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プロダクトオーナーになる前に読む本 vol.1「プロダクトについてふりかえる」(期間限定公開版)

■ 期間限定公開について

この記事は技術書典6にてPOStudy ~アジャイル・プロダクトマネジメント研究会~が販売した「プロダクトオーナーになる前に読む本 vol.1」をnote特別編集版に改定したものです。2019年6月30日までの期間限定で、note上で公開させていただきます。この機会に一人でも多くの方に読んでいただければと思います。この記事やPOStudyのコミュニティ活動をきっかけに日本発の世界で通用するプロダクトを創る人が、一人でも増えれば幸いです。

♠1.1 これまでのプロダクトの歴史をふりかえる

本章では、プロダクトの歴史をふりかえります。人類の文明が発達する前の時代からさかのぼった上で、今日現在までにどのような歴史をたどってきたのか、その過程で人とプロダクトの関係はどのように変わってきたのか、一般社団法人 日本経済団体連合会(以下経団連) が公開した「Society 5.0 - ともに創造する未来 -」という資料を参照ながらふりかえります。

ここであえて経団連の資料を使う理由ですが、経営層の方をはじめとしたいわゆるビジネスサイドの方々との共通言語でコミュニケーションをとれるようにすることを目的としています。

これまでのプロダクトの歴史

図1.2 出典:Society5.0-ともに創造する未来 一般社団法人日本経済団体連合会

日本政府が策定した「第5期科学技術基本計画 2018年01月22日」(※1)では、
人類がこれまで経験してきた社会を、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)と呼び、これらに続くべき新たな社会を(Society 5.0)と名付けました。

LESSON 考えてみよう

それでは、これらそれぞれの社会に対して、人とプロダクトの関係を考えた場合、どういう解釈が成り立つでしょうか。たとえば、人とプロダクトの関係を、価値の産まれ方という観点で考えた場合、以下のような解釈はできないでしょうか。

● 狩猟社会(Society 1.0)
    - 自然界に存在していた資源に対して、人が何も作用しなくても、価値が産まれていた。
    - 例)動物、植物、石油、石炭、etc

● 農耕社会(Society 2.0)
    - 自然界に存在していた資源に対して、人が人力で作用することで、違う値に変わった。
    - 例)種を育てて苗や実にする、etc
● 工業社会(Society 3.0)
    - 自然界に存在していた資源に対して、人の代わりに機械が作用することで、新たな価値に変わった。
    - 例)自動車の大量生産、etc
● 情報社会(Society 4.0)
    - 人が人力で行ってきた行動に対して、IT化することで人力が不要または軽減されることが、価値となった。
    - 例)単純作業のIT化、業務プロセスのIT化、etc

上記以外にも、さまざまな解釈はできそうです。是非考えてみてください。


♠1.2 なぜ、日本発の世界で通用するプロダクトがなかなか産まれないのか

ふりかえってみると、情報社会(Society 4.0)は、IT技術を活用したプロダクトやサービスが台頭した時代でもありました。その一方で、情報格差やIT格差といった人とITの関係に関する負の側面が社会問題となっていることは無視できない状況と言えるでしょう。内容面では、行きすぎた部分最適思考の弊害の影響が無視できなくなっています。

LESSON 考えてみよう

それでは、別の観点でも考えてみましょう。

● 全体最適へのピボットがなかなかできない?
    - 懸命に地道に部分最適や縄張り争いをしてきた企業が、 全体最適を行った企業にあっという間に抜かれる、ということも少なくありません。

● 俯瞰データへの着目ができていない?
    - これまで局所的なデータしか着目していなかった観点から、情報化が進んで大量のデータが得られるようになった状況下において、データを俯瞰して活用することができている企業は、どのぐらいあるのでしょうか。

● データドリブン経営への移行ができていない?
    - 「勘と経験と度胸」で行ってきた経営から、「データ」と「アルゴリズ ム」に基づいた客観性の高い意思決定を行う経営(=データドリブン経営)へ切り替えられている企業は、どのぐらいあるのでしょうか。

残念なことに、世界から見た日本、という観点では、日本は出遅れている、とも揶揄されています。(※)日本発の世界で通用するプロダクトがなかなか産まれないのは、他にもいくつか理由がありそうです。

※ 参考記事:ハノーバーメッセで見えた、日本の出遅れ感の本質


♠1.3 これからのプロダクトを考える

前項にて紹介した、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会(Society 5.0)について、経団連は「デジタル革新と多様な人々の想像・創造力の融合によって、社会の課題を解決し、価値を創造する社会」という解釈を行い、
創造社会(Society 5.0)と名付けました。

図1.2 出典:Society5.0-ともに創造する未来 一般社団法人日本経済団体連合会

また、経団連は、日本の目指すべき方向性として「デジタル革新を先導し、多様性を内包した、成功のプラットフォーム。多様な背景を持つ人々が日本で成功のきっかけをつかめるようにする」ということも示しています。

