見出し画像

愿以山河聘9(作者:浮白曲)の有志翻訳【中華BL】



本家リンク

愿以山河聘リンク
https://www.jjwxc.net/onebook.php?novelid=4439761

第九章リンク
https://www.jjwxc.net/onebook.php?novelid=4439761&chapterid=9


翻訳

引っ越し

衛斂うぇいれん:「朝政に関しても愚見を申しますが、よろしいでしょうか。」
姫越じーゆえ:「許す。」
衛斂うぇいれんは言った:「陛下は朝議に出られたところです。不快になられたのは朝議で大臣が今日奏上したことが原因です。臣の知るところによると、かつて秦国の朝廷は上から下まで腐敗し切っていました。官位を売買して私腹を肥やし、民衆は苦しみ、怨嗟の声が溢れた。陛下が登極されて以来、奸臣を処罰して悪を除き、新しい政を推し進め、地方の腐敗を正し、職権の濫用を禁じ、現在のような秦国民の安寧と天下泰平を実現された。つまり名君であると言えます。」
姫越じーゆえは喜びも怒りも見せなかった:「衛斂うぇいれんは楚国にあったのに、我が大秦についてよく知っている。」
衛斂うぇいれんは礼をした:「陛下の名声は響き渡り、六国で知らぬ者はありません。」
「名声?」姫越じーゆえは笑っているような笑っていないような表情で言う。「悪名の間違いでは?楚国では道端で遊ぶ三歳の子供ですら手を繋いで輪になり『秦を滅ぼし楚は興る、昶はやがて幕を落とす』という童謡を歌っているそうだ。うぇい侍君、私を皮肉っているのか?」
衛斂うぇいれんはすぐに跪いた:「いいえ。」
「臣が申し上げたいのは、陛下は名君である為国事において批判されることはない、そうなると私事が問題だ、ということです。陛下はまだお若く、未だ後宮に妃嬪がおらず、跡継ぎとなる子供がいない。おそらく朝臣たちは長い間批判していたのではないでしょうか。これまで陛下はこの問題を抑えつけておられましたが、しかし昨夜……陛下は臣を寝殿に連れ帰られました。そのため皆陛下がそちらの方面に関心がお有りになると考えて、古い問題をまた持ち出したのです。今日の朝議であったのは、自家の者を入宮させ、後宮を女性で満たして欲しいという奏上でしょう。」
姫越じーゆえは鳳眼を少し上げた。
彼の言う事は一言一句間違いない。
普通、男が二十一歳にもなれば早ければ妻と側室が群を為し、息子も娘も揃っている。姫越じーゆえは一国の君主の身だが、後宮には誰もいない。その原因は幼い頃に太后から行動を制限されていたことにある。誰も信じないだろうが、太后が送り込んだ性の手ほどきをする宮女にすら手を付けなかった。
これではどうにもならない。以前の彼は四方に征戦していたが、今現在六国は皆秦に降った。こうなってはこの問題を無視することは出来ない。
楚国公子れんは秦王後宮の初の人物だ。昨夜より前は皆彼を嘲笑っていた。しかし彼は姫越じーゆえに抱かれて養心殿に入り、一晩そこで休んだ。
情報通の古狸たちはすぐにこう考えた。陛下は情欲を味わった、今後は宮中に熱狂が巻き起こるはずだ。自分の家の娘や孫娘を送り込まなくては。
今日の朝堂では大臣達が我が家の娘を選んでもらおうと次々奏請する一幕が起きた。
姫越じーゆえはこれに全く興味がなかった。刃の上を歩み、薄氷を踏むような環境で育ったため、他人が傍にいることを嫌悪しており、恋愛感情も湧かず、後宮に美女たちを放って自分の目を汚したいとも思わなかった。
秦王は暴君ではあったが、暗君ではない。彼は数多の佞臣を誅殺したが、現在朝廷にいるのは皆全て国を担う柱だ。このような問題で懲罰を与えて忠臣の心胆を寒からしめることはできない。
そういう訳で、戻って来た時の姫越じーゆえの顔には表情が無かった。
そして衛斂うぇいれんは全てを正確に言い当てた。

衛斂うぇいれんが語り終えると、殿内は静まり返った。
姫越じーゆえは跪いている青年を冷ややかに眺め、ゆっくりと数歩歩いた:「衛斂うぇいれん、私は聡明な者が好きだ。」
彼はまた言った:「だが聡明すぎる者は嫌いだ。そのような者と付き合うのはとても疲れる。絶えず警戒する必要があるからだ。それよりも寡黙な美人の方が好きだ。」
衛斂うぇいれんは絶句した。
秦王はどういうつもりだ、まだ舌を切り取る気か?
くそったれめ、舌を切るならこの公子がお前の狗頭を刎ねてやる。
秦王という人は、衛斂うぇいれんの人を殺したくなる最低限度をいつも超えてくる。
衛斂うぇいれんは湧き上がる殺意を抑え込んだ。
問題はまだ挽回の余地がある。
些細なことを我慢しなくては大事を為すことはできない。
衛斂うぇいれんは慌てず冷静に言った:「口がきけない者は陛下の口実にはなり得ません。」
群臣は秦王に後宮に女性を入れるように迫り、秦王はそうしたくない。どちらも引かず、膠着状態が続く。
世に親不孝は三つあり、世継ぎを持たないことがその最たるものだ。まして君主の嗣子は国家の問題だ。これは簡単に誤魔化せるような問題ではない。
秦王はこの問題に煩わされたくなかった。彼は忍耐力があまりなく、おそらくいつかはそのようなことをいう大臣を処罰してしまい、君臣の心は離れてしまう。それは秦王が望む事態ではない。
それよりも衛斂うぇいれんを寵愛するふりをして彼を「的」にする方が良い。秦国の群臣はみな男色で国に災いをもたらす衛斂うぇいれんに怒りをぶつけるだろう、嫉妬深い彼は秦王が美女を後宮に入れることを許さないのだ。秦王に対して文句はつけられない。
これによって衛斂うぇいれんが矢面に立つことになるが、利益とはいつでも危険を冒して求めるものだ。彼は楚人で、秦の臣下は彼を非常に恨んでいる。もう少し恨みが増えた所で何だというのか?
秦王にとって価値がある限り、彼は秦国でとても良い生活を送ることが出来る。

