希少性・社会的証明という2つの心理学を応用したWeb施策「○人が見てます」

旅行サイトや通販サイトで、「◯人が見ています」という表示が出てくるケースをよく見かける。


導入サイトが増えていることもあり、この仕組がCVR改善に有効であること自体は間違いないと思うが、改めてこの仕組みの有効性について、

・1. ユーザ視点での見え方(アンケートによるリサーチ結果)
・2. 心理学的な裏付け

を考えていきたい。

1.アンケート結果~42%のユーザが「購入/予約したい気持ちが上がった」

Webサイトで予約/購入を検討している時に「○人が見ています」という表示を見たことがある1,097人を対象に、その表示があることで意欲が高まったかどうかをアンケートしてみた。


・「購入/予約したい気持ちが上がった」が42%
・「どちらでもない」が45%
・「購入/予約したい気持ちが下がった」が13%
という結果であり、全体としては効果が高いといえる。

購入/予約する気持ちが上がる理由は「1.売り切れの焦り」と「2.人気を感じることの安心感」

気持ちがあがった理由を見ていくと、大きく以下の2つに分類できる。

1つ目は「売り切れの焦り」。数が限らている中で、他の人が同時に検討してる感じがでることで「早くしないとなくなってしまう」という焦燥感が生まれる。

2つ目は「人気を感じることの安心感」。自分だけでなく、他の人もその商品を検討しているということは、それだけ魅力的な商品であり、失敗リスクが低いという安心感が生まれる。


逆に購入/予約意欲が下がる理由は「煽りへの抵抗」

逆に購入意欲が下がる人も13%と存在するが、その代表的な理由は以下となる。

このようなネガティブな印象は一定避けられないと謂うが、強調度合い・文言などの表現方法でも印象が大きく変わると思われ、十分な留意が必要である。


年代別に見ると、若い人は好印象だが、年代が上がるとネガ反応が増える

年代別に印象を見ると、10代・20代は購入意向が上がるというポジティブな反応の割合が多いが、年代が上がるにつれてネガ反応になっていく傾向が堅調に現れる。

年代が上の人ほど、ビジネスの経験・ゆっくり考えたい志向性などにより、「煽り」に対する抵抗意識が強くなっていることが推察される。60代以上になると、ポジとネガが同程度の割合になるため、必ずしも有効な施策とは言えなくなるので注意が必要である。



2. 心理学的な裏付け~「希少性」と「社会的証明」

ここまでアンケート結果から「○人が見ています」という訴求の有効性を分析してきたが、今度は心理学的な側面から考えてみよう。

心理学的な知見を用いて、日常生活やビジネスの営業シーンで「人をどのように動かすか」を研究した本に「影響力の武器」という本がある。この本では、人間が抗えない傾向として、以下の6つがあると説明している。

1. 返報性:受けた恩を返したくなる性質
2. 希少性:限られたものほど欲しくなるという性質
3. 権威:肩書き・経歴などの権威があるものを信じやすい性質
4. コミットメント&一貫性:一度話したことや約束は守ろうとする性質
5. 好意:好きな人には同意しやすい性質
6. 社会的証明:周りに同調しやすい性質

これら6つの観点は、デジタルでのコミュニケーションを考える上でも非常に参考になる観点となっており、この知見をデザイン応用を考える本として「Neuro Web Design」などもある。


本題に戻り、「◯人が見ています」の有効性を心理学的に考えると、「希少性」と「社会的証明」の2つで説明がつく。

「希少性」は、アンケート結果の「売り切れの焦り」と同じだが、限定感を伝えることにより、この性質に訴えていると言える。

また「社会的証明」もそのままで、「自分以外の周りの人も見てる/検討している」ことで、その商品を買うという判断が正しいという同調圧力を活用していると言える。

「◯人が見ています」は、心理学的知見をデジタルマーケティングでうまく応用した施策と言える。


まとめ

・「○人が見ています」という仕組みは、希少性と社会的証明の2つの理由で有効
・希少性:「売り切れてしまうという焦り」を活用し、「限られたものが欲しい」という人間の性質を活用
・社会的証明:「他の人も検討してる」という状況を演出することで、「周りの判断に同調しやすい」という人間の性質を活用
・ただし、年代が上になるほど「煽り」へのネガティブな印象も生み、信頼を損ねるリスクもあるため、表現方法や対象属性には十分留意すべき


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