LESSON 考えてみよう

それでは、創造社会(Society 5.0)とは、具体的に何をすることだと考えるのがよさそうでしょうか。IT技術を活用したプロダクトやサービスに既に従事しているエンジニアやマネージャーにとっても、具体的なイメージがしやすいと、なおよさそうです。一つの解釈としては、「既存のビジネスモデルに対して、ある制約を外すことで、新しいビジネスモデルを創る」というのがありそうです。新しいビジネスモデルをゼロから考えるのはとても大変ですが、既存のビジネスモデルに対してある制約を外すという考え方であれば、そのほとんどは既存のビジネスモデルで洗練されたノウハウを活用出来るという利点があります。

● スポーツジムの現場で活用されている、既存のビジネスモデル
    - さまざまなニーズに対して、場所とタイミングと機会をマッチングしていると捉える
    - ニーズの発掘方法や充足具合の把握など、マッチングの工夫やノウハウは膨大に存在、かつ多岐に渡る
    - このビジネスモデルに対して、場所という制約を外した例として、オンラインマッチングサービスなどがある

● 英会話の対面レッスンで活用されている、既存のビジネスモデル                    - 同じ空間に同席して、その場でのコミュニケーションやフィードバック、インタラクションなどの対話をしていると捉える
    - このビジネスモデルに対して、同じ空間に同席という制約を外した例として、オンライン英会話サービスなどがある

もう少し大きな制約を外そうとすると、どうなるでしょうか。

● 戦争中の戦地の難民の子どもの難病を助けたい、という状況があったとする
    - 戦争中の戦地に、優秀な医者が行くのは、ハードルが高い
    - 難民の子どもが、優秀な医者のいる国に移動するのは、ハードルが高            い
    - つまり、この状況下での一番の課題は、同じ空間に存在するには場所の制約があり難しい、という解釈をする
    - こうした状況下において、場所の制約を外す、ということを考える。
    - 難病を抱えた子どもが現地にいたまま、優秀な医者は自分の国にいたまま、手術が出来て難病の治療ができるためにはどうすればよいか
    - ちょっと咳をしたり傾いたり横にずれたりした子どもの状態が、リアルタイムで別の場所にいる医者の手元に再現されればよい
    - 医者がメスや器具を動かすと、リアルタイムで別の場所にいる子どもに、同じ動きが再現されればよい
    - ここまでイメージができれば、あとはどうやって実現するか、という技術的な課題が中心になるので、エンジニアを中心に検討を進めれば良い

このような形で、いわゆるデジタルトランスフォーメーション(Digital transformation: DX)「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念を体現するかのような、新たなビジネスモデルを考えつくこともできます。

もし、制約を外すという創造社会(Society 5.0)の発想がなく、工業社会(Society 3.0)や情報社会(Society 4.0)の考え方のままだったとすると、今回の例でいけば、以下のような形になってしまうのではないのでしょうか。

● 戦争中の戦地の難民の子どもの難病を助けたい、という状況があったとする
    - 戦争中の戦地に、優秀な医者が行くのは、ハードルが高い。
    - 難民の子どもが、優秀な医者のいる国に移動するのは、ハードルが高い。
    - 実現可能性を上げるために、移動を早くする、飛行機を手配する、手術道具一式を運搬する、みたいな検討をして、そこから先に進まない。

♠1.4 どんな制約を外していけるか

先ほどまでは、既存のビジネスモデルに対して、ある制約を外すことを考えると、ゼロから新しいビジネスモデルを考えるよりも前に進みやすい、という話をしてきました。

LESSON 考えてみよう

それでは、既存のビジネスモデルに対して外すことの出来る制約には、どんな制約があるでしょうか。たとえば、容易に思いつく候補としては、以下のような制約が挙げられます。

● 時間の制約
● 場所の制約
● 言葉の制約
● 量の制約

例として、経団連側で検討した結果を紹介しておきます。詳しい解説については、経団連の資料を直接ご確認いただくとよいでしょう。

Policy(提言・報告書) 科学技術、情報通信、知財政策 Society 5.0 -ともに創造する未来-

図1.3 出典:Society5.0-ともに創造する未来 一般社団法人日本経済団体連合会

♠まとめ

vol.1ではこれまでのプロダクトの歴史をふりかえると共に、これからのプロダクトづくりでどんな制約を外していけるかについて考えてみました。POStudyでは日本発の世界で通用するプロダクトを創る人が1人でも増えて欲しい、という想いでコミュニティ活動を続けています。プロダクトづくりに関心のある方はぜひご参加ください。

■ 電子書籍情報

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本記事に補足資料やあとがきを加えた完全版を販売しております。   【特典※vol.2公開日まで】近日公開予定のvol.2公開日までにvol.1をお買い上げいただいた方はvol.2のPDFを無料で提供いたします。

■ イベント情報

POStudyナイト#02 ~プロダクト責任者への道 2019~ プロダクト責任者・スキルマップをつくろう【2019/05/31(金)】                                              

POStudyではプロダクト責任者としてスタート地点に立つためのエッセンスを、1年かけて学べる勉強会「POStudyナイト ~プロダクト責任者への道 2019~」を開催しています。次回はプロダクト責任者のスキルマップをテーマに、開催いたします。


※本書の一部あるいは全部について、無断での複写・複製はお断りします。

※vol.2がでるまで今しばらくお時間をいただいているため、公開期間を5月31日から6月30日まで延長しました。

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