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仕事

「仕事」について、少考している。

多くの人にとって、仕事とは、金を稼ぐ手段、だろうと思う。

強欲な僕は、違った意味で考えている。

仕事とは、必ずしも、金を稼ぐ手段ではない。

金を稼がない仕事だってあるし、金を支払ってする仕事もある。

なにかをして、何かに働きかけて、なにかを変えること。

そう考える先では、単に「なにかをすること」とまで拡張できる。

物理学の世界では、何らかのエネルギーを加えることで、物の状態を変更することができる。

ニュートン力学では、加速度を加えることで、物の位置を変えることができる。

熱力学では、運動エネルギーを加えることで、物の温度を上昇させることができる。

仕事も同様に、なにかをすることで、何かが変わる、ということだ。

そして、なにをして、何をどう変える、というところに焦点を当てる。

道に落ちているタバコの吸い殻を拾うことで、景観を良くする、環境に放出されるマイクロプラスチックの量をすこし減らす、吸い殻を拾う行動をパフォーマンスすることで見る人に注意喚起を促す。

そんなようなことだ。

あるいは、道路にスプレーペイントでアートを描くことで、自らの内側にあるものを表現する、ペイントを消すための仕事を作る、スプレーの噴射ガスで周辺の空気を汚染する、というような仕事もあるだろう。

僕が置かれた現在の社会環境では、お金を稼がないと生活してゆけないので、仕事をしてお金を頂戴するということもしなければいけない。

そして、生活ができるだけのお金を稼ぐことができていれば、残りの時間と体力と気力を、お金を稼がない仕事に充てる。

お金を稼ぐ仕事と、お金を稼がない仕事とのバランスを上手にとる。

そして、その両方で、自分が最良と思う仕事をする。

「隠居」は、何もしないで遊んで暮らす人のことを言うのではない。

「隠居」は、お金を稼がない仕事をする人のことを言う。

通常であれば、人件費がかかってできないような仕事をする。

名前のある仕事では、例えば、民生委員、碁会所の管理人、観光ガイド、などが該当するだろう。

今朝目にした「70歳まで働くには…国が示した七つの選択肢に疑問噴出」と、「ノーベル賞大村智のあの名言 導いた画家堀文子との交友」の、2つの記事を読んで思ったことだ。

「国が示した七つの選択肢」は「金」に焦点が当たっているし、「大村智のあの名言」は「金ではないもの」に焦点が当たっている。

70歳まで働くには…国が示した七つの選択肢に疑問噴出
https://www.asahi.com/articles/ASMBT4CQ0MBTULFA01F.html?iref=comtop_8_05
 政府が打ち出した「70歳まで働く機会の確保」に向けた制度づくりを議論する厚生労働省の部会が25日あり、働き続けたい従業員の希望に応えるために政府が示した七つの選択肢について議論した。委員からは「イメージしにくい」といった疑問の声が上がった。
 政府は、65歳まで働きたい人のために企業に用意するよう義務づけている「定年の廃止」など三つの選択肢を維持したまま、65歳を過ぎても働きたい人のために「他企業への再就職実現」「個人の社会貢献活動参加への資金提供」など四つの選択肢を加えることを検討している。

ノーベル賞大村智のあの名言 導いた画家堀文子との交友
https://digital.asahi.com/articles/ASMBH5DRBMBHUCFI006.html?pn=4
 抗寄生虫薬を作り、発展途上国の多くの人々を失明から救って、ノーベル医学生理学賞を受けた大村智さん(84)。美術を愛し、収集家としても知られる。2015年のノーベル賞発表日の会見で語った「みんな微生物がやってくれたこと」という印象的な言葉の背景には、親交が深く、今年亡くなった日本画家・堀文子さんのある憤懣(ふんまん)があった。
 今から約20年前。当時大村さんが理事長を務めていた女子美術大学の創立100周年が近づいていた。記念事業にあたり、大口寄付者へのお礼として、活躍中の卒業生10人の作品でつくる記念版画集を企画した。その中の一人が堀さん。伝統に縛られず自然を描き、「群れない、慣れない、頼らない」を旨として絵の道を歩む人だ。依頼する画家の中で「最難関」とみて、知人に会食の機会を設けてもらい、説得に赴いた。
 酒を酌み交わし語り合うと、あっという間に意気投合。そこから交友が始まった。堀さんが研究室をおとずれ、顕微鏡で微生物をのぞいたこともあった。神奈川県大磯町のアトリエから東京に来た際、「飲みましょう」と声がかかる。会話はいつも年上の堀さんがリード。「私のお姉さんのようでした」。素晴らしい言葉だと思うとメモをした。そうしてできた堀文子語録が手元にある。
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 中でも記憶に残るのが、しばしば口にした「人間は傲慢(ごうまん)だ」という言葉だ。
 人も植物も動物も同じ生命体。クモの巣のような立派なものを人が作れるか。人間だけが特別なのではなく、それぞれが素晴らしい。なのに人間だけがやりたい放題だ――。
 堀さんはそう怒っていた。言葉だけでなく、行動でも示した。切られそうになったアトリエ近くの巨木を土地ごと買い取って守った。生命を敬い、尊ぶ心情は揺るぎがなかった。
 それは、微生物が生み出す天然有機化合物を研究してきた自分の歩みに共通すると感じている。
 ノーベル賞発表の日の記者会見で「私自身がものを作ったり、難しいことをしたりしたわけではない。全部微生物の仕事を整理しただけ」と語った。土から微生物を分離し、微生物が作る物質の中から有用なものを見つけ出して薬を作る。「みんな微生物がやってくれたこと」。自然に口をついて出た言葉だったが「堀さんと話していたから、そんな発想で答えることができた」。
 人生には三つの心得があると考えている。健康管理、研究推進、一期一会。趣味はすべてに影響し、趣味を通じて人との出会いにも恵まれたと語る。「三つの心得のトライアングルの中央に趣味が位置し、人生を豊かにしてくれます」
 長年にわたって集めてきたコレクションをもとに、生まれ故郷の山梨で「韮崎大村美術館」を開いた。堀さんの作品も数多く収蔵し、ヒマラヤに咲く青いケシを描いた「幻の花 ブルーポピー」もその中の一枚。「堀さんは青い花ではなくトゲに注目し孤高の美しさを感じた、と聞きました。生き物としてとらえていたのですね」。生命の荘厳さ、最後まで力を振り絞って生きる命の姿。今年2月に100歳で亡くなった堀さんの追悼の展覧会を、12月から同館で開く予定だ。(大村美香)
 〈おおむら・さとし〉1935年、山梨県生まれ。北里大学特別栄誉教授。定時制高校の教員から研究者に転じる。寄生虫病の治療薬「イベルメクチン」の開発が評価され、2015年にノーベル医学生理学賞を受賞。
 ◇韮崎大村美術館(山梨県韮崎市神山町鍋山1830の1)は、JR中央線韮崎駅下車、タクシーまたは市民バスで約10分。水曜休館。「追悼 堀文子展」は12月7日から2020年3月1日まで。

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