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【瓦版】ずっと笑ってる男の真剣が見たい

毎日、瓦版のように世の中で起きたかもしれない、いや起きてないかもしれない個人的大事件を軽く書き連ねていきます。世の中、苦しいニュースばかりで耐えられないので自分で書くことにしました(動物が産まれたニュースばかり希望)。完全見切り発車小説、エッセイ?としとこう。瓦版があった当時、2〜3文で売られていたようなので、今回から書いていく瓦版も100円にしてみました。しかし全文、無料で読めます。やった〜。気に入ったら買ってください。やった〜。

それでは聞いてください。

ずっと笑っている男が、世の中にいる!
笑うことはいいことだぁ?んなことわかっている。

先日、連絡先を交換した男がすべてのメッセージの文末に(笑)をつけてくる。最初はよかった、私って実は面白いのかなって思った。そして人間はこんなに簡単にウケ続けることができるのかとも思った。即レスも当たり前のようで、彼のよく鍛えた大きな胸に何気ないこちらのメッセージを受け止めてもらっている気がした。あと顔も超好きだわ。え、何その曲聴いてんの?センスいいね…。

しかし、会話が進んでいくうちに気になってきた。

例えばこんな一幕。

「それでさ、私、スナックで働いてんだ」
「そうなんだ(笑)」
「そうそう、いいお客さんばかりだよ」
「よかったね(笑)君は運がいいよ(笑)」

だんだん、イラついてくるの分かるだろうか。
こっちが笑わせようとしていないのに笑われると、携帯を投げたくなる。恋愛のトークって、駆け引きってあるじゃん。それが(笑)が付いちまってるせいで無効化されるじゃん。積み上げてきたものをそうやってすぐ崩すじゃん。この人とジェンガ出来ないよ。どういうつもりなんだ。

「君って、よく笑うんだね」
「そう?(笑)」

もしかすると敵かもしれない。最近の私は、道端の吸い殻、素手で拾って徳を積んでる最中なんだが。

「後でさ、電話しない?」
「突然だな、いいよ(笑)」

一回おちつこう。シャワーを浴びよう。人間そんなに速合点すりゃいいものではない。

シャワーがいつもより熱く感じる。シャワーもイライラしているんだ。

電話のコールがひと鳴りして、彼が出た。

「もしもし、声聞くの初めてだな〜」
私はシャワーで清められた後だったので、すっかり落ち着いていた。

「….もしもし。お電話嬉しいです。スナックいいですよね」
あれ、笑ってない!笑ってない、この人。

「あ、はい。いつか飲みに来てください」
つい動揺して営業してしまった。

そこからは素朴な話し方をする彼と、素朴を会話をし続けた。そして、なぜこの話し方をする彼が(笑)を使い続けているのか、ますます分からなくなった。なので聞くことにした。

「あれ、なんでいつも文末に(笑)付けるんですか」
「え、優しさで付けてました」
「優しさ?」
「合いの手みたいなことですか?」
「はい。高校一年生の一学期、同じ委員会に入ってたギャルにそう教わったんで。あんたのメッセージ、素っ気ないよって」
「いいギャルですね」

まさかのギャル仕込みだった。ブチ切れなくてよかった。電話を切り、一呼吸。聞いてみないと分からないこともあるんだ。これがコミュニケーションか。

寝る前に彼からメッセージが来ていた。

「先ほどはありがとうございました(笑)」
「こちらこそ(笑)」

二人揃ってめでたく(笑)の使い手になり、少し感じ悪い。

この恋愛、どこまで続くだろう、またこの瓦版でお知らせすることにしよう(笑)絶対うまくいきたいから(笑)がんばろう(笑)恋愛って、むずかしいな〜〜〜(笑)



* 作家プロフィール
ご機嫌よう。稲田万里(いなだ・まり)です。
福岡県出身の作家、占い師。東京デザイナー学院卒業後、ブックデザイナー佐藤亜沙美氏に師事。その後、不動産会社、編集プロダクションなどに勤務し、スナックのママも経験する。占い師としての専門は霊視、易。2022年の10月、ひろのぶと株式会社より初の著書『全部を賭けない恋がはじまれば』を上梓。Twitter @chikazukuze

全部を賭けない恋がはじまれば
(ひろのぶと株式会社)

ぜひ読んでください。感想、すご〜く嬉しいです。精神がお腹いっぱいになります。

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思いっきり次の執筆をたのしみます