姫越じーゆえは彼をじっと見つめた。その目から軽蔑が消え、賞賛の色が浮かんだ。
「なぜ衛邦うぇいばんはお前をここへ送ったんだ?」姫越じーゆえは驚いた。「これほどまでに聡明なら、太子じゃおが百人いても敵わない。もしいつかお前が政治を担っていたら、私は楚国を手放さなくてはならなかったかもしれない。」
衛焦うぇいじゃおは楚国の王位継承者で、李夫人の子であり、衛斂うぇいれんの三番目の兄だ。
衛斂うぇいれんはさらりと言った:「彼の心は盲いています。真珠を見分ける力はありません。」
この言葉は彼がこれまで貫いてきた温和な態度とは違い、非常に傲慢だった。
姫越じーゆえはそれを聞いて手を叩いて笑い、衛斂うぇいれんを床から引き上げた:「衛郎うぇいらんは本当に見事だ。気に入った。」
「お前はどこに住んでいる?……いや、それはもういい。今日中に養心殿に引っ越して来るんだ。」姫越じーゆえは命じた。「戻って荷物をまとめろ。」
衛斂うぇいれんは名誉も屈辱も恐れず頭を下げた:「ありがとうございます、陛下。」

外はまだ雪が降っていた。
部屋から出ると、殿内の暖かさに気付いた。衛斂うぇいれんは身に纏った狐の毛皮をきつく抱きしめ、先導する宮人について青竹閣への道を辿った。
宮人は彼に対して非常に恭しく、以前の態度とは天地ほども違った。
地位の高い者を崇拝し低い者を踏みつける、例外はない。楚国もそうだし、秦国もまた同様だ。
青竹閣の門に着くと、衛斂うぇいれんは言いつけた:「あなた達はここで待っていてください。」
宮人達は答える:「かしこまりました。」
衛斂うぇいれんは一人で部屋に入り、部屋の様子ががらりと様変わりしていることに気付いた。
部屋はぽかぽかと暖かく、あちこちに精緻で豪華な家具が据えられていた。机の上には錦の箱が積み上げられ、紅い絹が広げられた上に金銀玉の器が並べられている。沢山の装飾品だ。
さらには数人の見慣れない宮人がおり、彼を見ると一斉に礼を取った:「うぇい侍君に拝謁いたします。」
衛斂うぇいれんは穏やかに言った:「あなた達は下がりなさい。長寿ちゃんしょう長生ちゃんしぇんは残りなさい。」
宮人達は踵を返し、列を為して退出した。
衛斂うぇいれんは何が起きているのか分かっていたが、敢えて聞いた:「何ごとだ?」
長寿ちゃんしょうがすぐに立ち上がってやって来た:「公子お帰りなさいませ!昨晩一体どこへ行かれて、そして一晩中戻られなかったのですか?夜中に内務府の者がやって来て、内務府が自分達でここを受け持つと言いました!炭を送って来て、青竹閣を丸ごと新しくして、色々なものを送って来ました。お仕えする宮人まで。内務府の長官があんなににこにこしているのは初めて見ました……」
長生ちゃんしぇんは黙ったままだ。
衛斂うぇいれんは軽く笑った:「私が秦王の眼に止まっただけだ。私に後で仕返しされるのを恐れて、すぐに埋め合わせをしてきたな。もしくは秦王が私を訪ねて来て、こんなに貧相だとばれて処罰されるのを恐れたか。」
長寿ちゃんしょうは驚いた:「公子、何とおっしゃいましたか?し、秦王?」
長生ちゃんしぇんは低く叱った:「公子はいつもお前を馬鹿だとおっしゃるが、まだ分かっていないのだな。秦王を除いて他に誰が内務府の狗どもの思いあがった態度を変えることが出来る?!公子……」彼は厳粛な面持ちで悲しそうに言った。「あなたは本当に……秦王の寵愛を受けられたのですか?」
「まだだ。だが今後は秦王の演技のお相手をする。」衛斂うぇいれんはあっさり言って一笑した。「片付けるべきものは片付けた。これからの日々は良い方向に向くだろう。」


愉快な同居生活が始まります

分からなかった所

东西该收拾的都收拾了:「片付けるべきものは片付けた」秦王に気に入られて生活改善する件についてひとまずやることはやった、という意味なのか、引っ越しの片づけの話(片付けるべきものは片付けよう?)をしているのかどちらでしょうか?



#愿以山河聘 #願以山河聘 #中華BL #中国BL #BL


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?