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日米の大学オープンキャンパス比較

この夏、一時帰国した折、高校生の子どもを持つ保護者の立場として、日本の大学のオープンキャンパスに5校ほど足を運んだ。猛暑の中、朝から一日がかりで大学キャンパスを訪問するのは体力と気合が必要だったが、実際に大学の模擬授業を受講し、大学生からざっくばらんに話が聞けたことは、保護者の立場を忘れてとても勉強になった。そこで、これまでアメリカで参加した4校の大学オープンキャンパスでの体験と合わせ、日米の対比をしてみようと思う。

日米の大学オープンキャンパスでは、何がどう違うのか。

日本の大学オープンキャンパスは、一部の大学を除いて、大学生や教員の方から高校生に歩み寄り、模擬授業や模擬ゼミを開催し、中には研究室や実験室まで開放してくれた。年に一回ないし数回しかないイベントだからか、応援団のデモ、学生による大学説明、さらに寮生が実際に寮の中をゆっくり案内してくれる大学もあり、至れり尽くせりの歓待ぶりだった。そして、オープンキャンパスの主役はあくまで高校生であった。

高校生は、実際に現役大学生や教員と触れ合うことで、大学で学ぶということはどういうことなのか、そこで何をどう勉強するのかを考える機会が得られる。そして、大学の雰囲気や現役大学生との相性、オープンキャンパスに参加している周囲の高校生と波長が合うかなど、大学生活を行う上で大切なことがよくわかる。大手予備校がつける大学偏差値や世間の格付けから、自分の成績で目指せる大学を選ぶのではなく、本当に行きたい大学や学びたいことを、真剣に考えられる貴重な機会だと言える。どの大学のオープンキャンパスも非常に教育的で、メッセージ性があった。

他方、アメリカの大学オープンキャンパスはどうだろうか。日本の大学オープンキャンパスのように、高校生が本当に主役なのだろうかと疑問に思ったりする。大学をあげてホスピタリティに富んだイベントというより、企業イベントの色彩が濃い印象を受ける。そもそも、一般のキャンパスツアーでは、模擬授業や模擬ゼミまでやってくれない。実際に体験したければ、大学主催の夏のサマースクールに申し込まなければならず、その授業料は、州立だろうが私立だろうが、どの大学もとても高い。基本的に2,3週間、大学寮で暮らし、授業を受けるのだが、参加費はざっと40~60万円はする。そうでもしなければ、一般の高校生が大学教員とざっくばらんに触れ合い、学問とは何かを語り合う機会はない。

また、大学で何をどう学ぶかも大切だが、それと同じくらい授業料や奨学金説明に時間をかけているのが、アメリカの大学の特徴であると言える。莫大な大学授業料を工面するのは主に親であり、その親に向けた情報提供や質疑応答の熱量が半端ない。実は、キャンパスツアーの主役は高校生ではなく、スポンサーである親なのではないかと思ってしまう。

なので、キャンパスツアーに参加したぐらいでは、各大学が学問をどう位置付けているかはわからない。高額な授業料を払ってサマーキャンプに参加するか、大学のウェブサイトを熟読して想像するしかないのがアメリカである。

日本の方が、大学が万人に開かれ、等身大の姿が見える。オープンであるがゆえに、大学や教員の底力もわかる。自分の専門分野を明確に紹介し、その分野に基づいて事象を鋭く分析する教員が揃った大学もあれば、ふわふわとした流行りネタを持ち出し、ワイドショー的な授業に徹する大学教員もいる。オープンキャンパスでは、高校生はそうした大学や教員の姿勢も知ることができるのだ。このように、さまざまな情報を開示してくれるのだから、偏差値で大学を決めるのではなく、自ら足を使って集めた情報を元に、自分自身が大学を選ぶのだという気概を持っていって欲しいと思った。

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