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自分の論文の被引用数を上げる裏技?論文構成を語る!



前回は研究者の戦闘力h-indexが勝手に上がっていく”魔法”を紹介しました。以下の記事もご覧ください。

そもそもh-indexとはなんぞや?という方はこちらもどうぞ。

さて本記事では論文の構成に関して簡潔に語りながら自分の論文の被引用数を上げる裏技を紹介したいと思います。これから初めて卒業論文を書く方にも見ていただきたいと思います。
では前回同様、知り合いでもなんでもない山中伸弥先生に出張ってもらいましょう。彼のノーベル賞を受賞するに至った根拠論文の一つである<Induction of Pluripotent Stem Cells from Adult Human Fibroblasts by Defined Factors>をコピペしてググってください。
すると”National Institutes of Health”のホームページが候補に出てきます。お金はかからないので、ここをクリックしてください。
今度は勇気を出して、「Full Text Link」のCellPressの項目を押してください。ここもお金はかかりません。お金がかかる際は、ちゃんとサイト側がクレジットカード情報を聞いてくるので安心してください。

上の作業がめんどくさい方向けに「Induction of Pluripotent Stem Cells from Adult Human Fibroblasts by Defined Factors」へのリンクはこちら

https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(07)01471-7?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0092867407014717%3Fshowall%3Dtrue

Cellのページに行ったら、最後までスクロールダウンして下さい。そこにIntroductionなど小見出しがあって、Referenceまでの項目があるはずです。

論文の構成

これを参照にしながら論文の構成に関して簡単に語ります。
 
1)タイトル (Title)
2)著者とその所属 (Author, Affiliation)
3)要旨 (Abstract、通称アブスト)
4)背景 (Introduction)
5)方法 (Materials and method、通称マテメソ)
6)結果 (Result)
7)考察 (Discussion)
8)参考文献 (References)
9)その他 (Author contributionなど)
 
というのが一般的な流れです。雑誌によっては、“方法”の項目は“考察”の後になることもあります。実際に今回参照している山中先生の論文では、方法は”Experimental Procedure”という項目として、Discussionの後に述べられています。論文構成は雑誌ごとに違います。
 
ですので論文を投稿して、掲載を断られた(リジェクト)場合、論文構成を別の雑誌用に再度変更する必要があります。この作業はめちゃくちゃ細かくて、めんどくさいので統一してほしいです。将来的にはAI等でなんとかならないでしょうか?

では下にそれぞれの項目に関して簡単に触れていきたいと思います。
 

1) タイトル(Title)

タイトルは論文で一番重要と考えています。研究者はたくさんの論文を読みますが、全ての論文の全編を読む時間はありません。ですので一般的には興味をそそる題名の論文を取捨選択して読んでいきます。
 
また論文を審査する側からしても、タイトルはとても大事です。大仰なタイトルから、研究内容がしょぼい論文が沢山投稿(いわばタイトル詐欺)されます。その場合、レビューワーはタイトルを変更させます。投稿者はできるだけインパクトがあるタイトルで論文を採用されたいのでしょうが、内容と合っているかどうかレビューワーは厳しく審査するべきです。
 
タイトルはできるだけありのままを的確に書くのが大事で、あまり大袈裟に書くのはやめましょう。例えば「がんの新しい治療法を開発した」では、タイトルだけ見ても中身がどのようなものかよくわかりません。ですので、「大腸癌の◯◯◯モデルで◯◯◯(物質名)が細胞死を誘導し、治療効果を示した」と具体的に書くことが大事です。
研究者はタイトルしか見ないから、論文はタイトルが全て」と酒に酔った偉い先生もおっしゃっていました。少し暴論ですが一理あると思います。

2)著者とその所属(Author, Affiliation)

ここでは論文作成に関わった研究者の名前が載ります。詳しくは以下の記事にありますので、しつこいですが読んでいただければと思います。

研究者は、読む論文を選ぶ際、タイトルとともに、この著者欄も参考にします。なぜなら研究分野ではそれぞれ有名人、大御所がいまして、彼らの論文を読んでおくことは必須であるからです。

