聴覚障害サポート

聴覚障害の方のCAE技術サポートから

前職のCAE業務で、聴覚障害の人の遠隔サポートをした経験がなかなか面白かったので書きます。書いてから思いましたが、CAEネタは出てきません・・・

解析チームに聴覚障害の人が入ってきたから、CAE(特に形状メッシュ作成の)技術的なノウハウをいろいろ教えてあげて、ということになった。

その人含め、依頼した人、チーム、みんな東京。一年ほど前に、自分のチームごとごっそり東京本社に移転、派遣社員かつ引越しできない自分だけ一人残っているという状態。

派遣社員しかも遠隔にいる派遣社員に、正社員新人に技術的なことを教えてねってそれでいいんかい、というツッコミはここではなしで。

みんなが東京に移転してやり取りがメールというのはなかなかめんどくさくて、チャットツールがあればなあ、と思っていたのだが、そこはそれ、化学系大会社の子会社なので、そんな洒落たものはあるわけない。

ということで、「自分で作っちゃおう」ということになった。

でも、普通のソフトにしてしまうとなんだかんだ面倒なことになるので、そこはいつものように、みんなが使っているExcelプラス必要ならMS-DOSということになる。

「Excel死ね」とか「VBAなんかプログラムじゃない」「MS-DOSなんていまどき」なんて声も多いのだが、簡単に文句言われず、改修もかんたんという点では、これに勝るものはないんじゃないかと思う。

ということで、Excel VBAで作りました、チャットツール。画像もワンタッチ(笑)で切り貼りできるし、履歴はきちんと残るし、二人だけでなく、複数でも使えるし、見るだけ参加も出来るし。我ながら超便利。

聴覚障害の人相手だからと言って、今はメールとかチャットツールがあるので、音声というのはやはりあんまり問題ないですな。

で、東京本社に行くことがあったので、せっかくなので直接会うことに。

そこで、日ごろ気になっていた音声認識ツール「UDトーク」を試してみることに。

事前に聞いてみたら、新人研修でUDトークを使ってテキストにしてくれたとのことだが、いかんせん、音声認識をぜんぜん意識しないしゃべりだったらしくて、何がなんだかわからない内容。会社としては「使ってあげたからいいでしょ」みたいな感じ。

やはり、話し方は工夫がいるし、専門用語は登録しないと使えないなあ(法人プランならカスタムできるが)・・・と思いつつ、とりあえず使ってはみたけれど、きちんと認識されるようにするにはかなり話し方を工夫しないといけないし、こりゃ、認識させるよりもタイピングしたものが相手側にリアルタイムで表示されるような仕組みのほうが使えるのでは・・・

結局、相手の方は「大きな声で話せばわかるし、声も出せる。必要なら筆談で問題ない」という人だったのて、「こっちの取り越し苦労」的ながっかり感というか、自分だけ気負っていた、自分自身の気恥ずかしさだけ残りましたが・・・

そりゃそうだよね。大学出て就職までしたんだから、今さら日常ですごく困ることなんて、そうそうないですよね・・・

ということでしたが、もののついでにMS-DOSで作りました、リアルタイムチャットシステム。MS-DOSなのでExcel版のように画像を貼るというのは出来ませんが、アプリケーションを立ち上げなくてもいいので軽く使えます。履歴も残ります。まずい話をしたときには一旦消去できるようにしました(笑 Excel版もそういう仕様にしましたが)

UDトークには「まあちゃん」というれっきとした連携ソフトがあり、最近のテレビの字幕作成もUDトーク&まあちゃんで作成されているとのことで優れものなのは優れものですが、テレビの字幕の出るタイミングを見てもわかるように、認識データを修正するというところでどうしてもタイムラグが発生します。

そうなると、「話している人がタイピングしながら話をしたほうがリアルタイムコミュニケーションとしてはいいんじゃね?」ということになりますが・・・

ただ、これは3年ほど前の話で、今のUDトークは、少なくともAndroid版ではGoogleさんと連携しているので、以前と比べると音声認識の精度は格段に上がりました。読み上げるものとしては十分に実用になると思います。

実務への適用に関しては、やはり単語の登録が必要です。そこは、UDトークでの認識ではこう表されるというパターンがわかってしまえば単語登録なしで乗り切れるのかな、と思います。

聴覚障害(に限らず、視覚障害もですが)の方で大変なのは、中途の方ではないでしょうか。自分もそうなる可能性というのはゼロではありません。聴覚障害といえば手話、となりますが、中途となるとそういうわけにはいきません。そういうこともあり、手話以外で仕事レベルのことができるツールの開発、そこまでいかなくても、手法の提案というのは大切だと思います。

単独のチャットツールのほかには、プレゼンツールとしてパワーポイントと一緒に使えるチャットツール(発表したい内容を打ち込んで表示できるツール)も作成してみました。

そんなの、パワーポイントのメモに直接表示していけばいいんじゃないの?と思う人も多いと思いますが、打ち込んだときに履歴が表示されますよね?あれ、みんなに丸見えはまずいですよね・・・そのときだけいちいちオフにするのも面倒ですし。

まあ、自分としてはゆくゆくは聴覚障害の人でもセミナーや講演会に出てもらえたらいいな、と思っています。声を出せないだけで能力は同じなのですから。

で、自分とその聴覚障害の人が便利に使っていたExcelチャットツール、ほかの人は使わないままでした・・・でも、自分としては面白かったし自分の役にたったからいいや。

あと、UDトークですが、Googleと連携しているので、音声認識して翻訳もできます。試しに英語、スペイン語、ドイツ語で話してみましたが、音声データを収集してあいまいなところも補完しているのでしょうか、認識精度はすごぶるよいです。

なので、UDトーク番外編の使い方としては、発音チェックに使えたりします。

ここで気づいたかたもいると思いますが、UDトークの音声データは、収集されて機能向上のためにつかわれます。話の内容が収集されるわけではないので秘密が漏れるということはありませんが、気になるけど使いたい!という方(特に会社さん)、あと、単語リストを登録したい!という方は、有償版が使えます。

あと、テキスト表示とか字幕って、周りがうるさい場所や、音を小さくしないといけない場所ではとても便利ですよね。そういう方向で「聴覚障害者のためのソフト」ではなくて、「機能を考えたらこんなに使えるソフト」ということで、多くの人が普通に便利に使うようになったら便利になると思います。

日常生活での雑談ということでは、やはり手話に勝るものはないですが、これはモーションキャプチャ応用で、手話翻訳ソフトが便利に使えるようになって、スカウターみたいなディスプレイにテキスト翻訳とか読み上げソフト連携で音になるとかすれば、リアルタイムで雑談も盛り上がるかと。ネタの解説はご法度ですしね!


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