スカート表紙用写真

別冊ポプシクリップ。Vol.3 特集「スカートのひみつ」

著者:ポプシクリップ。編集部 出版社:Pop Seeds Publishing
言語:日本語 発売日:2013/03/20(初版)


■目次
-スカート『ひみつ』インタヴュー 文・黒須 誠
-ディスク・レヴュー 1stアルバム『エス・オー・エス』
 「裏切りのポップ・センスの源流。」 文・黒須 誠
-ディスク・レヴュー 2ndアルバム『ストーリー』
 「バンド体制スカートの原型となる7曲入り〝シングル〟」 文・渡辺裕也-ディスク・レヴュー 3rdアルバム『ひみつ』
 「スカートのなかはひみつ」 文・立原亜矢子
-編集後記


スカート/澤部 渡 プロフィール

どこか影を持ちながらも清涼感のあるソングライティングとバンドアンサンブルで職業性別年齢問わず評判を集める不健康ポップバンド。澤部渡(スカート/ヴォーカル/ギター)を中心にして、佐久間裕太(昆虫キッズ/ドラムス)、清水瑶志郎(マンタ・レイ・バレエ/ベース)、佐藤優介(カメラ=万年筆/キーボード)をサポートメンバーとして迎え活動を行っている。主な発表作品に『エス・オー・エス』(2010年)『ストーリー』(2011年)『ひみつ』(2013年)がある。

■主な作品
-エス・オー・エス (KCZK-001) CD 2010年12月15日発売
-ストーリー (KCZK-002) CD 2011年12月15日発売
-消失点 (MYRD32) LP 2012年6月20日発売
-月光密造の夜 Live At ShibuyaWWW CD-R 2012年9月2日発売
-ひみつ (KCZK-005) CD 2013年3月3日発売

■参加作品
昆虫キッズ『My Final Fantasy』(パーカッション他)/『text』(サックス・ウーリッツァー他)、豊田道倫with昆虫キッズ『ABCD』(タンバリン)、川本真琴『フェアリーチューンズ♡』(サックス)、yes, mama ok?『CEO -10th Anniversary Deluxe Edition-』(ライナーノーツ)、caméra-stylo『CUL-DE-SUX』(ギター)他


スカート『ひみつ』インタヴュー

取材・文・撮影 黒須 誠 協力 下北沢mona records

序文 -スカートとの出会い

僕が「スカート」という名前のバンドがいることを知ったのは2年前に遡る。しかしながらそのとき僕はスカートの音楽に辿り着けなかった。とりあえずネットで検索をして調べる時代、「スカート」と検索して出てきたのは女性が着用する衣服の類のものばかりだったからだ。また今度調べよう…、その後忘れたままになれば話はそれで終わってしまうのだけど、何故かそうはならなかった。数ヵ月後、あるリスナーから音楽情報サイト「ポプシクリップ。」に一通のメールが届いたのだ。

「スカート(澤部渡)というアーティストをご存じでしょうか?ポップス界を引っ張るだけの実力があるアーティストだと思うので、ぜひ聴いてみてください」

2012年1月7日の出来事らしい。その話を聞いた僕は後日京都の河原町にあるレコードショップJETSET店頭で彼の音に出会うことになる。ちょうど2ndアルバム『ストーリー』が話題になっていたということもあって店頭でプッシュされていた特典付きのCDを購入、1曲目の「ストーリー」のイントロを聴いた瞬間「これはいい!」と素直に思えたのを覚えている。今でも記憶の引き出しからすぐに出せる状態になっている口ずさみやすいメロディーがどこか懐かしく新鮮だったし、バンド結成時によく見られる初期衝動、この場合は澤部がひたむきに歌っている様子を音から感じることができたのもある。

その後あるイベントで彼がyes,mama OK?のサポートベースマンであることを知ると、実は以前から顔を合わせていたことがわかるなど、不思議な縁があり(余談だが、以前僕はイベントのカメラマンとして彼を撮影していたのだった)、今回新作の『ひみつ』リリースのタイミングで詳しくお話を伺うことにした。澤部さんへのインタヴューがはじめてということもあり、新作もさることながら彼の歩んできた音楽人生についてもじっくりと触れているので、これを機にどんなアーティストであるのかも合わせて知ってもらえたら嬉しく思う。


