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アメリカで暮らす中国系の人たちの子育て

少し前の記事になりますが、2015年11月10日付読売新聞にジャーナリスト中島恵の「日本人と中国人 ここまで違う子育て観」という記事が掲載されていました。

https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20151109-OYT8T50024.html?page_no=1

記事によると、中国では、祖父母が孫の面倒を見るため、どこへでも飛んで行くのは「ごく普通のこと」だそうです。この記事を読んで、「やはりそうなのね。」と合点しました。

私が暮らすアメリカ東海岸のコミュニティは、いわゆる文教地区で、年々、中国系とインド系住民が増えています。2011年統計では、近所の中学校生徒の4分の1をアジア系が占めているそうです。おそらく、その後も増加の一途をたどり、現在は3分の1くらい占めているのではないでしょうか。質の高い公教育を求め、文教地区に続々、引っ越してくるのです。

その時、中国出身の「ジジ・ババ援軍」もついて来ます。平日午前中にジョギングをしていると、ベビーカーを押して散歩する中国系のジジ・ババの多いこと。必ず3,4組に出会います。インド系のジジ・ババには会わないのに。

さらに、大通りを挟んで隣りの学区の小学校では、中国のジジ・ババが定期的に集合しているようです。彼らがベビーカーを押して小学校のグランド片隅に集まり、午前中、太極拳をしているのを見たことがあります。その数20人くらいでしょうか。

ジジ・ババは、英語も話せず、アメリカに友だちなどいないでしょうに、孫の面倒を見るために、遠路はるばるアメリカまでやって来るのです。長期滞在ビザを取得するのも大変なのではないでしょうか。人口密度の高い中国から、こんなアメリカの田舎にやって来ても、車の運転ができなければ、行動の自由がないアメリカで、日中、小さな孫の面倒を見るのは大変な苦労があるのではないでしょうか。

そんな孫の両親は高学歴の専門職です。夫婦で研究所に勤務し、医学研究しているケースが多いです。大学院からアメリカに留学して博士号を取得し、そのままアメリカの研究機関に就職、世界を相手に熾烈な戦いに挑んでいる人たちです。そんな彼らは、意外なほどジャンクフードを食べ、アメリカ文化に溶け込んでいます。ジジ・ババは、そうした娘や息子、そして孫との生活習慣や物の考え方の違いから、家庭内摩擦が起こってもおかしくないと思います。そう簡単には孫の世話もできないと想像します。

なのに、ジジ・ババ援軍は海を越え、次々やって来ます。週末も、近所の中学校の駐車場が車でいっぱいでした。何のイベントか興味を持ち、校舎の中を覗いてびっくりしました。中国系の人たちが沢山集まり、ジジ・ババが中国音楽をかけて舞踊を披露していたのでした。アメリカの公立学校校舎を借りて、毎週土曜に中国語学校が開かれ、ジジ・ババも孫の送り迎えのついでに、学校で社交をしているのです。

新聞記事によると、ジジ・ババ援軍が活発な背景に、中国では定年が早く、女性は約50歳、男性は55歳前後であること、男女平等の社会主義で、夫婦共働きが基本であること、を挙げています。

しかし、もう少し視野を広げると、ジジ・ババ援軍は、中国特有なことではなく、旧社会主義圏全般の特徴なのかもしれません。私の家の近所にブルガリア系の家族が暮らしています。子どもが幼かった頃、その子の家にも、ジジ・ババ援軍がやって来ていました。ばあばは語学が堪能で、英語やロシア語も話せたので、私は英語を介してブルガリアの文化や歴史、宗教、食べ物のことなど、いろいろ教えてもらいました。彼女は平日、近所に暮らすロシア系ばあばのグループに入っていました。

子育てほど、親が持つ文化が反映されるものはないと、最近感じます。アメリカは移民の国で、私の暮らす地域では、30とも40とも言われる異なる出身国の父兄の子どもが、一つの学校に通っています。そうした子どもたちが一旦、家に帰ると、どんな世界で暮らしているのか、興味は尽きません。


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