徹底的リアルな戦場描写から感じるもの。

戦争映画は、あまり気がすすまない。

人がたくさん死ぬし、どの死も壮絶だし、痛そうだし、恐ろしい爆音が鳴り続くし、血とか内臓とか泥とか…いろんなもので、めっちゃくちゃで、気分が沈むものばかりだからだ。

なかでも、敵と味方に分かれ「敵は殺していい」という思考停止のルールに従っている人間をみるのが、いちばん怖くて滅入る。

そして、これは私がひねくれているせいだと思うが、戦争映画のみならず、ハリウッド映画のディザスターもの、大惨事が起こるような作品における、LOVEの描き方に対して毎度「けっ!」と思ってしまう。

愛する人と離ればなれ、愛する人との別れ、愛する人との再会、愛する人を守るため、愛する人のための犠牲…などなど。美人のヒロインとのなにかしらで涙を誘おうとするやつ。「けっ!」

『ハクソー・リッジ』は、序盤から「けっ!」とか「かっ!」とか(心の中で)言いながら観ていた。どうしよう。この作品、好きなタイプではないかもしれない。典型的なやつじゃないか…。

一目惚れした翌日にプロポーズしに行って、うまくいくとか。初デートで空気読まないキスしてぶん殴られたのに、うまくいくとか。過酷な山登りデートで手を貸す代わりにキスしろとか言って、うまくいくとか。戦争いくけどってプロポーズして、うまくいくとか。軍事裁判が終わった次のカットが、初夜とか。半裸とか…。

うーん、必要?そんなに慌ただしくLOVEを描写するなら、いれなくてよくない?なんて偉そうに観ていたのだが、最終的に、こんなひねくれ者の目にも涙…。途中、怖すぎて悲鳴をあげました。


『ハクソー・リッジ』は、第二次世界大戦で衛生兵として従軍したデズモンド・ドスという実在の人物を描いている。作品の舞台となっている「ハクソーリッジ」は沖縄の絶壁のことだ。


ドスは、主に宗教上の理由から「良心的協力者」と主張し(軍側からは「良心的兵役拒否者」と呼ばれる)、銃を持つことを拒否。戦場には人を殺すのではなく、救いに行く、という主義を曲げなかった。その主義が、どんな扱いを受け、どれだけ彼自身が苦労し、そして称賛されたかは、是非作品をみていただきたいのだが、この映画の凄さは、戦場の描写にあった。


徹底的リアル。


それまで短いカットを重ね、時間がサクサク進んできたのに、戦場のシーンは急に時間の進み方がリアルになる。両軍、数を投じての戦い。大量の人が、使い捨てのモノのように消費されていく。火炎放射器で焼き殺す。銃剣で刺し殺す。それぞれ、なんの怨恨も無いのに、ただ生まれた国の違いで、殺し合に物凄いエネルギーを投じる。人が簡単に死ぬ様、その死体の有様、が、これでもかというくらい、徹底的に描写されている。しつこくしつこく、人が死んでいく。

当然、日本兵 vs 米兵である。日本人に肩入れして観てしまうんだろうな、沖縄戦の結果は知っているしな…と観賞前は思っていたのだが、なんというか…すべてを超越していた

ハクソー・リッジのポスターなどが出た際、なぜ沖縄という文字がどこにも書かれていないのか?と少しネガティブに話題になった。私はこれは賢明だったと思う。

沖縄の悲劇にフォーカスした作品ではなく、一人の衛生兵の物語なので、という配給側の説明も納得だし、観て一番強く感じたのは、どちらかの国籍に寄った見方を超えた、反戦のメッセージであるということ。戦争がいかに多くの命を無下に扱うものかというのを、メガホンをとったメル・ギブソン監督の徹底的な戦場描写に表れていると思う。(CGはあまり使ってないそうです。信じられない。)

戦争映画は苦手だったし、いくら英雄がいようが、戦争の中の美談はどうなんだろう…と、いままでずっと疑問に思っていたが、反戦というメッセージなのだ、平和を願うために、よりリアルに伝えたいんだ、ということが明確に分かった。「わかった!」と、涙が出てきた。


前半、けっ!って思ってゴメン…。

ひねくれた部分が少しまっすぐになった。

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コメント2件

私も戦争モノのLOVEの描き方にけっ!と思う人なので同じような考え方の方がいて、私だけじゃなかったのかと安心しました。
まいぼうさん☆ひねくれ部分がおそろいですね♡なんなんでしょうね〜?いらんがな!と思ってしまうのですが、コレは最終的にそれも許せる作品でした。
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