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アジア系学生は、アメリカの大学受験にどう立ち向かうのか? その2

 アメリカの大学入試の場合、試験の結果に基づいて合否判定が行われるわけではないので、切実感に駆られて勉強する気にはならないのかもしれない。そもそも、人種や親の学歴や収入、家族構成などが入学に左右してくる。親が卒業生だと入学が優遇される場合もある。格差是正のためにAffirmative Action(マイノリティ優遇措置)など特別措置があると、逆に優遇されなかった生徒はやる気が失せる。さらに、SAT/ACTといった民間の科目試験結果や学校成績だけでなく、インターンシップや社会活動、スポーツや音楽活動など、勉強以外の活動など総合して合否が決まる。つまり、アメリカの大学受験は、SAT/ACTなど標準テストで良い成績を修めれば、合格を勝ち取れるアジア型受験とは大きく異なるのである。

 だからと言って、何もしないわけにはいかない。そこで、少なくとも結果が公平で、目に見えるSAT/ACTといった民間試験で、少しでも高得点を取ろうと思うのが、アジア系学生の心理なのではないか。競争することが大好きな遺伝子が組み込まれているのかもしれない。点数にこだわるのがアジア系学生の特徴である。しかし、私自身も高校生の子どもを持つ親として、アメリカでもがいて考えた結果、そういう結論に行き着いた。

 そこで、インターネット検索や噂をもとに情報収集し、実際に進学塾に行くと、生徒のほとんどが中国系かインド系で驚いた。しかも塾のカウンセラーやコーディネーターは、全て中国系の人で学歴・経歴もさまざま。アジア系アメリカ人高校生のニーズに素早く対応してくれる。日本では当たり前のことも、アメリカではスムーズに物事が進まないことが多いだけに、親の私が求めるサービスを口で説明しなくても、塾側がくみ取ってくれるのはありがたい。他方、塾講師は生粋のアメリカ人がほとんどで、アジア系の生徒と塾マネージャーの間に入ってうまく立ち振る舞い、生徒の学習指導を行っている。それもそのはずで、公立高校の先生が副業として塾講師や大学出願説明、SAT/ACTのエッセイ添削などを行っているのだ。

 そこはフランチャイズの進学塾だが、創設者2人は、共にハーバード大学を卒業したインド系と韓国系アメリカ人のようである。塾にかぎらず、インターネットの教育系無料サイトを開発した人もインド系アメリカ人だったことを思い返すと、教育系の起業者はインド系の人が多いと言える。それも、アジア系の人たちが自分たちのニーズを満たせるような教育の場を創るために起業しているのかもしれない。

 アメリカの大学入試は、極めて不透明で不公平である。特に外国をルーツにした親とその子どもにとってはなおさらだ。アメリカの社会的・歴史的・経済的背景から来る優遇措置が複雑に交錯し、必ずしも実力だけで大学に入れるわけではない。しかし、アジア出身の親は母国で受けてきた受験競争を拠り所にして、子どもにも勉強させ、また子どもも親のルーツである国の教育文化に影響を受け、黙々と勉強し、もがき苦しんでいるのではないだろうか。

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