緻極まりない一撃であった

???:「動くな」

一声、けれどもそれはまるで波紋の如くドージョー内を支配する

ヤナギ・ササキ:「き、貴様……ッ!」

今までの人生で感じたことのない激情。
己が身を焼き尽くさんほどの殺意が荒れ狂いながらも
剣士としての勘がヤナギに静止をかける

キシの体が地面に落着するのと、男が一歩を踏み出すのは同時であった

ヤナギ・ササキ:(動けば――斬られる。)それはゆるぎない事実であろう

ヤナギは、モミジは、理解するだろう、
この場の誰もがその男の素性を知っていた。
人を超えたる超常の存在……ニンジャ!

男は、ニンジャはまるで悠然と、弟子たちの間を歩いていく

弟子:「アイエッ、アイエ………」

腰が抜けるもの、失禁するもの、
これらはすべてNRS(ニンジャ・リアリティ・ショック)である!
そしてその波紋は、ヤナギに襲い掛かり――

モリノベ・ヤスジ:静まれいッ!!!
ヤナギ・ササキ:「!」

もう一つの波紋が、その影響をかき消していく
ヤナギの心に刺さった足枷が解かれるように、
弟子たちもその一言で動けるようになったのだ

殺意と敗北を告げる剣士の勘、
そして人間の本能に刻まれた恐怖との間に揺れるヤナギを引き戻した
ヘイキンテキであれ。カラテの、そしてケンドーの基礎である。
ヤナギは息を吸う。その視界にキシの崩れた身体が映る。
心を静めながらも怒りを新たにする

しかしヤナギ達の動きを止めたのがニンジャの原始的恐怖であれば、
それをなぜモリノベが打ち砕けたのだろうか?

ヤナギの前で、男が両手を合わせた

ヤナギ・ササキ:「!?」

NM:その瞳はヤナギではなく、その奥のモリノベにのみ向いていた

???:「ドーモ、デュアラハン=サン。ベビーシッターです

ニンジャリアリティショック(NRS)判定
以下のどちらかを満たしているモータルPCは『NRS判定』を無視できる:
◎仲間のニンジャが同行している

黒鷺あぐも(PL):やはりセンセイはニンジャ
黒鷺あぐも(PL):そういうことか

NM:モリノベは俯き、そして顔を上げた

モリノベ・ヤスジ:「ドーモ、ベビーシッター=サン。デュアラハンです。
ヤナギ・ササキ:(アイサツ……?)

ヤナギは訝しんだ。
しかし、その行いは神聖で口出しできないアトモスフィアに包まれていた

モリノベはニンジャであった、
そしてここはただのドージョーではない……
リアルニンジャのドージョーなのだ!

黒鷺あぐも(PL):ナ、ナンダッテーー!!
黒鷺あぐも(PL):山口県やべぇ
黒鷺あぐも(PL):岡山に負けてないな

デュアラハン:「なにゆえこのような狼藉を働くか、答えよ」
ベビーシッター:「知れたことではないでしょうかァ…… あなたの持つそのカタナ、遂に現れたと聞いてのっとりがたなで駆け付けた次第ですよ、ェェ」
ヤナギ・ササキ:「!」

ナンバン・カロウシ!
いったいどこから聞きつけたのか。昨日の今日で!
ヤナギは戦慄する!

ヤナギ・ササキ:(古来より「障子に目あり。壁に耳あり」という言葉あるが……あれはニンジャの恐怖を伝えるものであったか!)

デュアラハン:「ならぬ、どのような権力者であろうとも、これを欲する者なぞ碌な輩ではない」
ベビーシッター:「まあまあそう言わず、高名なるリアルニンジャであればそのカタナごと受け入れてくださいますよ……知っているでしょう、ソウカイヤの」
デュアラハン:「……ラオモト・カン………!」
ヤナギ・ササキ:「(ラオモト・カン……!)」それがこのニンジャを差し向けた相手

モリノベ……否、ニンジャ、デュアラハン
彼が今この場でやろうとしていることがヤナギにはわかるだろう。
弟子たちを一人でも多く逃がそうとしているのだ! 
このニンジャの前から!

だが彼の前に立ちふさがるニンジャのカラテは壮絶! 
背中を向ければそれこそデュアラハンとて庇えぬ! 
そして自分の前では息子に等しい存在が今まさに死のうとしているのだ!

ヤナギ・ササキ:「くっ!」

師の思惑を痛いほど理解できる。
だが、自分は友を殺した相手に敵討ちすることすらできないのか。
ヤナギは奥歯を砕かんばかりに食いしばった

デュアラハン:「渡さぬ、立ち返るが良い」
ベビーシッター:「そう言わず……抜いてくださいよ、かのリアルニンジャの剣筋を見てみたい……」
ベビーシッター:「どの道殺すんですから、ここにいるモータルは全員」
弟子:「アイエエッ!!」
ヤナギ・ササキ:「(バカ!動くな!)」叫びたい衝動をヤナギはなんとか堪える

ヤナギ・ササキ:「(一太刀だ。一太刀凌げれば)」モミジを見る

ヤナギ・ササキ:
(そうすればモミジが門下生を逃がせる)
(俺の方がモミジより体格が上だ。俺の方が斬られるにしても時間を稼げる)

NM:弟子たちがわなわなと震え、遂には腰が砕けていくのを見てモミジは何をしていたか?

