【ほぼ毎日エッセイ】ハンバーガーな休日

私がハンバーガーショップを利用するときにはいくつかの条件がある。
1つ。白いTシャツを着ていくこと。
2つ。小腹であること。
3つ。約束まで中途半端に時間が余っていること。
ハンバーガーを頬張ると、何かにつけて口の周りにケチャップやマヨネーズがへばりつく。
厄介なことにハンバーガーを目の前にすると誰もが少年に戻ってしまうので、お行儀の悪かった私のような人間はついついTシャツの肩のところでそれらを拭おうとしてしまう。
「うーん…ハンバーガーで手も塞がってるしここで拭きたい…!」
抑えきれない衝動に駆られてしまった時、抑えてくれるのがこの白いTシャツだ。
口を拭うためなら手段を選ばない私の悪しき心に反するかのような真っ白なTシャツ。
これによって私の「口を拭きたい」という欲求を突っぱねてくれる。
「こいつを汚したくない…」そんな気持ちに変えてくれるのだ。
小腹であるということも大変重要な要素である。
何より私は三度の飯より飯が好きであり、空腹であっては己の欲を満たすためラーメン屋へ歩みを進めてしまう。
中華そばやなら半チャーハンをつけるし、家系ラーメンなら白米は当たり前。
留まることを知らない私の食欲を満たすためやたらめったら注文をする。
なにより、そうなってしまうと選択肢にハンバーガーは入らない。
ラーメンorDIE。
もしくは揚げ物orDIEなのである。
したがって「今日はハンバーガーを食おう」となるのは小腹が空いた時であって、そんな私を丁度よく満たしてくれるのはハンバーガーしかいないのだ。
そして3つ目が最も重要な決め事であり、これがなくてはそもそも頭の中にハンバーガーショップが浮かばない。
「駅前にはいるんだけど50分後の電車に乗らないと早く突きすぎちゃう」
「けどカフェでゆっくりするには高くつくし」
「お腹は空いてるけどこの後友達と飲み歩くからがっつり食べるわけにも…」
そんな願い全てをかなえてくれるのが、もうお分かりだろう。
そう、ハンバーガーショップなのである。
食べ終えたところで片しさえしなければとりあえず「あっ、まだコーラ飲み終わってないんだろうな」くらいにしか周りは思わない。
流石にその状態で4〜5時間もいるのはどうかと思うが、20分くらいアホヅラ垂れ流してリンゴのかわいこちゃんを弄っていたって周りはなんとも思わないだろう。
これが特に予定もなく、ただハンバーガーを食べるだけとなると一瞬で時間が過ぎてしまい、むしろ手持ち無沙汰になってしまう。
この無駄な20分を楽しむことこそにもハンバーガーショップを利用する大きな意義があると私は思うのだ。

今日はその全ての条件が揃った。
と言うよりも3つ目の条件である「約束まで中途半端に時間が余っていること」が発生し、小腹が空いていることもあって、白いTシャツへと袖を通したのだ。
Tシャツから頭を出した時にはもうハンバーガーの事しか考えられなくなっていた。

時刻は12時過ぎで、14時にお台場で友達と落ち合う予定で、その1時間後の15時からバーベキューをするのである。
頭の中がハンバーガーでいっぱいだった私は、袖を通すあの一瞬バーベキューの事を忘れていた。
思い出したのは「ベーコンチーズワッパーセット」を頼んだ時で、随分と複雑な気持ちになった。
木炭で汚れるではないか。絶対に気がついてはいけないことに気が付いてしまい、落胆していたところで片手に持つレシートに刻まれた151の番号が呼ばれた。


2階に上がると店内にはNe-Yoの”Let me love you”が流れていた。
この声を聞くと、高校時代学園祭で全校生徒の前にて彼の歌を歌った少しぽっちゃりしている中国人のクラスメイトを思い出す。
生意気にも私は、その容姿から彼のことを「ネーヨ」などと揶揄していた。
そう言えば学園祭で彼が歌っていたのは”So Sick”だった。
これから木炭で黒くなるであろうシャツを憂いて”So Sick”な気持ちになった私は、それを洗い流すようにセットのコーラに口をつけた。
続いてポテトをひとつまみ。
最近ではオニオンリングやらサラダやらに変えられるらしいが、やはりハンバーガーにはポテトである。
2〜3本つまんだあたりで指についた塩を舐めてからその手を薄紙で拭いて、改めてコーラを飲む。
ポテトは手についた塩を舐めるときが1番美味しいとさえ思うときがある私は、これを下品と思う人間とは一緒にハンバーガーを食べることはできないだろう。
ここまで来てようやっとくるまっているバーガーに手を伸ばす。


丁寧に包装されている紙をほどいて、持ちやすいように整えてから大きく口を開けてかぶりつく。
むしゃり。
続けてもう一度、むしゃり。
そして、コーラをごくり。
マクドナルドやモスのバーガーは”パクり”、その他手の込んだ大きいものに関してはナイフやフォークなんぞを用いる。
“パクり”では物足りないし、かしこまって食べるハンバーガーなんぞハンバーガーではない。
むしゃりと食べる。これこそがハンバーガーの醍醐味なのだ。
“むしゃり”と食べられるハンバーガーはバーガーキングのワッパーしかない。
もし、ハンバーガーチェーン店総選挙なるものがあるならば間違いなく私はバーガーキングに票を投じるだろう。
その名の通り王の座にはバーガーキングが相応しい。

バーガー、バーガー、コーラ、ポテト、バーガー、ポテト、バーガー、バーガー、コーラ…。
テンポよく食べ進める、最後のコーラを飲み干すと、やっぱりあっという間に終わってしまった。
電車の時間まであと40分もある。
早く家を出すぎた。ストローをいじりながらぼんやりそう思いながら、肩で口を拭おうともしなかった事に気がつく。
「白いシャツ、いらないじゃん」
少し虚しくなった。
そのまましばし空を見つめてから店を出るため席を立った。

休日がゆっくりと始まる。

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