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1点1冊のポトラが、10冊仕入れた本のこと。

こんにちは、ポトラ店主の諸岡です。
今は土曜日のおやつの時間を過ぎたころ。明日は、ポトラがある隼Lab.で月に1度のマーケット開催日なので、皆さん、「隼Lab.は明日行こう!」という感じでしょうか。前日の今日はお客さんも少なめで、ゆったりとした時間が流れています。

そんなわけで、手が止まったら窓の外の新緑を眺めながら、たまに接客もしつつ、noteを開いています。

さて、今日は、タイトルの通り「1点1冊のポトラが、10冊仕入れた本のこと」を書きます。少し説明をすると、ポトラは常時、約1,000冊の新刊本を販売する書店です(本の他に、だ菓子・ドーナツも売っています)。

(撮影:青木写真事務所)

"1点1冊”というのは、つまり、本を1冊ずつしか置いていないということです。一般的な本屋さんでは、同じ本が何冊か平積み、あるいは本棚に数冊ずつ並べてある風景に、誰しもが見慣れているかと思います。話題になっている本や売れ筋の本であれば、何十冊もまとめて並べられていることもありますよね。

しかしポトラには、そういう風景がありません。
1つの本が基本的に1冊ずつしか並べられていないので、見方によっては本屋さんというより図書館のようにも見えるようです。たまにお客さんに「本は売っているんですか?」と聞かれることもあります(すべて売っています)。

”基本的に”と書きましたが、そう書くということは例外があるということです。今回、このnoteに書きたいのは、例外として、10冊仕入れた本のことです。

『そもそも交換日記』桜林直子・土門蘭

それがこちら、『そもそも交換日記』です。
著者は、”サクちゃん”こと桜林直子さんと、”蘭ちゃん”こと土門蘭さん。お二人が、cakesへの連載という形で2020年3月24日から始め、現在もnoteの有料マガジンとして続けられている交換日記のうち、始まりから2021年3月30日までの、1年間の掲載内容を加筆修正してまとめた一冊です。

一冊の本との出会いは、いくつもの偶然の重なりの上に

本の内容をご紹介する前に、この本との出会いの話をさせてください。というのも、「そもそも交換日記」は、大手の出版社ではなく、著者である桜林さん・土門さんが信頼する編集者さんや印刷会社さんに依頼し、小さなチームで作られています。そのため、仕入れの方法も直接取引です。オンラインストアで発注し、届いた小さな段ボールを開けたとき、納品書が入れられた封筒に書かれた土門さん直筆の丁寧な字を見て、「この本は、桜林さんと土門さんから買った(仕入れた)のだ」と、じわっと胸に広がる暖かさがありました。

話は戻りますが、大手の出版社から出版されていないということは、この本を手に取れる書店は限られているということです。そして、まずこの本の存在を知るという意味でも、その機会は決して多いとは言えないということです(それがまた、この本と出会う楽しみでもあると思います)。

そんな一冊との出会いを遡ると、いくつかの他の出会いの重なりがあります。これについて細かく話すと内容に触れる前にかなりの文字数になってしまいそうなので、かいつまむと、桜林さんとジェーン・スーさんのPodcast番組「となりの雑談」を聴くようになって桜林さんを知り、「この方の話、もっと聞きたい・読みたいな〜」とネットで検索したところ『そもそも交換日記』という書籍が出版されていることを知り、読みたいと思うもオンラインショップかあ、配送料がかかるな〜と後回しになり、後に、共著者である土門蘭さんは気になっていた『死ぬまで生きる日記』の著者であることを知り、ますます「これは絶対読みたい!」となったところで、先日大阪に旅行した際に立ち寄ったSTANDARD BOOK STOREで見つけたのです。『そもそも交換日記』も『死ぬまで生きる日記』も!(ぜぇ、ぜぇ…)
※そもそもなぜ「となりの雑談」リスナーになったかも話したいけどやめておきます