モミジ・サンゲツ:「…………!!」

NM:何もしていなかった、ただ震えながら、呼吸を荒げつつもパニックに陥っていたのだ!
ヤナギ・ササキ:「(モミジ!こっちを見るんだ、モミジ!)」祈るようにヤナギは心の内で叫んだ

NM:ベビーシッターが一刀のぎらついたカタナを抜いたのを見て、デュアラハンはゆったりと立ち上がった

デュアラハン:「(ヤナギ=サン)」
NM:行け、その瞳が命じている
デュアラハン:「(行くのだ、キシ=サンを……!)」

ヤナギ・ササキ:怒りが、或いはモミジより劣るワザマエ故相手の力量の理解を妨げたのかもしれぬ
ヤナギ・ササキ:「……ッ!ハイ!」

ベビーシッター:「ォォッとぉ……させませんよ」
ヤナギ・ササキ:「ぅ……うわぁぁ!!」なりふり構わず駆ける。恐怖もなにかも置き去ってがむしゃらにキシの下へ走る

NM:逃げるか?そう判断したベビーシッターが背後を向きかけた瞬間、デュアラハンが迫る!
デュアラハン:チェリァーーーッ!イヤーッ!!」
ベビーシッター:「ぬぅッ!イヤーッ!
NM:デュアラハンの両手に握られるはナンバン・カロウシ! 対するベビーシッターが手にするも大業物! ここに二人のニンジャによる死闘が始まった!

ヤナギ・ササキ:「ハァ……ハァ!キシ=サン!!」背後の恐ろしき攻防の気配を感じながらも足を動かす
キシ・フナジマ:「…………」キシはその場で動かぬまま、浅い呼吸を繰り返している。その瞳がヤナギを見た
ヤナギ・ササキ:「息がある……!」まだ生きている!

NM:そして、その背後で繰り広げられている壮絶なイクサ――

デュアラハン:「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
ベビーシッター:「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」

キシ・フナジマ:「………きれいじゃのぅ……」うわ言のようなか細い声が漏れる
キシ・フナジマ:「まるで色付きの風じゃ……」
ヤナギ・ササキ:「なんだって……?」キシに駆け寄り、その身体を支えようとしつつ振り向く

NM:二人のイクサは弟子たちがするそれではない。常人を超えた動き、剣戟が弾ける音は連続的で、その動きは最早目では追えぬ!

ベビーシッター:「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
デュアラハン:「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」

NM:実力は均衡、だがカタナの差でデュアラハンが有利か。だがこの場の誰もがニンジャのイクサを追うことができぬ。それほど壮絶なイクサであった

ヤナギ・ササキ:「これが」
ヤナギ・ササキ:「これが本当のイクサ」

ヤナギ・ササキ:2人の発する殺意だけで身震いが起きる。見ているだけで正気が喪われそうだ。だが、今はそれどころではない。自分は託されたのだ


ヤナギ・ササキ:「いくぞ、キシ=サン」キシを半ば背負うようにして歩き出す
キシ・フナジマ:「………いかん、いかんよヤナギ=サン……」
ヤナギ・ササキ:「バカな!何を言っている!しんでしまうぞ!」
NM:瞬間、ヤナギの背中を何かが掠った。ベビーシッターの剣戟である
ヤナギ・ササキ:「ナッ」
キシ・フナジマ:「ドージョーまでの出口……10歩もあるきゃできん……」
ヤナギ・ササキ:「俺が歩けばいいだろ!」
キシ・フナジマ:「それより……モミジ=サン……モミジ=サンじゃ……」
ヤナギ・ササキ:「モミジ=サン……ッ!」ハッと振り返る

NM:モミジは目を見開きながらイクサを見ていた、その顔は蒼白である。その開かれた瞳孔がヤナギとキシを見る
モミジ・サンゲツ:「…………!!」動けない、モミジはショックからか一歩も動けないのだ
キシ・フナジマ:「………ヤナギ=サン」冷たい手がヤナギを包んだ
ヤナギ・ササキ:「キシ=サン」ゾッとするような冷たさ。昨日共に冒険から帰還したときに感じた熱さからの落差

キシ・フナジマ:「ワシは……もうええよ、もうなにをしてもいかんって……一番わかる……」
NM:キシの表情はこれまで見たどれよりも青く、どれよりも優しい
ヤナギ・ササキ:「バカを言うな!」
キシ・フナジマ:「ヤナギ=サンのせいじゃない、せいじゃない……安心せぇ、ワシは心配じゃない……」
ヤナギ・ササキ:「バカ!スゴイバカ!」熱い涙が零れ落ちた。キシの手の冷たさの対比が悍ましかった
キシ・フナジマ:「ワシを……覚えちょれよ、ヤナギ=サン」
ヤナギ・ササキ:「最強になるんだろ!」
キシ・フナジマ:「おんしは凄い男じゃき……最強になれる……」
ヤナギ・ササキ:「!」

NM:キシは泣いていた、笑いながら泣いていた
キシ・フナジマ:「ワシは、おんしみたいな男と一緒にいれてよかった……」
ヤナギ・ササキ:「なにを言ってるんだ、キシ=サン」それじゃあまるで最期の別れのようじゃないか

キシ・フナジマ:「モミジ=サンを……」その瞳がヤナギを見る
NM:瞳に映っていたヤナギが、消えた。キシは最早押し黙ったまま、ヤナギの腕の中で重量物となり果てた
ヤナギ・ササキ:「キシ=サン」
ヤナギ・ササキ:腕の中が重くなる。キシはもう、動かない。サケも飲まないし、負けて悔しがることもないのだ

デュアラハン:「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
ベビーシッター:「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!グワーッ?!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」

NM:2名のニンジャが壮絶なイクサを繰り広げている音が聞こえるだろう
その趨勢が今や誰の目にも見えてきた。
NM:デュアラハンの有利である、今や完全に押している

デュアラハン:おのれッ!イヤーッ!イヤーッ!おのれキシ=サンを!!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!!」

ベビーシッター:グワーッ!イヤーッ!イヤーッ!ヌゥーッ!!グワーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!グワーッ!

ヤナギ・ササキ:ヤナギは顔を上げてすでに趨勢の決しつつあるイクサを見た。

NM:ベビーシッターがその時、ヤナギを見た 
ヤナギ・ササキ:ベビーシッターを見るその表情は何も現わしていなかった。そのまなざしは怒りの炎をもかき消すような心胆寒からしめるものだった

NM:ヤナギの瞳は見た、メンポの奥に浮かぶ邪悪な眼差し!

