All For One

彼が自首をするには理由があった。それは、彼らの「正義」を貫き通すためには必要だったのだ。仲間に伝えることなく、彼は自首をした。クリスマスの次の日だった。

義賊と呼ばれた彼らにも罪があった。取られたものを取り返すために家の中に入っても、不法侵入になるように、自分たちで正義を執行するのには、法律を犯さなければならなかった。

多数決ならば、彼は犯罪者にはならないだろう。だが、多数決によって作られたルールでは、彼は犯罪者になってしまう。ゲームの中の彼らも、僕も、少年院に彼がいることをおかしいと思う。だから、行動しなくてはならない。

なんでもいい。それは、渋谷の街で署名活動を行うことでも。対局後のインタビューに答えることでも。知人に相談することでも。各々にとってできることをした。「おかしい」と声を上げ続けた。

僕は、この行為にすごく感動した。自分のために、周りの人たちが何かしてくれるということに、すごく感動した。こんな映画やドラマはいくらでもあるのに、その物語よりも何倍も感動した。それは80時間もの時間を、一緒に過ごしてきたからだ。それはもう、友達なのだ。仲間なのだ。

出所後に、どんな顔をして、何を話せばいいのか。僕はこの気持ちがわかる。でも、考えることはない。会ってしまえば、何かが生まれる。生まれなかったとしても、それでいい。そういう関係性だったじゃないか。

物語は終わりへと向かう。主人公は去らなくてはならない。

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