見出し画像

愿以山河聘22(作者:浮白曲)の有志翻訳【中華BL】

本家リンク

愿以山河聘リンク
https://www.jjwxc.net/onebook.php?novelid=4439761

第二十二章リンク
https://www.jjwxc.net/onebook.php?novelid=4439761&chapterid=22


翻訳

対局

楚国のあの人質が寵を得ている。
半月も経たないうちに前王朝の後宮の全員がその噂を知った。
陛下は人目もはばからず、他でもなく彼を非常に寵愛している。
侍君を身分の低い姫妾ではなく高貴な夫人と同等に扱い、宮人は皆公子と呼んで礼を以て接するようにと、陛下は自ら命令を伝えた。
陛下は養心殿に彼を連れて行き、一緒に食事をして一緒に住んでいる。毎晩彼をお召しになり、公子れんは三日続けて牀榻から出られなかったらしい。
公子は何でも陛下の言うことを聞くので、陛下は宝石や豪華な衣装を与えてやり、最も貴重な至宝すら彼に与えた。
陛下は……
このような些末な噂は枚挙に暇が無いほどだ。朝廷中の文官武官も以前は気に留めていなかった。陛下は面白い玩具を手に入れたばかりなのだから、まだ新鮮に感じていて夢中になるのも仕方がないだろうと考えた。
しかし、陛下は朝議でこう言った──「私は衛郎うぇいらんがいれば十分だ。妃嬪の選定についてお前たちは二度と議論する必要はない。」大臣たちは黙ってはいられなかった。
これは一体どういう事だ?何たることだ!
皆次々と跪き、陛下に考え直すように懇願した。
姫越じーゆえは肖像画を直接放り投げた:「美人は既に後宮へ納めた。衛郎うぇいらんよりも美しい女がいるなら、また検討してみてもいい。」
大臣たちは初めは陛下が譲歩したと大喜びしたが、肖像画を見ろと伝えられると、全員黙り込んだ。
絵の中の青年は一面の白雪の中で紅梅の傍に立ち、背後には九重の宮殿がある。肌は雪のように白く、唇は梅のように赤い。黒髪が滝のように流れ、眉は遠い山のよう。狐の皮衣をを纏い、雪と風に覆われている。顔は例えようもなく美しく、姿はしなやか。まるで人ではなく仙人のようで、今にも絵から出てきそうだ。
片隅には八つの洒脱で生き生きとした文字が記されている:風華絶代、国士無双。
もし他の人間がこの二つの言葉を使っていたなら、彼らはその傲慢さを馬鹿にして笑っただろう。だがこの絵の中の青年にはただその通りだとしか思えなかった。
……世の中に本当にこのように凄まじい美しさを持つ人物がいるのだろうか?
世界中を探し回っても見つけることは難しいだろう!
姫越じーゆえは大臣たちが黙り込んだのを見下ろし、ゆったりと玉座に座って笑いながら言った。「どうした?秦国は広い。衛郎うぇいらんよりも更に美しい女を探し出すことも出来ないのか?外見ばかりで中身のない女は見たくない。もっと美しい者を見つけてくれ。そうでなければ今後この事で私を煩わせるな。」
大臣たち:「……」
陛下のこの要求は全く人泣かせだった。
美人はいくらでもいるが、公子れんよりも美しい人となると?七国一の美人と称されるさしもの重貨公主も、おそらく彼の足元にも及ばないだろう。
いかんせん陛下はずっと一貫して同じことを言っており、この問題については既に一歩譲歩している。彼らはそこで更につけあがるような真似は出来なかった。
絶世の美人を見慣れていれば、ありふれた料理まで食べる気がするだろうか?
陛下も自分と同じようにそうだろうと考えて、彼らは再度説得するのを止めた。
この機に家の親族の女性を後宮へ送り込み寵を得ようという大臣たちの考えはあてが外れた。
陛下の眼に止まることがなければ、自分の姉妹や娘や孫娘が「外見ばかりで中身がない女」と見なされてしまう。
大臣たちはそれぞれ美人を探し求め、しばらくの間姫越じーゆえを煩わせることはないだろう。