ベビーシッター:イヤーッ!!

NM:デュアラハンは気づく、ベビーシッターの狙いは自分ではない!
NM:その瞬間、ヤナギの胸元に鉄片が刺さる

ヤナギ・ササキ:「ガフッ」
モミジ・サンゲツ:「!」モミジがヤナギを見た
ヤナギ・ササキ:熱いものがこみ上げて口から流れ出た「なんだ、これ」
NM:ヤナギの視界が黒く染まっていく
ヤナギ・ササキ:その胸元に生える星形の鉄片――理不尽の権化たるニンジャの象徴。スリケン
デュアラハン:「ヤ、ヤナギ=サン!!」
ヤナギ・ササキ:「まだダメだ。まだ……」
ヤナギ・ササキ:暗転していく視界の中、ヤナギはセンセイとモミジを想った

NM:ヤナギは見るだろう、自分の方を唖然としながら見るデュアラハン、そしてーーその背後から獰猛な笑みを浮かべつつも剣を振り上げる……

ベビーシッター:イヤーーーッ!!
デュアラハン:グワーーーッ!!

ヤナギ・ササキ:「(セン、セイ……)」


モータル、モリノベ・ドージョーの門下生
ヤナギ・ササキは死んだ



―――:「……………サン………ナギ……サン……!」
NM:ヤナギの体を誰かが揺さぶる
NM:ヤナギの意識が覚醒していく
ヤナギ・ササキ:「ウッ……キシ=サン……キシ=サン!」
デュアラハン:「ヤナ……サン! ヤナギ=サン!しっかりしろ! しっかりするのだ!!」
デュアラハン:「おぉ……ヤナギ=サン……!!」
ヤナギ・ササキ:「センセイ」
光が視界に飛び込む。徐々に焦点が合い、像を結ぶ
NM:ヤナギの体を必死に揺さぶっていたデュアラハンの声が震えた
ヤナギ・ササキ:「センセイ!ご無事でしたか!」

NM:その視界に入るのは倒れた弟子たち、燃えるドージョー、そして……片腕がなく、傷だらけになりつつも微笑むセンセイ

ヤナギ・ササキ:「お、俺のせいで奴に斬られて……。それにみんなも」
デュアラハン:「すまん、すまん………ワシが不甲斐ないせいだ……」
ヤナギ・ササキ:唖然としながら周囲を見渡す。生き残ったのはこれだけなのか?
デュアラハン:「ナンバンもカロウシもなくなっただが……お主が生きていれば、生きてさえ……」
NM:デュアラハンはヤナギを見て、息をのんだ
ヤナギ・ササキ:「ナンバンとカロウシまで。おれたちがあれを持ち出さなければ……。センセイ?」
デュアラハン:「………なったのか、ヤナギ=サン」
ヤナギ・ササキ:「なる、とは?」

NM:目覚めたヤナギは分かるはずだ、気絶する前よりも視界も、聴覚も、何もかもが鋭くなっていることに。そして、自分の体にみなぎるカラテ――

デュアラハン:「……なってしまったか……ニンジャに!
ヤナギ・ササキ:「ニンジャ?」
ヤナギ・ササキ:「ニンジャナンデ……!」

ヤナギ・ササキ:
声にならない声で叫んだ。
何故皆が死に自分は生き残ったのか
何故もっと早くカラテが手に入らなかったのか
どうしてどうして
どうしてキシ=サンは死んだか

NM:デュアラハンは俯いた、その表情はヤナギの知るそれより数十歳は老いて見えた
デュアラハン:「まっとうな方法でなって欲しかったのだ……だが、生きておる。お主は生きておる……」
ヤナギ・ササキ:「……やる」
デュアラハン:「……ヤナギ=サン」
ヤナギ・ササキ:殺してやる……!あのニンジャ!その首魁も!みんな殺してやる!
デュアラハン:いかんっ!!
ヤナギ・ササキ:「しかしセンセイ!」
NM:その声はデュアラハンではなくモリノベであった
モリノベ・ヤスジ:いかん! ヤナギ=サン! 私はそのようなことのためにお主らにケンドーを教えたのではない!」
モリノベ・ヤスジ:「ワシは……お主らに生きて欲しかった、このマッポーの世で自分として生きて欲しいからケンドーを教えたのだ……!」
モリノベ・ヤスジ:「……お前たちは……私の、大事な息子なのだから……」
モリノベ・ヤスジ:「なによりも大事な……ナンバンも、カロウシも……そんなものとは比べ物にならぬ……」
ヤナギ・ササキ:「……ッ!くぅ!!」

ヤナギ・ササキ:その言葉に何も言えなくなる。自分が友を、兄弟を失ったように。この人もまたいま息子を失ったのだ。そのような人になにが言えよう

モリノベ・ヤスジ:「ヤナギ=サン、よいか……復讐はするな、ナンバンも、カロウシも取り返そうとするな……」
モリノベ・ヤスジ:「代わりにこのドージョーを、任せる」
ヤナギ・ササキ:「センセイはどちらに?」
モリノベ・ヤスジ:「少し、ばかり……遠くへ……」
NM:モリノベは立ち上がってほほ笑んだ
モリノベ・ヤスジ:「ついて、くるで……ないぞ……」
ヤナギ・ササキ:「……センセイ?」

NM:そのまま歩くような速度で、よろよろとドージョーの出口へと向かうモリノベの背中には、最早致命傷となる大きな傷が刻まれていた

ヤナギ・ササキ:「!」
モリノベ・ヤスジ:「任せたぞ………大事な、息子よ……」
ヤナギ・ササキ:「センセイ……オトウサン!

