見出し画像

愿以山河聘15(作者:浮白曲)の有志翻訳【中華BL】



本家リンク

愿以山河聘リンク
https://www.jjwxc.net/onebook.php?novelid=4439761

第十五章リンク
https://www.jjwxc.net/onebook.php?novelid=4439761&chapterid=15


翻訳

作詩

衛斂うぇいれんの一言を聞いて、李福全りーふーちぇんは心中で何百何千の考えを経た挙句、最後に顔に笑みを張り付けて尋ねた:「うぇい公子、何かご命令でしょうか?」
この青年は権勢を手に入れ、以前受けた屈辱の報いとして、厳しい仕打ちをする機会を得た。衛斂うぇいれんの言葉は穏やかで傲慢さはなく、寵を恃んで驕る様子は毛ほどもないなどと誰が予想出来ただろう。
公公ごんごんは陛下のお傍に仕えていらっしゃいます。衛斂うぇいれんもまたお傍に侍っています。同じ方に心を尽くすのですから私たちが互いに対立する必要はありません、そうではありませんか?」衛斂うぇいれんは礼儀正しく言った。
李福全りーふーちぇんは目を丸くした。これは好意の表れだろうか?
そうだ。君主の寵は根無し草のように頼りないが、陛下と自分は幼い頃から共に支え合って成長した情誼の深さがある。今は陛下は公子れんを寵愛しているので、当然彼の方が優先されている。しかしもし今後陛下が彼を嫌った時、この大宦官である自分に嫌われていたら彼の生活は非常に酷いものになる恐れがある。
公子れんは先見の明のある人物だ。
大宦官の仕事には狡猾さが必要だ。李福全りーふーちぇんは一通りあれこれと推量したが、ただ訳が分からないといった表情をして見せた:「公子は笑っていらっしゃいますが、奴婢がどうしてあなた様と対立することがありましょう?」
公公ごんごんは前回私のせいで罰を受けたので、恨みに思っても当然です。あの日は病気で混乱していたので図らずも公公ごんごんを困らせてしまいました。衛斂うぇいれんはとても申し訳なく思っています。」衛斂うぇいれんは軽く頭を下げた。
李福全りーふーちぇんは型どおりの挨拶として「とんでもないことでございます」と言いかけたが、衛斂うぇいれんはまた言った。「公公ごんごんが私を警戒するのは、私のせいで罰を受けたからではないのは分かっています。私が楚人だからです。私が陛下の為にならないことを心配しているのでしょう。」
李福全りーふーちぇんはしばらく言葉が出なかった。
その話は率直すぎて、しばらく答えることが出来なかった。
李福全りーふーちぇん衛斂うぇいれんを信用していないのは、確かにそれが原因だった。
彼は子供の頃から秦王の傍に仕え、秦王がここまで成長するのがどれほど困難なことだったかを知っていた。

