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薬学生エンジニアが面白いと感じた医療薬学×情報工学の意外な共通点(ハードウェア編)

 こんにちは、薬学部生エンジニアの伊藤(@itpharmacy1212)です。
今回の記事では、「複数の分野を関連付けることで感じたおもしろさ」について触れていきたいと思います。

薬学生でありながら基本情報技術者試験の勉強をした経緯

 まずは、薬学部に在籍していながら「基本情報技術者試験」の勉強をしようと思った理由について軽く説明します。

 ITエンジニアの登竜門とも呼ばれる基本情報技術者試験、これを勉強しようと思った最初のきっかけは「薬学以外にも知識領域を広げていきたいと思った」ことでした。

 時期としては大学4年生の秋学期、2021年の9月ごろから勉強を始めました。僕は大学に入学してから薬学の勉強しかしていませんでした(笑)。それもそれでめちゃくちゃ楽しかったのですが、ある日急に別の分野にも興味のベクトルが向いた感じでした

 僕はもともとものづくりが好きでプログラミングを趣味としてやっていました。そしてプログラミング×薬学で仕事をしたいという思いも少しありました。そんな理由で「基本情報技術者試験」をチョイスした感じです。

衝撃: ハードウェアと細胞の違う点を学んでMyカルチャーショック!

 基本情報技術者試験の最初の範囲は「ハードウェア」です。ここで僕はある衝撃を受けました。

「1」か「0」の二択で成り立つコンピューター

 コンピューターの根本たる演算装置及び記憶装置、これって全て0と1の組合せで表現されているのです!エンジニアの方からすると「何当たり前のことに興奮しているの?」となるかもしれません🙇。でも薬学しか知らなかった僕からしたら世紀の大発見レベルだったのです!

 コンピューターが0と1の組合せで表現されているというのはコンピューターの内部の仕組みに由来しています。コンピューターの構造を簡単に説明すると電球💡のようなものが無数に並んでいるような形になっています。これが光っていれば1,そうでなければ0と表すわけです。

 コンピューターは光った電球と光っていない電球の組合せでデータを表現しているわけです。

  このように1か0の二択で表現できるような形式のことをデジタルと呼びます。これに対して連続的な値のことをアナログと言います。

連続的な濃度関係で成り立つ細胞内情報伝達

 デジタルな値で表現されるコンピューターとは異なり、生物の細胞内情報伝達は化学反応によって成り立っています。

 化学反応の進行度合いは「反応速度論」という理論で説明することが可能です。反応の速度は反応速度定数と呼ばれる値に依存します。この他にも温度やpH,触媒の有無など様々な要素が絡んでいると考えられております。

 コンピューターのような1か0の2択ではなく、連続的に変化する値なのです。コンピューターと同じような考え方ができるものとして脳が挙げられるかと思います。しかし、一般的に脳の活性は神経伝達物質と受容体が引き起こす化学反応によって調整されてます。連続的に(アナログに)調節されていると言えるでしょう。

気づき:考え方変えたらハードウェアと細胞って共通点もあるんじゃない?

パット見はハードウェアも連続的な情報に見えてしまうよね?

 先ほどコンピューターの基盤は0か1かで表現されていると説明しました。ここで少し質問なのですが、普段パソコンやスマートフォンを使っていて0か1かの2択を意識した事ってありますか?ほとんどの人はないかと思います。

 世間に出回っているディスプレイ類を例に上げてみましょう。画面の中にまるで現実世界があるかのように出力されていますよね?言い方を変えればアナログチックに情報が出力されていると言えるでしょう。
 

まるで画面の中アナログチックにみえますね!

  これに対してデジタルチックが感じ取れるハードとして電卓があるかと思います。数字の形を構成する部品が光ったり光らなかったりするあれです。  


黒か灰色かの二択(デジタルです。)

 テレビディスプレイがまるでアナログのように情報を出力できる理由はとても簡単なものです。内部には膨大な数のデジタルデータが集まっています。これらの組み合わせによって「連続性」を表現することを可能にしています。

 基本的にデジタルデータの最小単位をビットと呼びます。ビットそれぞれが1もしくは0どちらかの情報を持っています。全体の1-0の組合せで情報が表現されているわけです。2ビットある場合は1-0 ,0-1 ,1-0 ,0-0の4通りの情報を表現することができます。
 
 一般的に用いられている24bit液晶ディスプレイでは16,777,216色の色情報を表現することが可能です。

化学反応もゼロイチ二択だったりする?

 ここからは完全に仮説になるのですが、生体における化学反応も根本をたどればデジタルの集まりだったりしませんかね?実際遺伝子情報だって4種の核酸塩基の組合せによって多種多様な表現型が生まれているわけですし。

 先ほど脳を例に上げて生体はアナログだと説明しましたけど、更に粒度を上げて神経細胞,シナプス,受容体レベルまで考えてみるとどうでしょう?活動電位の発生には閾値があります。閾値に達した状態を1、そうでない状態を0として考えればデジタルと考える事もできるでしょう。

 そして脳内の神経細胞の数は約860億個にも登ると言われています。膨大な神経細胞の組合せで脳の活性がコントロールされていると考えたらどうでしょうか?脳もコンピューターも同じ理論と捉える事もできますね!

 実際に、この考えをベースにして考えられているAIのアルゴリズムなんかもあったりします!

学び: 「同じ」⇔「違う」というベクトルでの判断はできるけど「全く関係ない」とはならない

 コンピューターと生物、この二つの分野について「違う」という視点と「同じ」という視点の二つの立場に立って説明してきました。

 生物学の分野の研究はまだまだ未解明なところも多いです。正しい答えが解明されるのはまだ先の話になるでしょう。
 
 このように解明されていない段階において、全く別の分野の理論をもとに仮説を立てるのって非常に有効な手段なのではないでしょうか?
 
 基本的に研究は「仮説」→「検証」の組合せで進んでいくものです。仮説を立てる段階において、他の分野の理論と比較する。そして「全く関係ない」というケースと「関係ある」という二つのケースに分けてそれぞれ仮説を立てて整理してみる。複数の仮説が生まれるだけでなく、その組み合わせで更に多くの仮説が生まれることにもつながると思います。

 検証前の段階において「仮説」の種類は多いに越したことはないと考えています。検証によって真実かどうかが明かされる訳ですが、エントリーする仮説の母数が多ければ多いほどその中の「解明された真実」が見つかる確率も高くなると思います。

複数分野の掛け合わせって新たな価値を見いだす大きなチャンスだと思います!

 今回の記事では薬学と情報工学という二つの分野を学んだからこそ見えてきた面白さをテーマに考察してみました。

 このように、複数の分野を掛け合わせることが新たな発想の元となる事って少なくはないと思います。そしてそれが社会的価値につながることだって十分にあり得るのではないでしょうか?

 薬学だけしか知らなかった頃の僕では絶対に持つことの出来ない考え方だと思っています!

 今回はハードウェアを例に薬学×情報工学のクロスオーバーについて書かせて頂きました。しかしこれ以外の情報工学分野(ソフトウェアやネットワーク)でも同じように思ったものはたくさんあります。今後そちらについても記事にしようと思うので是非ご覧になって下さい!

 最後に今回の記事の内容のマインドマップです!最後までお読みいただきありがとうございました🙇

生物とコンピューターの共通点整理。



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