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百日紅、ボルベール、The Big Day

渋谷クアトロのフィロソフィーのダンス企画、名古屋のベイクルーズフェスティバルが終わってハバナイとしての夏はほぼ終わった。名古屋城を見上げながら砂埃の舞う灼熱なステージでライブするのはとても気持ち良かった。来年はさすがにもうちょい涼しい時間に開催するだろうけど。オレみたいに暑いの好きなヤツってあんまいないもんね。フィロソフィーのハルちゃんとも久しぶりに会えて嬉しかった。
9月、10月はツアーあるしトーキョーコーリング、りんご音楽祭、ボロフェスタも誘ってもらったので良い時期になりそうだ。夏を制作にあてたぶん年末のアルバムリリースへの助走になるといいな。
アルバム制作作業は最終段階に向かっている。友達のスタジオでやっているんだけど、作ったフレーズを抜き差しするけっこうミニマルな作業で一番ハバナイ的直感が必要になってくる。最もエナジーのある組み合わせを見つけるために一個一個試してそれを聴ききながら判断していくプロセス。一緒に制作してくれてるヤツらの根気強さに感謝する瞬間。アイディアやイマジネーションを与えてくれる仲間も大切だけど、とにかく待ってくれる仲間も大切。

家の外ではすっかり百日紅が咲いている。炎天下の中で百日紅の薄いピンクの花をアホみたいな顔して眺めるのはなかなか悪くないぜ。百日紅(さるすべり)は杉浦日向子の漫画のタイトルだ。葛飾北斎とその娘の話で、江戸時代の頃の人間の情緒や心意気みたいなものが日常や怪異とともに表現されていて。初めて読んだ頃は淡白な感じがしてよく分からなかったんだけどここ数年は忘れた頃に読み返してる。ヒューマニズムや倫理観や常識や善悪は時代や場所が変われば当然のように変化してしまう。百日紅はそこから少しエスケイプさせてくれる。オレがアルモドバルの映画を観たり、中南米の小説を読むのは同じような理由な気がするな。
アルモドバルの「ボルベール」。カラカラに渇いてるスペインの風景とフラメンコと威勢のいいペネロペ・クルスがウルトラかっこいい。物語の中の人々がエゴや情熱をむき出しにしつつも妙に冷淡な機微を見せる感じがあまり触れたことのないタイプの人間臭さというか。オレみたいな陰湿なジャップにはなかなか思いつかない角度で世界と対峙している躍動的な人々の話で心地よいんだ。
アルモドバルのその他の作品だと「トークトゥーハー」「オールアバウトマイマザー」、ヴィム・ベンダースの「ブエナビスタソシアルクラブ」。小説だと「オスカーワオの短く凄まじい人生」、「夜になる前に」、「エレンディラ」あと去年読んだバルガス=リョサの「楽園への道」。たくさん掘ってるわけじゃないんだがスペインや中南米の映画や小説を観てると自分とは違う価値観で生きている人々の人生に触れることができて。昔はそんな必要はあんまり感じなかったんだけどね。

最近、長いこと中断していた旅を再開したようなフレッシュな気分になっているんだよマイメン。気持ちがSNSからやや遠ざかりつつあるせいかもしれない。チャンスザラッパーのThe Big Dayを聴きながら高速を飛ばして海に向かう。オレはヘイトフルな世界にいるならこれくらいの多幸感でアガリたいってだけさ。このアルバムがある種の人たちには不満らしいがオレたちにはそんなことはまるで関係ないね。それが本当に必要なやつが聴けばいい。The Gun Club"Sex Beat"もThe Cars"Just What I Needed"もマックデマルコ"Another One"も、プリンスの"Purple Rain"もマライアの"Always Be My Baby"やニューオーダーの"Bizarre Love Triangle"も、大沢誉志幸"そして僕は途方に暮れる"もポラリスの"檸檬"も泉谷しげるの"流れゆく君へ"も、MØの"Nights With You"もアヴィーチーの"Lonely Together"もテイラーの"Style"も。必要なやつが聴けばいいんだよ。
テイラーのStyleは“You got that James Dean daydream look in your eye”なんてロマンチックに始まるサビがやっぱり良いんだよね。



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