梅雨に向けて





この世の中に絶対なんてないというけど、全てのことにははじめの一歩がある。


あなたが何を言いたいか分かるよ。だけど、これは絶対だと口に出したいことにさえ、理由があるじゃない。



そこから生まれた首尾一貫だとか、そんな言葉が頭上でミミズのように這い回っている。だからアタシはどっちかといえば、足元に転がっている竜の頭や羊の頭の方を拾い上げたい。


全てのことには、はじめの一歩がある。それを模って一つずつ並べられたらいいけど、そんなことはできないから。




その足の裏を想像して、その足跡を創造する。




例えば、アタシの毎食後口に放り込む白い錠剤。


例えば、彼が毎日摂取している中毒性物質。


例えば、アタシの不意に手を伸ばしたくなる夜空。


例えば、彼が見ている明るい髪色のユーチューバー。


例えば、アタシの古本屋で見つけた詩集のシミ。


例えば、彼が履いているピカピカな革靴。



全てのことには、理由がある。



ただその理由はやっぱりアタシの動かした指で、アタシの吐いた息で創られたものだから。そんなものを信じていいの?そんなことを考えて今日は携帯を伏せたよ。



ただただ大事なことは、東京以外にも物語はあるけれど、雨の日の感動には限りがあるよね。


だから結局多分ごめんなさい。絶対におやすみなさい。



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