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愿以山河聘21(作者:浮白曲)の有志翻訳【中華BL】

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愿以山河聘リンク
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第二十一章リンク
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翻訳

夜番

陛下が怒りながら入って行ったので、公子れんは死を賜ることがなくとも数十回の杖刑を受けるだろうと李福全りーふーちぇんは考えていた。
彼は陛下の傍に長年仕えてきたが、陛下がこんな風に腹を立てるのを見たことがなかった。陛下は怒らないのではなく、ただ喜怒哀楽を表情に出さないだけだ。心の中で不快に思っていればいるほど表情は穏やかになり、口元は少しいつも笑みを浮かべて人を震え上がらせる。
今回感情を露わにしていたのは人を恐れさせもするが、人間味が感じられもした。
だが、あの公子れんがどうやって陛下のお怒りを受け止めるのかは分からない。
外に立っている李福全りーふーちぇんは不思議に思って頭を振った:公子れんは聡明な人だと思っていたのだが、どうしてこのように愚かなことが出来たのか。
湯泉宮の扉が開くと、李福全りーふーちぇんはすぐに注意を戻し、頭を下げて礼を取った。
陛下は公子れんを引きずり出すように命じるはずだと思ったが、李福全りーふーちぇんがこっそり目を上げると、雪のように白い肌の青年が陛下の胸に不機嫌に凭れ掛かっているのが見えた。顔は桃花のように緋色に染まっていた。
李福全りーふーちぇんは目の端を引きつらせ、慌てて視線を戻した。
懲罰はありえないように見える。
問題を寵愛一回で解決できなかったとしても大丈夫、その場合は二回すればいい。
公子れんはやはり大した人だ。
李福全りーふーちぇんはこのように感嘆させられるのはもう何度目か分からなかった。

夜、牀榻の傍。姫越じーゆえは近侍を退出させ、部屋の中には誰も居なかった。
姫越じーゆえは遅ればせながら突然あることに気付いた。
どうやらまた衛斂うぇいれんに嵌められたようだ。
姫越じーゆえ:「……」
姫越じーゆえ、八百年たってもお前のような間抜けは見たことがない。
一度ならず二度三度、何度も繰り返し一人の手の中で転がされている。
お前は馬鹿なのか???
そして彼は衛斂うぇいれんを打たないと自分の口で請け合った。王に二言はない。後になってからやり直したくとも不可能だ。
殺すまでするのは?
……まあいいだろう、このままでも面白いかもしれない。
しかしこれを大目に見てしまうのも面白くなかった。息が喉につまったようで、飲み込むことも吐き出すことも出来ない。
他人にこのように翻弄されたのはいつ以来だろうか。
姫越じーゆえは振り返って衛斂うぇいれんの凄艶な美しい顔を見たが、何とはなしに気に入らなかった。
「跪け。」姫越じーゆえは冷たく命令した。
衛斂うぇいれんは驚いた。
「打たないとは言ったが、簡単に許すという意味ではない。」姫越じーゆえは寝台に上がり、中へ入って布団を被るという動作を一息に行った。「今晩、お前は牀榻の前に跪いて夜番をしていろ。」
話しながら布団の中に潜り、衛斂うぇいれんに背を向けて、後は彼を無視した。
衛斂うぇいれん:「……」
今日もまた王を殺したくなる日のようだ。