モリノベは立ち止まって俯いた、右足に力が籠る
だが、そのままよろよろと。
けれども先ほどよりも毅然とした歩き方で出口へと向かい
そのままヤナギの視界から消えていった

燃え盛るドージョーは血と煙の臭いでむせ返りそうで、
今にも崩れ落ちんとしていた

ヤナギ・ササキ:「オトウサン……」

破壊されたドージョーの中でヤナギは俯いた。
もう涙は出なかった
まるでキシが死んだときに自分の心もしんでしまったかのようだ

ヤナギ・ササキ:「キシ=サンを。みんなをここから出そう」

NM:ヤナギのニンジャ聴覚力には弟子たちの浅い呼吸の音が聞こえるだろう。全てが死んだわけではないようだ
ヤナギ・ササキ:生きてる者に駆け寄り声を掛ける
弟子:「………」すみません、とばかりに軽く頷く者
ヤナギ・ササキ:「生きてるな?村まで連れてく。それまで死ぬんじゃないぞ」
弟子:気絶したままどうにか生きているもの
ヤナギ・ササキ:「みんな死んじまった。でもお前は生きてる。死ぬなよ」

NM:その中で一人だけ、いまだに目を開き続けている者がいた――モミジである

モミジ・サンゲツ:「―――――………」
NM:目を開いたまま、ただドージョーの中心を見ているモミジ
ヤナギ・ササキ:「モミジ=サン!生存者を運び出す!手伝ってくれ!」
ヤナギ・ササキ:「モミジ=サン?」
モミジ・サンゲツ:「ぁ」立ち上がる「ああ、そう、だな」
ヤナギ・ササキ:「大丈夫か?俺はあんまり大丈夫じゃない」
ヤナギ・ササキ:「でも、やることをやらなければ」
NM:モミジはふらふらとしながらも、おぼつかない手つきで弟子の死体を掴む
モミジ・サンゲツ:「だいじょうぶ、だ、だいじょう」
ヤナギ・ササキ:「モミジ=サン」
NM:モミジの視界にキシの死体が映った、無残に切り裂かれた死体

モミジ・サンゲツ:「…………ぉぇ、げ、おぇぇ……」

NM:モミジは蹲って嘔吐した
ヤナギ・ササキ:「……。死体は俺が埋葬する。モミジ=サンはまだ歩ける生存者と村へ」
NM:モミジはキシの死体に抱き着いたまま頷いた
ヤナギ・ササキ:「……行こう。ここはもうアブナイ」

NM:キシの死体に抱き着いたまま、モミジは頷いていた。何度も何度も、嗚咽を漏らしながら
ヤナギ・ササキ:ヤナギは心のどこかでモミジの涙を流せる人間性を羨んだ。しかし、ヤナギのなにかはキシと共に消えてしまった
ヤナギ・ササキ:それでも託されたものはある
ヤナギ・ササキ:生存者を助ける。ドージョーを守る。そして

ヤナギ・ササキ:(最強になる)

NM:モリノベがそう願ったからか、ヤナギの献身が実を結んだのか
NM:ドージョーがついに崩れ落ちたのは、死体もすべて運び出したその直後であった――



数週間後 村の酒場

NM:ヤナギの下に店員がサケを持ってくる
店員:「サービスだよ」
ヤナギ・ササキ:「スミマセン」

ヤナギ・ササキ:
店員に礼を告げて、二杯のグラスに注ぐ
だが、何度もカンパイを要求する声はない
NM:
店員は普段はそのまま立ち去るが、この日の客が少なかったからだろうか。少しばかり物憂げな瞳をしてヤナギの隣に座った

店員:「………モリノベ=サン、あれからどこにも姿を現さなくてさ」
ヤナギ・ササキ:「……」

ヤナギは何も言わずなんの表情も現わさず酒を飲んでいる
店員もそんなヤナギを見ずに窓から遠くを見ている
不快そうな雰囲気になれば立ち去る程度の気遣いはできる女であった

ヤナギ・ササキ:「センセイは。遠くに行くと」
店員:「そっか」頷く
ヤナギ・ササキ:なじみの店員が傍にいて不快なわけではない。ただ表情を表に出せなくなっただけだ
店員:「ごめんね、村の皆が火の手を見て急いで向かった時にはもう遅くてさ」
店員:「凄かったよ、村の男手がほとんど出て行っちゃってその日の仕事はどこもストップ」

ヤナギ・ササキ:黙って首を振る。それでよかったのだ。もし早々に来てイクサに巻き込まれていれば余計な死人が出てしまっていた

店員:「……ドージョーの建物は、皆が復興したけど……」
ヤナギ・ササキ:「……マス」
ヤナギ・ササキ:「アリガトウゴザイマス。ドージョーは俺に残された最後のものだから」
ヤナギ・ササキ:表情を変えることなく、感謝を告げた
店員:「いいの、皆モリノベ=サンを慕ってたし。ヤナギ=サンとかもね、お弟子さんの力は村で凄く助かってたから、恩返し」
店員:「でも……」店員は口を噤む
ヤナギ・ササキ:「・・・」
ヤナギは黙った。この優しさを受けてなお微笑むことも出来ぬ自分が恨めしく思った

ドージョーは復興したが、弟子は戻ってこなかった
元居た弟子は精神不調に陥り、
その噂を聞いた者もまたドージョーを恐れたのだ
残ったのはドージョー主となったヤナギ、そして……

店員:「………まだ、いるのかな」店員はドージョーがある方を向く
ヤナギ・ササキ:「はい」

ヤナギ・ササキ:ニンジャ感知力でドージョーの気配を探る。いや、探る必要もないのかもしれない
NM:そこにはモータルが一人居た。もう数時間前、数十時間前からずっとドージョーのそばの木の下にいた

店員:「……心配でしょ、迎えに行ってあげなよ」
ヤナギ・ササキ:「……はい」立ち上がる。
ヤナギ・ササキ:それからすこし押し黙った後「オサケ、ありがとうございました」
店員:店員も立ち上がった、勘定を要求する声はなく「またいらっしゃいね」との答えだけが返ってきた
ヤナギ・ササキ:引きつるような笑顔に見えなくもない顔で礼を告げた




モリノベ・ドージョー前

ドージョーにはヤナギともう一人だけが残った
その弟子はあの日から今まで、ドージョーの木の傍で

二万八千六十一!二万八千六十二!二万八千六十三!!

