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愿以山河聘23(作者:浮白曲)の有志翻訳【中華BL】

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愿以山河聘リンク
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第二十三章リンク
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翻訳

氷を砕く

別の日、養心殿で昼食が供された。品数は豊富で、目を見張るほど華やか。聞くだけで生唾が湧き、ため息をつくほどの美味だ。
秦王はこれらに慣れており、表情はただいつも通りだったが、それでも好き嫌いをした。
「今日の魚はあまり新鮮ではないな。」姫越じーゆえは箸を置き、料理を批評した。
衛斂うぇいれんはそれを聞いて魚を一口食べてみたが、嫌な味はしなかった:「そんなことはないようですが?」
姫越じーゆえ:「私は駄目だ。」
衛斂うぇいれん:いいでしょう。
あなたが王だ。あなたの言う事は全て正しい。
衛斂うぇいれんは秦王の偏食がとても酷いことを知っていた。彼は不味いと思うと、絶対に食べようとしなかった。
「それを下げて、別のものを作らせてください。」衛斂うぇいれんは宮人に指示した。
彼は秦王に寵愛されているので、養心殿の宮人達に命令して動かすことが出来た。
宮人は指示に応じて立ち去り、新しく調理された魚ではなく、一人の人間を連れてすぐに戻って来た。
着ている服からみるに、御膳房の料理人だ。
姫越じーゆえは微笑んだ:「これは私に人を食べろという事か?」
料理人は初めて王に会い、戦々恐々としていたが、これを聞いてすぐさま跪き体をぶるぶる震わせた:「陛下、お助け下さい!」
彼は陛下についての噂を聞いていた。気分のままに人を殺す暴虐な性格だ。命令一つで油の入った鍋に放り込まれて揚げられてしまうかもしれない。
姫越じーゆえは無表情だった。
何をこのように怯えているのだ?彼は人は食べない。
彼は数えきれないほどの人を殺したが、宮中に潜んでいた各国の刺客を除くと、殺したのは罪を犯した真っ当ではない人間だけで、無実の人を無暗に殺したことなどない。
料理人を困らせる必要はない。
姫越じーゆえの笑顔が徐々に消えてくのを見て、衛斂うぇいれんは逆に笑ってしまった。彼は口を覆って笑いながら言った:「顔を上げなさい。陛下は人を食べません。」
料理人は頭を上げようとはしなかったが、顔を撫でる爽やかな風のような良く響く穏やかな声が聞こえた。
これは最近よく噂を聞く公子れんだろう。
公子れんはやはり陛下の寵愛を受けているようで、陛下がまだ話していないのに勝手に彼に顔を上げるように言った。これは大胆不敵と言える。料理人は心の中で批判し、衛斂うぇいれんの話には絶対に従おうとしなかった。
公子れんは陛下に寵愛されているので、越権行為をしても咎められないだろう。だが彼がもし陛下の命令なしに体を起こしたりすれば、即刻命がなくなるかもしれない。
料理人が動こうとしないのを見て、姫越じーゆえは冷たい声で言った:「公子の話が聞こえなかったのか?」
料理人は驚いてすぐさま体を起こした:「ありがとうございます陛下、ありがとうございます公子。」
どうやら公子れんが陛下の心に占める重要性を低く見積もり過ぎていたようだ。
衛斂うぇいれんは料理人が彼の言葉を無視したことなどは気に留めなかった。人はみな命が惜しいものだ。料理人が彼を信じなかったのは当然のことだ。
彼は尋ねた:「何を報告しに来たのですか?」
料理人は衛斂うぇいれんの話を再度無視することは出来ず、頭を下げて言った:「奴婢は御膳房の料理長を務めております、王寿わんしょうと申します。陛下は新鮮な魚をお求めですが、食材は毎日宮殿の外へ買いに行っております。新鮮さを保証するためです。本日の魚は……これが一番新鮮なものです。厨房内には他に余分な食材がございません。」
あったとしても一夜を経た前日のもので、死んでから時間が経っている。宮人が食べるためのものだ。陛下に差し上げることは出来ない。
養心殿の宮人が状況を説明した時、宮人は何も持たずに戻って罪に問われることを恐れ、詫びさせる為に彼を縛りあげて一緒に来させた。
王寿わんしょうは思い切って話し終わると、頭を低く下げて処分が言い渡されるのを待った。彼はどうすることも出来ないのだ。しかし上の人間には下の人間の苦労は理解されない。どんな罰を受けるにしても、彼はただ受け入れることしか出来ない。
姫越じーゆえは一言も言わずに聞いていた。彼は決して気難しい君主ではないので、手を振って退出させようとした。
秦王が手を振るのを見て、王寿わんしょうは彼を引きずり出して処刑するつもりなのだと思い、顔色は青ざめ生気を失った。
衛斂うぇいれんが突然言った:「臣は新鮮な鯉があるところを知っています。」
姫越じーゆえは横目で見た:「ああ?」
衛斂うぇいれんは微笑んだ:「臣が陛下をお連れします。」
姫越じーゆえは眉を上げた:「では何を待つことがある?見に行こう。」
衛斂うぇいれん:「承知しました。」
二人は話すとすぐに出て行った。誰も料理人には注意を払わなかったので彼はしばらくそこに残っていた。彼がどうして良いのか分からず躊躇っていると、李福全りーふーちぇんが彼を振り返って片目を瞑った。「ここでまだ何をしているのですか?早く退出しなさい。」という意味だ。