「陛下はしばらくは煩わされずに済むようですね。」衛斂うぇいれん姫越じーゆえが戻ってくるとすぐ自然に出迎え、彼が朝服を脱ぐのを手伝った。
彼は姫越じーゆえの機嫌が良いのを見ると、少し考えて何が起きたのかを察した。
最近秦王を悩ませている事は、あの一件だけだ。
半月ほど演じた結果、とうとう成果が出た。
衛郎うぇいらんのおかげだ。よくやった。」姫越じーゆえは外から戻ってきて、暖炉の傍で手を温めていた。「お前は私に代わって大きな問題を解決してくれた。どんな褒美が欲しい?」
衛斂うぇいれんは功績を認めなかった:「臣の仕事の内です。」
彼はただ衣食の心配がなく十分であれば、その他のことはどうでもいいと思っていた。
もし本当に欲しいものが言えるとしたら……それは当然解毒剤だ。だが、これは言えるはずがない。
彼は思うままに振舞うことが出来たが、ただ秦王の支配から逃れようとする素振りを見せることは出来なかった。
姫越じーゆえも思い出し、丸薬を取り出して彼に与えた:「これが解毒薬だ。半月に一回飲むと命の心配はない。」
衛斂うぇいれんはそれを受け取った。俯いて見、唇の辺りに当てると分からないように軽く匂いを嗅いだ。
白蓬しろよもぎ紫蘇しそ天門冬てんもんどう大葉子おおばこ……
もういくつかの薬材が含まれているが、今は匂いで判別することが出来なかった。
判別出来なければ、自分で解毒薬を配合することが出来ない。
たとえ作り出すことが出来たとしても長期的な解決にはならない。これはただ半月に一回一時的に延命するための解毒薬だ。完治する方法ではない。
一呼吸の間でこれだけのことを考えると、秦王に疑いを抱かせないよう衛斂うぇいれんは平静な顔で解毒剤を飲んだ。
彼は小さく笑って言った:「もし陛下がよろしければ、臣と碁を打ってください。」

碁を打って欲しいというのは、何気なく言っただけだった。彼は何も欲しいものはなかった。華やかだが何の用もない宝飾品を求めるよりも、一歩引いておいた方がいいだろう。
問題の延期に成功したことは、秦王にとっての彼の価値は徐々に消えていくということを意味する。秦王に自分の新たな価値を認めてもらわなくてはならない。
衛斂うぇいれんは琴、碁、書画にとても造詣が深い。師傅は人の世の外にいる修為の高い人で、かつて天下を碁盤、七国を碁石に見立て、中原の群雄割拠の大局を衛斂うぇいれんに教えてくれた。
その一局の結果は衛斂うぇいれんの勝ちだった。
玉芝ゆーじは当世の奇才だな。だがこれは机上の空論にすぎない。」師傅はため息をついた。「この小さな楚王宮ではお前を閉じ込めておくことは出来ない。もしお前がここを出ていけば、七国の天下の全てを得ることも出来るだろう。」
少年の頃の衛斂うぇいれんは軽薄で不真面目だった:「師傅、私を玉芝ゆーじと呼ぶのはやめて頂けませんか?女の子の名前のように聞こえます。」
玉芝ゆーじ衛斂うぇいれんの字で、芝蘭玉樹(香り高い草と玉のように美しい木。優れた人の意味)の言葉から取ってつけられた。うぇい玉芝ゆーじ、字はその人そのものだ。
衛斂うぇいれんも元はこの字が良い意味だと思っていたが、王宮の有名な官女も玉芝ゆーじという名前であることを知って以降……彼は自分をその字で呼ぶことを拒否していた。
「聞いているのか!」師傅は怒って机を叩いた。
衛斂うぇいれんは慌てて頷いた:「弟子は学びました。」
「お前は何を学んだ?」能力があるのに発揮しないことを師傅はとても嫌っていた。「師にもお前は理解出来ない。お前は天下を平定する能力があるが、その意志がない。もし競う意思があれば、この楚国太子の位も公子じゃおに取って代わることが出来るだろう?」
衛斂うぇいれんは頬杖をつき、ため息をついた。「弟子はただ一人で自由気ままに生きたいだけです。何千万人もの命を担うのは嫌です。」
師傅は深い意味を含んだ目で、ただ彼を見た:「玉芝ゆーじ、お前の運命は既に定まっている。逃れることは出来ない。」
師傅は嘘は言わない。
その後、七国天下の全てを得たのは、無名のうぇい玉芝ゆーじではなく一人の冷酷無比な少年だった。
姓をじー、名をゆえ、字は雲帰ゆんぐい
結局、衛斂うぇいれんは一千万の命を背負って一人秦国へ赴き、一国の公子としての責務を果たした。
彼は確かに、逃れることが出来なかった。