ひたすらに、がむしゃらに、鬼気迫る顔で
ただ、ただ、剣を振っていた

二万八千六十八!二万八千六十九!二万八千七十!!


ヤナギ・ササキ:「モミジ=サン」

ヤナギ・ササキ:「今日は冷える。もう切り上げよう」
NM:モミジはヤナギの声も聞こえないのか、乱れたフォームのままフラフラになりつつも剣だけを振っていたが
モミジ・サンゲツ:「!」
NM:その顔だけがぎょろりとヤナギの方を向く、痩せこけたような頬にぎらついた瞳……だが、ヤナギを見ているとその瞳から光が失せていく
ヤナギ・ササキ:「………ああ、ヤナギ=サンか………どうした…? まだ夜じゃないか……」
ヤナギ・ササキ:「……。夜だから迎えに来たんだ。風邪をひくぞ」
モミジ・サンゲツ:「……そうか……そうだったか………?」

NM:ふらふらとヤナギの下へと歩いてくる、足に力はないが、手に刀を握る力だけは満ち満ちていた
ヤナギ・ササキ:ニンジャとしての感覚がモミジの異常ともいえる執念を感じ取る

ヤナギ・ササキ:「続きは明日だ。今日は帰ろう」
モミジ・サンゲツ:「……ああ、そうだな……うん、今日はここで寝よう……」

NM:雨が降っても、風が吹いても、モミジは木の傍で剣を振り続けている
そして、ドージョーには一歩たりとも足を踏み入れなかった
ヤナギ・ササキ:「そうか。そういうと思って毛布と火鉢を用意しておいた」
ヤナギ・ササキ:「あとモチだ。夕飯まだだろう」
モミジ・サンゲツ:「ありがとう、ありがとうヤナギ=サン……ああ、モチは……さっき食べたような……?」
NM:ヤナギの知る限り、モミジは言わない限りひたすらに剣を振り続けているのだ
ヤナギ・ササキ:ヤナギはニンジャである自分に感謝している。ヤナギは悲しみに沈んでいられない。ドージョーを、門下生を守るのが約束だ
ヤナギ・ササキ:「いや、俺がまだなんだ。食べるのに付き合ってくれ」
モミジ・サンゲツ:「………ああ、なんだ。そうかそうか……すまないヤナギ=サン……一緒にたべよう……」
NM:ほら、とモミジはモチを半分ヤナギに渡そうとする
ヤナギ・ササキ:「その半分でいいよ」
ヤナギ・ササキ:強く、強くあらねば。約束を守るために
モミジ・サンゲツ:「そうか……?食べないとダメだぞヤナギ=サン、早くボクを追い抜かしてもらわないと……」
ヤナギ・ササキ:「そうだ。モミジ=サンを倒すのは俺達の目標だからな」
モミジ・サンゲツ:「ああ……うん、うん……そうだ……」

モミジ・サンゲツ:「ボクより……才能のあるボクなんかより……」
NM:モミジの瞳に光が戻る、その顔がくしゃりと歪んだ
モミジ・サンゲツ:「…………なにが……何が才能があるだ……」

ヤナギ・ササキ:ヤナギはモミジの気持ちが分かった気がした。震えるような孤立など知りたくなどなかった。
モミジ・サンゲツ:そのままヤナギに縋りつくように服を掴み、崩れ落ちる
ヤナギ・ササキ:モミジに縋りつかれたまま、ヤナギは強く強く拳を握りしめた

モミジ・サンゲツ:なにがっ!何が才能があるだ!!ふざけるなッ!!ふざけるな!!
モミジ・サンゲツ:ボクは動けなかったじゃないか!一歩も!あそこから!!

ヤナギ・ササキ:「・・・」黙ってモミジの言葉を聞く
モミジ・サンゲツ:なにが才能だ!ふざけるな!キシ=サンも!モリノベ=サンも!助けられなかった癖にッ!!
ヤナギ・ササキ:何もできなかったのは自分も同じだ。その後悔も、悔恨も。だから、黙って受け止める
モミジ・サンゲツ:「動けなかった癖にィィ……ふざけるな、ふざけるなよぉ……うぅ、う~~~ッ…」
モミジ・サンゲツ:「ごめん、ごめんヤナギ=サン、ごめんよぉぉ……」
ヤナギ・ササキ:ニンジャは流す涙などなかった。それがたまらなく悔しかった

ヤナギ・ササキ:「強くなろう。おれたちで強くなるんだ」
ヤナギ・ササキ:自分に言い聞かせるように、言った
モミジ・サンゲツ:「ヤナギ=サン……」モミジは笑った
モミジ・サンゲツ:「モミジ=サンはもう、ボクより強いじゃないか……」
モミジ・サンゲツ:「ニンジャ、なんだろう?」
ヤナギ・ササキ:「わかるのか」
モミジ・サンゲツ:「いや、でも分かるんだ」
モミジ・サンゲツ:「センセイと、あのニンジャと……同じような気配がする」
モミジ・サンゲツ:「前のヤナギ=サンとは違う……それぐらい、わかるさ」
モミジ・サンゲツ:「一緒にいたんだからな、ずっと」

ヤナギ・ササキ:聡いモミジを誤魔化すことなど不可能なのは分かり切っていた。しかし、改めて告げられるとそれでも揺れるものがある

ヤナギ・ササキ:「……そうだ」
ヤナギ・ササキ:「俺はニンジャだ」
ヤナギ・ササキ:(あの化け物と同じ。そして師には及ばない)

モミジ・サンゲツ:「ふ、ふへ、ふへへ……」力の抜けた笑い声がした「……すごいや……」
NM:嫌悪ではない、侮蔑でもない、ソンケイと、そして自嘲だった
ヤナギ・ササキ:その目を見て心に寒風のような寂しさを感じる。それはかつて自分がモミジに与えたものだろうか?