3)要旨(Abstract、通称アブスト)

要旨は論文全体のまとめです。下で出てくる、背景、結果、考察をここでまとめて書きます。要旨まで読んだら、論文の概要は掴めます。ただ注意が必要で、論文の中身が必ずしも要旨と伴ってない可能性もあります。結果の解釈もここに含まれるので、実際に結果を見てみたら「この要旨にはならんやろ」や「この要旨はちょっと言い過ぎだろ」と思うことはしばしばあります。また著者側からするとここは少し大袈裟に書くことでインパクトを出したい気持ちもあります。ここまでは忙しい研究者でも簡単に読むことができますが、ここまで読んでこの論文を理解した気にはならないでください。お前だD◯i◯o。

4)背景(Background,Introduction)

ここでは論文の背景(バックグラウンド)を書きます。もしくはイントロと呼びます。背景は自身の研究の現状などを書きます。最初は広く浅く書いて、少しずつ自身の研究内容に深く狭く近づけていくといいでしょう。好き勝手書くわけではなく、多くの論文を引用しながら書いてきます。

5)方法 (Materials and method、通称マテメソ)

ここでは、方法を書きます(そのまま)。実験の項目ことに小見出しにし、できるだけ細かく書きます。なぜならば、この論文を読んで同じ実験をしてみようとする研究者もいるからです。実験で一番大事なのは、「再現性」が確認出来るかどうかです。ですので細かい温度や時間の情報、試薬も試薬の名前だけでなく、買った企業名などの情報も書きましょう。同じ名前の試薬を使用しても、購入した企業名が違うと結果が変わる可能性もあります。

6)結果(Result)

結果では、実際の実験結果を図付きで説明していきます。研究者にとってはここが全てです。自分の研究分野の論文を読む場合、背景などはわかっているので、ここだけ読むことが多いです。ここでは考察のように、自分の考え、感想は書かないようにしましょう。あくまででた結果をありのままのことに書く項目です。

7)考察(Discussion)

ここでは結果から得られる今後の展望を書きます。ということで大袈裟にいうと、感想や想像を書いて良い唯一の項目です。しかしここでも先行論文を引用しながら、論理立てた考察を書きましょう。またここであえて自分の論文の穴、問題点(Limitation)を書くのもありだと思います。

8)参考論文(References)

ここでは上で参考にした論文のリストを作ります。ここが今記事の肝なので詳細は下に再度説明します。

9)その他(Author contributionなど )

その他です。Author contributionの他に略字のまとめなど、雑誌によって色々フォーマットがあります。
 

実際に論文を書く場合、この記事を参考にするよりも直属の上司に聞いた方が早いので、あくまで簡単な説明だと思って下さい。
 
ここで語りたかったのは、特に参考論文、文献の項目です。ここで自分の論文が引用されれば、研究者として1ポイントゲットです。自分の論文が引用されるのは嬉しいですね。それが研究分野の大御所の論文だと尚更です。
 

研究者必見!!自分の論文の被引用数を上げる裏技

ここで問題です。
実を言うと自身の論文の引用数を上げる裏技が存在しますが、どのようなことが考えられるでしょうか?知り合いの研究者にお金を払って引用してもらうとかじゃありません。もっと簡単です。下に行く前に自分で考えてみて下さい。
 
 
以下別に閲覧注意じゃありません。。。




 
 
 


自分の論文を自分の論文で引用すればいいのです。


そんなインチキみたいなことは可能なのでしょうか?
 はい可能です。自身の論文は、所属する研究室のプロジェクトの続きである可能性があるので、自分の研究室から出ている論文を引用するのは当然です。また方法の部分では、以前の自分の論文を参考にして実験をした場合、自分の論文を引用することは常套です。
 
