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大学は帰国子女に何を求めているのか その2

では、大学の帰国子女入試では、どういう現実を突きつけられるのか。

アメリカでは、教育レベルが地域や州によって驚くほど異なるため一概に言えないが、科目の多くは難易度別になっていて、授業内容を英語で理解できなければ、下位のクラスに割り振られる。しかし、それが本当に言語だけの問題か、科目自体の内容理解度の問題なのか判断は難しく、学年が上がるほど二つの問題が複雑に絡むため、双方をうまく補い合うのは大変である。

しかし、一旦日本に帰れば、帰国生向け大学入試で期待されるのは英語力である。上位校になると、数年アメリカに暮らしていただけでは取るのが難しいスコアを要求してくる。そのため、帰国後、TOEFLなど民間英語試験の点数を上げようと、塾通いをする高校生も多い。しかし逆に、アメリカ生活が長く、現地校では上位レベルの授業を取っていても、日本の大学で求められる独特の英文法や、英文和訳/和文英訳に弱く、やはり帰国後、日本型の英語勉強を行うケースも多い。

さらに、大学の帰国子女入試は、一般の大学入試とちがい、書類審査としてSATなどアメリカの統一試験のスコア提出を課す大学がほとんどである。アメリカでは、学校の授業についていくのに精いっぱいで、SATの勉強まで十分にできなかった帰国生もいる。日本の難関大学の帰国生入試では、米国のアイビーリーグと同等の点数を要求するのに加え、日本語による小論文や志望学部に関連した現代文読解、さらには日本語と英語の双方の面接まである。そこまで要求されると、日本語と英語双方の高度な思考能力が確立していることが求められていることがわかる。かなり前から情報を集めて計画を練り、それに向けて、長期間にわたって淡々と勉強を続けるのが帰国子女入試なのだ。

また、9月入学のアメリカと4月入学の日本では、受験スケジュールがまったく異なる。近年では、9月入学や、多様な入試方法を取り入れる日本の大学も増えてきているが、制約条件も多い。そうした独特の日本の入試制度と文化を、アメリカの現地校の先生に理解、協力してもらい、時期を外して推薦状を書いてもらうのも、実は骨の折れる作業である。

このように、帰国子女も十人十色で、また、大学の入試制度もさまざまである。各大学が帰国子女をどう位置づけ、何を期待しているのかと、大学の試験官に問いかけたくなる。グローバル化、ボーダレス化する世界に対して、日本はどう立ち向かい、大学はどう人材育成をすべきか模索していて、その実験台を帰国子女が担っているのだろうか。各大学で、あまりにも頻繁に変わる入試方法を見ていると、ますます多様化する帰国子女に対し、これまでの入試方法では収まり切らないことを認識しつつも、どう対処したらいいのか、はっきりとした戦略が見つからないのが本音なのかもしれない。

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