こうやって、1冊の本との出会いは、木々が成長し枝分かれして、その先に葉っぱや実をつけるように、いろんな出会いがつながって辿り着き、またその先に進んでいくようなイメージがあります。

誰かにとっても、このnoteやポトラというお店の存在が、1冊の本に出会う”偶然”の重なりの一つになれていたらと願います。

素敵な石を拾うみたいに、サクちゃんと蘭ちゃんの言葉を拾う

やっと、『そもそも交換日記』の話をします。
先にご紹介した通り、本書は、桜林直子さん(サクちゃん)と土門蘭さん(蘭ちゃん)の交換日記を書籍化したものです。ですので、「サクちゃんから蘭ちゃんへ」「蘭ちゃんからサクちゃんへ」の、数ページずつ交互のやりとりで構成されています。
交換日記の中で、お二人はコロナ禍にあった日常についてその時々に感じたことや見つけたこと、また、お互いに聞いてみたいこと、例えば

サクちゃんにとって「自由」ってどういうものですか?

蘭ちゃんからサクちゃんへ 2020年3月31日

蘭ちゃんは、負けん気や嫉妬心はありますか?あるとしたら、それはどんな時に起こりますか?

サクちゃんから蘭ちゃんへ 2020年11月17日

こんな具合で、日記の最後に質問を送り合い、その回答を交えたお二人の言葉が交換日記という形で交わされていきます。

その中に、「ああ、すごくわかるなぁ」ということや「そういう考え方もあるんだなぁ」と気づくことが散りばめられています。例えるなら、私は石拾いが好きなのですが、素敵な石がいっぱい落ちてる川原を歩いているような感じです。その一つ一つが、尖っていたり丸っこかったり、光っていたりざらっとしていたり、いろんなのがあって、ときめきながらそれを拾い集めているような読書体験でした。

石を拾い集めるみたいに、特に気になった言葉や私も大切にしたいなと思った考えの部分に印をつけてみたので、読み終えた私の『そもそも交換日記』はこんな感じです。

『そもそも交換日記』読書会(雑談の会)を開きたいです

そうして読み終えて、この本はぜひポトラで売りたいと思ったから仕入れたわけですが、「いい本だから売りたい」という気持ちに重なるのが「この本を読んだ人と喋りたい」という個人的な欲望です。そもそも好きな本について話すのは楽しいことですが、この本は特に、誰かと雑談したくなる本だと思います。語られているのはサクちゃんと蘭ちゃん、お二人の、それぞれのことですが、この交換日記を読むことで、読んでいる私も自分が解けていくのを感じられるからです。

絡まって一体となっていた糸の塊(私)が、一本一本解かれて、それを自分の手で並べて、少し離れて見て、痛んでいてケアが必要なもの、切れちゃってるからもうお別れした方がいいもの、奥にあって見えなかったけど実はすごく綺麗なもの、ほころびはあるけどいい艶のもの、塊に見えていたものが実は一本一本で、それぞれ違っていること(けど全て私)を知るような、そんな感覚でした。忘れていた、あるいは忘れたことにしていた昔のことを思い出して、それが今とつながっていたことに気づき「ああ、なるほど、このほころびはここからだったか〜」とか「ここが絡まってると思ってたけど、こっちだったか〜」みたいなことを発見したり。

ぜひ、この本を読んだ人と喋りたい。
あなたは、どんな言葉を拾いましたか?
どんなことを考えたり、思い出したりしましたか?
私は、この言葉が好きで、こんなことを思いました。

そんな雑談ができる『そもそも交換日記』の読書会を開きたいと思い、勝手ながら、当店で販売する本書には最後のページにお手紙を挟ませていただきました。

土門さんの直筆を見て、いいな〜と思ったので手書きにしました

お取置きも可能です。
すでに1冊は段ボールを開くと同時に売れていきましたので、もし残り9冊が売れてしまったら、また追加で仕入れようと思います。一人でも多くの人にお渡ししたい(そして喋りたい!)、そんな一冊です。

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