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親知らずとアロンアルファ

とうとう親知らずを抜いた。下の親知らずが左右とも横向きに生えていたので、1本の歯を何個かに分割して抜いてもらった。恐怖の時間が終わると楽しみだったのが、抜いた親知らずの歯を持ち帰って観察することだ。私は、自分の体のパーツの中でも一番歯が好きだと思う。自分のことながら理由はあまりはっきりしていないが、多分、小さい歯たちが強く根付いて生きている、みたいなところに健気さを感じて自分の歯が愛おしくなるのかもしれない。根本が大根の脚みたいになっているところも可愛いと思う。

家に帰ると、麻酔の気持ち悪さや出血らと闘いながら砕けた自分の親知らずを観察した。小声で「おおおおおおおおお」と感激した。抜歯する前、友達に冗談で「抜けた歯でネックレス作ってプレゼントしてあげるね〜」と言っていたが、本当に作ってみたくなるくらい感激した。私が今まで摂取してきた栄養やその他諸々の暮らしにこの歯はついてきていたんでしょ、などと大袈裟に考えすぎかもしれないが、とても可愛らしく思ったので、割れた歯のパーツをアロンアルファでくっつけて歯を完成させることにした。

私の人生、こういう時に大体何か起きるが、歯が親指にくっついてしまった。

一瞬の間に、〜親指に抜いた歯をくっつけた女性〜の脳内劇場が開幕し、脳内サイレンがうーーー、うーーーー、と鳴り響く中、私は咄嗟に手をブンブン振り回した。


そして親指についていた歯が、ピューーーーンと部屋のどこかに飛んで行った。
親指から歯が取れて本当によかった。
まだ飛んでいった歯は見つかっていない。

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