見出し画像

近代短歌(6.1)伊藤左千夫(1864~1913)

暫くを三間みまうち抜きて夜ごと夜ごと児等が遊ぶに家湧きかへる

暫くを三間うち抜きて夜ごと夜ごと児等が遊ぶに家湧きかへる

【三間】さんげん
一般的な読みは「さんげん」で、間口(家の正面)の幅が三間約5.4mの家ということから「小さな家」や「粗末な家」という意味。
ちなみに、粗末な家を「草屋くさ(の)や」「   賤屋   しずかや/しずのや」「茅舎ぼうしゃ」などという。

遠かたをち:遠方やしげみが奥のかやり蚊遣(り)火にしず家居いえいの数も見えけり  加藤千蔭

【蚊遣火】蚊を追い払うための火

うけらが花・夏


高山たかやま低山ひくやまもなき地の果は見る目の前にあめし垂れたり

高山も低山もなき地の果は見る目の前に天し垂れたり

【天】あめ
空のこと。
さて、「天の川」は夏の季語になっている。もちろん「七夕」も夏の季語で、「天の川」はその織姫・彦星伝説と結びつけて考えられることが多い。

天の川星より上に見ゆるかな  白雄
久方の枕詞天の川原の 渡守 わたしもり彦星渡りなばかじ隠してよ  紀友則
天の川もみぢを橋に渡せばやたなばたつ女彦星の秋をしも待つ  紀友則

【楫】舟を漕ぐ道具のこと
【天の川もみぢを……の歌意】天の川に紅葉の橋を掛けるからだろうか、彦星が秋を待っているのは

カラー図説 日本大歳時記 夏/古今集・巻四・一七四~一七五


おり立ちて今朝の寒さを驚きぬ露しとしとと柿の落葉おちば深く

おり立ちて今朝の寒さを驚きぬ露しとしとと柿の落葉深く

【露】つゆ cf. 近代短歌(5.1)正岡子規
「露」は秋の季語になっている。
「露時雨」は秋の季語で、霜が一面に下りて時雨が降ったようになることをいう。

露の世は露の世ながらさりながら  一茶
露時雨仏頂面へかゝりけり  一茶
松の葉の細き葉毎に置く露の千露ちつゆもゆらに玉もこぼれず  正岡子規

【ゆらに】玉や鈴が触れあって鳴る音の形容。ちりん

カラー図説 日本大歳時記 秋/『竹乃里歌』

【柿】かき(「柿の葉」画像)
「柿」は秋の季語だが、「柿の花」は夏の季語となっている。

里古りて柿の木持たぬ村もなし  芭蕉
渋柿の花ちる里となりにけり  蕪村
かきわかば もゆる にはべ の しろすな に あさをあふるる みぞがは の みづ  会津八一

カラー図説 日本大歳時記 夏・秋/寒橙集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?