衛斂うぇいれんが灯りを消すと部屋の中は真っ暗になり、物音一つしなくなった。
姫越じーゆえはしばらく堪え、熟睡しているふりをして寝返りを打った。
青年は静かに牀榻の前に跪いている。夜闇の中に細く暗い人影が山のように動かずにいた。
今回は何故そんなに従順なんだ?
待て、しばらくすれば私を騙して寝床に上がらせようと怪しげなことをするのは確実だ。
今は何か方法を考えているに違いない。
今回は思い通りにはさせない。
姫越じーゆえは一通り考えて三回確信した。頭の中は考えで一杯だった。
ここ数日を共に過ごして来て、姫越じーゆえもいくらか衛斂うぇいれんを理解していた。彼は苦しいことに耐えられないし、自分から苦しむようなこともしないと知っている。
彼は色々なことを考え付く。大人しく一晩中跪いたりするはずがない。
姫越じーゆえは静かに待った。衛斂うぇいれんがどんな策略を使うのか見てみよう。
一刻(十五分)が過ぎた。
二刻(三十分)が過ぎた。
……
姫越じーゆえは瞼が重くなるのを待っていたが、青年はまだ動く様子がなかった。
衛斂うぇいれんは本当に一晩中跪くつもりのようだ。途中で体が少し揺れたが、またすぐにきちんと跪いた。
徹底して一声も発しない。
姫越じーゆえは何とも言いようのない気分になった。
……仕返しをしてやった爽快感は全くなかった。
少し腹立たしくすらあった。
お前は小賢しいやり方をよく知っているだろう?今回はどうして一切何もしないんだ?
跪くように言ったら、本当に跪いている。
馬鹿ではないのか。
私より馬鹿だ。
姫越じーゆえの心の中で衛斂うぇいれんを軽蔑した。
突然床でくぐもった音がした。驚いて見てみると、人影が床に倒れていた。
考える間もなく心が苦しくなり、すぐに牀榻を下りた。太医を呼ばなくては。青年を抱き起してよく様子を見ると、ただ疲れて眠っているだけだった。
姫越じーゆえ:「……」
跪くように言ったのに、こともあろうに眠るとは。
明日になったら首を刎ねてやる。
姫越じーゆえは冷たく考えながら、衛斂うぇいれんをそっと優しく牀榻の上に抱き上げた。
私は情に脆いわけではない。ただ彼の首を刎ねる前にぐっすり眠らせておきたいだけだ。
姫越じーゆえは冷たく鼻を鳴らすと、衛斂うぇいれんに掛布団をかけて丁寧にしっかりと覆ってやった。
もし衛斂うぇいれんが秦王の今夜の複雑な心境の変化を知ったとしたら、恐らく嘲笑うようにこう言っただろう:「あなたは本当に仕えるのが難しい。」

翌日衛斂うぇいれんが目を覚ますと、厳しい顔で彼を凝視している秦王と目が合った。
衛斂うぇいれん:……おはようございます。
もちろん昨夜彼はわざとそうしたのだ。秦王が眠っておらず、呼吸が酷く乱れていることは分かっていた。秦王は長い間彼の様子を伺っていたが、牀榻に上がってくるように言おうとはしなかった。
衛斂うぇいれんは腹を立て、いっそ寝たふりをしてやることにした。
せいぜい床の上で寝るだけのことだ。跪くのはやめだ!
眠るのは何もおかしなことではないので、彼を疑うことはないだろう。
衛斂うぇいれんは確かに秦王が今は彼を殺したいと思っていないことを笠に着て、やりたい放題に振舞った。
名前はれん(引き締まる、収める等の意味)だが、彼は気性が非常に激しい。
だが、秦王が彼を牀榻に抱き上げてくれた上に、丁寧に布団でくるみ込んでくれるとまでは思わなかった。
衛斂うぇいれんの名義上の母親でさえ、そのように細やかに世話をしてくれることはなかった。
当然、衛斂うぇいれんはこれに感謝するつもりはなかった。彼を跪かせたのは秦王なのだから、秦王のちょっとした恩恵に感謝感激するような馬鹿な真似はしない。
ただ気持ちは少し微妙だった。
彼は人の心を見通すことができると自負していたが、秦王のことは分からなかった。
「……陛下。」秦王がじっと彼を見つめ続けているのを見て、衛斂うぇいれんは何か言わずにいられなかった。
秦王は急に視線を逸らすと、素っ気なく答えた。「うん。」
何もなかったかのようだ。
衛斂うぇいれんは訳が分からない様子で言った:「臣は……何故牀榻にいるのでしょうか?」
姫越じーゆえは目を逸らしたまま何も言わない。
衛斂うぇいれんはまた聞いた:「陛下?」
姫越じーゆえはまくしたてた:「お前は昨夜寝ぼけて牀榻の上に這い上がり、私にしがみついて離さなかったに違いない。私は絶対にお前を牀榻に運んだりしていない!」
衛斂うぇいれん:「……」
非常に結構。では、そういうことで。


姫越が可愛すぎです。
衛斂が珠月を嵌めたのには自分が殺されかけたからという理由があるわけですが、姫越はそれを知らないんですよね。ただ謎に侍女を寝床に送り込まれてきたという状況なので、もっと怒ってもいい気がします。

分からなかった所

特になし

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