王寿わんしょうは驚いて、すぐに何度も頷き、慌てて退出した。たった今命拾いしたことに気付いた。
地獄の門から逃げ出した……うぇい公子が口を開いてくれたおかげで彼の命は救われた。
王寿わんしょうはまだ怯えていたが、すぐに衛斂うぇいれんの恩に感謝した。
姫越じーゆえは自分が訳の分からないまま濡れ衣を着せられたことを知らなかった。彼は悪名高いので、彼に殺意がなくとも人々はすぐに処刑しようとしているに違いないと考えるのだ。
姫越じーゆえはこの濡れ衣を晴らすことは出来なかったし、弁解しようと思ったこともなかった。結局のところ、一人殺すことは殺人で、百人を殺すことも殺人だ。初めてその手を血に染めた時から、彼は潔白や無実といった言葉とは全く関わりがなかった。
太平の世の王には仁徳の名声が必要だ、万人が敬い仰ぎ見る。乱世の王には鉄血の威勢が必要だ、人は皆恐れ慄く。
彼は多くを語る必要を感じなかった。
衛斂うぇいれんも知らなかった。彼がぴたりと正確に言い当てた言葉のおかげで、思いがけず良い関係性を築くことになり、後日大きな助けになることを。
今、彼らは一面雪と氷の中に立っていた。衛斂うぇいれんは懐に湯たんぽを抱いて目の前の凍った湖を眺めた。
これは沁園湖だ。
春時分には水面に波がきらきらと輝き、遥かに広がる湖の景色を望むことが出来る。上に東屋がある。幾度も折れ曲がる橋を通って東屋へ行き、腰を下ろすことも出来る。湖に船を浮かべて月明かりの下で花を楽しんだり、水中を泳ぐ鯉を眺めることも出来る。
しかし今は冬で湖面には分厚い氷が張っていた。泳いでいる魚がいても氷の下に隠されて、簡単に取り出すことは出来ない。
昨年魯国が色鮮やかで目出度い錦鯉を二十匹献上したのだが、それが沁園湖にいると宮人が話しているのを衛斂うぇいれんは聞いたことがあった。
「氷を割って水の中の錦鯉を捕まえれば、新鮮な鯉が食べられるのでは?」衛斂うぇいれんは言った。
姫越じーゆえは何も言わなかったが、李福全りーふーちぇんは大げさに騒ぎ始めた:「うぇい公子、これは魯国の献上品で一匹何千金もする高価なものです。珍しい観賞用の魚で、食べるものではありませんよ!」
これはひどい無駄遣いではないか!
「資源の無駄遣いですよ。」衛斂うぇいれん李福全りーふーちぇんが心の中で考えたことを見透かし、穏やかな口調で言ったが、内容は傲慢だった。「鯉は竜門を登るのが生涯の望みです。龍である陛下のお腹に入るのは彼らにはもっとも望ましい落ち着き先です。意義ある使い道と言えるでしょう。」(鯉は竜門を登ると龍になるとされている。君王の象徴が龍なので、王に食べられることを竜門を登ることになぞらえてふざけている)
……くそみたいな鯉が竜門を飛び越えるだと。鯉の意向など聞いてもいない。
馬鹿馬鹿しい、荒唐無稽だ!
ここ最近の教訓から李福全りーふーちぇん衛斂うぇいれんに反論することはせず、ただ陛下をじっと見た。目でこう言っていた:陛下はどう思われますか?
よく見てみると、意外にも陛下は笑っていた。
かつてのあの作った冷たい笑顔ではない。陛下は目を細めて、目の中に微かな笑いを浮かべていた。穏やかで柔らかい気持ちが溢れ、とても美しかった。
李福全りーふーちぇんは愕然とした。
……陛下がこのように心から笑うのを見るのは何年ぶりだろう。
彼は陛下が低く笑いながら問うのを聞いた:「しかし氷はこのように分厚い。衛郎うぇいらんはどうやって氷を割るつもりだ?」
李福全りーふーちぇんは息が止まりそうになった。
陛下はこの提案を真剣に考えている!
昔、周の幽王は寵妃である褒姒を笑わせる為だけに、いたずらに狼煙を焚いて諸侯を集めた(故事。そのことが滅亡の要因の一つになった)。今、陛下は公子れんの為に値千金の錦鯉を昼食にしようとしている。しかしこれは……我儘すぎる!
理性は李福全りーふーちぇんに、このようなことを許すべきではないと言っていた。近侍の身としては陛下にまともな振舞いをするよう、このような無礼で理屈に合わないことをしないようにと説得するべきだ。
しかし、陛下の顔に珍しく浮かんでいる軽い笑みを見て、李福全りーふーちぇんは躊躇った。
いいだろう。陛下を一度でも楽しませることが出来るのであれば、数匹の錦鯉が台無しになっても惜しくはない。
氷を砕く。湖面に張った氷を砕くのは難しくない。難しいのは陛下の心の氷を砕くことだ。
もし公子れんに本当にそれが出来るのであれば……彼はこの上なく感謝するだろう。
李福全りーふーちぇん衛斂うぇいれんに対する見方を少し改めた。そして衛斂うぇいれんは軽快にこう言った:「昔、晋の王祥は氷の上にうつ伏せになって鯉を捕まえたそうです。陛下も服を脱いで、氷の上で横になれば大丈夫です。あ、そうそう、王祥は親孝行の心で天の神を感動させたので、常人ではこうはいきません。陛下は天子なので、ただ龍の気を使えば氷を破って鯉を捕ることが出来るでしょう。宮人では代わりに出来ませんよ。」
李福全りーふーちぇんは口をぽかんと開けて、衛斂うぇいれんが真面目くさって出鱈目を言うのを聞いていた。
前言撤回。
公子れんはなんという傾国の美人だ。
朝廷を混乱させる妲己だ。
李福全りーふーちぇんは恐る恐る陛下の方を見た。
陛下はこのような要求には一切応えないだろう!


衛斂がとっても楽しそう

分からなかった所

特にないけどまた「神他娘的」が出てきた


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