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余白のある文章を書くための「名辞以前」


中原中也の詩をとぼとぼと読んでいた。そういえば、僕は、大学生の頃に『中原中也全詩集』を購入して、ベッドの上でうつ伏せになりながらよく読んでいた。黙読するときもあれば、たまに声に出して読んでみることもあったと思う。詩の良し悪しなんてわからないけど、詩の世界に触れることに大きな意義があった。

中原中也の詩を読んで、うとうとしだしたので部屋の明かりを消して眠ると、精神の貴族になったような気さえする。


中原中也全詩集 (角川文庫 角川ソフィア文庫)


今になって、中原中也に関して、専門家の意見を聞くに至った。中原中也の詩の素晴らしさは、彼が「哀しい」と言っているわけではないのに、読者が自発的に自身の哀しさを詩に投影してしまえることなのだという。これは「名辞以前」という言葉で表されている。

名辞以前とは、言葉になる前の世界のことで、中原中也は、「哀しい」と言う前の「哀しさ」や、「手」と表現する前の「手」を詩の世界に描くようにしていたという。名辞以前とはつまり、万能な言葉ではなく専用の言葉を探すことなのだ

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