平安グッドドクターのオンライン診療に見る、デジタル時代のカスタマー対応のあり方

スマホアプリを中心としたデジタルサービスは世界中で日進月歩で進化しているが、中でもその進化が目覚ましいのが中国である。世界的なビジネスコンサルタントの大前研一氏もつい先日「すでにデジタル領域では中国に先をいかれており、日本は改めて真摯に学ぶべき」と講演でお話されている。

WebサイトやアプリのUI/UXリサーチを行う我々ポップインサイトでも、クライアントに有益な提言をするための知識として、中国の優れたサービスを学ぶ必要がある。ということで、中国の先端アプリについて、現地リサーチャからの生情報を元に、参考になる部分を学んでいく。そしてせっかくなので、社内に閉じず、どんどん発信することとする。

平安グッドドクターとは

第一弾は、中国の大手保険会社の「平安保険」のグループ会社が提供する医療健康アプリの「平安グッドドクター」。インストール数は2億を超えており、サービス売上も500億円を超えている。日本よりも医療への不信感が強い中国人にとって、非常に心強い味方となっているようだ。

アプリでは、病院探し・ウォーキングによるポイント獲得・健康食品ECなどの様々な機能を提供しており、それぞれ面白いが、今回は特「医者のオンライン診断」にフォーカスをあて、具体的なユーザ体験の流れを見た上で、特に参考にすべき点を考えたい。

医者のオンライン診断までの流れ

最初にどんな症状かを選んだ上で、その症状にあった最適な医者を選択する。

医者選択では、「評価の割合」「受信数」などが表示され、信頼できそうな医者を選びやすくなっている。無料診断と有料診断に別れている人によっては信頼性を重視し有料診断を選ぶこともあるようだ。

オンライン診断の流れ

オンライン相談はチャット形式でスタートする。

最初はアシスタント的な人が、症状・年齢・性別を確認する。ここは完全にAI化されている。

次に医師に変わり、ここから相談時間がカウントされる(画面上部の時間)。医師に変わった後も、最初は幾つかの室温について選択式で選ぶことが多く、おそらくこの段階もかなりAI化されていると思われる。

基本的な診断が終わった後は、実際の医師に対応を変わり、追加質問や所見が説明される。

これらが終わると、処方箋がチャット上で発行され、なんと薬までオンライン購入することができる。

最後に診断結果のまとめも表示される。


オンライン診断の全文やりとり

ここまでは平安保険のことを知っている人であれば、ある程度知識としては知っている流れと思われる。ただ、実際に中国でどのようにチャットが進んでいるかまで体験したことがある人は少ないだろう。

ということで、実際にどんなやり取りが行われるかを知るべく、オンライン診断のやり取り全文を起こしてみる(なお日本語訳はかなりGoogle翻訳に依存しており、文章がイマイチなのはご容赦を)

AIアシスタント:こんにちは、私はあなたの医者です。あなたの説明に従って、適切な医者を手配します。どのような相談ですか?

■入力:腸機能障害

AIアシスタント:あなたの年齢や性別を正確に教えてください。これは医師の診断と治療にとって非常に重要です。

AIアシスタント:年齢を教えてください

■入力:24歳

AIアシスタント:性別を教えてください。

■選択肢:男性、女性

※ここでアイコンが担当医師に切り替わる。

AI医者:待っている方が5人がいます。想定待ち時間は5分です、準備してください。

AI医者:最初に基本を取り上げます。あなたが助けを求めるならば、よりよく分析するために他の人の基本的な情報を記入してください。ご協力ありがとうございます。

AI医者:さて、現在の不快感はどれくらいの期間現れますか?

■選択肢:2週間以内、2〜3週間、4〜6週間、6週間以上、その他

AI医者:便は出ていますか?

■選択肢:3~5回など

AI医者:便の特徴はどうですか?

■選択肢:緑っぽい、粘り気、水っぽい、消化できていない、その他、以上

AI医者:選択したもの以外に加え、他の特徴はありますか?

■選択肢:再掲

AI医者:それでは、調子が良いとき腹痛をありますか?

■選択肢:ある、ない

AI医者:わかりました、他に何か不快感はありますか?

■入力:

AI医者:どんな原因が考えられますか?

■選択肢:飲酒、シーフードを食べた、食べ過ぎ、脂っこいものを食べた、その他、以上

AI医者:アレルギー疾患の治療は非常に重要ですが、薬物アレルギーはありますか?

■選択肢:ペニシリン、セファロスポリン、その他、薬物アレルギーなし

アイコンは同じだが、ここから実際の先生に切り替わる模様。

医師:これは胃炎です。薬はありますか?

■入力:消化酵母を食べたことがある

医師:これは消化を促進する薬です。フローラの腸粘膜を調整する薬を使用することができます。腸炎の症例は?

■入力:いつも感じる

医師:それは腸内細菌叢をきれいにするために乳酸桿菌錠を使用し、腸レベルを修復し、腸内環境を修復するために化合物グルタミン腸溶性ポリシーを使用することを推奨します。

医師:現在の状況を考慮して、ここに薬のリストをあげることができます、そして後であなたはそれを参照することができます。

医師:この症状は不十分な消化不良によって引き起こされます。

医師:薬物を使用する前に薬物のラベルを注意深く読み、薬物の副作用、副作用および使用法に注意を払い、副作用を早期に検出し、不適切な投与量による悪影響を回避するようにしてください。あなたが薬の服用中に不快を感じた場合、それは病院への新たな訪問に間に合うようにオンラインで相談することをお勧めします。

この後に、処方箋へのリンクが表示され、タップすると処方箋が表示され、さらにその場で購入することができる。また診断結果も受領することができる。

相談開始からわずか30分で、いつでもどこでも場所時間を選ばず、医師の診断を受け、処方箋が発行され、そして薬が買えてしまう。病院にいき薬を貰おうと思うと、2~3時間は平気で潰れてしまう今の日本の状況を考えると、革命的に便利な状態である。


デジタル時代のカスタマー対応のあり方と、UXリサーチャとして価値を出す準備

平安グッドドクターは「医師のオンライン診断」の例を見たが、今後は様々な専門家サービス・製品受付・EC購入相談などにおいても、同じようなユーザ体験が広がっていると思われる。

最も関連する市場としては、国内のコールセンター市場は9,000億円の規模があるが、この予算がどんどんAIチャット・データ整備・チャット対応人材に置き換わっていくだろう。

このような中で、UXデザイン/リサーチを職務とする我々としては、
・どのように受け口に流すか(初期の課題提示・振り分け等)
・どのような文言で初期課題を把握するか
・答えやすい選択肢をどのように設計するか
・AI→人間をどのように自然に接続していくか(ユーザサイドだけでなく、裏側のオペレータの仕組みも踏まえ)
などについて、様々な業界に適用できるよう、知見・プラクティスを蓄積していくことは重要になりそうだ。

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