『玄牝(げんぴん)』という映画体験。

忘れられない映画体験のひとつに、河瀨直美監督の『玄牝』という作品がある。

調べてみると、この作品を映画館で観たのはいまから7年も前だった。

気にはなっていたものの、ミニシアターで細々上映の為、全然観に行くことができずにいたのだが、当時の同僚に「絶対行って!!」と半ば無理矢理勧められ、職場から飛び出し、バス停へ走り、上映最終日に汗だくで映画館へ駆けつけたのを覚えている。最終日の最終上映にもかかわらず、ほぼ満席だった。

愛知県の吉村医院という自然分娩でお産をしている産婦人科のドキュメンタリー。お産は自然な事という理念の元、現代の医学からみると時間が止まったままのような環境で、お母さんは自分のチカラで赤ちゃんを産む。

そこでは出産間近の妊婦さんたちが集団で生活していて、大きなお腹で、農作業や雑巾がけを懸命にこなし、あるべき筋肉や体力を持とうね!という考え方が、私は好きだな、と思った。自然分娩をする勇気はないけれど。

出産に関わる現代医学から遠ざかることで、自然分娩を推奨している吉村医院に対しては、母子の危険性を問う賛否両論はあるらしいけれど、そんなのは他人がとやかく言う事ではない。本人がそうしたい(自然分娩をしたい)、というんだから、それでいいじゃないか、と思う。何を信じるか、に近い話で、いろんな意見があっていいのではないかと思う。

映画は、何人かの妊婦さんにクローズアップして、出産までを密着し、そこまで映すんだな…!という川瀬監督のこだわりが随所にちりばめられている。

満月の夜。一人の赤ちゃんが生まれた。文字にすると、これだけの毎日どこかで起こっている出来事。

ところが、ひとりの赤ちゃんが誕生するシーンで、謎の号泣が起こった。今こうして思い出しながらキーボードを叩いているが、涙目である。それが、劇場全体が号泣だったのだ。満席の劇場が、いっせいにズルズルずびずび湿度100%に。

これは、なんというか、本能だ。

頭で考えて、あれこれ考えて出てくる涙じゃない。

胸の奥の方が、バイブレーションし、自動的に涙と鼻水がでるやつ。

人間には、こんな素敵な本能が備わっているんだ、知らなかった!という部分も含めて二重に感動した。


毎日、残念なニュースで残念な人を見るたびに思う。こんな人たちにも、赤ちゃんが生まれる瞬間をみたら涙する本能が備わっているはずなのに…と。

こんな人たちも、あの奇跡的な感動を伴って生まれてきただろうに、と。


この作品の何が面白いとか、ストーリーがどうとか具体的に説明できないのだけれど、観賞後、頻繁に思い出し、物の見方が変わるくらい、印象的な映画体験だった。

そうゆうのって、あるよね。素敵だよね。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

サポートしていただいたお金は、息子のオムツ代にさせていただきます!!!オムツってすごい減るんですね!!!

嬉しくてニコニコしちゃうよ。
39

asami.m

言いたい事を言います

2つのマガジンに含まれています

コメント4件

今は色んな知識(知ろうと思えばですが)があり、うちの娘は妊娠がわかった時からカフェインが微量に入った飲料は一切口にしません。あれだけ外食コンビニ食人間だった娘がです。しかし、私の母は私がお腹にいるときに、色んな事があったんでしょうね、ヒロポンをやっててそのせいで子供の時は知能も低く、現在まで歯がガタガタ、治療にいくら金を使ったことやら。しかし、産んで育ててくれて今の私があります。その事を思うと泣けてきます。昨日も街で何人もの幼児を見ましたが、それぞれに来歴がありお母さんのご苦労もあったんだなと、ばーむろーるさんの記事を見て気づきました、とまれ、知ってる→気づく→魂に入る です。子を虐待するお母さん虐待された子供達の魂が救われるといいですね。
DersuUzalaさん☆いま「玄牝」をご覧になったら、私よりも物凄い気づきを魂に入れられるのでしょうね。予告編だけでも貼っておきますね!https://youtu.be/rME2VkRev5M
ありがとうございます。拝見させていただきます。
予告について / まず伽耶琴(カヤグム)と思われる音と森のざわめきで始まる。その音に妊婦たちは鍬を持ちて舞い至福の時を味わう。子は母の羊水に、母は宇宙の羊水に浮遊し、月(死)と太陽(生)を行き交う。至福の果て月に辿り着くのか太陽に辿り着くのか・・・全うした彼女たちは全てを受容し、或る者は南に帰り、或る者は北に向かう。/ この映画の監督(製作者達)の表現したかったものをこのように感じました。本編の観覧者が涙したのは自然、出産、生命という枠にとどまらず宇宙そのものの源流=玄牝に触れた深い感動だったのではないかと察します。色々な論理の矢をものともしない映画の凄さですね。ありがとうございます。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。