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『黙らなかった人たち』荒井裕樹

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普通の人がこぼした愚痴、泣き言、怒り。生きづらさにあらがうための言葉を探る、文学研究者による異色エッセイです。
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記事一覧

「自己責任」と「勇気」の話(荒井裕樹)

「自己責任」と「勇気」の話(荒井裕樹)

連載:黙らなかった人たち――理不尽な現状を変えることば 最終回
普通の人がこぼした愚痴、泣き言、怒り。生きづらさにあらがうための言葉を探る、文学研究者による異色エッセイ。本稿は、2019年2月1日にWEB astaで公開された記事を転載したものになります。

 これまで、連載「黙らなかった人たち」をお読みくださり、ありがとうございました。約一年間続いた連載も、とうとう最終回です。
 このコラムでは

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生きるに遠慮がいるものか(荒井裕樹)

生きるに遠慮がいるものか(荒井裕樹)

連載:黙らなかった人たち――理不尽な現状を変えることば 第12回
普通の人がこぼした愚痴、泣き言、怒り。生きづらさにあらがうための言葉を探る、文学研究者による異色エッセイ。本稿は、2019年1月1日にWEB astaで公開された記事を転載したものになります。

遠慮は「する」もの? 「させられる」もの? いまひとつ釈然としない表現に「遠慮するなよ」がある。
 上司や先輩から言われたり、友だち同士で

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「生きた心地」が削られる(荒井裕樹)

「生きた心地」が削られる(荒井裕樹)

連載:黙らなかった人たち――理不尽な現状を変えることば 第11回
普通の人がこぼした愚痴、泣き言、怒り。生きづらさにあらがうための言葉を探る、文学研究者による異色エッセイ。本稿は、2018年12月3日にWEB astaで公開された記事を転載したものになります。

 生活保護の受給者が、少し高価な文房具を持っていること。
 家事や育児に疲れた母親が、おしゃれなランチで気晴らしすること。
 いま、こう

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「心の病」を「そもそも論」してみる(荒井裕樹)

「心の病」を「そもそも論」してみる(荒井裕樹)

連載:黙らなかった人たち――理不尽な現状を変えることば 第10回
普通の人がこぼした愚痴、泣き言、怒り。生きづらさにあらがうための言葉を探る、文学研究者による異色エッセイ。本稿は、2018年11月1日にWEB astaで公開された記事を転載したものになります。

 ぼくたちは、もう少し「そもそも論」をしたほうが良い。
 まっとうな「そもそも論」ができると良い。
 今回は、そんなお話。

「ホロ苦い

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誰かの「一線」を守るための言葉(荒井裕樹)

誰かの「一線」を守るための言葉(荒井裕樹)

連載:黙らなかった人たち――理不尽な現状を変えることば 第9回
普通の人がこぼした愚痴、泣き言、怒り。生きづらさにあらがうための言葉を探る、文学研究者による異色エッセイ。本稿は、2018年10月2日にWEB astaで公開された記事を転載したものになります。

「文学者」の仕事って、何だ? 息子が4歳の時のこと。「パパのお仕事ってなに?」と聞かれて、思わず黙り込んでしまったことがある。
 そういえ

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「ムード」に消される声(荒井裕樹)

「ムード」に消される声(荒井裕樹)

連載:黙らなかった人たち――理不尽な現状を変えることば 第8回
普通の人がこぼした愚痴、泣き言、怒り。生きづらさにあらがうための言葉を探る、文学研究者による異色エッセイ。本稿は、2018年9月3日にWEB astaで公開された記事を転載したものになります。

モヤついたり、イラついたり......。 性格上、あんまり「ブチッ!」とくることはないけど、ここ数年は「モヤモヤ」もしくは「イライラ」するこ

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「お国の役」に立たなかった人(荒井裕樹)

「お国の役」に立たなかった人(荒井裕樹)