八年前、公子ゆえと母のゆん姫は冷宮にいた。世話をする者もなく、生活は苦しかったが、無事に成長することが出来た。九歳で傀儡とされて王位についてからは、毎日命の危険に怯える日々を送っていた。
李福全りーふーちぇんは秦王が九歳で登極した時に、幼い主に仕える為に選ばれた。その頃、子供は生母が井戸に落ちて亡くなった為に、寡黙で表情も少なかった。ただの見捨てられて孤独な弱弱しい子供に見えた。伏せた目には生気がなく、終日ぼんやりと特定の方向を見つめて何も言わず、自分の世界に籠っていた。
秦王とほぼ同じ年齢の子供の宦官たちが送り込まれてきた。宦官長は陛下を喜ばせること出来た者は褒美を取らせると言った。
活発で気の利いた子供たちはすぐに集まり、がやがやと様々な玩具で陛下を誘い、陛下の注意を引こうと手を尽くした。
李福全りーふーちぇんはその当時、小福子しゃおふーずと呼ばれていた。性格は朴訥で他の子供達のように気が利かず、すぐに群れの外に押し出され、ぼんやりと立って子供たちがこの出世の機会を争って努力しているのを眺めていた。
小宦官たちの笑い声に囲まれて幼い王は終始俯いて一言も発せず、表情は呆然として、まるで周囲の賑わいなど存在していないかのようだった。
体は人の群れの中にあっても、心は人の群れの外を彷徨っている。
小福子しゃおふーずは外にいてそれを眺め、小陛下は母君に会いたいのだろうと気づいた。彼が宮殿の外にいる母親に会いたい時も同じような表情をする。
とうとう陛下は騒がしさに耐えられず、口を開いて話したが、言ったのはただ一言「失せろ。」だけだった。
小宦官は皆怯えて黙り込み、跪いて許しを請うた。
しかし小福子しゃおふーずは怯えながらも前に進み出て言った:「陛下、物語をお話ししてもよろしいでしょうか。」
それは実は特に耳新しい物語ではなかった。民衆の間でよく聞かれる、どの母親も自分の子供に話して聞かせるような物語だ。
小福子しゃおふーずの母親も彼に語ってくれた。小福子しゃおふーずの家は貧しかったので宦官として宮殿に入ることになったが、いつも母親を恋しく思っていた。気持ちが抑えきれなくなると、母親が聞かせてくれた物語を思い返した。
小福子しゃおふーずはただ小陛下が母君を恋しがっていると気づいていたので、一時的に発奮して、この誰もが知っている物語を陛下に聞かせた。
彼が怯えながら話を終えると、陛下はようやく頭を上げて聞いた:「お前の名前は?」
彼は地面に跪き頭を垂れた:「小福子しゃおふーずと申します。」
「ああ。」陛下はごく素っ気なく一言答えた。
その一言から、彼は陛下の傍仕えの宦官となり、十二年間付き従った。
その後李福全りーふーちぇんは、彼が慎重に考えもせずに語ったあの物語は、ゆん姫が幼い頃の陛下にいつも語っていたものだったと知った。
当時陛下は九歳で純真無垢な年齢だったが、既に権力闘争に巻き込まれその犠牲となっていた。
太后が政治を握り、外戚が独裁を行ったので、秦国では誰も九歳の幼王を本当の秦王だとは思っていなかった。
更に酷い者は、陛下を暗殺しその地位を奪おうとした。
刺客が不足することはない。茶を淹れる官女は袖に毒針を隠しているかもしれず、口に入る食べ物には薬が混ぜられているかもしれず、衣服や室内で焚く香にはどれもこれも細工がされているかもしれなかった。
夜眠る時も梁の上から短剣が落ちてくるか用心する必要があった。
陛下がまだ幼く弱かった頃、長い間毎晩殺される夢に魘された。
彼は誰のことも信用せず、即ちそれは腹心の李福全りーふーちぇんに対してもそうだった。他の者に対するのと同様にいくらか信用を保留していた。
陛下は五年間耐え忍び、十四歳で太后一党を根絶やしにした。太后に三尺の白綾を下賜した時、陛下は自ら見届けに行った。その傍には李福全りーふーちぇんただ一人だけが従った。
少年は太后に言った:「あなたは当時、人を使って私の母上を井戸に突き飛ばした。その現場を私も見ていた。」
李福全りーふーちぇんはこの秘密を聞いて鳥肌がたった。
陛下は実の母が井戸に突き落とされるのをその目で見ていたのだ……
しかしその場で攻撃することなく、逆上して問い詰めることもなく、憤ることもなく、二日目には冷宮から連れ出してくれた太后に対し、感謝の涙さえ流して見せた。
……秦王の地位を手に入れるために。
その後、五年をかけて太后一族を誅殺した。
彼はその時、九歳だった。
しかし、なんという精神を持っていたことか。
李福全りーふーちぇんは心から陛下を大切に思い、敬服している。
次の七年で秦王は六国を征服し、四方で殺戮を繰り広げ、手に掛けた者の数はますます増えていき、人々が恐れる暴君となった。
李福全りーふーちぇんですら、日ごとに馴染みのない人物になっていくような陛下に対して非常な畏敬の念を抱き、子供の頃のようには話せなくなった。
しかし彼は依然として忠心を持って誠実に仕えており、陛下を傷つけることは誰にも許さなかった。

李福全りーふーちぇんは回想から抜け出すと、目の前の美しい姿の若い公子を見つめ、表情を少し変えた。
我が国の民ではない。その心は必ず異なっているはずだ。李福全りーふーちぇん衛斂うぇいれんを全く信用していなかった。
衛斂うぇいれんは楚国の公子ですが、ただの捨て駒です。ずっと誰も私のことなど気にかけていません。」衛斂うぇいれんは言う。「秦国へ来たら、陛下が私を色々と気にかけてくださり、衛斂うぇいれんは深く感じ入ったのです。」
公公ごんごんがもし私の異心を疑うのでしたら、そんな必要はありません。」衛斂うぇいれんは淡く笑った。「今日公公ごんごんにお話ししたいのは、今後私に良くして頂く必要はないが、ただ私を困らせないで欲しいということです。いかがでしょうか?」
李福全りーふーちぇんは考えてみてから恭しく言った:「公子は楚人で、陛下は秦王です。楚人が我々の陛下をどれほど恨んでいることか、奴婢は承知しております。公子は既に誠実にお話し頂いたので、奴婢も率直にお話しいたします。あなた様にもし陛下を傷つける意図があれば、奴婢は命に代えても代償を支払って頂きます。」
衛斂うぇいれんは答えた:「そんなことは絶対に起きません。」
確かに王を暗殺することを考えたことはあったが……ただ考えてみただけだ。秦王が彼をあれほど苦しめたのだから仕方がない。
しかしやはり本当に秦王を殺すつもりはなかった。現在秦王が既に七国の平衡を維持し、天下は安定へ向かっている。この肝心な時に秦王を殺せば、再び乱世となる。天下を統一する力のある二人目の人物はまだいない。戦乱は長期に渡り、人々は塗炭の苦しみを嘗めるだろう。彼は永遠の罪人になってしまう。
もちろん衛斂うぇいれんは、自分がその二人目になる能力があると自認している。
だが、彼は怠け者だ。
天下を征伐するよりも、世界中を放浪する方がいい。
李福全りーふーちぇんは保証を得ても全面的に信じることはなかったが、態度を少し改め以前のように衛斂うぇいれんに対立しないようにすることは問題ない。
友人が一人増えるのは敵が一人増えるよりも良いことだ。友人になれないとしても、少なくとも敵になる必要はない。
そう考えると、李福全りーふーちぇんは再び如才ない笑みを浮かべた:「承知いたしました。公子はどうぞ外の空気をお楽しみください。奴婢はお先に失礼いたします。」
衛斂うぇいれんは頷き、李福全りーふーちぇんの体が長い廊下の角の向こうへ消えるのを待って、笑みを消した。
彼は李福全りーふーちぇんの好意を得るつもりはなく、実際のところ李福全りーふーちぇんが処刑されても気にしない。
しかし、李福全りーふーちぇんは秦王のことをよく知っている。
傍に仕える近侍として、彼は秦王について珠翠じゅーついよりも絶対に多くのことを知っている。今、衛斂うぇいれんの命は秦王にかかっているので、秦王に関係するものに気を配るのは当然のことだ。
最初に良好な関係を築けなかったなら、どうやって相手の情報を知ればいいだろう。