衛斂うぇいれんは爆ぜた栗に叩き起こされた。
秦王が指を衛斂うぇいれんの額に掛けると、青年は急に我に返ったが、美しい瞳はまだ少しぼんやりしていた。
姫越じーゆえ:ふん、少し可愛い。
「私と対局中に気を散らすとは。」姫越じーゆえは冷たく言った。「衛斂うぇいれん、お前がまだしていない無礼は他にあるのか?」
衛斂うぇいれんは「あ、」と一声上げて、自分が先ほどまでぼんやりしていたことに気付いた。
彼は誰に対しても常に警戒を怠らないのだが、秦王の前で気を抜いてぼんやりしてしまっていた。
衛斂うぇいれんは恭しい様子を見せた:「臣は真剣にやります。」
「必要ない。」姫越じーゆえの口調は更に冷たくなった。「もうお前の負けだ。」
衛斂うぇいれんは俯いて下を見た。惨敗だ。
「……」
これは衛斂うぇいれんの初めての完敗だった。すぐに負けず嫌いの気性が激しく刺激された:「もう一局お願いします。」
姫越じーゆえは彼を一瞥して、再び碁盤をひっくり返した。
……
碁を打っているうちに、夜は深まり蝋燭の火が灯され、灯りが揺らめいた。
衛斂うぇいれんは本気を出した。相手の力を過小評価してはいけない。終わってみると勝負は五分五分、秦王と引き分けだった。
衛斂うぇいれんが碁がこれほど上手いとは知らなかったな。」姫越じーゆえはいくらかの興味と賞賛を含んだ笑みを浮かべた。「私と引き分けになった相手は長らくいなかった。」
衛斂うぇいれんは目を伏せてその引き分けた碁盤を眺め、しばらくして唇を引き締めて言った:「そうですか。」
今日、彼は秦王と七局対戦し、気を散らして惨敗した最初の一局を除き、残りの五局は彼の三勝二敗だった。いずれも辛勝で、その差はそれほど大きくなかった。
秦王は主に激しく攻め進み、彼はその勢いを止められず防戦に苦労した。一手一手が考え抜かれ、それぞれが厳しく状況を制御し、勝敗を分けるのは難しかった。
この第七局は引き分けだ。
彼らはほぼ一日中対局したが、今なお勝敗はついていなかった。
二人は目を見合わせ、期せずして同時に視線を下げて互いを称える気持ちを隠した。
姫越じーゆえは碁盤を一掃した:「もう一局!」
実力は伯仲している。今日彼らは勝負をつけるまではやめられない。
……
時刻は既に遅くなり、第八局は最後の一局で今日の最終的な勝敗を決定するものである為、二人は特に慎重だった。
黒衣の王が黒石、白衣の公子が白石を持つ。香炉の香が燃え尽きても、まだ戦況は膠着していた。
衛斂うぇいれんは長い間考えて、一手を指したその時、突然眉を顰め、間違った手を指したのではないかと内心考えた。
石を他の場所へ動かそうとして、手の甲を美しい手に抑えられた。少し暖かい温度に覆われる。
衛郎うぇいらん、『待った』無しだ。」姫越じーゆえの細長い鳳眼が彼を見つめた。
蝋燭の揺らめく灯りに照らされ、秦王の顔は妖しいほど美しかった。
衛斂うぇいれんは、ぽかんと彼を見つめ、白石を放り投げた。
「臣の負けです。」

後に衛斂うぇいれんは、自分はこんなに怠け者で自分の行く末を何とかする気さえないのに、どうしてあの人の天下征服に喜んで附いて行くことにしたのかと考えた。
ずいぶん長く考えた挙句、蝋燭の灯りに照らされ、卓上には碁石が入り乱れ、砂時計の砂が落ちるように静かに時が流れたあの夜に思い至った。
美しい君王が彼の手を覆い、唇の端を半分あげ、鳳眼はかすかに弧を描いた。
衛郎うぇいらん、『待った』 無しだ。」
あの時からもう、彼は自分の一生を差し出していたのだ。


後年の衛斂が過去を振り返って考えるこのシーン、すごく好きです。
まだ自覚していないけど、衛斂はこの時から姫越を好きになり始めたんですね。

分からなかった所

卫敛是被一记爆栗敲醒的:「衛斂は爆ぜた栗に叩き起こされた。」分かりづらいですがデコピンですね。こういう表現があるのか、ただの比喩なのか。

他就将自己的一生都输出去了:肝心な〆の言葉なのに、意味が分からなくてただの作文になっています。輸出とは?何か別の意味があるのかと思って調べて見ても特になさそうですし。


#愿以山河聘 #願以山河聘 #中華BL #中国BL #BL


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?