見出し画像

意気揚々と両サイドに剃り込みを入れ、出勤してきたおっさんの末路。

剃り込み

おっさんは、
気持ちがとても若いままだ。

その日もそうだった。

僕らが
出会ってから
しばらくが経ち
何度目かの夏の話だ。

僕が出勤して
仕事をしていると

昼頃、
僕の前を横切った
小さな何かを感じた。

そう。
おっさんだ。

でも、いつもの
おっさんと何かが違う。

なんだろう?
と思っていると

特に興味もないのだが、
おっさんが、
髪を切っていることに
気が付いた。

しばらく見た後
やっぱり興味が
湧かなかったので…
仕事に集中した。

集中したんだけれども…
なんだか
部屋の端っこで
ざわざわしている。

こんなに
ザワザワしていては、
仕事に集中できない…

ザワつきの方に、
目をやると
スタッフの
人だかりができている。

まあ、そう表現しても、
数人だけれど。

その中心に、
誰かがいるんだけど
小さすぎて見えない。

見えないんだけど…

見えないから、
だから、おっさんだ。

案の定おっさんだった。
今度は横を向いている。

僕は、目を丸くした。

おっさんの
側頭部が
剃り上げられている。

いわゆる、
おしゃれ剃り込みだ。

なんか
ギザギザさせている。

みんな
おっさんのことが
大好きなので
チヤホヤされている。

そんなおっさんは、
新しい髪形に
興味津々なスタッフに対して
ニコニコだ。

正直イケてるとは
思わなかった。

けれど、
次のタイミングくらいで
おっさんが
反対側を向いた。

反対側の側頭部にも、
剃り込みがあった。

「M A M E」

とキレイに
剃ってあった。

相変わらず全体として、
イケてない髪形だ。

髪型のトップの部分は
ツンツンしていて
両サイドに
ギザギザとMAMEだ。


(だいぶ冒険したなー…)

僕くらいの、
おっさんマニアになると
このまま、
おっさんのイメチェンで
済むんだけど
世論はそうはいかない。

いたるところから

スタッフ1
「なんで、豆なん?」

スタッフ2
「どうしたん?」

スタッフ3
「エム、エー、
 エム、イー?
 て何なん?」

と…周囲はパニックである。

こんなに、
説明しないと
伝わらない髪型だとは
当の本人…
おっさんは
思ってもみなかったようで

ひとり一人に

おっさん
「僕の飼ってる犬の名前、
 マメタロウやねーん
 ええやろー?」

って説明している…


群がる主婦たちも
負けていない。

スタッフ1
「これやったら、豆やん。笑」

スタッフ2
「太郎どこいった?笑」

スタッフ3
「反対のギザギザなんやねん笑」

おっさんは、
数分でウンザリしていた…

しばらくして、
僕の仕事も
落ち着いてきたので
おっさんと会話を交わした。


「どうしたん髪型?」

おっさんは
苦笑いで答えた。

おっさん
「昔から、ずっと行ってる
 美容院なんやけど
 気が付いたらこうなってた笑
 
 確かに…
 剃り込みいれてみよかー?
 みたいな
 軽いノリなってんけど…
 
 何を剃り込むかって大事やな笑

 マメタロウのことも、
 知ってくれてるから
 美容師さんからの提案で
 入れてみたけどさ…

 今冷静に考えたら…
 みんなに言われた通り
 マメタロウの
 タロウの部分なかったら…
 ただの
 インターナショナルな
 豆好きよな。」


「多分インターナショナルの
 豆はビーンズやで笑」

では、また次回。

 

無料で先読みしていただけます。
次の話 カフェイン へはコチラから ↓↓↓↓



(๑╹ω╹๑ )