連載:黙らなかった人たち――理不尽な現状を変えることば 第7回
普通の人がこぼした愚痴、泣き言、怒り。生きづらさにあらがうための言葉を探る、文学研究者による異色エッセイ。本稿は、2018年8月6日にWEB astaで公開された記事を転載したものになります。

伝説のデパートマン 実は、祖父母と接した記憶がほとんどない。「じいちゃん、ばあちゃん」というと、ぼくには何だか遠い存在だった。
 そのせいか

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「相模原事件」が壊したもの(荒井裕樹)

「相模原事件」が壊したもの(荒井裕樹)

連載:黙らなかった人たち――理不尽な現状を変えることば 第6回
普通の人がこぼした愚痴、泣き言、怒り。生きづらさにあらがうための言葉を探る、文学研究者による異色エッセイ。本稿は、2018年7月9日にWEB astaで公開された記事を転載したものになります。

不気味な「予感」 神奈川県相模原市の「津久井やまゆり園」で起きた障害者殺傷事件から、2年が経とうとしています。
 あの事件で尊い生命を奪われ

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「地域」はどこにある?(荒井裕樹)

「地域」はどこにある?(荒井裕樹)

連載:黙らなかった人たち――理不尽な現状を変えることば 第5回
普通の人がこぼした愚痴、泣き言、怒り。生きづらさにあらがうための言葉を探る、文学研究者による異色エッセイ。本稿は、2018年6月8日にWEB astaで公開された記事を転載したものになります。

「地域」という名の地域はない――「地域の絆を見直す」
――「地域の活力を取り戻す」 
――「学校で地域の事情を学ぶ」
――「防犯で大切なのは

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「みじめ」な社会と「痛み」の言葉(荒井裕樹)

「みじめ」な社会と「痛み」の言葉(荒井裕樹)

連載:黙らなかった人たち――理不尽な現状を変えることば 第4回
普通の人がこぼした愚痴、泣き言、怒り。生きづらさにあらがうための言葉を探る、文学研究者による異色エッセイ。本稿は、2018年5月1日にWEB astaで公開された記事を改題し、転載したものになります。

保活と分断「保活」が、しんどかった......。
「保活」とは「子どもを保育園に入れるための活動」のこと。いまでもよく話題になってい

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「期待」ではなく「希待」(荒井裕樹)

「期待」ではなく「希待」(荒井裕樹)

連載:黙らなかった人たち――理不尽な現状を変えることば 第3回
普通の人がこぼした愚痴、泣き言、怒り。生きづらさにあらがうための言葉を探る、文学研究者による異色エッセイ。本稿は、2018年4月2日にWEB astaで公開された記事を改題し、転載したものになります。

のび太のママに一言いいたい「4月」「新学期」「新生活」

 こういう言葉を目にすると、ぼくは少し気が重くなってしまう。
 たぶん、個

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この社会に「ない」言葉を探す(荒井裕樹)

この社会に「ない」言葉を探す(荒井裕樹)

連載:黙らなかった人たち――理不尽な現状を変えることば 第2回
普通の人がこぼした愚痴、泣き言、怒り。生きづらさにあらがうための言葉を探る、文学研究者による異色エッセイ。本稿は、2018年3月7日にWEB astaで公開された記事を改題し、転載したものになります。

ぼくたちは誰も「励ませない」?「がんばって」
「負けないで」
「だいじょうぶだよ」

 あなたは、どんな言葉に励まされますか?
 中

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「息苦しさ」の正体(荒井裕樹)

「息苦しさ」の正体(荒井裕樹)

【連載】黙らなかった人たち:理不尽な現状を変えることば 第1回
普通の人がこぼした愚痴、泣き言、怒り。生きづらさにあらがうための言葉を探る、文学研究者による異色エッセイ。本稿は、2018年2月8日にWEB astaで公開された記事を転載したものになります。

「つらい」とか「苦しい」ってはっきり言えますか? この文章を読んでくれているあなたは、「つらい」とか「苦しい」とかって、はっきり言えますか?

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