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努力と思った時点でダメだった


定期健診とコンタクトレンズを購入するために、目医者へ行った。大学を卒業してからというもの、本を読んだり、PCやスマホの画面を見たり、目に負荷をかけることが多くなった。コンタクトをつけているときの視力が1.5から1.0にまで下がってしまった。

「1.0を切ってしまったときには、度数を上げることを考えています」
と、僕が言うと、眼科医は答えた。「それでいいと思います」

それから、あっという間に眼をチェックすると眼科医は異常がないことを告げた。僕がお礼を言って、診察室を後にしようとしたとき、
「頑張ってくださいね」と、眼科医が言った。
僕は一瞬何のことだかわからずに、診察室と待合室を区切るカーテンをつかんだまま、ポージングした。
「演劇頑張ってください。応援しています」
「ありがとうございます。頑張ります」と、僕は言って、もう一度深くお辞儀をして、待合室に戻った。



僕はあまり演劇をしていることを、ひとに言わないのだが、眼科医にはそのことを話したのだと思い出した。いったいいつ言ったのかは思い出すことができないのだが。

「頑張ってください」と言われて、反射的に「頑張ります」と応えたけれど、実際僕は頑張っていない。

というと、僕が不真面目な野郎だとか、かわいげのない曲者に見えるだろうけど、そういうわけじゃなくて。僕はおそらく努力していることを認めない努力をしている

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