詩の編み目ほどき⑬ 宮沢賢治「津軽海峡」イメージ画像でたどりながら‥‥
🧩 1924年5月19日、船上から眺めた初夏の海峡風景である。さまざまな色の形容が目につく詩だ。その色を画像でイメージしてみる。
🔓 錫病 ( の色 ) とは?
錫病とは、低温下の金属すずが灰白色のぽろぽろした粉状に変化する様子を、病気に喩えて言った表現。賢治は、上に掲出した短歌で、曇り空を喩える表現にその「錫病」を使っている。
また、どんより沈んだ曇り空を、病んだ空と表現している歌もあり、あるいはそこに一条の光が差し込んだものか、救いの仏様として薬師仏が現れ給うたと詠んでいる。
🔓 砒素鏡とは?
真空で600度程度の高温加熱により、砒素の結晶が得られるという。砒素鏡とは、結晶がなめらかな金属状の光沢を持っていることからの表現。マラカイト(孔雀石)からは砒素を抽出できる。化学に知識のあった賢治は、波の光の光沢を、鉱物の結晶に喩え、また孔雀石の色もそこに重ね合わせているのかもしれない。
令和6年1月 瀬戸風 凪
setokaze nagi
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?