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英語に翻弄される帰国子女 その1

「帰国子女」とひとくくりに言っても、個々でバックグラウンドが大きく異なることをご存知だろうか。帰国子女と聞いて、一般に期待されるのは英語力である。中高受験では別の要素も加味されるが、大学受験では英語力が厳しく問われる。非英語圏に暮らし、現地の教育制度の下に教育を修めた場合、その国の統一試験結果を提出すればよいとする大学もあるが、大多数の大学は、英語力を問い、英語圏の統一試験結果を要求する。

日本国内で教育を受け、英語の勉強に苦労している学生からすると、漠然と、帰国子女は英語がぺらぺらでいいと思っているかもしれない。しかし、その英語力を身につけるまでに、どのような環境と努力が必要か。アメリカで子育てをする中で、そして職場で出会う日本人生徒と話をする中で見えてきたことがある。

● 何歳の頃に何年間、日本を離れて海外で暮らしたのか。長期か短期か。
● どこで暮らしたのか。北米か、ヨーロッパか、東アジアか、東南アジアか、それ以外か。一か国か、複数の外国を転々としたのか。
● 現地校に通ったのか、インターナショナルスクールか。そこには、どれくらい日本人生徒がいたのか。それとも全日制の日本人学校に通っていたのか。
● 週末に日本語補習校へ通っていたか。日本の塾に通っていたか。

こうしたことが、帰国子女の語学力や人格形成、異文化適応能力などに大きく影響してくるのである。

ここからは、私が暮らすアメリカについて書く。アメリカと一口に言っても広い。日本国内の経済や、日米間の政治経済、さらに世界全体の動向に左右されて、帰国子女の数も様態も大きく変わる。歴史的にみて日本人が最も多い地域はカリフォルニア、次いでニューヨーク周辺ではないだろうか。それ以外に、メーカーを例に挙げると、日本の大手自動車メーカーの拠点がある地域は日本人が多い。ついこの間まで、米国トヨタ本社があったカリフォルニアが、しかし現在では本社が移転してテキサスが、また、オハイオやケンタッキー、デトロイトも多いと聞く。そうした企業に勤める親に同伴して、子どもはアメリカに暮らすことになる。そして、親の任期が終わるか、家族の諸事情で先に帰るなりして、日本に戻って初めて、子どもは帰国子女と呼ばれるのである。

小学2年生くらいまでにアメリカに渡った場合、英語の壁は低いと言われている。使う英語は生活言語(日常会話)が主だからだ。しかし、それ以降はどんどん学習言語が入ってくる。各科目の授業を英語で思考し、英語でアウトプットする必要がある。なので、学習言語の習得には4,5年はどうしてもかかってしまう。一見、英語が上達したように見えても、それは学校生活を円滑に送れるようになっただけで(それだってかなりの進歩である)、2,3年のアメリカ滞在では、学習言語の習得まで到達できない。時間がかかる作業なのだ。なのに、日本に帰った途端、一様に「帰国子女」というラベルを貼られる。正直に言って、ラベルを貼られて嬉しい学生は、どれほどいるのだろうか。その2に続く。

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杉原ひろみ

アメリカの公立高校で教師をしています。アメリカ東海岸在住18年。家族は日本人の夫と娘(10年生)の3人。子育てと仕事をとおして、アメリカの教育や、海外で暮らす子どものアイデンティティ形成について考えます。
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