モミジ・サンゲツ:「…………死ねば……」
NM:どこかうわ言めいた声だった
ヤナギ・ササキ:「・・・」
モミジ・サンゲツ:「……死ねば、ニンジャになれるのか……?」
NM:かさかさと、木の葉のような確かではない意思の発したような音だった

ヤナギ・ササキ:「モミジ=サン。シナイを持て」
モミジ・サンゲツ:「………ああ。うん」
モミジ・サンゲツ:シナイはずっと握っていた、モチを食べる時も片手だ
ヤナギ・ササキ:「試合をしよう」
モミジ・サンゲツ:「試合か、よし、やろう!」
ヤナギ・ササキ:「だが、俺はニンジャとして相手する」
モミジ・サンゲツ:「良いぞ、よし!」
ヤナギ・ササキ:「死にたいのだろう。本気で掛かってこい」

NM:モミジは立ち上がり、そのまま倒れた
モミジ・サンゲツ:「よぉし、行くぞ、行くぞぉ」
ヤナギ・ササキ:「・・・」
モミジ・サンゲツ:「………………」
ヤナギ・ササキ:「・・・」
モミジ・サンゲツ:「………笑えよ、笑え、ヤナギ=サン、笑えよぉ……」

ヤナギ・ササキ:
黙って見下ろす。
伝えたいことがあった。伝えなければならぬことがあった

ヤナギ・ササキ:「俺はモミジ=サンに死んでほしくないよ」
モミジ・サンゲツ:「ごめん」
ヤナギ・ササキ:「バカ。スゴイバカ」
モミジ・サンゲツ:「ごめん、ヤナギ=サン、ごめん、ごめん、う……ごめん、うぅ……ごめん……」

ヤナギ・ササキ:強くならなければ。強く、強く。何も失わないように

モミジ・サンゲツ:「あ」
モミジ・サンゲツ:モミジの瞳から光がだんだんと喪われていく
モミジ・サンゲツ:「ぁは」
ヤナギ・ササキ:「モミジ=サン?」

立ち上がり、ゆっくりと木の傍に、ゆっくりと
正気では立てずとも、狂気であれば、まだ、剣が振れる――

モミジ・サンゲツ:いーーっち! にぃ! さぁぁん! しぃ!

正気と狂気の間に漂うモミジは剣を振り続けていた

ヤナギは何も言えず、ただ剣を振るうモミジを黙って見ていた。
ただずっと見ていた



それから日にちが進むにつれ、
モミジは段々と正気に戻る時間が少なくなっていった
そして、更に1週間が過ぎたある日
ドージョーの木の傍で、モミジは死んでいた

ヤナギ・ササキ:
たまたま村で外せない用事があり、ヤナギがいないときだった。どうにかモミジを眠らせようと酒などを村人からもらった帰りのことだ
NM:
夕暮れの中で、モミジはその場でへたり込んだように座りながら天を見ているかのようにしていた

ヤナギ・ササキ:
「やはり」と思った。「ついに」とも思った。
死んでほしくなどなかった。ただニンジャとしての感覚がモミジの命が尽きるまでカウントダウンをし続けていただけだ

ミヤモト・マサシ曰く、『死んだら終わり』

ヤナギ・ササキ:「死んだらなんにもならねぇだろうが。バカ野郎」
震える声でヤナギは呟いて、モミジの亡骸に触れた

NM:モミジに近づきましたね
黒鷺あぐも(PL):はい
NM:なら、ニューロン判定を行いましょう
黒鷺あぐも(PL):わぁ
NM:判定不明

NinjaSlayer : ヤナギ・ササキ:🎲3B6>=4 → ~2,6,4 → 成功数2

NM:UH成功
黒鷺あぐも(PL):腕切り落としてもらわないとな(急に邪悪になるPL)

ヤナギは気が付いた、何かがおかしい
何かが違う、ヤナギがあの時見た数々の死体とは何かが決定的に違う

死体である、死体であるが、何かが違うのだ
例えるならばそれは”空の器”であるような気がした
ぽかんと口を開きながら、その瞳は見開かれ
ただ何かを見出したかのように歓喜に満ちている

笑っている
モミジが笑っている。大往生ではなく、何かを見て

ヤナギ・ササキ:ニンジャの本能が告げる違和感に気付くのがほんの数瞬遅れたのは、ヤナギに残った人間性だったのか
ヤナギ・ササキ:
「モミジ=サン?」
NM:死体は何も答えない。ただ、ヤナギのニンジャ嗅覚が異常を感じた
NM:血の匂いだ
ヤナギ・ササキ:悲しみに沈んだ心が、戦闘のそれに塗り替わっていく
ヤナギ・ササキ:いまや違和感は確信に変わりつつあった
NM:山中に漂ってくるにはありえない血の香りが村の方から漂ってくる
ヤナギ・ササキ:「まさか……!」
弾かれたように背後を向いて村に駆けだす
常人の三倍の脚力で木々を飛び渡り駆ける



夕暮れ 麓の村


村は静寂に包まれていた
いつもであれば往来にいるはずの人間が、この日は一人とて生きていない
全員が死んでいた

母も子も、
老いも若きも、
叩きつけるような一閃で断ち斬られたまま道に転がっていた

ヤナギ・ササキ:「カシワ=サン!ミカン=サン!」
顔なじみの村人に駆け寄り、生死を確かめる
ヤナギ・ササキ:「みな、死んでしまったのか?」
NM:馴染みの酒屋の店員もまた、夕暮れの空を光を失ったまま見上げていた
ヤナギ・ササキ:そっと近づき、瞼を閉じてやる

NM:あまりにも常軌を逸した凶行である、だがこれを行った犯人は一体誰なのか?
NM:驚くべきことに、村の周囲10㎞を探っても生体バイタルはただ一つ、ヤナギのそれだけなのだ!