●イエママのライヴに通っていた中学生が、イエママのサポートベーシストになった

-今日は新作『ひみつ』の発売記念インタヴューなんですが、澤部さんの音楽のひみつを解き明かしたいこともあって(笑)、音楽との出会い含めてお伺いできればと思っています。もともとはyes,mama OK?(以下、イエママ)の大ファンだったんですよね。 

澤部 渡(Vo.,Gt.) 「中学生の頃からイエママのライヴを見に行ってたんですよ。で、まあ中学生がイエママのライヴ見ていたら〝何だあいつは?〟って話になるじゃないですか(笑)。それから少しずつ金剛地さん(イエママのヴォーカル)から、色々な話をしてもらえるようになったりして。高校生くらいのときにイエママのトリビュート・アルバム[<*1>]のスタッフをやったんですよ。それからですね、本格的にお付き合いをさせていただくようになったのは」

-そのトリビュート・アルバムのスタッフをやることになったのは何故なんですか? 

澤部 「それは僕がFeelin' Groovy[<*2>]というライヴイベントのスタッフだったんですけど主催者が多分学生だから時間が余ってるんだろう…みたいなことで声をかけてくれたんだと思うんです(笑)。イベントの延長で〝トリビュートを作ろう! 〟みたいな話になって。色々な人に声をかけてやりましたね」

-それが今はイエママのサポートベースをしているというのがとても面白かったんだけど(笑)。

澤部 「大学卒業のときにイエママのアルバム『CEO』の再発の話があがって、僕がその再発のディスク2の編集をやることになったんですよ[<*3>]。それで金剛地さんの家で〝どのライヴテイク使う? 〟とか〝あの曲の権利はどうなってるのか? 〟などの話をしていたんですね。そのときに金剛地さんの家なので何かやってみようかということになって…そしたら僕がなんとなく弾けるんですよ、イエママの曲を。〝じゃあライヴもやってもらおうか? 〟みたいな話になって」

-嬉しいですよね。こういうのってバンドマンの憧れじゃないですか? 

澤部 「夢みたいなものですよね。好きなバンドで弾けるってのは。でも責任重大ですよ。やっぱりベースが肝なんでね。それを引き受けるってのは結構…3、4回目のライヴまではかなりしんどかったですけどね…精神的に」

-話があったときは二つ返事でOKしたんですか?

澤部 「もちろん! 〝これを逃したらもうないぞ〟、と思っていましたし」


(*1) 2006年4月20日にリリースされたイエママファンのアーティストによるトリビュート・アルバム『tribute to yes,mama ok?』。yes,mama ok?のデビュー10周年を記念して制作されたもので〝NOVAうさぎ〟でスマッシュヒットを飛ばしたour hourはじめ、中塚武、bice、ロボショップ・マニア、CITROBALなど豪華ミュージシャンが参加している。[Amazon.co.jp の商品ページ]

(*2) Feelin' Groovyyとは新宿JAMや渋谷eggmanなどで開催されていたライヴイベント。澤部はこのイベントスタッフをやっていた。澤部の敬愛するyes,mama ok?も多数出演しており、2006年5月19日には本文中にもあるトリビュート・アルバムの記念イベント「Feelin' Groovy presents "tribute to yes, mama ok?"発売記念パーティー」を渋谷eggmanで開催している。

(*3) yes, mama ok?が2000年に独自レーベル「etiquette recording co.」で発表したアルバム『CEO』は、諸事情により短期間で廃盤となりファンの間では幻のアルバムとされていたが、デビュー10周年を記念し『CEO -10th Anniversary Deluxe Edition-』として2010年10月30日に復刻され、澤部はこのアルバムのディスク2を担当した。余談だがこのアルバムは当初同年9月22日に発売される予定だったが延期となったため、yes,mama ok?が発売前日の10月29日に謝罪会見「yes, mama ok?【CEO】再発前夜、延期になってゴメン緊急謝罪」をUstreamで配信している。[Amazon.co.jp商品ページ]


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