衛斂うぇいれんが殿内へ戻ると、秦王が目を上げた:「外の空気は吸い終わったか?」
衛斂うぇいれんは元の場所へ座った:「冷たい風が吹いて、とても清々しかったです。」
姫越じーゆえは「うん」という一言の後、静かに言った:「私の傍にいると息苦しいのか?」
衛斂うぇいれんは箸を取る手を止めた。
これは命に係わる質問だ。
秦王の傍にいるのが息苦しいなどと言えるはずがない。言えば即死だ。
部屋の中が息苦しいというのも良くないだろう、秦王は彼を外に出して清々しい冷風に三時辰(六時間)も当たらせるかもしれない。
どちらを選んでも命に係わる。
ちぇっ、この狗皇帝に仕えるのは難しすぎるだろう。
衛斂うぇいれんは恥ずかしそうに言った:「そうではありません。ただ陛下を拝見していると、昨夜の口づけが思い出されてしまい息が苦しくなったのです……」
「ごほごほごほっ!」汁物を飲んでいた姫越じーゆえは突然噎せた。
衛斂うぇいれんは慌てて言った:「陛下、ゆっくり飲んでください。」
周囲で聞いていた宮人達は皆無言で了解して頭を下げた。
姫越じーゆえは手巾で口を拭った。このまま面目を失うわけにはいかない。毎回衛斂うぇいれんにしてやられている。
姫越じーゆえはわざと淡々と言った:「どうやって息苦しくさせたと言うんだ?」
衛斂うぇいれんは少し驚いた:「陛下、ここには人が居ます、詳しくお話しするのは……」
姫越じーゆえは命じた:「話せ。」
衛斂うぇいれんの面の皮がどれほど厚いのか見てみたいと思った。
衛斂うぇいれんは困ったように周りの官人を見渡すと、頬をかすかに赤く染めた。
ああ、話すことが出来ないようだ。
姫越じーゆえは突然試合で一本取ってやったような達成感を覚えた。
すると青年が俯いてたどたどしく話すのが聞こえてきた:「春の景色は深遠。鴛鴦の帳は暖かく、悦びは長い。悦びは長い。緑なす黒髪は乱れ、紅い蝋燭は包まれ。互いに唇を寄せ、優しく眉を撫でる。玉の敷布と枕、錦の布団は乱れ。錦の布団は乱れて愛しい男を覆い、夜明けまで揺れていた。」
姫越じーゆえは箸を持ったまま固まり、水晶蝦餃子が無惨に卓上に転がった。
衛斂うぇいれんがこれほどの強敵とは思いもしなかった。即興で官能的な詩を作ることが出来るなんて。
衛斂うぇいれんは恥じらっているふりをしていたが、姫越じーゆえは本当に恥ずかしかった。
姫越じーゆえは半分まで聞いた辺りで衛斂うぇいれんよりも顔を赤くした:「だ、黙れ。お前はどうしてそう……」
恥知らずなんだ、そんな話を作って口に出すなんて。
衛斂うぇいれんは不思議そうに言った:「でも陛下が臣に話せとおっしゃいました。」
姫越じーゆえは額に手を置いた。頭が痛い:「話さなくてよい。」
怖い怖い。完敗だ。


姫越は絶対、衛斂が自分を放って席を立ったから拗ねて絡んだんだと思う

分からなかった所

詩の所は全体的によく分からなかったです。
红烛轻绕:赤い蝋燭が包まれている??婚礼の時に紅い蝋燭を灯すそうなので、紅いのはそれで良しとして、包まれているのが謎です。何かの比喩でしょうか。

#愿以山河聘 #願以山河聘 #中華BL #中国BL #BL


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?