ヤナギ・ササキ:「どういうことだ、これは」

ヤナギ・ササキ:
ニンジャであったとしても異常な事態が起きている
可能性1.下手人はみなを殺して自分も死んだ
可能性2.下手人は一瞬で10km以上離れた
可能性3.下手人は近くにおりニンジャ感知力を上回る隠密性で隠れている
近くにいる、と勘が告げる
腰に帯びたツルギに手をかけて周囲を警戒する

結論.
下手人はオバケだ。

黒鷺あぐも(PL):すげぇ結論きた
ANIGR(見学):オバケならしょうがないな……

通りの向こうに揺らめく影が、陽炎めいて夕日に照らされた

ゴースト:『足りなかった……足りなかった………足りなかった……わかったぞ……』


NM:ヤナギはニューロン判定を行うことでその正体を見極めることができる
黒鷺あぐも(PL):うおおお

NinjaSlayer : ヤナギ・ササキ:🎲3B6>=4 → 6,6,~1 → 成功数2 → サツバツ!!

黒鷺あぐも(PL):めっちゃ分かった


ヤナギは察するまでもなく分かった、分かってしまった
なぜならばあれは、ヤナギがよく知る存在だからだ
あれがモミジ・サンゲツ、その人だったからだ

ヤナギ・ササキ:「モミジ=サン」

ヤナギ・ササキ:
逢魔が時は魔が出る刻。
その時間帯は魔と人が往々にして出会ってしまうという

ヤナギ・ササキ:「何が足りなかった」

狂えるゴースト:『経験が……足りなかった、足りなかった……ァ、ハハ……わかった、わかったぞ……』
狂えるゴースト:『足りなかったんだ……覚悟も、経験も……人を斬ることが……!

ヤナギ・ササキ:
モミジの言葉にぴくりと反応する
やはりこの二人は似た者同士だ
そして自分を置いて去ってしまう大馬鹿者たちだ

狂えるゴースト:『足りなかったんだーーァハハ、アハハハ……ハハ………』

NM:ゆらゆらとゴーストが近づいてくる、ヤナギのことは見ていないように。ただ、生者を自動的に殺戮する意思となり果てて。残った一人に向かってくる――ゴーストが、ヤナギに向けて剣を構えた

ヤナギ・ササキ:「これは全て俺の責任だ。だから」
ヤナギ・ササキ:「成仏させるのも俺の役目だ」

ヤナギ・ササキ:
ツルギを構えながら、ある日を思い出していた。
その日はモミジと何度目になるか分からぬ試合をしていて――

だが、今は遠き昔話だ

ゴーストはヤナギに向かって走ってくる、フォームも何もなく、笑いながら
ヤナギも笑った。あの日のように
そして剣が交錯して――

NinjaSlayer : 狂えるゴースト:🎲7B6>=4 → ~2,6,~3,5,~2,~2,5 → 成功数3
NinjaSlayer : ヤナギ・ササキ:🎲4B6>=4 → ~1,4,~2,~3 → 成功数1

NM:ヤナギが剣を振るうが、ゴーストの剣はそれを素通りする! ヤナギのイアイは完全に決まっていた、だがゴーストには物理的な影響が及ばないのだ!
ヤナギ・ササキ:「(なに……?!)」

NM:そしてヤナギにゴーストの体が通り抜けてーー

・・・逃げろ、逃げるんだ。立ち向かうな・・・頼む、ヤナギ=サン、お前だけは・・・

ヤナギ・ササキ:「!」声を聞いた気がしてハッと顔を上げる
ヤナギ・ササキ:「モミジ=サン……?」

ヤナギ・ササキ:だがその瞬間は無防備となった
NM:ゴーストは一刀、ヤナギの無防備になった腕部を断ち切る

ヤナギ・ササキ:
ツルギを持った右腕が吹き飛んでいく
驚愕の表情のまま、苦痛の叫びをあげた
焼けるような痛みに苛まれながらそれでも走ることが出来たのはそれが頼まれたことだったからだろう

狂えるゴースト:『もっとだ、もっと人の多いところへ、もっともっと……もっと斬らねば、もっと……!

ヤナギを通り過ぎながら、残響を残してゴーストは消えていく……

ヤナギ・ササキ:駆けこんだ主のいなくなった民家で止血しながら、ゴーストの言葉を反芻する
ヤナギ・ササキ:「止めなければ……俺はセンセイに任されたのだから……モミジ=サンを助け……」朦朧とした意識の中でうわごとを繰り返す

ヤナギ・ササキ:ゴーストは人を斬り続ける。もはや意味をなさない強さを求めて
ヤナギ・ササキ:「ネオサイタマ……ネオサイタマに行かねば……」


ゴーストはネオサイタマンに向かう。確信がある。
いつかモミジと話したのだ。外の世界について

ならば行こう。俺がやらねばならぬことだ。
ドージョーを任された者として。
友として。
そして、最強になるために。

モミジ=サンに勝つのは俺かもう一人の兄弟なのだから
そういう約束をしたのだから



数年後 ネオサイタマ


ネオン瞬くこの街で、珍しくない殺人者の中にも近頃名を上げる者

――『サインゴースト

哀れな被害者の手の甲にサインを刻み込み、
その7日以内に現れては周囲の人間諸共殺し尽くす恐怖の存在
そのサインの意味は、ヤナギにしかわからない
最早彼しか知らない、あるドージョーのエンブレム
無数に存在する幾万の人間の中からでも、
ニンジャであるヤナギならば感じ取れるはずだ

ヤナギ・ササキ:摩天楼から喧噪を見下ろしながら一人のニンジャが琵琶をつま弾く。心を笑顔というメンポで、刃を背負う大琵琶に隠し、街をさまよう

ヤナギ・ササキ:「まったくそろそろ経験は十分だろうに。あの時俺と試合しないからそうなる」
ストリートギャング:「オウオウオウ!」この都市には余裕がない、琵琶を持つ者にだって突っかかる
ストリートギャング:「兄ちゃん、ここでいかした曲を奏でる前に出すもん出してもらおうか!」
ヤナギ・ササキ:「むむ?わしのことぜよ?」明らかに無理のあるニセ方言!
ストリートギャング:「そうだよオウ! ナヨナヨしがやって!」