これはグレーゾーンですが、はっきり言って自分の、もしくは自分の所属する研究室の論文は引用し放題です。やりすぎは倫理的に良くないと思いますが、この匙加減は研究者自身の良心にかかってきます。
 
被引用数が100以上ある論文は、そこまで影響を受けませんが、引用数が10程度の論文は著者自身か、著者の所属する研究室の他の論文から大半は被引用されている可能性もあります。
 
では今回は例として以前にも登場いただいたMogi Kenichiro先生に出張っていただきます。これはあくまでデモンストレーションで、悪意はありません。以前も言いましたが、Mogi Kenichiroと茂◯先生は別人の可能性もあります。
 
茂◯先生のh-indexは以前に説明したので、下の記事もご覧ください。

Kenichiro Migo (茂◯先生とは別人の可能性あり)のH-indexはこちら
https://www.scopus.com/authid/detail.uri?authorId=7006112716

彼の論文で4回も引用されている、”Graphic analysis of coupling in biological systems”という論文に関して調べていきたいと思います。この題名をGoogleで検索すると、“Science Direct”のホームページが見えると思いますのでそこを開いて下さい(無料です)。

”Graphic analysis of coupling in biological systems”
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S002251938371091X

以前にも言いましたが、著者が一人っていうのに闇を感じます。

話は戻りますが、開いてみると下に”Cited by (4)”と出てきますので、Mogi氏の本論文は、このリストにある4本の論文に引用されていることが分かります。
 
ではうち何本がMogi先生本人の論文でしょうか。タイトルをそれぞれGoogleで調べれば、誰が著者かはすぐにわかります。
 
それぞれを見ていきますと、4本中2本はMogi先生自身の論文でした。なので、他の研究者に純粋に引用されているのは2本のみとなります。。。ここまで来るとちょっと悲しいですね。
 
繰り返しになりますが、自分の論文を引用するのは誰でもやっていますし、悪いことではありません。さらには教授自身が、自分の研究室の論文の引用数を上げるために指導することもあります。ただし研究室から出る論文数は一般的に年に数本程度なので限度はあると思います。
前述した通り被引用数が100を超えるような論文ではこんな小細工は意味をなしませんが、筆者のようにH-index10程度でヒーヒー言っている研究者では、このテクニックで差が出ることもあります。

被引用数が10程度の論文は、誰が書いた論文に引用されているか調べてみるのも面白いかもしれません。10回の引用数があるものの、半分以上を自身の研究室が引用していたらちょっとダサいですね。
 
また眉唾ですが某国では国単位で、自国の論文ばかり引用することを推奨しているという噂もあります。実際某国の論文を見ると、某国から出た論文ばかり引用していることもあります。これはあくまで噂です。もしくはただの愛国心かもしれません。気持ちはわかります。自分も日本の論文は信用できるから引用して、別の国の怪しい論文は引用しないようにすることもあります。
 
各論文がどのような論文に引用されているかはScopusにて一発で確認できますが、これは大学等からアクセスしないと見れません。家からScopusを使用すると、その機能が制限されているからです。もし読者の方が大学生、大学院生、教員の場合はぜひ大学からアクセスしてみて下さい。著者名で調べると、論文一覧が出てきますが、その論文の被引用数の部分をクリックすればすぐに確認可能です。
 
後書き
今回は毒薄めで論文の構成に関して語りました。ただ先述もした通り、実際に論文を書く際には直属の上司に聞いた方が早いし、研究室の流儀もあると思うのでサラッと説明するにとどめました。茂木先生は今回も犠牲になっていただきましたが、悪意はありません。彼は現役の研究者を引退しているはずなので、例として取り上げやすかっただけです。現役の研究者で、論文の被引用数の半分が自分の論文ということになれば、それなりのディスになるかもしれないので今回は取り上げませんでした。次回は博士課程の深めの闇か、学振の書き方などポジティブな記事を書こうか迷ってます。皆さんは何に興味がありますか?フォロー、いいねとコメントも待ってます。モチベになります。


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