高橋洋一の雑さ


http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53343
 まあ、左派のいう「保守化」とは「自民党支持」のことでしかないから、中韓への親しみだのなんて話を持ち出しても何の意味もなさない。政治的党派性の中では事実や証明よりも神話や説明のほうが重要なわけで、畢竟「有権者がバカだから俺達は選挙で負ける」以上のことは何ひとつ言っていないのだから「おじいちゃん御飯ならさっき食べたでしょ」ぐらいのことを返しておけば良い。

 そんなことより気になったのは「民主党時代には『ブラック企業』という言葉は聞いたことがない」云々だ。学生が教員に就職関係の相談で「ブラック企業だから行かない」のような話が出てきたのが安倍政権で就職状況がマシになったからという説明は、創作実話ではないかという疑義はさておき、とりあえず受け取れなくもない。
 だか、「ブラック企業」という言葉はもっと前からあり、それは大学教員を務める高橋は知っていなければならないはずだ。なぜなら、少なくとも「ブラック企業」の元ネタは「大学就職課の就労先ブラックリスト」だからだ(諸説ある)。

 何度か指摘しているように、既に2000年代初頭の2ちゃんねるに於いて、「就職課ブラックリスト」という名目でpdfだかjpgだかが出回っていた。その「摘要」曰く、拘束時間が長い、賃金が安い、残業代が出ない、自社商品を買わせる、恫喝やセクハラがある等々、まさしく今でいう「ブラック企業」そのものである。それを受けてブラックリスト企業のスレッドも立っていた。その内容の真偽はともかくとしても、名前の挙がった企業は今「ブラック企業」とされている企業とほぼ重なるし「罪状」も上記の摘要とほぼ同じである。まあ、2ちゃんのことなので針小棒大な申告もないではなかろうが。

 大学(だと認識していたが高校や専門学校かもしれないが)の就職課だとて、学生が好ましからざる企業に就職するのは嬉しくなかろう。当然、そのような企業に内定が出たとなると、学生課の人間が止めに来る。(私の卒業した年次でも「先生に『○○に内定が出た』と言ったら学生課がすっとんできた」という真偽不明のネタはあった。)
 おそらく少なからずの大学ではそのようなことになっているのではないかと思うのだが、就職率を上げるのに必死な底辺大(嘉悦大がそうだとは言ってない)ならいざ知らず、腕時計パクってクビになったほうの中堅大ならそういうのあった筈でしょう?

 逆に不況で就職困難だからといってブラック企業から内定をもらった学生を諫めなかったのだとしたら、一流大の研究者ならいざしらず、「官僚のあがりポストとしての大学人」としてちょっと問題があるのではないかという話になる。
 右寄りの言論人の雑さは、もうちょっと何とかして欲しい。

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