NM:ヨタモノ達がほくそ笑む、こりゃ地方アガリの世間知らず、金を巻き上げるにゃこれ以上ないカモだ

ヤナギ・ササキ:「わしはこの通り流れの琵琶法師じゃけえ金など一文ももって……うーーんやっぱり無理あるなこれ」
ヤナギ・ササキ:「もっとサムライらしくするか。あーごほん、拙者名をヤナギ・ササキと申すは流れ者の琵琶法師でして」
ストリートギャング:「ハ」男たちが笑って顔を見合わせる「ハハハ!サムライだってよ!」
ストリートギャング:「それより知ってるか?オレはイアイドー五段よ、ビビったか?」
ヤナギ・ササキ:「おお。それはすごい。どんなものでも継続は力なりでござるよ」男は張り付いた笑顔を崩さない

ヤナギ・ササキ:「銭支払いたいのはやまやまなるも残念なことに銭がない。そこでこうするのはいかがだろうか。拙者が一曲奏でそれをショバ代にするするというのは」
ストリートギャング:「残念だな、一括キャッシュで払ってもらわねえと」こりゃ話が通らんと鼻で笑った、拳で聞かせるのが一番よ
ヤナギ・ササキ:「ですが刃物は抜かない方がいい。それは遊びの道具ではないのですから」
ヤナギ・ササキ:「ひとたび抜けば決めねばなりますまい」
ストリートギャング:「知らねえよ」男たちがドスを抜く、さっさとばらして流しちまおうと――

ヤナギ・ササキ:抜いたな

男達に背を向けた琵琶法師の声が一気に冷たくなる
その時ストリートの往来で、ヤナギの直感がターゲットを見つけた
不思議そうな顔をして、手の甲を空に掲げる少女が一人

ストリートギャング:「死に晒せやコラーッ!」
ヤナギ・ササキ:「あの節操無しめ。女子供も分別なしか」
ヤナギ・ササキ:男に背を向けた顔から笑みが消える。そこにあるのは怒りとも使命感ともつかない複雑な表情だった
ヤナギ・ササキ:そしてそのまま琵琶を後ろに回して男の側頭部にしたたかに打ち付けた
ストリートギャング:「アバッ」
NM:我先にと飛び出した男があっさりとしずむ、完全に伸びてしまったのをみて他の男たちがじりじりと後退した
ヤナギ・ササキ:「あいやシツレイ。拙者所用が出来まして候」
ヤナギ・ササキ:周りの男たちに微笑みかえる。ほほえみとは本来獣が獲物を見据えるものだ、今がそれだ
ストリートギャング:「!」男たちの原始的な本能が理解した、こいつはーー狩る側だ!

ヤナギ・ササキ:「下手な兵法怪我の下でござるよ。ではオタッシャデー」
ヤナギ・ササキ:同時にビルから飛び降りる
ストリートギャング:「オボエテイヤガレーッ!」

ヤナギ・ササキ:
音もなく路上に着地すればそのまま歩き出す。
さて、どうやってあの少女と接触したものか
自分の姿を見渡す。……うん。怪しい

NM:悩むヤナギの目の前で少女が路地裏に引きずり込まれた、ネオサイタマにはよくある光景だ

ヤナギ・ササキ:「……チャンスだ。よし、流れの用心棒でいこう」



幸先は悪い、けれど恩を売るには丁度良し
これは吉か、それとも凶か?
路地裏へと急ぐヤナギを見るのは、髑髏のように溶けた月だけであった。




ニンジャスレイヤーTRPG:CP
『キャッチ・ザ・ミリオンズ』

サブストーリー
”いざ、参らんや剣が峰”


 


◆忍◆ ニンジャRPG名鑑#XXX 【デュアラハン】 ◆殺◆
モータルとしての名はモリノベ・ヤスジ、山口県にドージョーを構えているがその正体は二刀流を極めたリアルニンジャ。ニンジャの圧倒的暴力性を抑え込み、弟子たちを息子として見守りつつも育てていたが『ナンバン』『カロウシ』の持つ魔性によって致命傷を負った。その後の消息は不明。

◆忍◆ ニンジャRPG名鑑#XXX 【ベビーシッター】 ◆殺◆
デュアラハンの持つ『ナンバン』『カロウシ』を狙い斥候を放っていたニンジャ、ソウカイヤと繋がりがあるようだが詳細については不明。イアイドーのタツジンであるが勝利のためであれば卑劣な行為も辞さないニンジャである。ドージョー襲撃後に重症を負ったとみられる、この際奪取した二振りはソウカイヤ首魁、ラオモト・カンの持つところとなった。

◆忍◆ モータルRPG名鑑#XXX 【モミジ・サンゲツ】 ◆殺◆
才能を持つにも拘らず大切な人物やドージョーを護れなかったこと、才能がある故にニンジャ同士のイクサが理解できてしまったことで彼の精神は狂気に踏み込むことになる。鍛錬してもまるで届かない境地に至るにはどうしたら良いか、壮絶な修練の果てにその結論を出した時には既に正気に戻れなくなっていた。衰弱死の際に”ある能力”が発現、その精神のみが現世に残り、無辜の人々を殺戮するためだけの災害となり果てる。


NM:オツカレサマドスエ!
黒鷺あぐも(PL):オツカレサマドスエ!
黒鷺あぐも(PL):とても つらい

◇注釈

このリプレイ内で使用した画像は、MidjourneyならびにStable Diffusionで作成されたものです。

◆Discoad

キャッチ・ザ・ミリオンズの専用鯖リンクです。
CP参加者は内定していますが、感想等あれば参加の上で伝えていただけるとリプレイ執筆速度が大幅に上昇します。

『キャッチ・ザ・ミリオンズ』EP1へ続く
『ヨージンボーを雇おう!』


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